徒然草 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川文庫ソフィア 99 ビギナーズ・クラシックス)

制作 : 角川書店 
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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043574087

作品紹介・あらすじ

日本の中世を代表する知の巨人、兼好が見つめる自然や世相。その底に潜む、無常観やたゆみない求道精神に貫かれた随想のエキスを、こなれた現代語訳と原文で楽しむ本。現代語訳・原文ともに総ルビ付きで朗読にも最適。

感想・レビュー・書評

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  • 吉田兼好こと、卜部兼好とされている。兼好法師の死後、草庵に残っていたものを、まとめたもので、243段あり。

    ビギナーズ・クラシックスは、よい部分の抜粋で、しかも、現代訳と原文、解説となっていて、比べながら読める。

    文庫版もあって、すきなところ、感じるところ、ぱらぱらと辞書感覚で気軽に読めるのがいい。

    冒頭しか知らなくても、こういったダイジェスト版で拾い読みをして、やがては作品全体を知ろうとするものです。
    また、各段も、すべてが大事ではく、そのところどころを読むだけでも十分役に立てるかと存じます。

    序段 
    つれづれなるままに、日暮らし硯に向かひて、心にうつりゆく由なしごとを、そこはかとなく書き付くれば、あやしうこそもの狂ほしけれ
    今日はこれといった用事もない。のんびりと独りくつろいで、一日中机に向かって、心をよぎる気まぐれなことを、なんのあてもなく書きつけてみる。すると、しだいに現実感覚がなくなって、なんだか不思議の世界に引き込まれていくような気分になる

    3段
    よろづにいみじくとも、色好まらざらむ男は、いとさうざうしく、玉のさかづきの当なき心地どすべき
    どんなにすばらしくても、恋の真味を知らない男は、非常に物足りない、みごとな玉製の盃の底が抜けたように、見かけだけで男の魅力が欠けている

    8段
    世の人の心惑はすこと、色欲にはしかず、人の心は愚かなるものかな
    色欲ほど人間を迷わせるものはない、なんて人間はばかなんだろう

    19段
    折節の移り変はるこそ、ものごとにあはれなれ
    四季の移り変わるようすは、何につけても心にしみるものがある

    29段
    静かに思へば、よろづに過ぎにしかたの恋しさのみぞ、せむかたなき
    心静かに思い出にふけると、何事につけ、過ぎた昔の恋しさだけがどうしようもなくつのってくる

    30段
    人の亡き後ばかり悲しきはなし
    人の死後ほど、悲しいものはない

    75段
    つれづれわぶる人は、いかなる心ならむ 紛るる方なく、ただ独りあるのみこそよけれ
    時間を持て余す人の気がしれない 何の用事ものかくて、独りでいるのが、人間にとっては最高なのだ

    79段
    よき人は知りたることとて、さのみ知り顔には言う
    立派な人は知っていても、知ったかぶりをしないものだ

    108段
    寸陰惜しむ人なし
    短い時間を積み重ねて大切に使う人はいないものだ

    109段
    過ちは、やすき所になりて、必ず、仕ることに候ふ
    失敗というものはきまって、なんでもないところで、やらかすものなんです

    155段
    世に従はむ人は、先づ機嫌を知るべし
    世の中の動きにうまく合わせようとするなら、なんといっても時期を見逃さないことだ

    170段
    さしたることなくて人のがり行くは、よからぬことなり
    大した用事もないのに、人を訪ねるのはよくない

    175段
    世には心得ぬことの多きなり
    この世の中には、わけのわからないことが多いものだ

    233段
    よろづのとがあらじと思はば、何事にもまことありて、人を分かずうやうやしく、言葉少なからむにはしかじ。
    人前でどんな過失もないようにしたい、と思ったら、何事にも誠意をもって当たり、人を差別せず礼儀正しく、よけいな口をきかないのが最上である

    243段
    問ひ詰められて、え答へずなり侍りつ
    問い詰められて、応えられなくなりました
    (兼好の父が、8歳の兼好に問い詰められたのをかたっています) 了

    目次 ()は段数

    自己発見の道へ つれづれなるままに(序)
    出世の本道とは いでや、この世に生まれては(1)
    政治の倫理規正 いにしへの聖(2)
    いい男の条件 よろづにいみじくとも(3)

    長寿への警鐘 あだし野の露(7)
    女の色香の威力 世の人の心(8)
    住まいは人なり 家居の、つきづきしく(10)
    蜜柑の木を囲う独占欲 神無月のころ(11)
    友あれど心の友はなし 同じ心ならむ人(12)

    読書は古人との対話 独りともし火のもとに(13)
    旅は心のシャワー いづくにもあれ(15)
    四季の移り変わり 折節の移り変はるこそ(19)
    むなしい欲望の遺跡 飛鳥川の淵瀬(25)
    思い出は心をうるおす 静かに思へば(29)

    葬儀と後日談 人の亡き後ばかり(30)
    月見る女の心配り 9月20日のころ(32)
    悪筆は個性の表現 手のわろき人の(35)
    ばかを嘲る大ばかもの 5月5日、賀茂の競べ馬(41)
    独善の悲哀 仁和寺にある法師(52)

    住まいは夏向きに 家の作りやうは(55)
    会話のマナー 久しく隔たりて(56)
    求道者の覚悟 大事を思ひ立たむ人(59)
    芋代に財産食いつぶす 真乗院に、盛親僧都とて(60)
    謎文字の歌 延政門院いときなく(62)

    既視体験のふしぎ 名を聞くより(71)
    「うそ」の分析 世に語り伝ふること(73)
    利に群がる蟻人間 蟻のごとくに(74)
    孤独の哲学 つれつれわぶる人(75)
    軽薄人間の定義 今様のこととも(78)

    無能の能ということ 何事も入り立たぬ(79)
    未完の完ということ 羅の表紙は(82)
    偽善も善、偽悪も悪 人の心素直ならねば(85)
    滑稽なる骨董品 ある者、小野道風の書ける(88)
    怪獣猫またの正体 奥山に猫また(89)

    決心即実行の難しさ ある人、弓射ること(92)
    生と死は隠れたコンビ 牛を売る者(93)
    過度の執心は破滅のもと その物に付きて(97)
    生き字引の翁又五郎 尹大納言光忠入道(102)
    男は女に磨かれる 女のもの言ひ掛けたる(107)

    女の本性ねじけ論 かく人の恥ぢらるる女(107)
    人生はこの一瞬の積み重ね 寸陰惜しむ人(108)
    安心にひそむ危険 高名の木登り(109)
    勝つ思うな、負けぬと思え 双六の上手(110)
    分相応にふるまえ 40にも余りぬる人(113)

    良友と悪友の条件 友とするにわろきもの(117)
    鰹の生食の始まり 鎌倉の海に(119)
    ペット飼育批判 養ひ飼ふ物には(121)
    男子の必修科目 人の才能は(122)
    鏡に映る醜い顔 高倉院の法華堂の三昧僧(134)

    始めと終わりの美学 花は盛りに(137)
    生前の心得 身死して財残る(140)
    京・関東の比較論 悲田院の尭蓮上人は(141)
    家族愛の政治論 心なしと見ゆる者(142)
    ありのままの死 人の終焉のありさま(143)

    理想の老境 ある人のいはく(151)
    無常迅速ということ 世に従はむ人(155)
    春の日の雪仏 人間の営みあへるわざ(166)
    訪問のマナー さしたることなくて(170)
    自己本位を貫け 貝を覆ふ人の(171)

    酔いどれ百態 世には心得ぬこと(175)
    人生は一点突破 ある者、子を法師に(188)
    独身礼賛論 妻というものこそ(190)
    夜の輝き 夜に入りて(191)
    「うそ」と人間鑑定 達人の人を見る眼(194)

    非理には非理を 人の田を論ずる者(209)
    味噌の酒肴 平宣時朝臣、老いののち(215)
    貧富平等論 ある大福長者(217)
    技と道具との連携 よき細工は(229)
    無技巧の技巧 園の別当入道は(231)

    社交の極意 よろづのとがあらじ(233)
    主体ある精神を 主ある家には(235)
    ずっこけた感涙 丹波に出雲という所(236)
    すり寄る美女をかわす意地 2月15日、月明かき夜(238)
    父と問答の思い出 八つになりし年(243)

    解説 兼好と「徒然草」 作者・作品の紹介
    付録
     「徒然草」探求情報
     兼好略年譜
     「徒然草」参考系図
      卜部氏系図
      天皇家略系図
      平氏(北条・大仏・金沢)略系図
      堀川家系図
     「徒然草」関係京都略地図

    ISBN:9784043574087
    出版社:KADOKAWA
    判型:文庫
    ページ数:306ページ
    定価:720円(本体)
    発行年月日:2002年01月
    発売日:2002年01月25日初版
    発売日:2015年08月25日39版

  • 言わずと知れた吉田兼好の随筆です。

    原文を一度訳してみてから訳文を読む、というルールを自分に課してしまったため何度かめんどくさくなり、休憩を挟んでしまったので読了まで長い時間かかってしまいましたが、本の中の訳文は非常に現代的で親しみやすいです。

    人間というものは今も昔も良くも悪くも変わらないな、と思わせてくれます。

    何世紀も読み継がれているだけあってさすが、と思わされる記述もちらほら見られ良かったです。また人生の岐路に立った時読み直してみたいと思います。原文を訳してみよう、と思うかは微妙ですが(笑)

  • 【きっかけ】
    己の知性の無さを恥じ、古典を読むことを他人からも薦められたため手に取った一冊。

    【感じたこと】
    正しく生きるとはどういうことなのか、非常に考えさせられた。全てを実行することはできないだろうが、常に持ち歩き、ふとした瞬間に読み返しながら、少しずつ自分の生き方を正していきたいと思った。

  • 日本が世界に誇る文学の名作を読んでみようと思い、まずは読みやすそうな徒然草から。

    今も昔も変わらない人間の本質の話や、処世術など内容は多岐にわたる。その中でも、人の無常観は印象に残った。四季の移ろいや自然の変化は人の関与できない部分であり、何人にも平等である。それに敏感になれるかは日常の豊かさに繋がる。

    祭りの話で
    祭りの中の一番の盛り上がりだけを見るだけではもったいなく、祭りが始まる前のドキドキ感や終わった時の虚しさなど一連の流れ、移り変わりを含めて楽しむものだ
    というものがあったが、納得。
    コスパを求めて盛り上がりだけ体感してしまいそうなので、移り変わりを楽しめる大人になりたいです笑

  • 兼好法師の書いた徒然草を、現代語訳と原文を並べて編集。
    全体的な感想は、世間でもてはやされるほどすごいことが書いてあるわけではないんだな、という印象。
    でも、第155弾「世に従はむ人…」で、何かが変わるときは突然変わるのではなく、小さな変化の積み重なりで物事は動いている。
    例えば季節の移り変わりは、春から夏に変わるのではなく、春の中から夏が生まれ、夏の中で春が終わり、秋が生まれ…という具合である。
    人間の場合は、生→死という変化が最も大きな変化だが、季節のようにそのスピードは一定しない。
    だから、何かをしようと思ったらすぐに実行に移すべし、というところはなるほどと思った。

  • この世は無常という考えを常においている世捨て人のエッセイ。全部を載せているわけではなく抜粋版。載せかたとしてはまず口語訳、そして原文という順番が斬新。この順番だと先に意味を掴めるので原文も読みやすい。
    花見をする人への揶揄だとか、年を取ったら頑張ること自体見苦しいだとか視点が鋭く面白い。昔から人間って変わらないんだなぁ。今のコロナ騒動を見たらどう思うだろうかと想像を巡らせたくなる。どうせ人は遅かれ早かれ死ぬんだから躍起になってペーパーを買いだめするのは下品、とか言いそう。

  • 高校に入試問題などで読んだ(解いた)のが最後…問題として解くのではなく、随筆としてじっくり読めました。兼好法師の自然や世相に対する美意識と真理を貫いた人間観や教訓は確かな説得力をもってズドンと胸に落ちました。何度でも読み直したい一冊。

  • 読書録「ビギナーズ・クラシックス徒然草」4

    編・出版 角川書店

    p210より引用
    “ 何事も、自分の外に向かってあれこれ求
    めてはならない。自分に目を向けて、自分が
    やるべきことに全力を注げばよいのだ。”

    目次から抜粋引用
    “自己発見の道へ
     旅は心のシャワー
     独善の悲哀
     利に群がる蟻人間
     鏡に映る醜い顔”

     日本の古典文学をわかりやすく記した作品
    集の、徒然草を解説した一冊。
     現代語訳・原文・解説と、作品に登場する
    寺社仏閣や図や絵を交えて書かれています。

     上記の引用は、灯台下暗しを戒めた話での
    一節。自分の足場をしっかりと固め、少しず
    つその範囲を広げることで、最終的に大きな
    事が出来るようになるとのことです。
    いろんな事をしたいと思っても、自分の足場
    をしっかりと固めるのも、なかなか上手く行
    かないものです。
     昔々の人々についての話ですが、どんなに
    時代が変わっても、人のしていることの大き
    な部分はあまり変わっていないのだなと思わ
    ざるをえません。

    ーーーーー

  • 子供の頃、教科書で勉強した『徒然草』。
    人間の力ではどうすることもできないこと「無常」について吉田兼好が30代で役人の出世コースから抜けて、出家後客観的に人間を観察しながら見つけ出そうとしていた。

    子供の頃は理解できなかったことが、大人になってから読むと楽しめ、
    いろいろなことに気付かせてくれる、深い話です。

  •  兼好法師の人生観と信念の在り方について書かれた随筆である。時代は日本の中世だが、現代の私たちも考えることについて書かれているので、読みやすい。優秀な人の日記をのぞき込んでいる感覚で読める。

     無常感が兼好に大きく影響を与えている。例えば、季節の移り変わりは急に起こるのではなく、次の季節が徐々に進んだ結果であること。出来事(本書では祭り)のピークだけでなく、始まりの準備段階や終わりの静けさまで味わってこそ、真の出来事を見て体験したことになると言っている。これには、共感の声が多数上がるのではないかと思う。最近だと「エモい」という言葉の一部に包含されてしまぅている気もするが、振り返ることも出来事の体験だと考えると、私たちは数ある物語を今も体験し続けていて、撚糸のように数ある出来事の延長線上に生きているのだろう。つまり、一生をかけて出来事を紡ぎ合わせていくのだ。

     また、自分との対話が真の友人との会話なのだと兼好は主張する。万人に当てはまるとは思わないが、言わんとしていることは分かる。誰も話を聞いてくれない、話をする人がいないと嘆く大人は多い。それは、今の友人関係では話しづらい内容だと自覚していると言っているのと同じだ。そんなことを言ったら、いつまでも思いは募るばかりである。だったら、自分に発散させれば気兼ねなく、会話をすることができるというものなのだろう。

     兼好法師は、無常観を存分に味わうことが人間のあるべき姿だと考えているのではないだろうか。それゆえに、人生の無駄をそぎ落としスマートな生き方を良しとしている気がする。目標達成のためには時間を大切にし、人間関係では無駄な主張を抑え、五感を感じるように生きることを本書から学ぶことができた。

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