更級日記 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)

制作 : 川村裕子 
  • 角川学芸出版
3.85
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本棚登録 : 252
レビュー : 26
  • Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043574162

作品紹介・あらすじ

平安時代の女性の日記。父の任地である東国で育った作者は京へ上り、ようやく手に入れた憧れの物語を読みふけった。女房として宮家へ出仕するものの、すぐに引退し結婚。夫は包容力も財力もある人だったが、20年に満たない結婚生活ののち、死別。その後は訪れる人もまれな寂しい生活を過ごす。13歳から40年におよぶ日記に描かれた、ついに思いこがれた生活を手にすることのなかった一生が、今の世にも胸に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 孝標の娘には憧れのヒロインがいた。
    それは『源氏物語』の「宇治十帖」に出てくる浮舟。浮舟は舟のように漂う薄幸な人生を送る。
    孝標の娘は、この美しくも儚げな浮舟が大好きだった。

    憧れの物語『源氏物語』を読みふけった少女は、浮舟に自分を重ねてはどれほど胸をときめかせていたのだろう。
    ああ、この感じ妄想族のメンバー(笑)としては痛いほどわかる。
    彼女のことを『妄想族の祖先なのだ。親近感がわかないはずがない(笑)』とのブク友さんの言葉にも深く同意する。
    そしてわたしは、この浮舟に憧れるという時点で孝標の娘には勝手にシンパシーを感じたのである。

    たとえばですね。
    わたくしの持論では、クールだったりツンデレだったり、とにかくイケメン主人公と、ケンカしたりすれ違ったりしながらも必ず恋愛成就するキラキラヒロイン。
    そんなヒロインに憧れるのは初心者マークの妄想族なのです(あくまで持論なので……)。

    妄想族は妄想のなかでは大胆で、ちゃっかりヒロイン(注:このヒロインとは、上記のキラキラヒロインのことではなくて、独自に作り出したヒロイン像)の座に収まっちゃうのだけれど、基本現実では臆病だと思うのね。
    だから神様仏様からプレゼントされた奇跡的なチャンスも、どうしようと思ってるあいだに逃がしてしまう。
    ……結局ヒロインになれない。
    その点、キラキラヒロインは思わぬハプニングさえチャンスに変えて引き寄せるんだよ。

    だから初心者マークを卒業した妄想族は、物語を読みこんでいくうちに、放っておいても自分の力でイケメン主人公とのハッピーエンドを掴みとるキラキラヒロインよりも、その影でそっと身を引く、あるいは堂々と2人の邪魔をする、またはイケメン主人公が好きすぎてどうしても素直になれない……そんなライバル的なポジションの女の子に次第に感情移入していくの。
    イケメン主人公とキラキラヒロインのハッピーエンドに深く心の傷を受けてしまった方へと自分を重ねる……
    つまり悲恋の切なさや痛みにこそ、儚い愛の美しさを感じるのだ(持論なので悪しからず)。

    とはいえ、やっぱり妄想族はハッピーエンドが大好きなので、イケメン主人公をキラキラヒロインから奪いかえして、ついにヒロインとなる……こともある。(妄想上の展開なのでお許しを)

    だからこそ、だからこそ!
    楽器も上手で歌もうまい。麗しの源資通とのリアルな出会いを、こうもっとね、ぐっと、こうぐいっと孝標の娘には引き寄せて欲しかった。

    いくら妄想族だからって2年近くも、タイミングがないとか、チャンスがないとか言って、胸の中でドキドキしているだけでは、それではあなた自然消滅になっちゃうわ。
    ああでもね、あなたが結婚していたりとか、そういうタイミングが悪いってのも、わたしたち(!)妄想族の宿命なんだけどね。
    それでも資通からの(たぶん)アプローチに、もうちょっと大胆に行動できてたら、ドラマチックな展開が待っていたかもしれない。
    はぁ……。ここがキラキラヒロイン側とヒロインになれないあなたとわたし側の違いってものなんだ。

    孝標の娘は思い焦がれた生活をついに手にすることはなかった。
    それでも。
    そんな平凡な人生だったとしても、そこには孝標の娘だけのときめきや、憧れ、笑い、悲しみ、絶望などがキラキラした思い出としてちゃんと残っている。

    誰にだって人生は一度きり。
    そして……
    ついに彼女は、どこにでもあるような自分の人生を「書く」ことによって、最後の最後に『更級日記』の最高のヒロインとなったのだ。
    「孝標の娘」というヒロインに!
    すごいよね。ドラマチックだよね!やったよね!!
    さすが妄想族のご先祖さまだよねっ。

    • 地球っこさん
      マリモさん、こんにちは。

      妄想族の考察、好き勝手描いちゃったけど合格点は頂けたでしょうか 笑

      そして、マリモさんのレビューから名...
      マリモさん、こんにちは。

      妄想族の考察、好き勝手描いちゃったけど合格点は頂けたでしょうか 笑

      そして、マリモさんのレビューから名言を引用させてもらいました。
      勝手に書いてごめんなさい。
      そして、ありがとうございます!
      孝標の娘は妄想族の初代総長ですね。

      あの源資通との出会いは、自分の若い頃を見ているようで、恥ずかしいやら痛いやら……

      今回はヒロインというものの奥深さに気づきました 笑
      ヒロインは和泉式部や定子やら、ドラマチックな人生を歩んだものだけの特権ではないんですね~

      次もマリモさんのレビューで読んでみたかった「蜻蛉日記」にいきたいと思います。
      ちょっと嫉妬が恐ろしそうだけど……



      2021/04/14
    • マリモさん
      地球っこさん

      合格点だなんて、そんな畏れ多いです!
      そうそう、妄想族ってそんななの!とめっちゃ頷きながら読ませていただきましたよ(笑)引用...
      地球っこさん

      合格点だなんて、そんな畏れ多いです!
      そうそう、妄想族ってそんななの!とめっちゃ頷きながら読ませていただきましたよ(笑)引用も大歓迎です、ありがとうございます♡
      源資通のはじまりそうで始まらない感じ、わかりますよねぇ。。私も身に覚えありますよー。

      蜻蛉日記は日記文学として更科日記と並べられることが多い気がしますが、道綱母は、おっとり夢見がちな孝標娘とはだいぶ違い、なかなか情が強いお方です。地球っこさん視点の蜻蛉日記のレビュー、楽しみにしておりますー!(o^^o)
      2021/04/14
    • 地球っこさん
      マリモさん

      合格点よかったぁ(*^^*)

      女流日記って、いろんなタイプがあって面白いですね!
      まさか、こんな時代にまで自分たち...
      マリモさん

      合格点よかったぁ(*^^*)

      女流日記って、いろんなタイプがあって面白いですね!
      まさか、こんな時代にまで自分たちの日記が読まれてるとは思いもしてなかったでしょうに~
      はい、うわぁーと思いながら読んでみたいと思います 笑
      2021/04/14
  • ビギナーズ・クラシックスシリーズの更科日記。川村裕子さんの解説でとてもわかりやすい。

    中流貴族の娘である菅原孝標娘の、13歳からの40年間の日記だ。
    ものすごく高貴な身分というのではなく、そこまで名のある歌人ではなく、清少納言のようなバリキャリではなく、和泉式部のようなドラマチックな恋はなく、道綱母のような愛憎劇もない。
    出世しない父と古風な母のもと、物語に没頭しているうちに婚期を逃し、女房として出仕するも、すぐに連れ戻されて結婚し、かといってきっぱり家庭に入るでもなくたまにお勤めし、宮仕えで素敵な男性との出会いはあるけど特に何の進展もなく、優しい夫には先立たれ、晩年は訪れる人も途絶えがちになる。
    同時代の濃い面々と比べると、ある意味平凡で、中途半端な立ち位置だ。

    しかし、この中途半端で等身大なところにかえって親しみを覚える。
    何より、夜な夜な物語に没頭し、光源氏の愛した夕顔や薫の愛した浮舟と自分を重ねて夢見る感じ、大好きな物語と妄想で頭をいっぱいにする浮かれた感じ(物語を読みたいと仏様に拝み倒すのに、手に入った途端、信心深さが消え去るところとか…笑)、憧れの宇治に遠出したときには、あぁここがあの…!と心ときめかせる感じ。何やら覚えがあるではないか。
    そう、彼女は妄想族の祖先なのだ。親近感がわかないはずがない(笑)。

    解説によると、孝標娘が生まれたのは、彰子に敦成親王が生まれたのと同じ年。紫式部が源氏物語を執筆していた時代だ。
    ほぼリアルタイムで源氏物語を読んでいた少女と、現代を生きる私。1000年ものタイムラグがあるのに、「そっかー、あなたは浮舟に憧れるんだね〜」なんてキャッキャとおしゃべりしている感覚があって楽しい。

    日記の後半になると、仏教に目覚め、熱心に物詣でに出かけるようになる。
    いきなりの方向転換のようにも思えるが、みんなが大騒ぎする大嘗会の禊を尻目に物詣でに邁進する様は、その昔、源氏物語を読むことの嬉しさを「后の位も何にかはせむ(后の位なんか全然問題にならない)」と言い、ひたすら読み耽っていたていた彼女そのもの。
    年を取るにつれ、夢も見ていられなくなったときに、物語よりも現実的な(?)仏教に傾倒していったのかなぁなんて思う。菅原孝標娘はたぶん一度はまると、とことんはまる人なのだ。

    平凡なんて言っても、解説で「短編と思えないほどズシンとくる」「一人の人生なのに、まるでオムニバス映画のよう」とあるように、構成も文章も美しい作品。
    もう少し詳しいものも読んでみたくなった。

    • 地球っこさん
      マリモさん、こんばんは。

      あはは。笑っちゃいました。
      妄想族のご先祖さま!

      えっ、えっ、この感じわたしやんな!?
      って思っち...
      マリモさん、こんばんは。

      あはは。笑っちゃいました。
      妄想族のご先祖さま!

      えっ、えっ、この感じわたしやんな!?
      って思っちゃいましたよ 笑

      2021/03/31
    • マリモさん
      地球っこさん、こんばんは!

      1000年前から受け継がれてきた妄想族DNA、私も地球っこさんも、もしかしたら末裔なのかもしれません(笑)

      ...
      地球っこさん、こんばんは!

      1000年前から受け継がれてきた妄想族DNA、私も地球っこさんも、もしかしたら末裔なのかもしれません(笑)

      源氏物語のリアルタイム読者がこんな風に読んでいたんだ…と彼女のワクワクも伝わってきて、何やらタイムスリップしたかのような不思議な気分になりますよー!
      2021/03/31
    • 地球っこさん
      マリモさん、
      不思議な気分味わってみたい♪
      読んでみますねー(*>∀<*)ノ
      マリモさん、
      不思議な気分味わってみたい♪
      読んでみますねー(*>∀<*)ノ
      2021/03/31
  • 菅原孝標女作ということしか頭になかったが、実際読んでみて何よりも印象的だったのが田舎から京への旅路を細かく書いている点にある。
    日記文学であれほどまでに細かく旅の描写があるのはみたことがなかった。
    また、この作品のタイトルをつけるとすると'諦念を知った少女"だと自分は思う。
    源氏物語などに魅了され、いつか自分も同じような経験をするだろうと信じてやまなかったが、実際この無情の世では物語のようなことがあるはずもなく、次第に諦念を知っていく。
    また、様々な人との別れがあり、会者定離のこの世を物語っている。
    そんな無情を嘆きつつも、少女の淡い願いや喜びが所々垣間見れ、そのギャップを感じれるのがこの作品のいいところである。

  •  図書館から借りました


     更級日記の作者は菅原孝標女(すがわらのたかすえのむすめ)。
     その抜粋したもの(?)を現代語、原文、解釈、の三つでわかりやすくしたもの。

     『姫のためなら死ねる』という漫画(百合。清少納言と定子のいちゃこちゃら)に出てきたのですが、更級日記をよく知らず、「え、こんなオタクな内容の日記なの?」と、興味を持ち、読んだのでした。

     ・・・・・・人間って、このころから成長してないんですね!

     まあそれはさておき。

     ふんわふんわと物語に耽溺してきた少女時代。
     その後、行かず後家化させられていた(親が悪いよ、これ)けれど、それでもやはりどこかふわふわしていた彼女。
     なんていう、生々しさ。
     居るよね。なんか、こんな人、現代にいっぱいいるよね?

     親が引退して、彼女が仕事に出ると、ようやく親たちは彼女に結婚の世話をする。このとき、すでに30歳を過ぎている。
     なんで、その前に世話してやらなかったというと。
     家の切り盛りをさせていたからだ。
     親が引退(父は引退、母は出家)して、人付き合いや、死んだ姉の子らを全部任せてしまったからだ、この物語に耽溺しがちのお嬢さんに。
     そんで、外に働きに出かけると、あわてて結婚相手をあてがう。
     自分たちで使い勝手が悪くなったので、世間体に合わせることをようやくやったわけだ。

     ただし。選ばれた旦那はちゃんと良い人だったらしい。
     そんなに出てこないが、鷹揚である。

     
     このころの人にしては「不信心」で、お祈りするのも「源氏物語読みたい。早く京にいかせてよー」と、等身大の仏様作らせて祈るとか、そういうレベル。
     そういう子なのですよ。

     こんな話とは知らなかったので・・・古典って奥が深い。

  • 原文、現代語訳、解説に加えて、写真やコラムも挿入されているお得な一冊。…なんつって、ほとんど原文は読まなかったけど。主人公の、先のことを考えず、ただただ大好きな物語を読んで過ごす姿が他人とは思えず。私もいつかこの主人公のように後悔するのかなあ。

  • 久しぶりに古典を読んだ。原文と現代語訳が書かれており、読みやすい。日記という名前ではあるが、菅原孝標女が老年になって、子どもの時からの日々を振り返った自伝である。子どもの時に物語をたくさん読み、描いた物語のような格好いい殿上人に出会って恋をして結婚する夢から、33歳で結婚と当時としてはかなりの晩婚であったが旦那と仲睦まじく過ごしたと思われるとき、最後には夫が遠地(長野)に赴任して上京してきたと思ったら半年ほどで亡くなり一人さみしい暮らしを過ごす。そんな彼女にとって思い出を振り返りながら書かれており、彼女の気持ちを押し量りながら読むと面白い。

  • 平安時代に興味が出てきたので、何か読んでみたいと思っていた。源氏物語は長くて導入部分でつまづくことが分かっていたので、もっと簡単なものを探していたところ更級日記に行き着いた。

    作者である藤原高標の娘とは、簡単に言うと文学オタクの中学生女子。京都で流行りの源氏物語を読みたくて、ウズウズしている田舎の少女。
    彼女の願い叶って京に引っ越し、源氏物語を昼夜問わず熱中する様。平安時代も現代もあまり変わらないんだなと思った。
    物語中では、乳母や姉が亡くなったり、家が火事で燃えたりする。そういう中で、彼女もだんだん年老いていく。外ばかり見てる若い時代から、自分の内面を見つめるように移り変わる。

    更級日記とか古文苦手な自分としては身構えていたが、読んでみると分かりやすいし、現代の生活にも通ずる部分があって面白かった。

  • 物語が好きになり、読みたくてたまらなくなる純粋だった主人公が、現実を知り、埋没していく中、運命の出会いをして、でも現実は物語のようにうまくいくわけでなく。ただ夫は冷たい訳ではないのでそこは蜻蛉〜の兼家とは違う部分です。

  • 「ー」

    孝標の娘が書いた日記。
    物語に興味を持った少女は、宗教を蔑ろにする。

  • (Kindle版)

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