更級日記 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫 86 ビギナーズ・クラシックス)
- 角川学芸出版 (2007年4月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043574162
作品紹介・あらすじ
平安時代の女性の日記。父の任地である東国で育った作者は京へ上り、ようやく手に入れた憧れの物語を読みふけった。女房として宮家へ出仕するものの、すぐに引退し結婚。夫は包容力も財力もある人だったが、20年に満たない結婚生活ののち、死別。その後は訪れる人もまれな寂しい生活を過ごす。13歳から40年におよぶ日記に描かれた、ついに思いこがれた生活を手にすることのなかった一生が、今の世にも胸に迫る。
感想・レビュー・書評
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孝標の娘には憧れのヒロインがいた。
それは『源氏物語』の「宇治十帖」に出てくる浮舟。浮舟は舟のように漂う薄幸な人生を送る。
孝標の娘は、この美しくも儚げな浮舟が大好きだった。
憧れの物語『源氏物語』を読みふけった少女は、浮舟に自分を重ねてはどれほど胸をときめかせていたのだろう。
ああ、この感じ妄想族のメンバー(笑)としては痛いほどわかる。
彼女のことを『妄想族の祖先なのだ。親近感がわかないはずがない(笑)』とのブク友さんの言葉にも深く同意する。
そしてわたしは、この浮舟に憧れるという時点で孝標の娘には勝手にシンパシーを感じたのである。
たとえばですね。
わたくしの持論では、クールだったりツンデレだったり、とにかくイケメン主人公と、ケンカしたりすれ違ったりしながらも必ず恋愛成就するキラキラヒロイン。
そんなヒロインに憧れるのは初心者マークの妄想族なのです(あくまで持論なので……)。
妄想族は妄想のなかでは大胆で、ちゃっかりヒロイン(注:このヒロインとは、上記のキラキラヒロインのことではなくて、独自に作り出したヒロイン像)の座に収まっちゃうのだけれど、基本現実では臆病だと思うのね。
だから神様仏様からプレゼントされた奇跡的なチャンスも、どうしようと思ってるあいだに逃がしてしまう。
……結局ヒロインになれない。
その点、キラキラヒロインは思わぬハプニングさえチャンスに変えて引き寄せるんだよ。
だから初心者マークを卒業した妄想族は、物語を読みこんでいくうちに、放っておいても自分の力でイケメン主人公とのハッピーエンドを掴みとるキラキラヒロインよりも、その影でそっと身を引く、あるいは堂々と2人の邪魔をする、またはイケメン主人公が好きすぎてどうしても素直になれない……そんなライバル的なポジションの女の子に次第に感情移入していくの。
イケメン主人公とキラキラヒロインのハッピーエンドに深く心の傷を受けてしまった方へと自分を重ねる……
つまり悲恋の切なさや痛みにこそ、儚い愛の美しさを感じるのだ(持論なので悪しからず)。
とはいえ、やっぱり妄想族はハッピーエンドが大好きなので、イケメン主人公をキラキラヒロインから奪いかえして、ついにヒロインとなる……こともある。(妄想上の展開なのでお許しを)
だからこそ、だからこそ!
楽器も上手で歌もうまい。麗しの源資通とのリアルな出会いを、こうもっとね、ぐっと、こうぐいっと孝標の娘には引き寄せて欲しかった。
いくら妄想族だからって2年近くも、タイミングがないとか、チャンスがないとか言って、胸の中でドキドキしているだけでは、それではあなた自然消滅になっちゃうわ。
ああでもね、あなたが結婚していたりとか、そういうタイミングが悪いってのも、わたしたち(!)妄想族の宿命なんだけどね。
それでも資通からの(たぶん)アプローチに、もうちょっと大胆に行動できてたら、ドラマチックな展開が待っていたかもしれない。
はぁ……。ここがキラキラヒロイン側とヒロインになれないあなたとわたし側の違いってものなんだ。
孝標の娘は思い焦がれた生活をついに手にすることはなかった。
それでも。
そんな平凡な人生だったとしても、そこには孝標の娘だけのときめきや、憧れ、笑い、悲しみ、絶望などがキラキラした思い出としてちゃんと残っている。
誰にだって人生は一度きり。
そして……
ついに彼女は、どこにでもあるような自分の人生を「書く」ことによって、最後の最後に『更級日記』の最高のヒロインとなったのだ。
「孝標の娘」というヒロインに!
すごいよね。ドラマチックだよね!やったよね!!
さすが妄想族のご先祖さまだよねっ。 -
苦手意識のあった古典文学ですが、250ページに満たない頁数と、現代語訳→原文→寸評の順で書かれていて非常に入りやすかったです。
全漢字にふりがな付なのも良かった。
平安時代の女性である菅原孝標女の、13歳から40年分に及ぶ日記は、当時の貴族の一女性の暮らしぶりを垣間見ることが出来たようで面白かったです。
本が大好きで、お祈りのお詣りには不真面目な女の子が宮仕えを始めた矢先に結婚。
源資通との春秋比べの段が一番好きでした。
夫の橘俊通のことはほとんど描かれていないにも関わらず、優しく、菅原孝標女がとても大切に思っていたこともしっかりと伝わるところも良かったです。 -
菅原孝標女作ということしか頭になかったが、実際読んでみて何よりも印象的だったのが田舎から京への旅路を細かく書いている点にある。
日記文学であれほどまでに細かく旅の描写があるのはみたことがなかった。
また、この作品のタイトルをつけるとすると'諦念を知った少女"だと自分は思う。
源氏物語などに魅了され、いつか自分も同じような経験をするだろうと信じてやまなかったが、実際この無情の世では物語のようなことがあるはずもなく、次第に諦念を知っていく。
また、様々な人との別れがあり、会者定離のこの世を物語っている。
そんな無情を嘆きつつも、少女の淡い願いや喜びが所々垣間見れ、そのギャップを感じれるのがこの作品のいいところである。
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読みやすかった。
いいじゃないか、日がな一日読書に夢中になっても、物語に出てくるキャラクターに夢中になってもと思いつつ。
少しずつ2次元から離れて、どうしても現実に立ち向かわなければならないのは、今も昔も変わらないんだなあ…。 -
スマートに全体像を掴みたいなら、ビギナーズ•クラシックス!(笑)
というわけで、本家?の角川ソフィア『更級日記』も買っているのですが、とりあえずレビューはこちらでいこうと思います。
欠けている段落があるのは痛いのだけど、注釈を含めて、サラッと概要が分かる。
あと、出来事略年表と、更級日記に特化した地図も付録についているのは、ありがたいです。
教科書では、13歳から始まる若い頃を中心に扱うイメージで、オタク的な扱いをすると面白いのだけど、そこから離れられない感じもしていて。
けれど、身内の死や、宮仕え、結婚、出産を経験し、光源氏なんていないんだよ、なーんて我にかえっちゃう作者が良いんですよね。
そんなことを言いつつ、ドラマに憧れ、仏に願い、そういうドリーミーな一面は、恐らく最後まで変わらなかったような気もするし。
そうして、53歳にして『更級日記』を手掛ける。
一説には『夜の寝覚』などの物語作品を生み出したとも言われているけれど、彼女にとって、物語とは何だったんだろう。
イフの人生とか。夢とか。ありきたりならば色々言えるけど、この時代に虚構を残そうと試みる、彼女の語ることへの意志というか、情熱には、一目置かざるを得ないなと思うのでした。 -
読みやすかった。
感性豊かにキラキラした文章が心地良かった。
物語の最後は暗くなっていて心配だったが、このままで終われないという強い決意を表していてホッとした締めくくりでした。
作者は菅原道真の子孫。
流石ですね。
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読みやすいというか入りやすい。
更級日記と言えば昔NHKで放映していたアニメ「まんがで読む古典」を思い出さずにいられない。サラちゃん。またあのシリーズを放映して欲しいものだ。 -
久しぶりに古典を読んだ。原文と現代語訳が書かれており、読みやすい。日記という名前ではあるが、菅原孝標女が老年になって、子どもの時からの日々を振り返った自伝である。子どもの時に物語をたくさん読み、描いた物語のような格好いい殿上人に出会って恋をして結婚する夢から、33歳で結婚と当時としてはかなりの晩婚であったが旦那と仲睦まじく過ごしたと思われるとき、最後には夫が遠地(長野)に赴任して上京してきたと思ったら半年ほどで亡くなり一人さみしい暮らしを過ごす。そんな彼女にとって思い出を振り返りながら書かれており、彼女の気持ちを押し量りながら読むと面白い。
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平安時代に興味が出てきたので、何か読んでみたいと思っていた。源氏物語は長くて導入部分でつまづくことが分かっていたので、もっと簡単なものを探していたところ更級日記に行き着いた。
作者である藤原高標の娘とは、簡単に言うと文学オタクの中学生女子。京都で流行りの源氏物語を読みたくて、ウズウズしている田舎の少女。
彼女の願い叶って京に引っ越し、源氏物語を昼夜問わず熱中する様。平安時代も現代もあまり変わらないんだなと思った。
物語中では、乳母や姉が亡くなったり、家が火事で燃えたりする。そういう中で、彼女もだんだん年老いていく。外ばかり見てる若い時代から、自分の内面を見つめるように移り変わる。
更級日記とか古文苦手な自分としては身構えていたが、読んでみると分かりやすいし、現代の生活にも通ずる部分があって面白かった。
妄想族の考察、好き勝手描いちゃったけど合格点は頂けたでしょうか 笑
そして、マリモさんのレビューから名...
妄想族の考察、好き勝手描いちゃったけど合格点は頂けたでしょうか 笑
そして、マリモさんのレビューから名言を引用させてもらいました。
勝手に書いてごめんなさい。
そして、ありがとうございます!
孝標の娘は妄想族の初代総長ですね。
あの源資通との出会いは、自分の若い頃を見ているようで、恥ずかしいやら痛いやら……
今回はヒロインというものの奥深さに気づきました 笑
ヒロインは和泉式部や定子やら、ドラマチックな人生を歩んだものだけの特権ではないんですね~
次もマリモさんのレビューで読んでみたかった「蜻蛉日記」にいきたいと思います。
ちょっと嫉妬が恐ろしそうだけど……
合格点だなんて、そんな畏れ多いです!
そうそう、妄想族ってそんななの!とめっちゃ頷きながら読ませていただきましたよ(笑)引用...
合格点だなんて、そんな畏れ多いです!
そうそう、妄想族ってそんななの!とめっちゃ頷きながら読ませていただきましたよ(笑)引用も大歓迎です、ありがとうございます♡
源資通のはじまりそうで始まらない感じ、わかりますよねぇ。。私も身に覚えありますよー。
蜻蛉日記は日記文学として更科日記と並べられることが多い気がしますが、道綱母は、おっとり夢見がちな孝標娘とはだいぶ違い、なかなか情が強いお方です。地球っこさん視点の蜻蛉日記のレビュー、楽しみにしておりますー!(o^^o)
合格点よかったぁ(*^^*)
女流日記って、いろんなタイプがあって面白いですね!
まさか、こんな時代にまで自分たち...
合格点よかったぁ(*^^*)
女流日記って、いろんなタイプがあって面白いですね!
まさか、こんな時代にまで自分たちの日記が読まれてるとは思いもしてなかったでしょうに~
はい、うわぁーと思いながら読んでみたいと思います 笑