古今和歌集 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫 81 ビギナーズ・クラシックス)
- 角川学芸出版 (2007年4月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043574186
作品紹介・あらすじ
春夏秋冬や恋など、自然や人事を詠んだ歌を中心に編まれた、第一番目の勅撰和歌集。総歌数約一一〇〇首から七〇首を厳選。春といえば桜といった、日本的美意識に多大な影響を与えた平安時代の名歌集を味わう。
感想・レビュー・書評
-
ビギナーズと謳いながらも、なかなかの内容だと思う。和歌の意味も技法についての解説も適切。はたと膝を打つことも多かった。頭の整理にもいい。非常に読みやすい本だ。古今和歌集がその後の和歌のお手本とされたことがよく分かる解説だ。理知的というか理屈ぽいが、和歌の技法の基本的なことはここで出尽くしているのだろう。「本歌取り」という用語は生まれていないが、既にその手法も使われている。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
思ひつつ 寝ればや人の 見えつらむ 夢と知りせば 覚めざらましを
(あの人を思いながら寝るから、あの人が夢
で見えたのだろうか。もし夢と知っていた
のなら、目覚めなかったのに。)
うたた寝に 恋しき人を 見てしより 夢てふものは 頼みそめてき
(うたた寝に恋しい人を夢に見てから、夢と
いうものをあてにしはじめてしまったこと
とよ。)
いとせめて 恋しき時は ぬば玉の 夜の衣を 返してぞ着る
(たいそうひどく恋しい時は夜着を裏返して
着ることですよ。)
※夢で恋しい人に逢えるおまじない
これら夢の恋歌三首は小野小町が詠んだもので、古今和歌集第十二巻「恋歌二」の巻頭を飾っている。
夢が現(うつつ)だったらよかったのに。
夢という儚いものにしか、逢いたいとの願いを叶えることができないなんて。
朝から感傷的になっている私です。
今日の朝ドラ『カムカムエヴリバディ』観られた方いらっしゃいますか。
昨日の金太さん、今日の稔さんと衝撃的な展開で、もう朝から涙がとまらない。心が痛くて堪らなくて、何にも手につかなかった。
本当に稔さんは戦死しちゃったの?
安子がいつも稔の無事を祈り、稔にプロポーズされたあの神社で「稔さん!」と泣き叫んでる姿が悲しくて辛くて。戦争ってだめだよ。絶対にだめなんだよ。
きっと安子は、いつもいつも夢でも稔に会いたいと願っていたに違いないもの。
稔だってそうだったろうに。
『カムカムエヴリバディ』は、「ラジオ英語講座」と共に生きた安子から続く3世代ヒロインの物語だから、和歌集の感想に載せるのも変なんだけれど、でも小野小町の歌に安子の気持ちを重ねてしまった。
「和歌は、人の心を種として、それが生長して様々な言葉になったものである。……
……いやすべての生き物が感動して歌を詠むのだ。力を入れないで、天と地を動かし、目に見えない恐ろしい神や霊を感動させ、男女の仲を親しくし、勇猛な武士の心を慰めるものは、やはり歌なのである。」
紀貫之が執筆した仮名序(序文)で述べられているものを一部抜粋し現代語訳したもの。
貫之の和歌の本質が抒情にあるという考え方は、文学や映画などの芸術が人間の心の糧となると思っている私には共感するものだった。
古の歌人の歌に対する熱情が種から芽を出し、花を咲かせ、枯れてはまた種を落とし、そうやって現代へと受け継がれてきたのだと、歌というものの本質的な部分は、どれほどの時が経っても日本人の心として普遍的なものなんだということを強く感じた。
おかしいと思われるだろうけれど、それを今朝の朝ドラの安子の稔への想いを想像することで、より一層強く感じとることができたのね。
古今和歌集にまとめられている約千百首の歌のなかから、本書では七十首を取り上げている。
そのうち七割方を四季歌と恋歌が占めていて、(朝ドラの影響もあるけれど)気になっていた離別歌は二首、哀傷歌は一首のみの掲載だったことが物足りなかった。
本書には入っていなかったのだけれど、惹きつけられた哀傷歌の一首を載せておく。
声をだに 聞かで別るる たまよりも なき床に寝む 君ぞかなしき
読人知らず
(声さえも聞けずに死に別れる自分の魂より
も、帰ってきて私のいない床に寝るあなた
のことが気がかりです。)
ある男が他国に行っている間に、その妻が急病で倒れてしまう。妻はひとり残る夫のことを心配する歌を詠んだ後に亡くなった……、そんな歌。
ひとり残していく安子を想う、戦地での稔さんの気持ちをこの妻に重ねてしまった、心に残る歌。 -
原文の和歌、訳文、寸評の順に、丁寧に解説される。四季や心情を織り込んだ和歌を音読しながら味わうので1カ月以上かかってしまった。ビギナーズとあるがなかなか読み応えのある内容。コラム欄も勉強になる。
藤は春の終わりを飾る花とのこと。菊は中国から輸入、古今和歌集から盛んに詠まれるようになったとのこと。和歌のレトリックとして古今和歌集を代表するのは掛詞、縁語とのこと。掛詞は、文脈の複雑さとイメージの重層化をねらった、限られた音数内でより多くの意味を持つことを可能とした。例)はる(張る・春)ふる(降る・経る)まつ(待つ・松)。縁語は、中心となる語からイメージされる言葉で一首を構成、連想ゲームのよう。
糸・よりかくる・乱る・ほころぶ
古今和歌集の成立と歴史的背景、構造や配列、歌風、その後の影響などがまとめられている。
詠み人知らずの歌で特に気になる歌が多かった。韻律が美しい。付録の初句索引がまた良い。日本語ひらがなの素晴らしさにうっとりした。
花の香を風のたよりにたぐへてぞ鶯誘ふしるべにはやる(紀友則)
春ごとに花の盛りはありなめどあひ見むことは命なりけり(読み人知らず)
夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを雲のいづこに月やどるらむ(清原深養父)
白露の色は一つをいかにして秋の木の葉を千々に染むらむ(藤原敏行)
山里は冬ぞ寂しさまさりける人目も草もかれぬと思へば(源宗于)
あさぼらけ有明の月と見るまでに吉野の里に降れる白雪(坂上是則)
むすぶ手の雫に濁る山の井の飽かでも人に別れぬるかな(紀貫之)
人知れず思へば苦し紅の末摘花の色に出でなむ(詠み人知らず)
思ひつつなれば人の見えつらむ夢と知りせば覚めざらましを(小野小町)
月夜よし夜よしと人に告げやらば来てふに似たりまたずしもあらず(詠み人知らず)
世の中は何か常なるあすか川昨日の淵ぞ今日は瀬になる(読み人知らず)
世の憂き目見えぬ山路へいらむには思ふ人こそほだしなりけれ(物部良名)
すべての仮名を一回ずつ使って作られた歌。
天地星空山川峰谷雲霧室苔人犬上末硫黄猿生ふせよ榎の枝を馴れ居て
(あめつちほしそらやまみねたにくもきりむろこけひといぬうへすゑゆわさるねふせよえのえをなれゐて)-
ベルガモット、おはよう!
お知らせなんだが、NHK Eテレ「先人たちの底力 知恵泉(ちえいず)」で「紀貫之 “和歌ブームを巻き起こせ”」が...ベルガモット、おはよう!
お知らせなんだが、NHK Eテレ「先人たちの底力 知恵泉(ちえいず)」で「紀貫之 “和歌ブームを巻き起こせ”」が放送される。日時は5月2日(火)の午後10:00~10:45と、5月4日(木)の午後1:30~午後2:15だ。この前紀貫之の住んでいた屋敷跡に行ったところで、個人的に紀貫之が好きだから俺はぜひみたいと思ってる。
ベルガモットももし都合がよくて興味があれば、チェックしてみてくれ。2023/05/02 -
張飛さん、お知らせありがとうございます!観ました、知らないことばかりで驚きと感動で紀貫之が気になってファンになりました。古今和歌集の復習と土...張飛さん、お知らせありがとうございます!観ました、知らないことばかりで驚きと感動で紀貫之が気になってファンになりました。古今和歌集の復習と土佐日記も読もうと思います。歌碑巡りも良いですね!2023/05/02
-
ベルガモット、俺も見たぜ!俺も知らないことがいっぱいあって今まで以上に紀貫之に親近感が湧いて好きになったし、土佐日記も読もうと思う!俺が高知...ベルガモット、俺も見たぜ!俺も知らないことがいっぱいあって今まで以上に紀貫之に親近感が湧いて好きになったし、土佐日記も読もうと思う!俺が高知で見た土佐日記の歌碑の深い意味もわかって感動してテンションが上がったよ笑2023/05/02
-
-
本シリーズの万葉集読んだので次は古今和歌集かなと。
万葉集好きなのですが、古今和歌集もめちゃくちゃ好き〜〜!!!となりました。技巧を凝らした歌が多く、何言ってるのか分からないものも多いのですが、それがまた31文字でいくらでも表現できる自由さも感じました。
そして国歌は古今和歌集から採られていると初めて知りました。
これはまた全首読みたいですね。
いつものことですが本書の解説も古今和歌集や和歌に対する愛情を感じました。寸評のおかげで理解が難しい和歌も背景まで理解することができ、おもしろさがよくわかりました。
ちなみに、中でも好きな歌は下記です。
秋口に詠みたい。
秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞ驚かれぬる
-
君が代の歌の由来を初めて知った
-
好きな歌が新古今和歌集だったのでそちらを先に読んでしまったが、新古今和歌集と比べるとこちらの古今和歌集の方がやわらかい印象。
今回この本に取り上げられていた歌の中で一際心に残った歌が、
しののめの ほがらほがらに 明けゆけば おのがきぬぎぬ なるぞかなしき
なのだけど、夜が明ける様子を「ほがらほがら」と表現しているのが面白い。
「ほのぼの」だと悲壮感がなくむしろ夜明けが楽しみな感じがするのに、「ほがらほがら」だとなんだか自分の意思とは関係なく、無慈悲に時が過ぎていくような感じすらする。
またその情景を描写したあとに、別れるための身支度をしている様子が現実的で、ちょっと現代的にも感じた。
読み人知らずの歌だが、本書では身支度という日常を切り取っているところから、女性の目線なのかと書かれていて、なるほどなと思わされた。
そういうわけで、音の面白さ、情景の選び方、体験したわけではないのに作者の心が身近に感じられることなどから、私の本書No.1の歌である。 -
今昔物語集と間違えて買ったような気がするが、解説やコラムも分かりやすく、普通に読めた。
-
ビギナーズクラシックシリーズの百人一首の後に、もう少し和歌が読みたいと手に取った一冊。以下の六首が特に印象に。/むすぶ手の雫に濁る山の井の飽かでも人に別れぬるかな 紀貫之/吉野川岩切り通し行く水の音には立てじ恋ひは死ぬとも 読み人知らず/色見えで移ろふものは世の中の人の心の花にぞありける 小野小町/世の中は何か常なるあすか川昨日の淵ぞ今日は瀬になる 読み人知らず/桜花散りぬる風のなごりには水なき空に波ぞ立ちける 紀貫之/白露の色は一つをいかにして秋の木の葉を千々に染むらむ 藤原敏行
-
時代が近づいたためか「万葉集」と比べて歌そのものの意味が捉えやすいように感じました。
ただ、洒落とか比喩とか、つまり技巧のようなものが何かと鼻につく気がします。
万葉人の時代から、生活のあり方も制度化されたり形式化されたりといったことが進んだのか、自由な感じがしない、なんとなく窮屈な印象を受け、感情を真っ直ぐに表現したような歌が少なかったように感じました。
うまく言えませんが、特定の誰かに伝えるとか、思ったことを素直に述べる、というよりも、不特定多数に読まれることを前提にしているような、そんな雰囲気があります。
そのためか、読みやすさの割にあまり共感できませんでした。
そして解説が授業的に感じる節がありました。せっかく古典を楽しみにきたのに、こう読みなさい、ここはテストに出ますよ、と言われている気がして、その点も窮屈に思いました。また、同じ歌の解説とその直後のコラムでまったく同じ記述があったりして、その点はいかがなものかと思いました。 -
『古今和歌集』読了。正月に飲んだり食べたり近所の氏神様に参ったり、その合間あいまにパラパラと読むのに、このビギナーズ・クラシック版のとっつきやすさって最高じゃないですか。手弱女ぶりの作風も、万葉集と新古今の間っていう程よさもいいですね。