方丈記(全) ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)

制作 : 武田友宏 
  • 角川学芸出版
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本棚登録 : 385
感想 : 33
  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043574193

作品紹介・あらすじ

『方丈記』が書かれたのは、まさに源平の戦いの頃、武家の社会へと価値観が大きく変わり、天変地異が次々起こる不安な時代であった。著者の鴨長明は、葵祭で有名な下鴨神社の将来を約束された神官の子として生まれた。だが、ついにその座に就くことなく山里の小さな庵に隠棲し、混迷する都のさまを見つめつつ、この世の無常と身の処し方とを綴った。現代の我々にとって、スローライフを提唱する示唆に富んだ随筆でもある。

感想・レビュー・書評

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  • 行く河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたる例なし。世の中にある、人と栖と、またかくのごとし。


    方丈記は中学生の頃、国語の授業で習ったから、この部分については今でも暗誦することができる。
    子供のころに覚えたことってなかなか忘れない。

    しかしながら、ただ覚えているだけで、その内容はまるっきり理解していなかったのである。
    国語の授業では当然、全文を教えてくれるわけじゃないし、細かい解説をしてくれるわけでもない。
    興味を持ったら自分で読んだり、勉強したりすりゃあいいのに、それをしないのが僕のダメなところだ。
    というわけで、僕は「方丈記」をおおいに誤解していた。
    わかったようなわからないような、机上の哲学を振り回しているだけの内容だと思っていた。
    都落ちしたおぼっちゃまが、仏教にすがって、自己弁護と自己嫌悪を繰り替えているだけのエッセイ集かと思っていた。
    でも、この序章だけを読んで、鴨長明のプロフィールを聞いただけなら、そんな気がするじゃないか。

    ちゃんと読んでみたら、とんでもない話である。
    鴨長明が書く「無常観」は、地に足がしっかりとついた無常観である。
    どこぞのアタマでっかちな坊主が、きいたふうな話をぺらぺらと喋っているのとは違って、自らの体験をベースにして自分が感じたこと、思ったことだけを素直に書き綴っているのである。
    数々の天災を目の当たりにしてきた彼は、どんなに栄華を誇る都でも、大火や竜巻の前では一瞬にしてすべてが崩壊するのだと知る。
    あらゆるものはすべて変化し、生滅するのだという「無常観」はここから生まれる。
    今なら、エントロピーという言葉で、鴨長明が感じていたことの半分は説明ができる。
    だが、そんな科学的な説明も何もない時代に、宇宙の根源的原理に挑戦しようとしたところに鴨長明の凄さがあると思う。

    「方丈記」は鴨長明のエッセイであると同時に、優秀な社会レポートでもある。
    まるで新聞記事のように、克明に当時の災害の様子などが記されている。
    そこには長明自身の考えなども反映されているから、新聞記事というよりは、社説のようなものかもしれない。
    生家を追い出された長明の、都への未練なんかがちょこちょこ感じられたりしてちょっと可愛らしかったりもする。
    そういう見方で読んでも、意外に楽しむことができる。

    こんな面白いエッセイ集なんだよ、と国語の授業で教えてくれていたら、もっと僕も興味を持てたかもしれない。
    いや、嘘だな。
    教えてくれていてもたぶん、当時の僕はその面白さに気がつかなかったし、もしかしたら僕が覚えていないだけで先生は教えてくれていたのかもしれない。
    自分の不明を羞じるべきで、他人の所為にしちゃいかんよね。

  • このシリーズは、原文、現代語訳、解説で読め、原文の雰囲気を味わえる。原文の全文ではなく、部分が取り上げられているものが多いが、「方丈記」は全文が載っているよう。キンドルの原文で比べると、すこしカナ、文章周りが異なる点もあった。コラムとして関連情報が挿入され、またイラスト、地図的なものが登場するのもありがたく、便利。
    天災のあとに、しばらくは誰もかれもが天災に対し、人間が無力であることを語りあい、少しは心の濁りも薄らいだようにみえるが、月日が経ち、年が過ぎてしまうと、話題に取り上げる人さえいなくなるというのは現代にも言える。
    また、自分一人で住む菴での生活も、結構楽しそうで、面白そう。無常について、住居や環境、人間付き合いの観点から考えてみるというのも面白かった。しかし繰り返し読みたいほどではない。

  • 「行く河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたる例なし。世の中にある、人と栖(すみか)と、またかくのごとし。」から始まる鴨長明(1155-1216)の方丈記。これをとても分かりやすい現代語訳と原文、解説に分けて書いた本だ。高校時代の古文の授業ではちっとも面白くなかった本だが、今になって読み返してみるととても面白い。平安末期から鎌倉時代にかけて、諸行無常を知り質素にシンプルに生きようとする長明は現代のミニマリストのようだ。高校時代に面白くなかったのは、いろんなものが欲しいし、未来に期待している状況なのに、無常と言われても共感できないからだ。これが未来に期待しなくなった中年になると面白くなる。この800年間にこの本を読んだ人たちも同じ感想を抱いたからこそ、代々写本され読み伝えられてきたのだろう。人間というのは、実は進化していないらしい。800年の時代を超えて共感できる人と出会える楽しみが、この本にある。

  • 無常感を堪能できる。昔から災害は多かったのと分かる。

  • かなり面白く読みました。

    読み手によって感じるところが結構変わるんじゃないかと思いました。

    私には、いろんな敗北感とかトラウマを感じながら喧騒を離れて、これでいいんだ、これがいいんだ、と書き付けているように感じました。そうだとしたら、いたく共感します。
    そう思いたくなるときもあるし、心の奥底にはいつもその思想があるような気もします。だから自分も、その結論にいつか達するんじゃないか。

    随筆の古典て、すごくブログっぽいですね。

  • 下鴨神社の御曹司は跡目相続のごたごたや中央政権の公家から武家への交代,大きな災害を経験して人生に無常を感じて庵を立てて隠棲しているが,結構世事に詳しく達観できてはいないのか。

    行く河の流れは絶えずして,しかも,元の水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは,かつ消え,かつ結びて,久しくとどまりたる例なし。世の中にある,人と栖(住処)と,またかくのごとし。

  • 火災旋風があった安元の大火、竜巻であったであろう治承の辻風、福原の遷都、養和の飢饉、元暦の大震災という災害が当時あったようだ。大変な時代であったようだ。
    また、体に関しては、心がその疲労の程度を把握しているので、疲れたときは休ませ、元気なときは働かせる。働かせるといっても、度を過ごすことはない。体が怠くても、いらいらする必要はない。心が体を管理しているからだ。
    言うまでもなく、こまめに歩き、こまめに体を動かすのは健康の増進にもいいはずだ。どうしてだらだらと体を動かさないでいいことがあろう。体は動かすに限るという。

  • 鴨長明"方丈記"を読む。

    ビギナーズ・クラシックスシリーズの提唱者である編者の武田氏のコメントが光る。徒然草の兼好よりも頑固で純粋な隠者の姿。

    冒頭の「行く河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらづ」は古典の授業でもよく取り上げられるところですが、長明の無常観はこういう観念的なものであるよりも、京の街を襲った災害に由来するようです。

    おおよそ半分が災害に関する記述に占められ、そこから人生の無常に至った気配が感じられます。

    ◯さらにまた、わからないーほんの短い人生の間しか住まない仮の宿である家を、だれのために苦労して建て、なんのために見た目を飾り立てて嬉しがるのか。(3段)

    ◯昔の優れた天子の御代には…、宮殿の屋根は質素に茅で葺いて、しかも茅葺きの軒を切り揃えることさえ無駄な贅沢として戒めた。(14段)

  • 時代背景を記す部分が言わば長い前書きのよう。方丈の庵について描いた28〜34章は読み応えがあったが、最後の2章で執心をめぐる問答となって、ずっこけた。平安末期〜鎌倉の時代にもかかわらず、人々の感じ方や考え方は、現代とそれほど変わらないのだなと感じた。

    ビギナーズ・クラシックスのシリーズは現代語訳がわかりやすいのでありがたいのだが、この本に関しては解説がやや批判的なのが引っかかった。

  • 方丈記:鴨長明:鎌倉時代と、受験の時に暗記した程度で、きっとつまらん内容と思っていた。方丈とは、広さを表す言葉で、都から離れた庵の広さが方丈(四畳半)だったことに因む。現代文の訳が大変わかりやすく、大地震、竜巻、大飢饉のような災害時に見たこと、出世、自己顕示などの欲望などつぶさに描かれているが、現代人の自分が読んでも違和感ないどころか、人々の営みは千年前と大して変わらないことに驚く。読む機会があってよかったと思う。

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