土佐日記(全) ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫 83 ビギナーズ・クラシックス)

著者 :
制作 : 西山秀人 
  • 角川学芸出版
3.76
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本棚登録 : 330
感想 : 27
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  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043574209

作品紹介・あらすじ

平安期の大歌人、紀貫之が侍女になりすまし、帰京の旅をかな文字で綴った紀行文学の名作。国司の任期を終えて京へ戻る船旅は長く苦しい日々の連続であった。土佐の人々に温かく見送られ出発したものの、天候不順で船はなかなか進まない。おまけに楫取はくせ者。海賊にも狙われる。また折にふれ、土佐で亡くした娘を想い悲嘆にくれる。鬱々としながらも歌を詠み合い、ひたすら都を目指す一行の姿が生き生きとよみがえる。

感想・レビュー・書評

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  • ブク友さん達のレビューから読みたくて。初めの方は船旅の様子に短歌という似たような構成で正直だるく感じたが、後半に歌を詠み合う様子や世渡りの愚痴と子の喪失という裏テーマと共に紀貫之の短歌伝播への気概を感じた。読めて嬉しい。

    • 張飛さん
      111108、読んでくれてありがとう!

      俺も前半は読んでいてなかなか旅が進まないから、本当に京までたどり着くんだろうか、と少し不安になった...
      111108、読んでくれてありがとう!

      俺も前半は読んでいてなかなか旅が進まないから、本当に京までたどり着くんだろうか、と少し不安になったよ(笑)

      愛する人(子供)の喪失という多くの人が経験する普遍性のあるテーマが裏テーマになっているからこそ時代を越えてよみつがれているような気がしたぜ。
      2023/06/30
    • 111108さん
      張飛さん、コメントありがとうございます♪
      そして産経歌壇掲載おめでとうございます!

      張飛さんの小島ゆかりさん『雪麻呂』レビュー読みました。...
      張飛さん、コメントありがとうございます♪
      そして産経歌壇掲載おめでとうございます!

      張飛さんの小島ゆかりさん『雪麻呂』レビュー読みました。コメント寄せてる皆さんにちょっと乗り遅れましたがブログも見てきましたよ!

      この解説着きの土佐日記を読んだら、紀貫之の仕事での不遇や親しい者の喪失感などは現在私達の身の回りでもある事だと思うと、張飛さんの詠まれた歌のように千年前と繋がっているなぁと実感しました。
      読むきっかけを作ってもらいありがとうございます♪
      2023/06/30
    • 張飛さん
      111108、ブログ読んでくれてありがとう!

      俺が短歌にこめた思いは111108が言ってくれたそのままで、千年前も今も人間の悲しみとか喜び...
      111108、ブログ読んでくれてありがとう!

      俺が短歌にこめた思いは111108が言ってくれたそのままで、千年前も今も人間の悲しみとか喜びというものはあまり変わってなくて、だからこそいい歌とか本は時代を越えて心に響くんだなあ。

      こちらこそ、時間を作って読んでくれてありがとう!
      2023/06/30
  • ほむほむ短歌会の皆で鑑賞した紀貫之特集の番組で紹介された土佐日記。読まなくちゃとしばらく積読状態でした、なんとか読了。

    四国の高知から任期を終えてあとの京の都へ帰るまでの、想像を絶する船での移動旅日記(約五十五日間、ある年の十二月二十一日から二月十六日)。
    現代訳、原文、解説、時々コラムの構成なので比較的読みやすい。付録に和歌歌謡初句索引、巻末に旅程地図がありそちらをたどりながら道中移動を体感できる。
    コラム欄を抜粋。「歌集」でなく「家集」個人の歌を集めた私的な歌集のこと、歌人の家に代々伝わる父祖の歌集という意識が強かったとのこと。歌合とは紅白歌合戦のように二チームに分かれて和歌の優劣を競う文学的遊戯で、チーム名は赤白でなく左右で一首ずつ歌を出し合い勝負を競う。古典文学は、書き写して転写を重ねて残され、自筆本はほぼない状態で読み違いや間違いだらけの写本の可能性もあるとのこと。解説によると、著名は実は『土左日記』らしい。
    特に好きな歌を抜粋。
    池に住む住人からの贈り物と一緒に添えられた和歌
    <浅茅生の野辺にしあれば水もなき池に摘みつる若菜なりけり>
    別れをしのぶ幼子が詠んだ歌
    <行く人もとまるも袖の涙川汀のみこそ濡れまさりけれ>
    風も波もやまず二十五日以上も停泊して焦る様子を詠う 波も雪に見えるくらい途方に暮れている様子
    <霜だにも置かぬかたぞといふなれど波の中には雪ぞ降りける>
    海賊の噂を聞きつつ船を出すことになった嬉しさを詠う
    <追ひ風の吹きぬる時は行く船の帆手うちてこそうれしかりけれ>
    梶取の無茶ぶりな要求に呆れている様子 大事な鏡を投げ入れたら海が穏やかになったらしい
    <ちはやぶる神の心を荒るる海に鏡を入れてかつ見つるかな>
    無事に京に入り桂川を見てしんみり帰京の嬉しさに浸っている様子
    <ひさかたの月に生ひたる桂川底なる影も変はらざりけり>

    • 張飛さん
      ベルガモット、早速読んでくれてありがとう!

      ひさかたの月の和歌も、ベルガモットが「おもろまち」で心情を効果的に表現したように「桂川」という...
      ベルガモット、早速読んでくれてありがとう!

      ひさかたの月の和歌も、ベルガモットが「おもろまち」で心情を効果的に表現したように「桂川」という地名をうまく使っていて、とても勉強になるし、嬉しさがとても伝わってくる気がするぜ!

      これからも好きな和歌を中心に何度も読み返したいと思う。
      2023/06/10
    • ☆ベルガモット☆さん
      張飛さん、おはようございます!コメントありがとうございます!

      こちらこそ、張飛さんのレビューで読まなくちゃスイッチが入りました。
      地...
      張飛さん、おはようございます!コメントありがとうございます!

      こちらこそ、張飛さんのレビューで読まなくちゃスイッチが入りました。
      地名を詠みこむことで具体性や連想が湧きやすくなるし、感情もこめられて伝わるものがある気がします♪
      1,000年以上の和歌がこのように味わえるのは贅沢ですなっ
      私も好きな和歌を中心に本歌取りとかできるようにしたいなとも思います。
      2023/06/11
  • 平安時代の大歌人、紀貫之が女性になりすまして土佐から京の自宅を目指す旅を描いた日記文学の名作だ。

    編者の「はじめに」を引用すると“笑いあり、涙あり、スリルあり、そして作品全編にただよう水の匂い。それが『土佐日記』の魅力”

    時にはデーブ・スペクターにも負けないようなダジャレを繰り出し、紀貫之の堅いイメージがいい意味で崩れた。

    また、この日記には様々な登場人物が詠む五十八首の和歌が出てきて和歌入門書としての側面もある。一番好きなのはこの和歌。

    棹させど 底ひも知らぬ わたつみの 深き心を 君に見るかな
    (棹をさして知ろうとしても測り知れない大海のように、深いご厚意をあなた方には感じますよ)

    土佐を去る紀貫之との別れを惜しみ、見送りに来てくれた人たちへ送った紀貫之の和歌だ。きっと貫之は関羽のように義理人情に厚い男だったのだろう。

    • 張飛さん
      ベルガモット、俺の短歌を日常が生き生きと感じると言ってくれてありがとう!ちょっとした気づきとか、ほんの少しの感動とか自分の心が少しでも動いた...
      ベルガモット、俺の短歌を日常が生き生きと感じると言ってくれてありがとう!ちょっとした気づきとか、ほんの少しの感動とか自分の心が少しでも動いたことも短歌にすればいいと、はじめて読んだ短歌の入門書に書いてあったから、そのことを忘れないようにしたいと思ってる!特に短歌がなかなか思い浮かばない時とか。

      111108、発想の転換と評価してくれてありがとう!俺自身はあまり発想が柔軟じゃねえから好きな歌集などを読んで発想のヒントをもらうようにしている。今度は夏あたりに、観光ガイドに載ってないようなマニアックなところに行って旅日記を書きたい!
      2023/05/30
    • 傍らに珈琲を。さん
      張飛さん、こんにちは!
      いいね、を有難う御座います。
      かなりのご無沙汰になってしまいました。

      土佐日記は紀貫之が女性のふりをして…と遥か昔...
      張飛さん、こんにちは!
      いいね、を有難う御座います。
      かなりのご無沙汰になってしまいました。

      土佐日記は紀貫之が女性のふりをして…と遥か昔に習ったくらいで未読でした。

      「棹」と言われると、どうしても漱石の草枕「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。」の方が浮かんでしまいます。
      未読の土佐日記より、自宅本棚にある草枕の方が身近なせいかもしれません。
      土佐日記では棹を用いて、相手の深い心を棹などでは到底測り知れないと表現する事で、同時に、
      こちらの感謝の気持ちの深さも伝えていますよね。
      一方草枕では、理知的に振る舞いすぎると嫌味になるし、かといって情深くても足元を掬われて流されてしまうと、真逆とも取れるようなことを述べています。

      どちらも素晴らしい表現だと思いますし、
      棹をさすという、時代を超えてのキーアイテムの一致や、
      意味合いの相違など、
      やっぱり文学って面白いな~と思うのです。

      張飛さん、数々の短歌掲載があったのですね。
      おめでとうございます!
      今のお仕事も続けられながら、いつか歌集も出せたりしたら素敵ですね♪

      本棚情報に記載した通り、こちらも徐々に落ち着いて参りましたので、また読書生活再開です。
      少しずつですが、また宜しくお願いします。
      2023/06/04
    • 張飛さん
      傍らに珈琲を。、久しぶり!元気そうで良かったぜ!

      草枕は読んだことがなかったんだが、棹を使ったそんな表現があったとは勉強になったよ!人心の...
      傍らに珈琲を。、久しぶり!元気そうで良かったぜ!

      草枕は読んだことがなかったんだが、棹を使ったそんな表現があったとは勉強になったよ!人心の機微を鋭く表現してる凄くいい表現だなあ。

      棹させど、の和歌を読むとサン=テグジュペリの『人間の土地』の「真の贅沢というものは、ただ一つしかない。それは、人間関係の贅沢だ」という言葉も思い出したぜ!

      短歌掲載のお祝いの言葉ありがとう!歌集を出すのはまだまだ夢のまた夢だが、出せたら最高だなあ。

      こちらこそ、これからもまたよろしく!
      2023/06/04
  • 教科書に載ってて存在は知ってるけど内容はよく分からないから読んでみたいシリーズその1。
    せっかちさんには向かなそう。土佐から帰京する船旅の、日記の体の文学だそう。でも船が悪天候やらなんやらかんやらで、遅々として進まない。まだ同じ場所で停泊しなければいけない、そんな船上の人たちの不満や不安が伝染するようで、あーもう早く!と思ってしまう。
    読者は作者が本当は男だと分かっている前提で女性のフリして女もしてみんとてするなりと書いていたらしい。一種のギャグのようだけど、当時からそういうのってあったんだなあと、平安時代がちょっと身近に思った。
    紀貫之さんは和歌の名手のようで、至る所で上手かったり下手だったりする歌が散りばめられている。文学のミュージカルみたい。

  • 私はこのビギナーズクラシックスシリーズをすごく信頼しています。
    かなり噛み砕いて解説してくれているので古典初心者にはありがたい…!このシリーズはとっつきやすくなる!入門編にぴったり。
    ただし、これだけを読んで原作を読んだ気になるのはやや気が早い感じがする。これより堅めの解説や原文を読んで、やっと読んだと納得できると言える。と、思う。
    コラムの解説も、痒いところに手が届く。現代に繋がる例を挙げてくれたりして理解がしやすい。

    まだ読み途中

  • 古文はさっぱり分からないので、主に現代語訳されている部分を読んでみた。
    モダンな感じの訳で、読みにくい感じはしなかった。所々に入るコラムも、知識に乏しい僕には嬉しかったし面白かった。
    大体の内容を押さえて古典の雰囲気を楽しむには良書だと思う。ばりばり古典を読める人には物足りないかも。

  • 平安中期に描かれた航海の日記。ひらがなを用いた新しい文学。日記の中では、早く都に戻りたいとの思いと、戻れないもどかしさが鮮明に描かれている。また、土佐国で亡くした娘への追慕の念が多く語られており、これは『土佐日記』そのものの主題であるともいわれている。
    特に、海が荒れ神様に奉納させるシーンが印象的。いつの時代にもずる賢い人はいるんだなぁ。

  • 「古典を難しく感じるのは、時代背景が分からないと作品の内容が理解できないところにある。ビギナーズ・クラシックスシリーズでは古典の原文→その現代語訳→さらにその部分の解説という構成になっているので、当時の風習などを理解しつつ、原文の雰囲気を味わいながら古典に親しむことが出来る。」
    (大居雄一『身になる読書術』の紹介より。

  • 空を漕ぐ船
    影見れば 波の底なる ひさかたの 空漕ぎわたる 我ぞわびしき (水に映る月影を見ると、波の底に大空が映っているが、その空を漕いで行く私は、何とちっぽけで頼りない存在なのか)

    廬山寺 ろざんじ
    京都にあるお寺。紫式部の邸宅跡と言われている。

    昔の旅行は本当に大変だ。海賊の心配をしたり、天候のために何日も足止めされたり…

    「わだの泊の別れの所」での段で、在原業平の名前が出てきて驚いた。
    故在原業平だって。死んでる…
    在原業平は平安前期の人で、紀貫之は平安前期から中期にかけての人。
    それに紀貫之が前の世の優れた歌人たちを六歌仙と名付けたのだから、同じ時代の人ではないというのは、考えてみれば当然だった。

    さらに言えば、在原業平の北の方は紀一族の女性だったか。紀貫之にとっては名高い親戚という位置づけだったのかな?

    人はなぜ歌を詠むのか?
    「思ふことに堪へぬ時のわざ」

    土佐の国から京まで、今の高知県から京都までか。
    紀貫之一行が京にたどり着いた章では、一緒に帰京したかのようにほっとした。55日間の冬の旅だ。

  • 停泊続きの航海のなか、人間模様を描く。
    帰宅後、亡き子を偲んで詠んだ歌。

    「見し人の 松の千歳に 見ましかば 遠く悲しき 別れせましや」
    (亡くなった娘のことを、千年の齢を保つという松のように見ていたなら、永遠の悲しい別れをしたことだろうか。そうならなかっただろうよ)

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