大鏡 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)

制作 : 武田友宏 
  • 角川学芸出版
3.54
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本棚登録 : 175
レビュー : 16
  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043574247

作品紹介・あらすじ

老爺二人が若侍相手に語る、道長の栄華に至るまでの藤原氏一七六年間の歴史物語。華やかな王朝の裏の権力闘争の実態や、都人たちの興味津津の話題が満載。『枕草子』『源氏物語』への理解も深まる最適な入門書。

感想・レビュー・書評

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  • 平安という時代、そして『枕草子』や『源氏物語』に興味を持ち出してから、あちらこちらで参考文献として『大鏡』を目にする機会が増えました。
    『大鏡』ってどんなお話だろう。物語系、それとも、史実系かな。恥ずかしながら全く知識がありません。だけどそんなわたしにも、ちゃーんと強い味方がいるのですよ。じゃじゃーん、「ビギナーズ・クラシックス日本の古典」です。古典を楽しく読むために最適な入門書シリーズ、今回もお世話になりました。

    『大鏡』とは、「時の最高権力者である藤原道長の栄華を讃える目的があったといわれ、そこに至るまでの政界の動向、および個々の政治家の言動を、ありのままにえぐりだして、人々の前に提供されたもの」なのです。
    なるほど。だから一条天皇の中宮・定子の私的女房として仕えた清少納言や、藤原道長の要請で宮中に上がり、中宮・彰子の家庭教師も務めた紫式部のことを知ろうとすると、『大鏡』が参考になるわけね。

    「国家の機密情報や、政治家の我欲にまみれたスキャンダルなど、政界の内部告発の書」となっている『大鏡』は、お寺に集まった人々(庶民)が、老翁・大宅世継(なんと190歳!)から歴史の講釈を拝聴する形をとっています。
    当時のお寺は地域最大のコミュニティ。人々はここに集まっては、さまざまな情報交換をしました。もちろん、そこには政治・経済に関する情報もありました。
    要するに、『大鏡』は「庶民のために庶民の目線で書かれた」ものなのです。
    意外と貴族と庶民の垣根って低かったのね。ていうか、そんなゴシップネタまで提供しちゃっていいのかしら。

    そうそう、『大鏡』の語りの場所となったお寺は、雲林院の菩提講。雲林院は桜・紅葉の名所として観光スポットでもあったのですって。

    『大鏡』には、『枕草子』に登場する人物たちも姿を見せます。思えば一条天皇と定子の悲恋をはじめ、この時代もスキャンダラスでありました。
    宮中随一の嫌われ者である藤原道兼に騙されて、出家させられた花山天皇の話では、世継翁は道兼が嘘泣きして天皇を騙したと徹底的にたたきます。そんな話を聞けば庶民の道兼に対する評判も芳しくはなかったでしょうね。道長の兄なのにね。わたしはその際に、天皇の出家を予知した安倍晴明の逸話が、なんだか面白くて好きなんです。
    あ、とっても気になる貴公子藤原行成さまも登場しますね。行成は一条天皇や道長から深く信頼され、清少納言のお気に入りでもありました。行成と幼き後一条天皇とのやり取りの話を通じて、彼の有能さが庶民に紹介されます。こちらは道兼とは反対に人気はうなぎ登りでしょうか。
    定子の兄、藤原伊周も道長のライバルとして登場しますが、関白争いも弓射も賭け双六も、こてんぱんにされちゃいます。伊周、わたしは嫌いじゃないんですけどね。道長とは反対に運が掴めない人だったように思います。
    また『源氏物語』の桐壺更衣に対するいじめ事件に通じる、村上天皇の皇后・安子による芳子に対しての嫌がらせや恐妻ぶり。こんなことまで、庶民には筒抜けだったのね。もう誰も信じられなくなりそう、恐ろしいです……
    そういえば、かの華やかな男性遍歴で有名な和泉式部の敦道親王との恋愛エピソードもありました。いつの世も皇族のスキャンダルって、世間では気になる話題の上位にはいるのでしょうか。

    さて藤原道長といえば、
    「この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば」
    の和歌が有名で、傲慢だとか自分の娘を天皇の后にして出世の足掛かりにしたとか、貴族のなかでもひときわ大きな権力をにぎっていたイメージがあります。現に娘の彰子は自分の子である後一条天皇の即位に対して、ある事情で道長に複雑な感情を抱いたりもしていました。
    ただ道長のそんな面が、彼の全てではなかったと思うのですよね。
    教養のある紫式部を目にかけたり、清少納言からもかっこいいなぁと思われていたらしいのです。決して女性を蔑ろにするような人だったとは思えないのですが、どうでしょう。女性陣は宮中にあがる男性陣をよく見てると思うんですよ。上っ面だけの人間って見抜かれるはず。道長って、そういう男性じゃなかったと思うんですよね。腹立たしい面もあるけれど、やっぱり運も人も惹き付けるものがあったのだと思います。
    わたしは、夢枕獏『陰陽師』の道長像(フィクションだけど)が好きなので、道長を信じたいのですが……甘いですかね。

    『大鏡』は、道長の栄華を讃えることが目的だから、彼の豪胆、豪傑とか優秀な面が押し出され、また男たちの熾烈な権力争いが繰り広げられる、大袈裟に言っちゃうと生きるか死ぬかの世界観なのかなと思います。
    そんな世界を生き抜いてきた道長が人気なのだと思いますが、わたしは『枕草子』や『紫式部日記』に出てくる道長の方に魅力を感じちゃうのですよ。『大鏡』でも、「え、あの道長さまが!」というような面も見たかったですね。ほら、ギャップ萌えというか、そういうところにファンがついたりしませんか 笑
    でも、何もかもさらけ出すのはダメです。だってカリスマ性がなくなるから。ギャップはちょっとがいいのですよ。
    ……てか、注文多っ!レビュー長っ!だよっ!!

    • goya626さん
      源氏物語を書く紙は、道長からもらうしかなかったようですよ。普通の人は紙など豊富に手に入るわけがなかったでしょうから。
      源氏物語を書く紙は、道長からもらうしかなかったようですよ。普通の人は紙など豊富に手に入るわけがなかったでしょうから。
      2020/12/18
    • 地球っこさん
      goya626さん、こんばんは。

      道長が源氏物語を書くための大事な支援者となると、紫式部にとっては蔑ろにすることが出来ない相手ですね。...
      goya626さん、こんばんは。

      道長が源氏物語を書くための大事な支援者となると、紫式部にとっては蔑ろにすることが出来ない相手ですね。
      ふむ。そうなると、ふたりの間柄は……気になります(*>∀<*)

      これからも、この辺りのことアンテナを張っておきたいと思います。
      ありがとうございました♪
      2020/12/18
    • goya626さん
      紫式部の知性は魅力的だったでしょうね。
      紫式部の知性は魅力的だったでしょうね。
      2020/12/18
  • 「大鏡」の中でも重要なエピソードを分かりやすくまとめたもの。年表や地図などの資料が充実している。菅原道真のエピソードが読みたくて手に取ったが、紹介されているエピソードはいずれも面白かった。

  • 未感想

  • ある程度まとめて読んだのは久しぶりだったけど、この本は古典の中でもかなり好きな本です。

  • 大宅世継と、夏山繁樹という二人の語り手についての解説から始まる。
    世継の名前はいかにもな感じがしていたけれど、皇統を語る役回りであり、光孝天皇后斑子女王に仕えていた設定もそのことと関わっているという説明に納得。
    夏山繁樹は、歌語「夏山の繁き」からきている、その時々の繁栄を表す名であり、ゆえに藤原忠平に仕えていた設定であるというのは、本書で初めて知った。
    雉がご馳走であったことの解説が出てきて、時康親王(のちの光孝天皇)が、配膳係が主賓の膳に雉足がなく、親王の膳からとっさに移すというミスを隠したエピソードがよく理解できた。
    望むらくは、もっと近い箇所で解説が出ていたら、と思う。

    せっかく解説入りの入門書なら、解説が面白いものがいい。

  • 14代にわたる王朝を軸に、藤原氏の繁栄と権力の話をまとめた話。
    主に藤原道長の繁栄の話。
    大寺院の法会で、190歳と180歳の老人が若侍たちに昔話をする方式で語られている。
    筆者は恐らく乳母レベルの女房ではないかと言われている。

  • 菅原道真の話が印象的でした。無実の罪で流罪になり太宰府で亡くなる。その後、道真が雷神となり天皇の清涼殿に落雷させるとはびっくりです。
    あとは、この頃の鳥と言えば雉であった。雉は鷹狩りで獲るのが普通であったようです。

  • かなり端折っている感じ。お手軽に内容を把握できる。
    概ね摂関政治とかそういった話。

  • (2014.01.09読了)(2014.01.04借入)
    【日本の古典】
    「私の百人一首」白洲正子著、を読んでいたら『大鏡』がたびたび引用されるので、この際読んでしまおうと、借りてきました。
    本の内容については、「解説」に述べてありますので、以下に拝借しましょう。
    「内容は、文徳天皇の嘉祥三年(八五〇)から後一条天皇の万寿二年(一〇二五)に至る十四代、百七十六年間の藤原摂関時代の歴史を論評している。とくに全盛期の道長に焦点を合わせ、彼が栄華を極めるまでの過程―皇室との縁戚づくり、他氏の排斥などを、老翁の対話形式の中に、興味深い逸話をふんだんに盛り込んで語る。」(244頁)
    『大鏡』は、紀伝体にならって五部立ての構成をとっている。(244頁)
    一、「序」老翁たちが登場し、歴史講釈の目的を明らかにする
    二、「帝記」歴代天皇の事績を語りながら、藤原北家が皇室と縁戚を結び、政権を掌握する経緯を語る
    三、「大臣列伝」他氏および同族を排し、骨肉の闘いに勝利して、最高の権勢に輝く道長像、およびそこに至るまでの先祖の大臣たちの行跡を語る
    四、「藤原氏の物語」極楽浄土の再現―道長の法成寺造営が讃えられる
    五、「雑々物語(昔物語)」朝廷の秘話

    この本には、『大鏡』の全文が収録されているわけではありません。全体を読みたい方は、他の本に当たってください。現代語訳、原文、補足説明、という構成である程度のまとまりで、区切ってくり返しているので読み易いのではないでしょうか。
    藤原道長の時代は、紫式部や清少納言の時代でもあるので、百人一首の歌詠みたちも多数登場しますので、「私の百人一首」に引用されるのも、もっともなことと納得しました。

    【目次】
    はじめに
    『大鏡』上
    雲林院の菩提講―序
    策謀による天皇の出家―花山天皇
    見えない御髪を撫でる天皇―三条天皇
    政治の真実を伝える―『大鏡』の構想
    光孝天皇即位の秘話―太政大臣基経
    菅原道真公の悲劇―左大臣時平
    天皇の御威光を政治利用する大和魂―左大臣時平
    能書の佐理、神託により額を書いて奉納する―太政大臣実頼
    才人の公任、大井川逍遥で和歌の船を選ぶ《三船の才》―太政大臣頼忠
    美貌と美髪の女御芳子の華やかな御寵愛―左大臣師尹
    『大鏡』中
    村上天皇の皇后安子の悋気と兄弟思い―右大臣師輔
    師輔の吉夢、夢解きを誤って幸運を逃す―右大臣師輔
    多才の行成、幼い天皇に独楽を献上、御心に適う―太政大臣伊尹
    兼通、死に臨んで除目を強行、兼家を左遷する―太政大臣兼通
    兼家、占いのよく当たる打ち伏しの巫女に膝枕させる―太政大臣兼家
    兼家、妻(道綱の母)に閉め出されて歌を返す―太政大臣兼家
    上戸の道隆、酒友の名を呼びながら酒害に死す―内大臣道隆
    老練の道長、政敵伊周を双六勝負で翻弄する―内大臣道隆
    隆家の大和魂、外敵を撃退、戦後を円滑に処理する―内大臣道隆
    道兼、関白職を譲らなかった父兼家の供養を拒む―右大臣道兼
    『大鏡』下
    顕信の乳母、出家の前触れに気づかず絶望する―太政大臣道長
    道長の栄華を実現させた妻と娘たち―太政大臣道長
    道長、胆力をもって兄弟・又従妹を圧する―太政大臣道長
    道長、兄道隆邸で甥の伊周と競射、完勝する―太政大臣道長
    道長、姉詮子の工作により内覧の宣旨を受ける―太政大臣道長
    翁たち、庶民の生活を守る道長政治を絶賛する―藤原氏の物語
    世継、理解しながら妻の出家願望に落ち込む―藤原氏の物語
    世継、一品の宮禎子が国母となられる夢を見る―藤原氏の物語
    繁樹、醍醐天皇の慈愛に富むお人柄を讃える―雑々物語
    繁樹、貫之の娘から梅の木を取り上げる《鶯宿梅》―雑々物語
    兼家、即位を妨げる怪異を無視、式典を強行する―雑々物語
    醍醐天皇、貫之・躬恒らを重用、『古今集』を編む―雑々物語
    世継・繁樹たちの姿、説教中の騒ぎに消える―雑々物語
    一品の宮禎子の立后、世継の吉夢が実現する―二の舞の翁の物語
    解説
    付録

    ●闇(182頁)
    闇は、ほんらい「止み」であり、あらゆる活動が停止する、いや、させられる空間であり、いかなる微光も存在しない、闇が恐ろしいのは、目に見えないからだけでなく、光を拒絶する別の生命体を感知するからである。
    ●四鏡(213頁)
    『大鏡』850年~1025年
    『今鏡』1025年~1170年
    『水鏡』神武天皇~仁明天皇
    『増鏡』1180年~1333年
    ●肉食(220頁)
    六七五年、天武天皇は、詔で、牛・馬・犬・猿・鶏の五畜の肉食を禁じたが、禁ずる必要があるほど一般に食されていたことになる。まして五畜以外の鹿・猪や鳥類は滋養に欠かせない食材だった。

    ☆関連図書(既読)
    「藤原道長」北山茂夫著、岩波新書、1970.09.21
    「私の百人一首」白洲正子著、新潮文庫、2005.01.01
    (2014年1月10日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    大寺院の法会に集まった2人の老人が若侍相手に語る、14代176年間にわたる王朝の藤原氏の歴史物語。華やかな王朝の裏で繰り広げられる道長らのあくなき権力闘争の実態、花山天皇の破天荒な振る舞いや才能豊かな行成の逸話など、平安の都人たちの興味津々の話題が満載。平安という時代や「枕草子」「源氏物語」などの女房文学への理解を深め、古典を一層楽しく読むための最適な入門書。役立つコラムや図版も豊富に収録。

  • 図書館で。このシリーズは読みやすくて良いですね。
    と言う訳で大鏡。昔も今も人が集まる集会場がゴシップ会場となりそこで正しいか間違っているかは置いておいて人々は情報を仕入れてくる。その構図は今も変わらない気がします。(ただ、集会場がネット上という架空空間となりましたが)
    それにしても天皇の権威と言うものがいかに偉大だったか、と言うことが良くわかります。天皇その人が権威を持つのでなく、天皇に権威を持たせるその組織構図が。女子の方が権威ある家に嫁がせる事が出来るので喜ばれた、というのはちょっと面白いなあと思いました。確かに家を継ぐ男子が一人いれば後はたくさんいたら紛争の元になりそうですしね。面白かったです。

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