桜姫 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043585021

作品紹介・あらすじ

十五年前、大物歌舞伎役者の跡取り息子として将来を期待されていた少年・市村音也が幼くして死亡した。音也の妹の笙子は、自分が兄を殺したのではないかという誰にも言えない疑問を抱いて成長したが……。

感想・レビュー・書評

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  • 大好きな「サクリファイス」シリーズを含め、近藤史恵作品は8冊目の読了となりましたが、本書が「歌舞伎」シリーズとの出会い作です。

    主人公は大物歌舞伎役者の娘・笙子、彼女は15年前に跡取り息子として期待されていた兄・音也が突然病死し、その後父のもとに引き取られた愛人の子とされています。

    そんな笙子が苦しめられるのは自ら兄の首を絞め殺す夢を見ること。

    誰も語ろうとしない音也の死。

    本当は自分が兄を殺してしまったのでは...

    そんな苦悩を抱える彼女の前に現れたのが、兄・音也の親友であった若手歌舞伎役者の銀亰。

    2人で音也の死の真相を探るというのが、本作の大筋です。

    そこに大学を中退した後に、養成所を経て梨園に飛び込んだ大部屋役者・瀬川小菊が語り手の一方となり、学生時代からの友人で探偵の今泉文吾の協力を得ながら「伽羅先代萩」に子役として出演していた少年が劇場地下の大道具部屋で遺体となって見つかった事件の謎を追うという2本立てのストーリーとなっています。

    「歌舞伎」シリーズで活躍するようですが、音也の死とは全くつながらない少年の死。

    クロスする訳でもないこの筋書きの必要性が私には本作だけでは見出すことが出来ませんでした。

    ただ音也の死に隠された秘密には驚愕させられ、その上積み分を含めて☆3つの評価。

    「歌舞伎」にはうっすらと興味があったのですが、本作でドハマリとまではいけませんでした。


    内容(「BOOK」データベースより)
    十五年前、大物歌舞伎役者の跡取り息子として将来を期待されていた少年・音也が幼くして死亡した。それ以降、音也の妹・笙子は、自らの手で兄を絞め殺す悪夢を見るようになる。自分が兄を殺したのではないだろうか?誰にも言えない疑惑を抱えて成長した笙子の前に、音也の親友だったという若手歌舞伎役者・中村銀京が現れた。二人は音也の死の真相を探ろうと決意するが―。封印された過去の記憶をめぐる、痛切な恋愛ミステリー。
    著者について
    1969年大阪府生まれ。大阪芸術大学卒。在学中に執筆した『凍える島』で鮎川哲也賞を受賞し、作家デビュー。2007年に刊行された自転車ロードレースを題材にしたミステリー『サクリファイス』が絶賛を浴びる。
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    近藤/史恵
    1969年大阪府生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒業。93年、『凍える島』で第4回鮎川哲也賞を受賞して作家デビュー。以来、こまやかな心理描写を軸にした質の高いミステリー作品を発表し続ける。2007年に刊行した青春ミステリー『サクリファイス』で大ブレイク。08年、同作品で第10回大藪春彦賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • 今泉探偵シリーズ4冊目。今回も梨園が舞台。
    将来有望だが歌舞伎の家系ではない銀京と、誰からも愛されていないと思っている歌舞伎役者を父に持つ笙子。二人が惹かれ合ったのは偶然か必然か…。ハッと息を飲む真実と涙(感涙かな…)の結末だった。
    途中、子役の死亡事件なども挟みつつ、先が気になって読む手を止められず、今回も一気に読み終えた。このシリーズ、章ごとに語り手が交互に出てきて(この本では笙子と小菊)それぞれの展開が気になるので、どんどん読み進めてしまうが、結末が近付くにつれ、読み終わるのが勿体ないと思ってしまうシリーズだ。

    • 九月猫さん
      taaaさん、こんばんは♪

      この本、古いカバーのものを長らく積みっぱなしなのですが、
      シリーズなのですか?!
      知りませんでした(^...
      taaaさん、こんばんは♪

      この本、古いカバーのものを長らく積みっぱなしなのですが、
      シリーズなのですか?!
      知りませんでした(^^;)
      裏表紙のあらすじにはシリーズらしいことを書いていないので、
      てっきり単独のお話だと思っていました。一作目から買ってこなくちゃ!
      後ろのカバー袖の既刊本のところには、
      「散りしかたみに」と「桜姫」しか載っていないのですけれど、
      「桜姫」はシリーズ4作目なのですね。
      taaaさんのレビューのおかげで、シリーズと気付けてよかったです~!
      ありがとうございます。
      2014/03/24
    • taaaさん
      九月猫さん☆

      こんばんは(^-^)
      私も一番最初に2冊目の「ガーデン」を読んで
      シリーズを知ったんですよ~
      「ガーデン」だけ少し...
      九月猫さん☆

      こんばんは(^-^)
      私も一番最初に2冊目の「ガーデン」を読んで
      シリーズを知ったんですよ~
      「ガーデン」だけ少し舞台が違いますが、
      後の4冊は全て梨園が舞台です(〃'▽'〃)
      続きもの~ってわけではありませんが、
      順番に読んだ方が関係性は見えてくるかもです♪
      ちなみに、「ねむりねずみ」「ガーデン」「散りしかたみに」
      「桜姫」「二人道成寺」の順番です(*^^*)

      私はかなり好きなシリーズ♡
      九月猫さんにも気に入っていただけたら嬉しいです。
      2014/03/25
    • 九月猫さん
      taaaさん、こんばんは♪

      おおおっ、いろいろとありがとうございます!
      ぜひ順番に読みます!
      taaaさんのレビューを読んで、
      ...
      taaaさん、こんばんは♪

      おおおっ、いろいろとありがとうございます!
      ぜひ順番に読みます!
      taaaさんのレビューを読んで、
      「近藤さん、梨園が舞台って設定が好きなんだなぁ。うちにあるのも確かそうだよなぁ」と
      思っていたら、まさかその「うちにあるの」もシリーズの一冊だったとは、です(^^;)
      文楽好きなので、同じ演目が多い歌舞伎の世界が舞台で興味津々です。
      taaaさんがかなりお気に入りとお聞きして、ますます楽しみになりました♡
      2014/03/26
  • 真実を知った時の驚きはさほどなかったというか、あ、そういうやつね...という感じだったが、歌舞伎に詳しくない私でも、その雰囲気を楽しめたし、全体としては面白かった。
    性別を2種類しかないものとすること自体は本気で見直す時に来ているだろう。
    この小説では歌舞伎という特殊な世界の話として描かれていたけれども、結局2種類のみの性別に押し込めようとすれば、どこであってもこういった悲劇は起きるのだから。
    子供の性別や能力によって親の愛情が左右されることも多々あるのだろう。
    母親の愛情が深かったことが分かるだけに辛い。
    最後は希望のある終わり方で良かった。

  • 小乃原笙子(おのはら しょうこ)は歌舞伎の家の娘。
    母と兄を失い、大物歌舞伎役者の父とは折り合いが悪く、家を出ている。
    笙子は、15年前に10歳で死亡した兄の音也(おとや)を絞め殺す夢を何度も見る。
    ある日、子供の頃、音也とよく遊んだ、という若手歌舞伎役者・中村銀京(なかむら ぎんけい)が笙子の前に現れ、音也の死に疑問を抱いている、と言った。

    “その子”が歌舞伎にかかわらなかったら、または歌舞伎の家に生まれなかったら、こんな悲劇は起こらなかったのかもしれない。
    離婚をした母親に新しい恋人が出来た“その子”も、生物学的(?)医学的(?)に少し特殊なケースで生まれた“その子”も、話し合いや周囲の理解を得て、幸せに(あるいは普通に)成長して行くこともできたはずだが…

    謎が解けて、意外な理由に驚いたが、笙子視点で読んできて、彼女に冷たく当たっていたように見えていた人たちの秘めてきた苦しみと戸惑いにも気づく。
    笙子と京介が少しでも理解し合い、新しい関係を築けたらいいなと思う。

  • 近藤さんの物語を読むようになってから、歌舞伎にも興味を持つようになった。
    跡継ぎの重要性など、たぶん一般人が考えている以上に大きなことなのだろう。
    だからこそ、跡継ぎを必要とした父親は兄・音也にこだわり続けたのだと思う。
    幼くして亡くなってしまった兄。
    入れ替わるように実の父親のもとに引き取られた妹。
    二人に接点はないはずなのに妹・笙子は兄を殺した夢を見続ける。
    誰にも言えずにずっと悩んできた笙子の前に、兄の死の真相を知りたいという銀京が現れる。
    兄と出会ったことが歌舞伎に興味を持つきっかけになったと言う銀京。
    才能もあり、華もある。
    「大部屋役者で終わる気はない」と言いきる銀京には、それ相応の野心もあったとは思う。
    芸に対する自信もあっただろうし、厳しい稽古にもついていく覚悟もあっただろう。
    銀京というキャラクターがもう少し魅力的だったら…と思ってしまった。
    どことなく上滑りしているような感じが残ってしまって、もっと掘り下げた描写があればと感じてしまった。
    兄の死の真相はあっけないほどあっさりと語られている。
    物語にとって真相は何だったのか?ということよりも、真相を知ってからの笙子の心理描写のほうが細微に語られている。
    歌舞伎という独特の世界での出来事。
    読んでいて引き込まれるところも多く、それだけに妙に浅く感じてしまったことが残念だった。

  • 小菊さんシリーズの3冊目です。
    このキャラクター、いいです。
    登場人物の「役者」って、人間である前に役者、みたいな設定の人が圧倒的に多い中、この人は「まず人間」なのがとても好感持てます。

    またこの話、最後の最後があああっと思わせます。
    これがなくても十分ミステリなのに、まだやるか。
    世の母親って。。。。頭があがりません。

    近藤史恵の文体が好きですー
    薄い本が多いのに中身がみっちりあるのは密度が高いのかな。

    さほど豪華絢爛な言葉を並べ立てるわけでもないのに
    濃度があるところ、ちょこっと皆川博子に近いかな。

  •  探偵今泉文吾の梨園ミステリー。

     15年前死んだ歌舞伎役者の息子をめぐる物語。ミステリーというより、恋愛ものっぽい感じかな。梨園という世界の特殊性が、まるで万華鏡を見ているようなきらびやかさと、不思議さを投げかけてくる。

     死んだ少年の妹が、若手歌舞伎役者に恋をする。
     けれど、その恋は胸が熱くなるようなものではなく、むしろ冴え冴えとして自身も相手もやりきれなさに身もだえするようなものだ。
     
     だから「桜姫」なのだ。
     その若手の歌舞伎役者が演じる演目として出てくる「桜姫」で、特に引用されるわけでもない。むしろ、読み終わった直後はなぜ「桜姫」なのか首をかしげたぐらいだった。

     姫君として生まれながらヤクザな男に恋をして、転落していく「桜姫」
     近藤史恵は作中で「そこにあるのは、女という存在のふてぶてしさだ」と書いている。
     ふてぶてしさだけだろうか。それは、どんな状況になろうと変わらない、変わることのできない、そんな存在なのではないだろうか。

     人は、変わるものだ。
     けれど、ここにあるのはそれを否定しようとあがく人の姿のように感じた。

  • 大物歌舞伎役者の息子が幼くして亡くなった。その妹は自分が兄を絞め殺した夢を何度も見て、本当に自分が殺したんじゃないだろか?と思っていた。歌舞伎の話なのだが、歌舞伎を知らなくてもスラスラ読めた。真相は…そういうことかと思った。

  • 想定していたよりも悲しい終わりじゃなかった
    出てくる人の中に嫌な奴がいなかったのが救い

  • ※実際に読んだのは文庫ではなくて単行本
    歌舞伎界が舞台になっているのが面白かったけど、子どもが絡む話なのでちょっとしんどい面もあった。

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著者プロフィール

1969年大阪府生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒業。1993年『凍える島』で「鮎川哲也賞」を受賞し、デビュー。2008年『サクリファイス』で、「大藪春彦賞」を受賞。「ビストロ・パ・マル」シリーズをはじめ、『おはようおかえり』『たまごの旅人』『夜の向こうの蛹たち』『ときどき旅に出るカフェ』『スーツケースの半分は』『岩窟姫』『三つの名を持つ犬』『ホテル・カイザリン』等、多数発表する。

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