取り扱い注意 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 148
感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043593019

作品紹介・あらすじ

「やっぱり強盗やるか」。僕と、酔助叔父と、そして選ばれたニンフェット・鈴村綾。すべてはロリータから始まり、僕らの物語は、その夏”大いなる一瞬(ル・グラン・モマン)”を迎えた--。

感想・レビュー・書評

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  • とにかくモテる主人公と、ロリコン叔父さんと、クセ強女性陣。相変わらずだが、会話がめちゃくちゃ面白い。ナボコフのロリータを読んでたらもっと面白かったのだろうか。


    皮肉な鮎川さん↓
    「ピアノを弾くために不利な手を持って生まれてきた人間がピアニストをめざす。自分の才能の程度に気づかない人間が、その才能を生かすしかない世界に人生の前半を賭けてしまう。そんな悲劇が世の中にあるだろうか、と僕は彼女の手をちらちら眺めながら考えてみたのだが、それを悲劇と呼ぶならそんなものは世の中にはいくらでも転がっているに違いなかった。」

    クズ〜笑↓
    「むろん彼女に少しでもその気があれば、彼女と寝るのは容易いはずだった。その行為で彼女を幸福にしてやるのも容易いはずだった。たぶん相手が平野美雪なら『いちころ』だろう。でもそれがドミノ倒しの最初の一枚を倒すきっかけになり、ばたばたと倒れつくした先の先で、最後の一枚が取り返しのつかない何かに連結するボタンを押してしまうのではないか、そういった不吉な予感が確かにあった。」

    叔父さんの犯行直前のセリフ↓
    「英雄、何かに追いかけられる夢を見たことがあるだろ、自分が何か、とんでもない罪を犯して逃げ回ってる、そんな夢を見たことがあるだろ、冷や汗かいて、目が覚めて、ああよかった、こっちが現実だったってほっとした覚えがあるだろ、そのほっとした現実が、夜が明けてみると退屈でうんざりだと思ったことはないか、また例の一日が始まる、ゆうべ見た夢のほうがよっぽどはりがあって生きてるって気がした、そう思ったことは一ぺんもないか、おれは今年で 41だ、 41の誕生日まで生きたら全部で何日生きた勘定になるかわかるか、計算してみた、一万と四九七六日だ。 80まで生きたらあと何日生きることになる?  どうだ、あと一万日もいまと同じ人生を続けたいか?  おれはもういい、もう十分だ、おまえもあと十年生きてみればおれの言ってることがわかる、よくもまあって呆れるくらい芸のない強盗やって捕まるやつがいるだろ、もののはずみで郵便局を襲ったみたいなやつが、新聞の記事を調べてみろ、そいつらはみんな 40過ぎの男だ、みんなおれと同じ考えにたどり着いたんだ、ただおれと違ってツキに恵まれないだけでな、いいか、よく聞け、もし万が一、追われる身になったとしても、それは現実と夢が入れ替わるだけの話だ、あのはりのある夢の中で生きてみてもいい、できることなら夢と現実の人生を総取っ替えしてみてもいい、おれは実は前々からそう思ってたんだ」

  • オチというオチなし
    久しぶりに佐藤正午読んだけど、こんな感じの何気ない(読者からしたら何気なくない)日常をうまく切り取る感じの作風だったことを思い出した

  • 実父は野球選手、義姉に性の手ほどきを受け今ではどんな女もメロメロにする性技の持主。エレベーターで乗り合わせただけで惚れられる程のイケメン。青春期に風変わりな叔父に連れられ遊び尽くす。
    叔父はフラフラしてるのに金回りが良く、ロリータ趣味も叶えている。無謀な犯罪も成功し、13歳の美少女と逃避行。
    男の夢を詰め込みましたって話?
    英雄のうんちくとか、軽妙な会話は好きだけどお話か都合良過ぎる…

  • 佐藤正午の名作といえば『Y』や『ジャンプ』があげられると思うけど、『取り扱い注意』も傑作だと思う。ただ知名度は低いけど。佐藤正午の中でもトップクラスに会話が面白く、構成もすごく凝っている。時系列がバラバラになっているので、戸惑うところもあるけど構成の妙に唸らされる。佐藤正午版のロリータとでもいうのだろうか。

  • 「ロリータ」を読めってことか?

  • 女性をとろけさせる能力を持つ主人公。
    さまざまな女性付き合いと
    人生のポイントで現れる叔父の存在。
    解説にある通り、ストーリーを追うだけでは
    佐藤正午の醍醐味は理解できないようだ。
    読み切った時の快感を味わえるよう
    努力が必要。
    再読必須。

  • やはりおもしろい、他の作品も読みたい。
    それに、もう一度、時系列を分かりながら、この作品を一気に読みたい。
    おじさんも女の子も主人公も女もみな、どうしようもないけど魅力的。ちゃんとしてないところが素敵。

  • 佐藤正午節全開。私が感じる佐藤正午節とは、読んでも読まなくても特にこれからの生活に支障はないけれど、読んでいる間だけは確実に時間を潰すことのできる良くも悪くもないリズム。どこかの喫茶店で、心地よいBGMが鳴っていたけど、どんな曲だったのか全く思い出せないような。
    そんな中でも特に本作は、スリリングな展開も、どんでん返しも何もない。駅前で素人のちょっと上手い人が弾き語りをやっているような(翌日にはそのことすら忘れてる)。
    そんな快作を生み出し続ける佐藤正午作品は、いまや直木賞作家作品なのだなぁ、と感慨深いものがあるのです。

  • 登場人物の一人一人が濃厚で、印象深い。だからストーリーに厚みが出るんだろうな。

  • 通勤途中にある図書館の分館は本館と比べて蔵書が古くさながら古書店の趣きを醸し出して…で懐かしさも手伝い借りてきたのが性懲りもなくまた正午さんの20年も前の本。
    それなのについこの間読んだ最新刊の「鳩の撃退法」と内容が全く変わらないのは何故なんだろう?同じ人が描いているのだから当然と言えば当然なのだがその進化の無さに結構笑えたのは事実。いやきっと文壇きっての小説巧者らしい正午さんのことだから進化が無いのではなくそれはきっと最初から高度に完成していたと言うことにしておこう。
    なんにせよこの独りよがりのハードボイルドはクセになるのですよ、はい

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著者プロフィール

1955年長崎県佐世保市生まれ。『永遠の1/2』ですばる文学賞、『鳩の撃退法』で山田風太郎賞受賞。おもな著作に『リボルバー』『Y』『ジャンプ』など。

「2016年 『まるまる、フルーツ おいしい文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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