ハッピーエンドにさよならを (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 943
レビュー : 100
  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043595075

作品紹介・あらすじ

望みどおりの結末なんて、現実ではめったにないと思いませんか? もちろん物語だって……偉才のミステリ作家が仕掛けるブラックユーモアと企みに満ちた奇想天外のアンチ・ハッピーエンドストーリー!

感想・レビュー・書評

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  •  俺はハッピーエンドが好きじゃない。後味が悪くて嫌な余韻が残る話が好きだ。そんな俺のためにあるような短編集だった。

    『おねえちゃん』
     ほぼ女子高生(理奈)のマシンガントーク台詞だけで構成されてるのが面白い。ト書きと理奈以外の登場人物の台詞は最小限。近所のお喋りオバチャン顔負けの息継ぎなしトーク炸裂ともだちに居たらウザイタイプだわ笑
     ドナーの為に子作りの発想はなかった。実際にありそうでリアリティーある。適合確立UPなら1つの方法としてアリかも。でも、生産された子供が成長して事実を知った時、かなりショックで立ち直れないだろうなぁ。

    『サクラチル』
     酒と学歴で崩壊する家族の話。酒で堕落したニート父、東大目指す40年浪人生の息子、身を粉にして働く母親。うーん、マトモなのが母しかないね。男運なさすぎるお母さんが不憫でならない
    ...最後ぶっ殺しちゃうのも無理もない。
     50歳になるまで大学落ち続けたのは置いといて、父を反面教師にして東大を目指す息子の熱意だけは素晴らしい。何十年も落ちて諦めないのはさすがにアホだけど。いい大学を出て安定した就職をする、ダメ親父になりたくないという想いが強かったんだろうな。俺も母を泣かせるダメ親父の元で育ったから、父親のような人だけにはなりたくない、そう思いながら大人になった。

    『天国の兄に一筆啓上』
     3分くらいで読める超短編。短編集の箸休め的存在かな。亡くなった兄貴宛ての手紙形式の話。感動系の話かと思いきや、まあハッピーエンドな訳ないよね。
     完璧なアリバイで兄を殺し、15年の時効を成立させた弟さん天才すぎ。密室の偽装も隙なかったみたいだし素人の業とは思えん。探偵小説の犯人だったら最強だっただろうな。

    『消された15番』
     息子(恵太)の甲子園中継を邪魔されたから、連続殺人犯(中垣晋)を殺そうとする母(紀美恵)。動機が面白い。進展も無いくせに同じことを繰り返すニュースって鬱陶しいもんね。殺人未遂で終わったから良いものの、もし成功してたらかなり後味悪くなっただろうな。そもそも、紀美江が仕事を断って甲子園に行ってたら全て丸く収まってたのに。息子の晴れ舞台の日なんだから仕事なんて断ろうぜ。
     恵太が会いにこなくなった理由が分からない。甲子園に来なかったから、殺人未遂の母親に失望したから、はたまた自殺してるのか、など理由はいくつか考えられる。親子関係は良好だったはずだから、ぴったり会いに来なくなるのは不自然だなー。個人的には、もうこの世にいない説だと思う。
     
    『死面』
     私が実は死んでましたオチが面白い。幸子のデスマスクのおかげで真犯人の富雄を暴けた訳だから、バッドエンドでもあるけどハッピーエンドでもある。
     デスマスクに義眼を入れた祖父母に狂気を感じた。ただでさえ不気味なのに目までギョロギロしてたら怖すぎるっしょ。肝試しでそのデスマスクを使うなんてなかなかの勇気だ。俺じゃビビって手に取れないね。
     
    『防疫』
     度を超えた教育ママの話。行き過ぎたしつけは虐待と紙一重だと思った。教育熱心なママさんよく居るけど、それって自分を投影してるだけだよね。アレしなさいコレしなさい命令ばかりで、子供の気持ちは考えてなさそう。その点ウチの両親は、俺に勉強やら進路やらを押し付けてこなかったので、窮屈なく伸び伸びと育つことが出来たので良かった。
     真智子の教育方針は理解できない。しかし、人は生まれた時から社会人、という考え方は納得できた。社会人に子供も大人も関係ないと思うから。働いてからが社会人なんて誰が決めたんだろう。社会人という言葉、あまり好きじゃない。
     自分の子に殺される前に殺す。妊娠したお腹の子をあっさりと堕ろしちゃう由佳里が怖い。こんな彼女前にしたら逃げちゃうね。何も知らずに由香里にプロポーズした恋人はさぞ後悔してるだろう。
     
    『玉川上死』
     イジメられっ子の復讐劇。冒頭はひたすら川に浮かぶ物体の描写が続いてシュール。死体じゃなくて生きてる高校生だったのビックリ。コメディタッチな導入からいっぺん、殺人事件が起こり操作パートに突入する。
     茂野と沢井のビデオシーンで、秋山がイジメられてるんじゃないかと思った。わざと仲良く見せるのは、イジメられっ子特有のような気がしたから。最近のいじめはパッと見じゃ見抜けないかもね。秋山がイジメられてるのを利用して、茂野たちに復讐するのは痛快。

    『殺人休暇』
     イケメン高身長&金持ちなのにストーカーしちゃう修司が謎。性格さえ良ければモテモテだっただろうに。モノに釣られた理恵も悪いと思う。キリのいいところでバッサリ切ってれば、ズルズル関係続くこともなかろうに。
     ストーカーの撃退方法が面白い。死んだと見せかけて自殺を誘導するのは良いアイデア。最後の敏江の一言が怖い。修司は本当に死んだのか気になる所。彼の真面目っぷりからすると死んだとは思うけど...これで生きてたら怖い。

    『永遠の契り』
     童貞っぽい男×美人。ラブコメが最後のニュースで崩壊。アツアツの2人が本当に熱々になっちゃって可哀想に。女とヤる時は火元に用心せねば...。
     ハヤサカにがっつくキスはキモかったけど、ヤッた後に裸で正座して謝るミツル笑った。ミツルとハヤサカの今後の展開が見てみたかったなー。

    『In the lap of the mother』
     子連れのパチカス母が子供を死なせる話。パチンコ全く興味ないから、子供連れてまで夢中になる理由が分からなかった。子供放置して6時間もぶっ通しってヤバイだろ。

    『尊厳、死』
     最後の1行のどんでん返しに騙された。ホームレス=男性のイメージが強かったから。だとすると中学生たちは女性に暴行したことになるしヒドイな。
     フジエダのおせっかいもウザかった。一見善人に思えるフジエダよりも、あからさまに嫌悪感むき出しの中学生の方がまだマシかも。

  • アンハッピーエンドな短編集

    「おねえちゃん」
    骨髄移植のために生まれたと勘違いした女子高生が両親と姉を殺す

    「サクラチル」
    東大受験に失敗しまくる息子ともう潮時だと感じる母

    「天国の兄に一筆啓上」
    3頁からなる兄にあてた犯罪告白手紙

    「消された15番」
    背番号15の高校球児を劇愛する母がTV中継を中断させた誘拐殺人犯に逆切れする

    「死面」
    開かずの間に保管されていた仮面を被って肝試しで殺される

    「防疫」
    幼稚園のお受験調教を体験していた彼女が子供を産まない理由

    「玉川上死」
    死体のふりして玉川を流れていた男子高生の同級生がその模様を撮影中に殺される

    「殺人休暇」
    OLがストーカー男を殺す

    「永遠の契り」
    憧れの女子を自宅に誘った男子の青春

    「In the lap of the mother」
    パチンコ好きの母が子供を殺す

    「尊厳、死」
    仕事も自殺も面倒なホームレスがホームレス狩りにあいボランティア女性を殺す


    「おねえちゃん」は映画「私の中のあなた」の発展系で面白かった。

  • 「おねえちゃん」
    皮肉なオチだし、巧いと思った。
    さて美保子がどうやって真実を告げるのかということを考えると、彼女には同情を禁じえない。
    アタシにも頼れる叔母がいればなあ、と嘆く気持ちはよーくわかる。
    ただ、オチの部分があまりにも説明的すぎ。
    もっとうまくサラッと書けなかっただろうか。
    並のミステリ作家ならこんなことは要求しない。
    稀代のトリックスターである歌野晶午さんだから言うのだ。

    「サクラチル」
    ミステリという意味では僕はこの作品が一番お気に入り。
    本当に僕は叙述トリックが好きなのだなあ。

    「天国の兄に一筆啓上」
    作家が架空の手紙を書くという設定のアンソロジーにて既読。
    そのアンソロジーのタイトルを覚えていないのはどうしてかと言うと、購入したのではなく、好きな作家のぶんだけ、立ち読みをしたからだ(笑)
    短い中ですっきりとまとめた歌野晶午さんらしい小品。

    「消された15番」
    母親の心情が理解しづらかった。
    息子の一世一代の晴れ舞台(っても代走だけど)をニュースに邪魔されたことには同情するけれど、人を刺さなきゃいけないほど憤るなら、最初っから仕事なんかうっちゃらかして甲子園に行きゃあいいんだ。
    「そんな些細なことで人を刺すのか?」ということがこの短編の眼目であるならば、平凡だしお粗末だと思う。
    ただ、15番はどうして姿を消したのかということに注目するならば、意味深な物語になるのだけれど……それだと伏線が無さすぎって気もするしなあ。

    「死面」
    うーん…なんか平凡すぎ?
    それと、一人称なのに「片波見」という地名を連発するのは不自然じゃないかい?
    たとえば、「あの出来事さえなければ、私は今なお夏が来るたびに片波見を訪ねていただろう」という一文なんかはオチを知ってから読むとヘンだ。
    今なお片波見に居る人間の言葉としては不適切だと思う。
    (ああ、なんか作文の添削してるみたい。小説を読む姿勢としては絶対、間違っているな、これは)

    「防疫」
    これも……ちょっと平凡かなあ。
    お話としては面白いと思うのですよ。
    夫婦の喧嘩の場面なんか、心の中で父親にエールを送りまくって読んだし。
    でも、ずどんと落とされるようなオチじゃなくて、何かそのまんまだなあって。

    「玉川上死」
    「天国の兄に一筆啓上」と同様に、アンソロジーで既読。これはちゃーんと買って読んだ本だからタイトルもわかっているぞ。「川に死体のある風景」だ。

    「殺人休暇」
    人を殺したいと思うことと、人を実際に殺してしまうことは全然違う。もう絶対的に違う。
    それは断言できる。
    そんなことを考えながら最後のページを読んでいたら、オチでちょっと笑わされた。
    思考の迷宮に迷い込んでしまった彼女には申し訳ないけれど、そういう可能性も確かにあるよね。
    自分のことを好きになってもらいたいという願いがなかなか叶わないのと同じように(僕だけ?)、好きになってもらいたくないという願いも叶わないのだから、他人の心っていうのは難しいものですなあ。

    「永遠の契り」
    アンハッピーエンドって言ったって、この短編集のほとんどは「暗転」という感じではないのだ。
    ただでさえ不幸なところに、さらに追い討ちがかかるというヒドイ話ばっかり。
    数少ない例外がこの作品。幸福の絶頂からの暗転。
    さて、どっちが本当に不幸なんだろうか。

    「In the lap if the mother」
    これはたぶん、ほとんどの人が最初の1、2ページでオチが読めただろうし、本当にそのまんまのオチがやってくる。
    まあ、奇抜になりすぎてわけわかんなくなるよりはマシだと思うけれど。

    「尊厳、死」
    衝撃的なオチという意味で言えば、これがナンバーワン。心臓がどくんって鳴るような。
    最後の一行でそれがさらっと書かれているのもお見事。人間の先入観を逆手にとった名作。
    ところで、こういうときに僕がいっつも思うのは、単行本化するときに何とかうまいこと手を入れて、この一行だけ次のページに持っていってくれないかなあってこと。
    ページを開いて、そしてこの一行だけぽつんと書かれていたら、もっと衝撃的だと思いませんか?
    (って誰に同意を求めているんだか)

  • ミステリ要素、サスペンス要素、等等バランス良く高水準で織り込まれていてショート・ショートでも読み応え有り。

  • 面白かった。私は好きです。
    絶対にハッピーエンドにならないと分かってるのに読んで暗い気持ちになる。でもただ暗い気持ちなだけでなく、落ちがあって、軽くえぇーってなります。

  • 記録

  • 11編からなる短編集
    理不尽なバッドエンド集というよりは、因果応報というほどでもないけれど
    共感し辛い登場人物をシニカルに描いていて、悪い意味でなく醒めた気持ちで読み切れる話が多め
    短い話の中にもちょっと仕掛けがあり、時にははっとさせられるものの、
    全体的にはちょっと物足りなかった
    ゾクっとさせられるラストの一言が印象的な「殺人休暇」、公園で暮らすホームレスの話「尊厳、死」あたりが好き

  • おすすめ短編ミステリと言われて読み始めたが、はっきり言ってこれはミステリでは無いと思う。多少それらしき要素のある話もあるがどちらかと言うとホラーの方が雰囲気が近い。この本のせいではないが、ミステリを期待して読みだした分肩透かしを食らってしまった。
    また、内容についても「ハッピーエンド回避」ありきの話という印象になってしまった。後味の悪い話、というのを目指して作られていて、それ以外の仕掛けやメッセージ、何かしらの面白さが私には伝わってこなかった。現実ってこんなものだよねと浸る分にはいいかもしれないが…。正直私には全然合わなかった。

  • タイトルの通り全てがバッドエンドで胸糞悪いような終わり方の話もあったけど全体的に良かった。
    ちょっと怖さもあるけどクセになるような感じで読み出したら止まらなかった。
    他にも読んでみたい。

  • 最初の2本を読んでから、作風が合わないと感じて半年ほど積読していた本。
    なんとなくもう一度読み始めたら、意外と楽しく読めました。

    読了後In the lap of the mother 、死面が強く印象に残りました。

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著者プロフィール

1961年千葉県生まれ。東京農工大学卒。88年『長い家の殺人』でデビュー。2003年に刊行された『葉桜の季節に君を想うということ』が「このミステリーがすごい!」「本格ミステリ・ベスト10」共に第1位、第57回日本推理作家協会賞、第4回本格ミステリ大賞を受賞。10年には『密室殺人ゲーム2.0』で史上初、2度目となる第10回本格ミステリ大賞を受賞。その他の著書に、『世界の終わり、あるいは始まり』『家守』『ずっとあなたが好きでした』等がある。

「2021年 『名探偵は反抗期 舞田ひとみの推理ノート』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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