ハッピーエンドにさよならを (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 138
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043595075

作品紹介・あらすじ

望みどおりの結末なんて、現実ではめったにないと思いませんか? もちろん物語だって……偉才のミステリ作家が仕掛けるブラックユーモアと企みに満ちた奇想天外のアンチ・ハッピーエンドストーリー!

感想・レビュー・書評

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  • 表題名の通り、アンチハッピーエンドな11作品の短編集。

    初読、歌野晶午。
    私が小説読書デビューした際、ミステリ作家を調査していた時に出逢い、入手するもずっと本棚に鎮座し続けていた本作品。約600日の時を経て、ようやく通読に至った。

    サスペンスあり、ミステリあり、ホラーあり、コメディあり。

    総じて皮肉に満ちた物語たちに痛快さを感じた私は悪趣味だろうか。

    どの作品もエグみほどのインパクトはない。どちらかと言えば薄味だ。だからこそリアリティがあって嫌な後味を残している。よって、バッドエンド…よりもアンチハッピーエンドの方がしっくりくる。シュールなのだ。

    しかも、短編の中にショートショートも塗されていて、緩急をつけているところが小賢しいじゃないか。兎角、読者の想像力に委ねる物語の終い方が良い。こういうアプローチは好きだ。中でも個人的に『殺人休暇』『玉川上水』『尊厳、死』は絶品。


    人間の数奇で自堕落に陰惨な側面を垣間見たい方、「うわっ」もしくは「ええっ」と呟きたい方にお勧めしたい一冊である。

    • akodamさん
      奏悟さん、こんばんは。
      「絶望ノート」入手しております^ ^
      かなり分厚いので既にヤられてますが、奏悟さん推しということは内容も濃密ですな。...
      奏悟さん、こんばんは。
      「絶望ノート」入手しております^ ^
      かなり分厚いので既にヤられてますが、奏悟さん推しということは内容も濃密ですな。なんせ「絶望」ですもんね。楽しみです。

      「世界の終わり、あるいは始まり」入手します!
      おススメありがとうございます!
      2022/04/22
    • 奏悟さん
      akodamさん、こんばんは。
      確かに読み始めるまでは、躊躇する分厚さかもですね。
      なんせ「絶望」・・・私の性癖は黒新堂でバレてますね笑

      ...
      akodamさん、こんばんは。
      確かに読み始めるまでは、躊躇する分厚さかもですね。
      なんせ「絶望」・・・私の性癖は黒新堂でバレてますね笑

      ラストで「グフッ」と喉から変な音が出たのはこの本が初めてです( ゚∀゚)ノ
      レビュー楽しみに待っております!
      2022/04/22
    • akodamさん
      黒奏悟さんの喉から異音を発動させた絶望を、私めも体感いたしますわ( ̄▽ ̄)シバシオマチアレ
      黒奏悟さんの喉から異音を発動させた絶望を、私めも体感いたしますわ( ̄▽ ̄)シバシオマチアレ
      2022/04/22
  • 文章一つ一つに意味があり、丁寧に読みたい本。短編集ながら、人間の本質的な部分に迫った内容になっており、考えながら読むので中身がありすぎる。時代が少し古いので「保母」と言う言葉やジェンダーに関する感覚が今では違和感を感じるが、虐待など今も繰り返される問題と向き合い、知らない間に読者の心理が弄ばれ引きずり込まれる。読書というより、自分が当事者として実際に経験したような読後感。各短編の不気味な終わりかたがゾクリとして、それがまた良い。好き。

  • おみごとです!
    表題でおおかたの想像はつくのですが、その期待を裏切らないアンハッピーエンドの11連発。

    あ…と軽いものから、おお!…と周到なものや、嗚呼…とやるせないものまでいろんなイヤミスが盛りだくさん。
    短編集なので、通勤通学にいかがでしょう!と言いたいところですが、1日のスタートにこの世界観に浸ればどんよりすること請け合い。
    「おはよう!」と声をかけてくれた友人や同僚に引き攣った笑顔を見せることになるやもしれません。

    11話もあるのに、読後に各目次を振り返るとどれもストーリーをしっかり思い出せるインパクトある短編集になっていると思います。

    個人的には
    「サクラチル」
    「消された15番」
    「尊厳、死」
    が面白かったです。

    人の心はその人にしか分からない。そこにどんな深い闇が潜んでいるのかは、実は本人にだって分からないから怖いのです。

    今年の4冊目

  •  俺はハッピーエンドが好きじゃない。後味が悪くて嫌な余韻が残る話が好きだ。そんな俺のためにあるような短編集だった。

    『おねえちゃん』
     ほぼ女子高生(理奈)のマシンガントーク台詞だけで構成されてるのが面白い。ト書きと理奈以外の登場人物の台詞は最小限。近所のお喋りオバチャン顔負けの息継ぎなしトーク炸裂ともだちに居たらウザイタイプだわ笑
     ドナーの為に子作りの発想はなかった。実際にありそうでリアリティーある。適合確立UPなら1つの方法としてアリかも。でも、生産された子供が成長して事実を知った時、かなりショックで立ち直れないだろうなぁ。

    『サクラチル』
     酒と学歴で崩壊する家族の話。酒で堕落したニート父、東大目指す40年浪人生の息子、身を粉にして働く母親。うーん、マトモなのが母しかないね。男運なさすぎるお母さんが不憫でならない
    ...最後ぶっ殺しちゃうのも無理もない。
     50歳になるまで大学落ち続けたのは置いといて、父を反面教師にして東大を目指す息子の熱意だけは素晴らしい。何十年も落ちて諦めないのはさすがにアホだけど。いい大学を出て安定した就職をする、ダメ親父になりたくないという想いが強かったんだろうな。俺も母を泣かせるダメ親父の元で育ったから、父親のような人だけにはなりたくない、そう思いながら大人になった。

    『天国の兄に一筆啓上』
     3分くらいで読める超短編。短編集の箸休め的存在かな。亡くなった兄貴宛ての手紙形式の話。感動系の話かと思いきや、まあハッピーエンドな訳ないよね。
     完璧なアリバイで兄を殺し、15年の時効を成立させた弟さん天才すぎ。密室の偽装も隙なかったみたいだし素人の業とは思えん。探偵小説の犯人だったら最強だっただろうな。

    『消された15番』
     息子(恵太)の甲子園中継を邪魔されたから、連続殺人犯(中垣晋)を殺そうとする母(紀美恵)。動機が面白い。進展も無いくせに同じことを繰り返すニュースって鬱陶しいもんね。殺人未遂で終わったから良いものの、もし成功してたらかなり後味悪くなっただろうな。そもそも、紀美江が仕事を断って甲子園に行ってたら全て丸く収まってたのに。息子の晴れ舞台の日なんだから仕事なんて断ろうぜ。
     恵太が会いにこなくなった理由が分からない。甲子園に来なかったから、殺人未遂の母親に失望したから、はたまた自殺してるのか、など理由はいくつか考えられる。親子関係は良好だったはずだから、ぴったり会いに来なくなるのは不自然だなー。個人的には、もうこの世にいない説だと思う。
     
    『死面』
     私が実は死んでましたオチが面白い。幸子のデスマスクのおかげで真犯人の富雄を暴けた訳だから、バッドエンドでもあるけどハッピーエンドでもある。
     デスマスクに義眼を入れた祖父母に狂気を感じた。ただでさえ不気味なのに目までギョロギロしてたら怖すぎるっしょ。肝試しでそのデスマスクを使うなんてなかなかの勇気だ。俺じゃビビって手に取れないね。
     
    『防疫』
     度を超えた教育ママの話。行き過ぎたしつけは虐待と紙一重だと思った。教育熱心なママさんよく居るけど、それって自分を投影してるだけだよね。アレしなさいコレしなさい命令ばかりで、子供の気持ちは考えてなさそう。その点ウチの両親は、俺に勉強やら進路やらを押し付けてこなかったので、窮屈なく伸び伸びと育つことが出来たので良かった。
     真智子の教育方針は理解できない。しかし、人は生まれた時から社会人、という考え方は納得できた。社会人に子供も大人も関係ないと思うから。働いてからが社会人なんて誰が決めたんだろう。社会人という言葉、あまり好きじゃない。
     自分の子に殺される前に殺す。妊娠したお腹の子をあっさりと堕ろしちゃう由佳里が怖い。こんな彼女前にしたら逃げちゃうね。何も知らずに由香里にプロポーズした恋人はさぞ後悔してるだろう。
     
    『玉川上死』
     イジメられっ子の復讐劇。冒頭はひたすら川に浮かぶ物体の描写が続いてシュール。死体じゃなくて生きてる高校生だったのビックリ。コメディタッチな導入からいっぺん、殺人事件が起こり操作パートに突入する。
     茂野と沢井のビデオシーンで、秋山がイジメられてるんじゃないかと思った。わざと仲良く見せるのは、イジメられっ子特有のような気がしたから。最近のいじめはパッと見じゃ見抜けないかもね。秋山がイジメられてるのを利用して、茂野たちに復讐するのは痛快。

    『殺人休暇』
     イケメン高身長&金持ちなのにストーカーしちゃう修司が謎。性格さえ良ければモテモテだっただろうに。モノに釣られた理恵も悪いと思う。キリのいいところでバッサリ切ってれば、ズルズル関係続くこともなかろうに。
     ストーカーの撃退方法が面白い。死んだと見せかけて自殺を誘導するのは良いアイデア。最後の敏江の一言が怖い。修司は本当に死んだのか気になる所。彼の真面目っぷりからすると死んだとは思うけど...これで生きてたら怖い。

    『永遠の契り』
     童貞っぽい男×美人。ラブコメが最後のニュースで崩壊。アツアツの2人が本当に熱々になっちゃって可哀想に。女とヤる時は火元に用心せねば...。
     ハヤサカにがっつくキスはキモかったけど、ヤッた後に裸で正座して謝るミツル笑った。ミツルとハヤサカの今後の展開が見てみたかったなー。

    『In the lap of the mother』
     子連れのパチカス母が子供を死なせる話。パチンコ全く興味ないから、子供連れてまで夢中になる理由が分からなかった。子供放置して6時間もぶっ通しってヤバイだろ。

    『尊厳、死』
     最後の1行のどんでん返しに騙された。ホームレス=男性のイメージが強かったから。だとすると中学生たちは女性に暴行したことになるしヒドイな。
     フジエダのおせっかいもウザかった。一見善人に思えるフジエダよりも、あからさまに嫌悪感むき出しの中学生の方がまだマシかも。

  • 黒い…

    ハッピーエンドがお望みの方は、
    本書には手を出さないでください。

    最初の「おねえちゃん」から
    この時点で相談されても
    自分が美保子だったらと思うと
    絶望感しかない。

    両眼の前を覆った手のひらの
    指の隙間から覗き見する感じですかね。

  • アンハッピーエンドな短編集

    「おねえちゃん」
    骨髄移植のために生まれたと勘違いした女子高生が両親と姉を殺す

    「サクラチル」
    東大受験に失敗しまくる息子ともう潮時だと感じる母

    「天国の兄に一筆啓上」
    3頁からなる兄にあてた犯罪告白手紙

    「消された15番」
    背番号15の高校球児を劇愛する母がTV中継を中断させた誘拐殺人犯に逆切れする

    「死面」
    開かずの間に保管されていた仮面を被って肝試しで殺される

    「防疫」
    幼稚園のお受験調教を体験していた彼女が子供を産まない理由

    「玉川上死」
    死体のふりして玉川を流れていた男子高生の同級生がその模様を撮影中に殺される

    「殺人休暇」
    OLがストーカー男を殺す

    「永遠の契り」
    憧れの女子を自宅に誘った男子の青春

    「In the lap of the mother」
    パチンコ好きの母が子供を殺す

    「尊厳、死」
    仕事も自殺も面倒なホームレスがホームレス狩りにあいボランティア女性を殺す


    「おねえちゃん」は映画「私の中のあなた」の発展系で面白かった。

  • いや、そうはならんやろ。
    ミステリと言うにはオチが強引すぎる…

  • 殺人事件の動機だったり、経緯なりを、当事者が起こるべくして起こったことで、当たり前みたいな論調で淡々と語る系の短編集。理由が、ナンセンスだったり、えっ、そこなん?みたいに、どこか予想をずらされるポイントがあって、倫理的には酷い話だけど、どこかコミカル。質のよいブラックユーモアだな。

  • 良くも悪くも歌野氏らしい作品。後味が悪い短編集。ハッピーエンドだらけの小説にお腹いっぱいの方にはお勧め作品です。

  • 物語をどこで終わらせるかで、それがハッピーエンドなのかバッドエンドなのかが決まると思う。
    この本は、一番悪いタイミングで終わらせた話の集まりだ。

    個人的には「死面」が好きだ。ホラーのような不気味さがあり、ミステリーの要素もあり、最後までゾクっとさせるものがある。死面のビジュアルが色鮮やかに脳裏に浮かぶのも恐ろしい。
    どうしてもこういう本、特に短編集は、最後ばかりが気になってしまって、途中を読み急ぐ傾向がわたしにはあるようだ。あっという間に読んでしまってこれという感想はないが、いくつかの話は本当に面白かった。

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著者プロフィール

1988年『長い家の殺人』でデビュー。2004年『葉桜の季節に君を想うということ』で第57回推理作家協会賞、第4回本格ミステリ大賞をダブル受賞。2010年『密室殺人ゲーム2.0』で第10回本格ミステリ大賞をふたたび受賞。

「2022年 『首切り島の一夜』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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