ぼっけえ、きょうてえ (角川ホラー文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
3.53
  • (252)
  • (441)
  • (675)
  • (101)
  • (26)
本棚登録 : 3429
感想 : 486
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043596010

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 非常に面白くて興奮した。怖さからいったら、「黒い家」よりも怖い。不気味さは「リング」並み。日本ホラー大賞および山本周五郎賞を受賞した作品。
    日本の閉鎖的な村の怪奇な短編集。作者の出身地である岡山が舞台となっていて、方言で語られるのだが、これがなんとも言えず恐ろしく、鳥肌が立ちっぱなしだった。
    表題作は、貧しい村に生まれた女性の人生がいかに悲惨か、読んでいて苦しくなる。他の短編も、どれも非常に構成が巧いと感じた。とにかく、一度手に取ったら止められず、のめりこんであっという間に読み終わった。怖い話が苦手な人は寝る前に読まないほうがいいかもしれない。

  • 本作は言い伝えが強く伝えられている土地を舞台とした部落ホラー(?)である。言い伝えや登場人物の生い立ちが異なる4つの物語で構成されている。

    ※以下ネタバレ注意※

    特に好きだったのは「密告箱」でした。平穏な暮らしに満足ができない男が破滅的な女と出会い、堕ちてゆく。そして、しまいには連れ添っていた女の怨念自体が密告箱となって男を陥れる様は男が根本的に悪いのだが、可哀想でした。他の物語はあまり響かなかったので星3つです。

  • 人の怖さ。おぞましさ。

  • 弘三は概ね今の生活に満足していた。嫌な上司はいるが、衝突もなく、黙々と与えられた仕事をこなして定刻に帰ればいい。家には愛する嫁と子どもがいて過ぎる事もなければ不足することもない。そういう生活を、あの日までは送っていた。

    ***

    長らく積読していた本。随分前に出版された本だが、去年続編が出たので、これが機会に違いないと読んでみる。
    読んでみると、長らく読んでいなかったことが悔やまれるほど面白い本であった。

    どの話が面白いと問われると困るぐらい甲乙つけがたい。

    全編を通して、著者の出身地である岡山が舞台である。時代は現代ではなく明治時代当たり。文明開化の輝かしい時代とは裏腹に、貧しい生活を強いられている農村や、沿岸部の村を舞台としており、どこまでもどこまでも寒く、暗い雰囲気が漂う。
    出てくる多くの人物たちが、現在の生活にあえぎながらもどうにもならないと知り、諦観して生きている。
    灰色の絵を思わせる情景のその最中、スポットライトが当たった登場人物たちが恐ろしいが、それでも妖しく美しいと”読者”に思わせるような出来事の中を過ごしていく。

    登場人物たちの側に立てば、尋常の沙汰でなく、恐ろしい限り、気味の悪い限りの出来事でたまったものではないのだが、それでも鳥肌の立つような色濃い美しさを感じる。

    男女の情が複雑に絡み合い、時には露骨に目の前に現れるのだが、不思議と下品には感じない。ホラーに男女の情念が持ち込まれるとドロドロした雰囲気がまとわりつき辟易するものだが、これはその感情もわかなかった。なぜかただひたすらに、それすら艶やかと感じる。実際目の前で繰り広げられると吐き気を催すほど嫌悪する内容にもかかわらずである。

    肝をつぶすような派手な恐ろしさはないが、現れた恐いものがそっと寄り添っているような恐怖感を覚える。恐怖感を覚えるが狂おしい。私の言葉では表しきれない世界観なので、未読の人はぜひ読んでほしい。

    いつもなら、タイトルを上げて、大体どんな話でという事を述べるのだが、語るなら全部を語りたいという衝動に駆られる。
    全てを語ればネタバレどころではないので、控えたいと思う。

  • 人怖的な話。ホラーという分類で読むと面白くない気がしてますが、女の破滅話として読むと面白いのでは。(私はその分野もあれですが)
    あと、話自体はもう少し短く書ける気がしていて、冗長なのかなと。

  • 白黒の日本映画を観ているような読書感です。対話形式なんだけど、一人語りという珍しい形式で書かれ、そのこちらにしゃべりかけてくる感じが、読み進めていく内にある瞬間にゾッとします。後ろ確認してしまいます。ろうそくの灯りで読んだりしたら、眠れなくなりますね。でも、どこか女の切ない美しい感じも読み取る事ができて、日本女性の奥ゆかしさと、恐ろしさを感じます。失われつつある日本文化を感じる素敵な作品です。

  • 明治時代の岡山の共同体で舞台にした、言葉にすることもできず、虐げられた登場人物たちの情が溢れるように描かれる。作品の中で、コミュニティ(村、社会)を維持していくために犠牲になるなる弱者の姿をみて、これは現在の日本そのまんまじゃないかと思ったな。学校や職場でのいじめ、東京オリンピックでの女性、障害者、性的少数者、外国人など様々な弱者に対する差別問題、コロナ問題、政治的なねじれ、遠い昔の話じゃない。

  • 話に出てくる女性たちがみな不憫でならない。幽霊や化け物といった類のものよりも、生きている人間の方が恐ろしく感じた。

  •  日本の近年のホラー小説で評判のものをネットで検索してみて、この本を知ったのである。
     1999年に表題作が日本ホラー小説大賞を受賞、書き下ろしの3編の短篇を併録して刊行した本書が、さらに山本周五郎賞を受賞したそうだ。
     これはなかなか優れた作品集だった。
     表題作は悲惨でグロテスクな世界の極限を表出しており、極めて印象が強い。これで文章がもう少し良ければ、非常に優れた文学作品として太鼓判を押すところだった。特定の相手に向かっての語りとして設定された一人称体だが、やたらと改行が多く、あるページなどは短い文が全部改行されており、詩集の中の1項みたいに余白だらけだった。改行しすぎると却って意味が掴みにくい。
     他の3つの短篇ではもう少し「改行」はましであり、特に最後の作品はちょっと文学調の味わいの深い文体となっていて、角川ホラー文庫の読者にはややめんどくさいものと映らないか心配である。ただ、それでもこの文章にはどこかなじみにくいものがあった。
     しかし物語内容は、いずれも非常に印象的だった。明治から昭和初期あたりくらいの岡山を舞台としていて、いかにも日本的な田舎の、土俗性が強く出ていて魅力的だ。その中で展開される物語は、その一場面のイメージが読後にも残すような強さを持っており、これは文学としてアドバンテージが高い。とても良い小説集である。

  • 20年くらい前に「怖い」と有名だった本書。
    ホラーは苦手だが、kindleで安かったので購入。

    岡山を舞台にした怪談短編集。
    幽霊や化け物といった類のものは人間の心が作り出すのだろう。
    あまり怖いとは感じなかった。

    近年は、著書よりご本人のキャラが立っているようだ。

全486件中 21 - 30件を表示

著者プロフィール

岩井志麻子 (いわい・しまこ)

岡山県生まれ。1999年、短編「ぼっけえ、きょうてえ」で第6回日本ホラー小説大賞を受賞。同作を収録した短篇集『ぼっけえ、きょうてえ』で第13回山本周五郎賞を受賞。怪談実話集としての著書に「現代百物語」シリーズ、『忌まわ昔』など。共著に『凶鳴怪談』『凶鳴怪談 呪憶』『女之怪談 実話系ホラーアンソロジー』『怪談五色 死相』など。

「2023年 『実話怪談 恐の家族』 で使われていた紹介文から引用しています。」

岩井志麻子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×