ぼっけえ、きょうてえ (角川ホラー文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043596010

作品紹介・あらすじ

-教えたら旦那さんほんまに寝られんようになる。…この先ずっとな。時は明治。岡山の遊郭で醜い女郎が寝つかれぬ客にぽつり、ぽつりと語り始めた身の上話。残酷で孤独な彼女の人生には、ある秘密が隠されていた…。岡山地方の方言で「とても、怖い」という意の表題作ほか三篇。文学界に新境地を切り拓き、日本ホラー小説大賞、山本周五郎賞を受賞した怪奇文学の新古典。

感想・レビュー・書評

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  • 何かジャケットの女の人と、タイトルに惹かれて…
    「ぼっけぇ、きょうてぇ」って、めっちゃ怖いって意味なんや。
    4編の短編やけど、怖いって言っても、お化けとか、心霊とか言うんと違って、人の狂気とか、残酷なとことかが怖い(−_−;)
    時代も明治とかの農村、とか遊郭、それも貧困半端ない。
    男尊女卑、差別とか、酷い!
    そんなとこにおったら、狂気の一つや二つあるやろ!って思う。
    どこも逃げ場ナシ!何か希望も何もない…
    う〜ん。しんどい…
    こんな時代とかあったんかな?と思いつつ。
    精神的に疲れた〜ハァ…(_ _).。o○

  • 怖く…はないが…、悍ましい。

    色々な意味で勉強になりました……(´•ω•̥`)



    ●ぼっけえ、きょうてえ

    「ぼっけえ、きょうてえ」は、岡山地方の方言で「とても、怖い」という意味らしい。

    全然知らずに読んだので、造語かと思っておりました。
    『ぼぎわんが来る。』のぼぎわんみたいな。

    遊郭の女郎が客に身の上話をするのですが、その内容がぼっけえ、きょうてえんです…:(´◦ω◦`):

    怖いというより、不気味…。

    客が寝付くまでの静かな空気の中、方言で語られるので、余計不気味…。

    女郎は津山出身。

    岡山、津山と聞くと『八つ墓村』の元になった津山事件(津山30人殺し)が思い出される。

    この事件はずっと後の話だが、何だか複雑な気持ちで、不気味さが増す。


    短編集なので、ぼっけえ、きょうてえ話が他に3話収録されている。


    ●密告函

    明治34年、コレラ病が蔓延。
    罹患した事を隠そうとする人々。
    そんな中、岡山市役所に『密告函』が設置される。
    密告された人の家を回り、コレラに罹っているかどうか確認する弘三。
    密告された者の中に「お咲」という名前が目立つ。
    お咲は非常に魅力的な女性なので、恨みや僻みで書かれたのだろうと無視するが…。

    この話も怖くはない。
    面白かった。
    コロナ禍と被り、昔だったらこんな感じになっていたのかな…と、非常に興味深かった。
    女…やりよるね( ≖ᴗ≖​)ニヤッ


    ●あまぞわい

    「そわい」は潮が引いた時にだけ顔を出す浅瀬や岩礁のこと。潮が満ちたら隠れる。
    海女(あま)が生贄のような形で亡くなり「あまぞわい」と呼ばれる。
    ユミは町育ち。
    漁師に嫁ぎ、外見はすっかり変わる。
    何もできないユミは村の女達から爪弾きにされ、夫からの暴力が絶えない日々だったが…。

    こちらも、なんとも悲惨なお話。
    どの話も女は暴力を振るわれたり、犯されたり(´・_・`)
    昔はそれが現実だったんだろうなぁ。と。
    海の女は強いと思った(-_-;)


    ●依って件の如し

    利吉とシズの兄妹は母を亡くし、2人で生活していた。
    シズはまだ幼い。
    利吉は志願兵となり、日清戦争へ。
    シズは、由次一家へ引き取られ、牛小屋で生活する事に。
    戦後いつまでも兄が帰還しない中、シズは牛のような扱いを受ける。

    この話が1番インパクト強かった…(^▽^;)
    結末にびっくり。
    牛と共に育った少女。
    牛が唯一の話し相手……(´;︵;`)


    どの話も真実が織り交ぜてあるのかな。
    目を背けたくなるようなきょうてえ話ばかり…

    昔の日本の様子が伺えました。

    怖くはないが、興味深く、面白かった!!


  • たまに訪れるホラー読みたい病が発病したので前から気になっていたこちらを拝読。
    結果、あまり怖くありませんでしたが、昔祖母から御伽噺を聞いていた時のようなノスタルジックな感覚にはなれたので違った楽しみ方をしました。
    私の親戚が岡山だった事もあり、よく遊びに行っていたのでこのお話の舞台も親近感が湧きました。思い起こせば従妹の家もかなり田舎だったので、確かにこんな不思議な事が起こりそうな空気感ではありました。

    短編集なのでまたそれぞれに感想を書いてみたいと思います。全体的に日清戦争前後辺りのお話のようなのでそれを踏まえてお付き合い頂ければ幸いです。

    【ぼっけえ、きょうてえ】
    最初なんだこのタイトル?!と首を捻りましたが岡山弁で「とても、怖い」と言う意味らしく、遊郭に春を買いに来た客に遊女が自身の怖い身の上話をする、と言うお話。
    当時はよくある話の食いぶちを減らす為と金を稼がせる為に売られて来た彼女ですが、それにしても生い立ちが壮絶すぎて怖い通り越して悲しくなりました。
    岡山弁で語られるので信憑性も増してきて、思わず親戚に忌み地じゃないのか、そこ大丈夫?!と電話しそうになりました。(迷惑)
    水子が出てくると怖いと言うより悲しさが溢れますね。自分がこの客だとしたら最後の遊女の言葉になんて返すかなあ…「だが、断る!!」しかないなあ…

    【密告函】
    個人的に一番好きなお話でした。
    献身的な妻を裏切って怪しい祈祷師の女と不貞を働く男の話なので、これを好きだと公言すると私の人格まで疑われそうですがホラーとしては一番楽しめました。
    伝染病が蔓延して多くの死者を出している岡山県某市。
    まだ医療も発達していない時代なので当然物凄い勢いで蔓延していきます。例に洩れず差別も横行するので、市役所に感染した人を無記名で投函する密告函が設置されます。これを主人公の不貞男、弘三が調査する役目を担うのです。
    嫌でした、この仕事。伝染病以前のお話の蠅がたかっている強烈な家に彼が出向いた時は食べていたポテチをそっと皿に戻しました(読書中のおやつが一番おいしいです)
    その流れで怪しい祈祷師の美女と出会ってしまうのですが、この祈祷師の力なの弘三は怪奇現象に悩まされます。
    これがもし祈祷に使われる怪しい煙のせいだとしたらまた違った方向で怖いのですが、本当に怖いのはダークホース、弘三の妻のトミ。
    どんどん弘三に対しての地味な嫌がらせがエスカレートしていって遂に…
    ラストシーン、良かったなあ。映画でこの終わり方ならそれはもう震えて映画館を後に出来ます。

    【あまぞわい】
    今度は不貞の女が登場します。皆どんだけ浮気すんねんというツッコミも入れたくなりますが、こちらはちゃんとした訳ありです。
    元遊女(作中では酌婦)のユミが漁村の漁師の錦蔵に身受けされて漁村に嫁いで来るのですが、漁師の妻も中々ハードな職業なので当然ユミは馴染めず村八分になってしまいます。
    そのユミを見て錦蔵がユミに暴力を奮うようになってしまうのです。DV>不貞だよね、とユミが思ったかどうかは定かではありませんが、これまた漁村では浮いている村一番の金持ち、網元の息子の恵二郎と良い仲になってしまうのに時間はかかりませんでした。
    結局バレて最後にはこの世のものではない『あまぞわい』に恐ろしい目に合わされてしまうのですが、このあまぞわいは錦蔵が聞いていた伝承とユミが聞いていた伝承が微妙に異なります。要は海で亡くなった海女さんのお化けです。
    全然怖くなさそうな書き方をしましたが、実際はもっとおどろおどろしい情念がこもったスタンド攻撃をして来ますので非常にやっかいです。
    これも怖いと言うよりは悲しかったなあ。皆思うように幸せになれたら良いのに…

    【依って件の如し】
    タイトルかっこよすぎだろ!と思って読み始めたらこれまた悲しい話でした。
    『くだん』とは頭が牛で体が人間のまあ化け物のようなものの事らしいのですが、これまた貧困にあえぐ兄妹が必死に生きている所からお話が始まります。
    妹のシズの母は亡くなっていますが、美人でしたが狐憑きのような奇妙な行動を繰り返した為に、村で公然と行われていた夜這いの対象にもなりませんでした。(津山三十人殺しでもこの件が問題になっていましたが、凄い風習ですね)
    そのせいでシズと兄の利吉も村八分になってしまい、利吉が必死にシズの食い扶持を稼いでいます。
    シズは少し知恵遅れな所があるのですが、覚えている母の面影は何故か真っ黒な牛の頭をした女の姿なのです。これらがとんでもないラストへの伏線です。
    このお話は途中までは不気味な空気を纏った悲しいお話だったのですが、最後「嘘だろ?!」と小さく叫ぶ位の強烈なお話でした。
    兄ちゃん…そりゃあないぜ!!!

    ジョジョ風味満載でお送りしましたが、総括としては切なくておどろおどろしい御伽噺、と言った感じでした。
    間違ってもお子様には聞かせられませんが。

    そして岡山の恐怖は続きます。
    狙った訳ではないのに、この後名探偵のはらわたを拝読し私は再びこの恐怖の地へ足を踏み入れる事となるのです。(東京に続いて失礼すぎる)

    to be continued

    • 1Q84O1さん
      とりあえず、厄介なものはゆーき本さんが担当してくれということで!w
      チャンチャン♪

      お二人共、ハーゲンダッツは任せんしゃい(≧∇≦)b
      とりあえず、厄介なものはゆーき本さんが担当してくれということで!w
      チャンチャン♪

      お二人共、ハーゲンダッツは任せんしゃい(≧∇≦)b
      2023/10/15
    • yukimisakeさん
      「科拳ガチってみた」っていうタイトルのインパクトが凄すぎて笑
      レビュー楽しみにしてます笑

      ラムレーズン美味しいですよね(´﹃`)1Qさんが...
      「科拳ガチってみた」っていうタイトルのインパクトが凄すぎて笑
      レビュー楽しみにしてます笑

      ラムレーズン美味しいですよね(´﹃`)1Qさんがきなこ黒みつも買って下さいますよ( 'ᢦ' )
      2023/10/15
    • ゆーき本さん
      やったぜ(*´﹃`*)♡
      やったぜ(*´﹃`*)♡
      2023/10/15
  • 短編ホラー集。全編岡山弁で綴られている為、意味不明の言葉も多々あり読みづらかったが、それが更に恐怖を増すのか、ゾクゾクッとする場面もありました。どの編も、昔の田舎の暗い雰囲気の情景が浮かびました。全編とも読み終わった後に表題の「とても怖い」…という一言に繋がった感じでした。

  • これ、なんといっても題名がいいですね。岡山県人でないとまず分からないけど、色々想像力をかきたてられます。

    純然たるホラーというより、土俗的で人間の業を描いた短編が四つ。どれも雰囲気は似ており、貧しく因習に縛られながらも必死に生きる女性が描かれている。読んでいてなんとも切なくなるが、日本人のイヤラシしさもよく描かれていると思う。

    こういう作品を読んでいると、岡山が津山三十三人殺しが起きた地で有るのも、横溝正史が傑作を産んだ地の舞台が岡山が多いのもうなづける。

    一度瀬戸内の岡山でなく、北部の岡山をゆっくりおとづれてみたい。

  • 四遍からなるホラー小説。
    「ぼっけぇきょうてぇ」とは「とても怖い」という岡山弁です。遊女の女の昔話から、役所の男とその妻の話、漁師の妻の話、山間に住む少女の話と岡山県の田舎が題材にされています。読めば読むほど背筋がゾッとする話ばかりで、のめり込む様に読み切りました。

    本当に怖いのはあやかしか?それとも人間か?その狭間で揺れ動く人たちの心をとても緻密に表現しています。

    おすすめです。

    「そりゃあ旦那さんの夢じゃ、夢。妾は何にも喋っとらんよ。」

  • タイトルは岡山弁で「とても、怖い」の意味。
    タイトル通りぼっけえきょうてかった。しばらく夜は一人でトイレ行けん。

    化け物や幽霊の怪奇そのものよりも、明治時代の岡山の北の果ての寒村の人間模様がきょうてえ。
    貧困、不作、飢え、迷信や古い因習、男女差別や他所者差別、都会に対する劣等感、濃密過ぎる人間関係、すぐに広がる噂話など、田舎の嫌な側面をこれでもかと半ば悪意を持って見せつけてくる。

    怪談部分はともかく、当時の日本にはこんなダークサイドが本当にあったんだろうな…もしかしたら今でも…と考えるととてもどんよりしてきます。

  • 岡山弁に馴染みがなくて読むのに苦労したが、この方言だからこその魅力があって良い。
    ホラーと言うより、民話の語り部を聞いているような心地よさもあり他の作品も是非読んでみたい。

  • 物語内での女性の扱いがひどく、女性の幽霊が多いのはそうした恨みの強さからなのかなと妙に納得した。

    コレラに関するストーリーは今の世に少し通じるものがあって興味深かった。子どもの頃に親が「幽霊より人間のほうが怖い」と言ってたけど大人になると分かるようになるね。

  • 岡山の山村や漁村での怪談(民話?)をテーマにしたホラー短編集。
    表題作については「ゾンビ屋れい子」というお気に入りのホラー漫画で同じような話を読んだことがありそれほど怖くなかった。
    しかし、どの話も方言で語られるからだろうか、日本特有のじめじめした恐怖が感じられる。
    また、どれも怪奇にあうのは弱い立場の者たち(地位が低かったり、嫌われていたり、虐げられている者)というのがなんだかやるせない。
    現状が苦しいものこそ魔界との境に近いのかもしれない。

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著者プロフィール

岩井志麻子 (いわい・しまこ)

岡山県生まれ。1999年、短編「ぼっけえ、きょうてえ」で第6回日本ホラー小説大賞を受賞。同作を収録した短篇集『ぼっけえ、きょうてえ』で第13回山本周五郎賞を受賞。怪談実話集としての著書に「現代百物語」シリーズ、『忌まわ昔』など。共著に『凶鳴怪談』『凶鳴怪談 呪憶』『女之怪談 実話系ホラーアンソロジー』『怪談五色 死相』など。

「2023年 『実話怪談 恐の家族』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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