文藝百物語 (角川ホラー文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043598014

作品紹介・あらすじ

1997年3月夕刻より、東京・根津の古旅館にて行われた「百物語」怪談会の記録集。井上雅彦、加門七海、菊地秀行、篠田節子、霜島ケイ、竹内義和、田中文雄、森真沙子が語り起こす本当の話。

感想・レビュー・書評

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  • 怪談というのは、人が人に語ってこそ面白くなるんだな、というのがわかる一冊。
    一人が話したお話をつなぐように、別の人がそれと似たお話を思い出して語りだしていく、その流れが堪らない。
    また、メンバーがいわゆる「実話怪談」作家じゃなく、(ホラー作家とはいえ)怪談に対して普通のスタンスな人たちが身近にあった怪異な出来事を語っているところがいいんだよね。
    (約1名「実話怪談」な人もいるがw)

    「実話怪談」というのは、実際にあったお話というよりは、怪談好きの怪談好きによる怪談好きのための怪談みたいなところがあるからw
    お話が怪談好きの価値観でこてこてに化粧されちゃっているから、全部、呪いや祟り話か因縁話になっちゃうんだよね。
    一話くらいならそれもいいんだけど、それが延々続くと、ぶっちゃけ「それってツクってるよね?」って言いたくなるっていうかなんというか(^^ゞ

    以前、百物語会に参加した時、ある怪談師の方がそれとは別の怪談会に参加した時に「幽霊なんて絶対いない」と豪語していた人がその会場の2階でナニカを見たらしく、怯えて逃げるように帰ってしまった、というお話をしていたが。
    そんな風に、とるに足らない怪談でも何十話と聞いていると、人は次第に常識を保つバランスが崩れていって。ないはずのものを見たり、そこまでいかなくとも、怖くて怖くて堪らなくなるっていうのはあるんだと思うのだ。
    もちろん、読者はその場にいなくて、この本を読んでいるだけだから。
    そこまで心が不安定にはならないけど、それでも、その場の雰囲気はそれなりに感じられるように思う。
    その意味で、この本はありそうで、実はなかなかない怪談本になっていると思う。

    そういえば、ブクログで百物語を企画してくれないかなぁー(^^)/

  • 第23話「三角屋敷の怪」が読みたくて購入。が、しかし、期待ほどではなく(得体の知れない不気味さはあったが)。
    ほかの話もたまにゾッとするものはあったけれども、何か違う。……たぶん、怪談なのに文字で読んでいることがあるのかもしれない。もちろん、著名な作家さんたちだから、わかりやすく語ってくれていて、ほかの実話怪談などに比べてストレスもない。けれど、やはりその場の臨場感、室内の暗さ、声のトーン、聞き手の緊張などあってこその百物語なのかなと感じた。

  • 久々の再読。
    好みの話は霜島ケイ「三角屋敷の怪」、竹内義和「鬼伝説の山で」。
    こうゆうなんで?という場所についての話はゾクゾクする。
    いつかは謎に対しての答えをどこかで読んでみたい。
    この百物語の会を映像で見てみたい、もちろん終了後の菊地秀行さんが原稿を広げる所まで収録して欲しい。

  • リアル百物語の完全収録本。
    怪を語れば
    怪を呼ぶ
    (Airportさん)

  •  時は1997年3月17日夕刻。東京根津の路地裏にひっそりとたたずむ古旅館の一室にて、伝奇&ホラー小説の第一線で活躍中の作家八名と製作スタッフによる「百物語」が催された。
     古式ゆかしい儀式に則って「結界」を張り、外界との「通路」となりそうなものは全て排除し、それでも不安を抱く者は各々「お守り」の類を携行し、夜会の幕は開かれた。
     この本は、その「百物語」怪談会の模様をなるべく忠実に再現した、記録物語である――。

     いやー、面白かったです。有名度「AAA+」級の怪談から初めて目にする世にも奇妙な話まで、バラエティに富んでいて最後まで飽きさせませんでした。
     特に各章の扉に書かれている、夜会の最中に起きた様々な出来事は、軽はずみに「百物語」をしてはいけない、と思わせるほどです。

     これを読んでますます、「百物語」を開きたい、と思う人は、なかなかの猛者ですな。
     私は誘われても絶対参加しないぞ。

  • 話者8人で百物語を行う。その聞き語り本。
    百物語による怪異を抑えるために、話者がいる部屋に結界を張る様子に気合を感じます。部屋の四方に塩を置き、絶えずお香を炊くという、念の入れよう。

    話者の中で加門七海さんは話題が豊富で印象に残りました。
    彼女のネタだけで百物語できるのでは?

  • 【目次】
    第一限
    死での身支度/間に合わない!/電話の声/死神の絵/チャルメラの音が/笑い声がついてくる/清滝で日が暮れて/お坊さんが車内を/一つ目の坊主,河童の写真/カマイタチ
    第二限
    追いかけられて/神社の傀儡師/殺された男の霊が/ハッと思うと窓際に/露天風呂の先客/明かりを貸してください/夜中に「おい」/仏像徘徊/嫉妬するマネキン
    第三限
    お婆ちゃんの人形/人形と少女/三角屋敷の怪/踊り廻る犬/鬼伝説の山で/猫を焼く/薔薇のさざめき/ガーベラの精/誕生日の薔薇/お見舞いの薔薇
    第四限
    たんころりん/うばたま/丑の刻参りの女/無駄だよ/看護婦さん,いたいよぉ/よくあることやから/出入りの激しい病室/不思議な子供/ゾッとする病室/三人目
    第五限
    霊安室に呼ばれて/誰かがエレベーターに/エレベータの隅に/オフィスの怪談/放送局の怪談/ああ,やっぱりいた/クローゼットの中に/ベトナム心霊ツアー/起きろ! ガチャッ/軍人の夢
    第六限
    Kは恐怖のK/続・Kは恐怖のK/深夜のホテルで/穿鑿好きな紐/加賀の化銀杏/海辺の宿で/宿坊の一夜/ちょうだい/取り憑かれて/のっぺらぼう
    第七限
    テレビ画面を横切る影/白い胎児の影/心霊写真と少女/全校生徒が合掌して/幽霊トンネルの写真/壁に,顔が/壁の顔をなぞる/現実が小説を模倣する話/窓の割れ目から・奈良のオシラサマの話
    第八限
    追ってくるもの/お稲荷さんの霊威/取り憑かれた姉/悪い家/次の番/足首に蛇が/繰り返す『四谷怪談』/近づく速度/私にも聞かせて/百物語のテープ
    第九限釣りの怪談/夜の奥の院/落とした話/ベッドの下でパタパタパタ/目を開けると/先輩の鳩/鳩の来る窓/証拠を見せてくれ/自分と違う影が/自分の顔最終限見知らぬ自分/心霊写真の私/宮城の蒲団の話/白蛇の化石/古墳で拾った石/浄瑠璃寺へ/原爆公園で/六本木の寂しさ/神棚の顔
    百話目に代えて
    百物語の霊たち/怪談好きと『百物語』/出るか出ないか,あるいは出たか/結界内の愉楽/冥界に遊ぶ夜/結局,何もおこらなかったのである……。/夜明けの女神たち/百一番目の恐怖
    特別寄稿
    何……か……(竹河聖)

    編者付記(東雅夫)
    文庫版あとがき(東雅夫)
    解説(小池荘彦)

  • 文芸家達が一堂に会し語る怪談話。
    最後のオチの恐怖が素晴らしい。

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著者プロフィール

篠田節子 (しのだ・せつこ)
1955年東京都生まれ。90年『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。97年『ゴサインタン‐神の座‐』で山本周五郎賞、『女たちのジハード』で直木賞、2009年『仮想儀礼』で柴田錬三郎賞、11年『スターバト・マーテル』で芸術選奨文部科学大臣賞、15年『インドクリスタル』で中央公論文芸賞、19年『鏡の背面』で吉川英治文学賞を受賞。ほかの著書に『夏の災厄』『弥勒』『田舎のポルシェ』『失われた岬』、エッセイ『介護のうしろから「がん」が来た!』など多数。20年紫綬褒章受章。

「2022年 『セカンドチャンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

篠田節子の作品

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