愛情日誌 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
3.21
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本棚登録 : 83
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043604067

作品紹介・あらすじ

前は首にしがみついて「好き好き好き」という感じだったけど、今は後ろをどこまでも付いて一緒に歩いていきたいという好きなのだ。――家族になった二人の日々をしなやかに綴る、笑えて泣ける愛情小説。

感想・レビュー・書評

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  • もー、笑えたー!

  •  この作品の大きなテーマは夫婦のセックスというセクシャルなものだけど、その中には男女の性差や家事分担の問題、女性の社会進出と子育ての両立の問題など、深刻な問題がたくさんあり、リアリティーに溢れている。でも、どんな大変なことが描かれていても、主人公の豊子やその夫の明彦の茶目っ気で緩和されていて、読んでいてほっとする。外でも内でも問題を抱える豊子さんだけど、それでも自分を必要とする人(子どもを筆頭に)がいて、その人たちの為に奮闘する豊子さんに元気をもらった。

  • shit, piss, sometimes making love.

  • じわわん。これは結婚して働き続ける女性のバイブルか。
    ほわわん。読んでるときに覗かれるとちょっと困る単語が多いけど、なんかいやらしくない。

  • 【本の内容】
    前は首にしがみついて「うわぁ、好き好き好き」という感じだったけど、今は後ろをどこまでも付いて一緒に歩いていきたいという好きなのだ。
    ―恋愛して、結婚して、家族になった、映画監督の明彦と、働く主婦豊子。
    2人の子どもたちに囲まれた生活は、恋愛だけのわけがない。
    セックスも減ったし、ときめくことも減った、恋愛の先にある夫婦の生活を、温かくユーモラスに綴る、とびきりの愛情小説。

    [ 目次 ]


    [ POP ]
    表題作を含む3編の主人公は働く主婦豊子。

    子ども2人を自転車で保育園に預けてから仕事へ走る多忙な日々だ。

    人はいいが家事に積極的と言えない映画監督の夫とはケンカもするし、夫婦の生活は恋人時代のようにはいかない。

    家族の時間を積み重ねる中で夫と愛ある関係を維持するにはどうすればいいか。

    豊子のさらりとしたユーモアあふれる語りに共感する。

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 「子供って毒を出している」とか「子供がいると生活がしょぼくなる」といった、ネガティブフレーズが出てくるんだが、ワーキングマザーが女を諦め、開き直り、己を正当化していく過程・心情というのは、同じ境遇のある特定層にはウケルのかなという気もする。が、これがマジョリティーだとも思えないけど。物語というよりは主婦ブログみたいで、ちょっとイタさも感じるが、他人の家庭の中というのはわからんもんだし。我が家も他人から見ればイタイのかもしれないし。
    タンナがややファンタジックで現実感に欠けるのだが、こういうある種のダメンズな夫と一緒に頑張ってる私というが女性ウケするんだろうか?と感じる一方で、読者からは「なんでこんな男と?」といった疑問・非難もあるようで、ダンナを収入という物差しで測る女の心理も普遍的ではあるなと。そういうある種真っ当で常識的な感覚を持つ人に著者はモノ申したいらしいが。価値観も幸福感も人それぞれなので、家族の形態に答えはないのだろうけど。独り身である事も含めて。

  • 仕事を持つ子持ち主婦・豊子さんと、映画監督(ただし仕事なし)の夫を綴るお話で、これは設定からして、丸々実話なの??と思ってしまうんだけど、で、エピソードのディテイルはホントの話から持ってきたにしても、かなり作り込みも入っているんだろうね・・。(*^_^*)夫婦の性生活を書いたお話って考えてみるとなかなかなかったなぁ、と思ってしまった。夫も妻も、露悪的にならずに、日常生活の延長としての性を語って、あれこれ思って、実行(*^_^*)するあたりが面白かったです。でも、これは、夫が特殊な仕事だから読んでてもあまり恥ずかしくない、というか、苦しくないのかも。(*^_^*)

  • 「きっと大丈夫」を読んだ後だったので、どうしても豊子さん一家が夏石さん一家に読めてしまって(笑)
    でもやっぱり、この作品にも深く頷いてしまう一文がいくつもあった。
    女の子とか女性の、言葉にできない気持ちをとても的確に文字にしてくれる。
    誰にも受け入れられるタイプではないかなと思うし、わたし自身、ん?と感じる部分もあるんだけれど、その一文があるから惹きつけられちゃう、というのが、わたしにとっての夏石さん作品。

  • (2018/1/29了)

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    (2013/9/12了)

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    確定申告のために、去年の領収書の山をひっくりかえして整理していたら、なるべく買わないように、本はほとんど図書館で…のつもりでいたが、それにしては本や雑誌をかなり買っていることが、領収書の枚数からわかってしまい、われながらおどろく。むかし、ほんまにアホみたいにばかすか本を買っていた頃に比べれば、かわいい額ではあるが。

    そして、木曜の晩に、図書館が月末休館日なので本屋へ立ち寄ったら、夏石鈴子の新しい文庫が出ているのを見つけてしまい、しばし迷うが買ってしまった。

    この文庫、棚から引き出して表紙を見て、え、これは「夏の力道山」やろ?なんで「愛情日誌」なん?は?と思った。

    わけは「文庫あとがき」を読んでわかった。これは“『夏の力道山』+『愛情日誌』-「催花雨」(『愛情日誌』収録だった短編)”で、つまりは五十嵐豊子の話でまとめてある。さらに「力道山」というのが、当節の若いもんには通じないかもしれないという憂慮から、絵は単行本の「力道山」を使うが、タイトルは「愛情日誌」でいこうとなったのだ。

    私はこの五十嵐豊子の話がかなり好きで、しかも単行本デバラだったのが、文庫で合本になってるのだ。これは買いやろ、買い。

    そして、14ページもある「文庫本あとがき」を読み、平田俊子(この人には『(お)もろい夫婦』という大変な詩集があるそうで、夏石鈴子がおすすめしている)の解説を読んでから、ひさしぶりの豊ちゃん小説をまた楽しく読んだ。

    五十嵐豊子の夫・明彦には定収がない。『夏の力道山』を出したあとに、なんで豊子はこんな甲斐性なしの男と一緒にいるのか、なんで別れないのか、てなことをよく言われたとある。

    ▼まあ確かにお金がないと、人間は生きていけない。だから、人は働いているわけだけれど、この世には働いても、あまりお金にならない仕事もあるし、そんなにしょっちゅう仕事の順番が来ない職業だってある。

     作家だって、その手の仕事だ。俳優もイラストレーターも、そして映画監督だってそうではないですか? 自分は百パーセントやる気満々でも、外から声が掛からないと仕事にならない仕事もある。そういう仕事を職業にした人は、仕事が来ない時も平気で生きていく必要がある。この世の全てが会社員で構成されているわけではないのです。豊ちゃんは、夫に安定した収入がないことを、別に甲斐性なしだなんて思っていないみたいです。お金は自分で稼いでいるからいいらしい。この人は稼ぎが良くていいんじゃないの、と紹介されても、自分が嫌だな、と思ったら一緒に暮らしていくことは出来ない。きっと明彦と豊子にはどちらが稼ぎ手かということよりも、もっと大事なことがあるのではないかかな。そんなことも、いつかちゃんと書けるようになりたいです。(p.254、文庫あとがき)


    この五十嵐豊子の小説には、ふたりの子どもを育てながら夫と暮らしているなかでの、楽しい気持ち、嫌な感じ、笑いや言い合いが書かれていて、それをじーっと豊子が考えたようなことも書いてある。読んでいると、うちに子どもがいるわけではないが、(なんかわかるなあ)と思うところがある。少しくたびれかけたエロい話もあり、稼ぐ豊子の姿もあり、いっしょに働くうえで困る人のことや、仕事に対する気構えのようなのも書いてある。人はお金のために働いている、でも、お金がそうまわってこない働きもある、日々の暮らしをまわしていくちょっとめんどうと思う仕事もある、ということがちゃんと書いてある。

    そんなところが、夏石小説の好きなところ。

    夏石鈴子の小説のことは、何度か紹介を書いている。さいきんだと、昨春の「乱読大魔王日記」(『We』159号;http://femixwe.cart.fc2.com/ca10/1/p-r-s/)。その前は、いつだったかの「頭のフタを開けたりしめたり」(『ヒューマンライツ』)で『いらっしゃいませ』のことを書いた。昔自分が書いたのを読むと、こんなことを考えていたのかーと、別人を観察してるようで、なかなかおもしろい。

    (2010/1/30了)

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著者プロフィール

1963年生まれ。著書は『バイブを買いに』、『いらっしゃいませ』、『新解さんの読み方』、『新解さんリターンズ』、『今日もやっぱり処女でした』(日本図書館協会選定図書)、『きのうと同じに見えるけど』などがある。

「2010年 『愛情日誌』 で使われていた紹介文から引用しています。」

夏石鈴子の作品

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