ブレイブ・ストーリー (下) (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (500ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043611133

作品紹介・あらすじ

天空を翔るファイアドラゴン、ジョゾの背に乗って北の帝国に向かうワタルたち。目指すは皇都ソレブリアにそびえる運命の塔。が、うちつづく闘いに傷つき、命を失う仲間もあらわれ…。ミツルとの死闘を制し、ワタルは女神と出会うことができるのか?現世の幸福と幻界の未来。最後に選ぶべきワタルのほんとうの願いとは-。運命に挑んだ少年の壮大なる旅を描いて、勇気と感動の涙をもたらす記念碑的超大作、ついに完結!

感想・レビュー・書評

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  • 読み終わってしまった。。。
    どうしよう…寂しい…キ・キーマにもう会えないとか認められない…涙

    みなさんのレビューでも書かれている通り、えっ?小学生にここまで背負わせる?ってくらい重く、辛い描写が続きます。10年以上前の本にも関わらず凄い過酷な内容…。亘君の事情もさることながら、もう同級生の美鶴君に至っては本当、心配過ぎる。

    冒険の中でも差別や戦争、宗教問題などが描かれており、テーマとしては中々考えさせられる内容。

    とてもとても長く、実際に冒険が始まるのは『中』になってから。
    人間関係や心理描写、伏線が丁寧に描かれており、それなのにだらだらと引き延ばしている感じはありませんでした。全部、物語を形成するのに必要な言葉で、もう、さすが宮部みゆきさん。
    『下』は走り出した物語がさらに加速して勢いを増し、一気読みでした。
    読後はしばらく冒険の余韻に浸っておりました。

    最初は年相応の子どもだった亘君が、仲間との出会いや別れ、試練を経験しながらいつの間にか成長している姿に、母ポジで感動したり。
    美鶴君は途中から歳上なんじゃないかって思うくらい達観していて、私の中では美鶴さん。でした。美鶴さんの冒険はどんなだったのかな。一見非道に思える言動も、そう思わないと立っていられなかったんだなぁ…とすっかり信者。

    ファンタジーものは、最初っから全てがその世界で完結しているもの(上橋菜穂子さんのような)が好きで、現実から非現実世界に行く的な話は入り込めない感じがしていてあまり読んでこなかったのですが、そこが交差するからこその魅力を体感できました。
    宮部みゆきさんのお話はがっつり事件物も好きですが、パラレルワールドとかの不思議世界のものもとっても魅力的だなーって思います。そして、この方の描く「子ども」がとても生々しくて好きです。

  • シリーズ完結編。ワタルがどんどん逞しくなり、システィーナ聖堂に忍び込んでから現世に帰ってくるまで。生きることへの教訓に満ちたストーリーだった。

    「喜びがある限り、悲しみがある。幸福がある限り、不幸もある。」ーーー生きていく上で悲しみや不幸を避けることはできない。変えることができるのは自分だけ。自分で自分の運命を変え切り拓いていかなくけはいけない。

    「どっちの側にも真実がある。問題は、ひとつの真実をどちらの側から見るかということ。」ーーー自分が正しいと信じることをする。間違っていると感じたら、その心に従う義務がある。


  • 活字中毒の私がアニメ映像を見に行く程大好きな作品。映像もいいけど、映画の尺では収まりきらないこの作品の根底にあるテーマをじっくりと楽しむには、長い原作を読まないと不可能だと思う。そもそも映画ではほぼ描かれていない。
    この作品の好きな所は、現実ではあり得ないファンタジー世界の中にも現代問題、人種差別が織り込まれてる反面、勇者、ヒト柱、ハルネラ等のファンタジーが混在する点。
    キ・キーマの愛嬌があってお調子者プラス凄い気遣い屋、仲間思いだけど大男の戦闘タイプというのがまたギャップがあって魅力的、、ミーナもファンタジーのヒロインらしく芯がある明るいタイプの女の子という素敵なひと達がいるのもこの作品の素敵な点だと思う。
    ワタル、ミツルの年代で背負うには重い内容だけど、ファンタジー小説が好きな方は楽しめる作品だと思う。

  • ファンタジー小説であるが子供向けではなく、大人向けの物語だと感じた。主人公の亘は小学生であるが、直面する現実は大人が読んでも重く、胸が痛くなる。もし自分がこんな現実に直面したら、乗り越えられるだろうか。そう思う程に。それは亘がいい子だから余計に感じた。読んでいて嫌味など全く感じさせない主人公。小学生らしい純粋な視線で情景や心情が描かれている。終始応援したくなった。
    亘は幻界の旅を通して出会いや別れを経験し、精神的に強く成長していく。幻界で出会うキ・キーマやミーナなどのキャラクターも魅力的で、彼らとの友情や絆を強く感じられた。
    最終的に亘は、不運な自分の運命を変えるのではなく、幻界の世界を救うことを選ぶ。自分の運命を都合良く変えても、自分が変わらなければまた悲しいことや辛いことが起きても乗り越えられないから。
    この物語は現実と向き合い、そっと背中を押してくれる勇気の話。ブレイブストーリーというタイトルの通りに。
    長いストーリーだったが、この本に出会えて
    良かった。読んで良かった。そう思える。

  • ワタルが旅の仲間と、出会い別れながら成長していく姿に勇気づけられます。
    幻界で起こることは、きっと身近な私たちの周りでも起こるような問題も沢山あるんだなと、改めて考えました。
    12年前くらいに読んで、再度読み返し、前とは違う気づきもたくさんありました。

  • 幻界が旅人の心を反映して創造されるという設定が、この物語の1番のポイントになっていると思う。それによってワタルは幻界を旅しながら自分自身の一つ一つを見直していき、現世に戻る時には大きく成長した彼になって戻る。幻界での戦いの解決を優先したという場面は、それが最もみて取れる所になっていると思う。
    ミツルが最後にどうなったのかが少し気になった。

  • 読後にやっぱり宮部モノだったという満足感があった。
    後半から情景描写の巧みさが際立ち、引き込まれる。
    物語の8割がクライマックスに収束されてゆく。終章は後日談のようであり、謎解きのようであり、海外旅行から帰ってきた成田空港のようである。
    この部分でガッカリするとか、納得できないという意見もあるが、これはワタルだけの物語であるのだから コレで十分だと思う。

    ちなみに 一番好きなキャラは 中巻に登場するトウゴウトウ。物語に登場できるならこいつになりたい。
    一番お気に入りの場所はドラゴンの島。火山の位置がいい。大原まり子氏の解説もいい。以下は好きなフレーズ。

    ーは、そっとそれを持ちあげた。誰に対するときの、どんな手つきよりも優しく。おそらくは、自分自身の魂に触れるときよりも厳かに。

    その一点を中心に、収縮してゆくのだった。ーが、折りたたまれてゆく。吸い込まれてゆく。無数の窓は、声のない悲鳴をあげる口だ。呑みこまれてゆく。

    とげとげした枝を張りのばす木々たちが、精一杯に手を広げて、ーたちをかばおうとしてくれているように思われた。寒い国の無口な歩哨たち。ーたちを懐に隠し、何事もなかったかのような静謐な顔を空に向けて。

    ヴェスナ エスタ ホリシア その意味。

  • 堂々の完結巻。自らの不幸な運命を変えるため、〈幻界〉を旅していた亘が、ついに運命の塔にたどり着き、変わらなければならないのは運命ではなく自分であるという真実に気づく。
    北の帝国に現世に通じる真実の鏡の対となる魔界に通じる常闇の鏡があった。ミツルとワタルの2人が求める最後の宝玉は、魔界から魔族の侵攻を防ぐため常闇の鏡を封印していた闇の宝玉であった。ミツルはその話を聞き、皇都ソレブリアを破壊し宝玉を手にして運命の塔へと行ってしまう。そのせいで〈幻界〉は魔族があふれて危機にさらされ、ワタルは〈幻界〉を救うために、ミツルのあとを追いかける。
    そこで待っていたのは憎しみの塊となってしまった自分の分身との戦い。ワタルはその自分をも受け入れたが、〈幻界〉で起こるすべてを幻と考え破壊を繰り返しながら旅を続けてきたミツルは大きく育ちすぎた憎しみを受け入れることができず分身に敗れてしまう。
    すべての試練を乗り越えたワタルが選んだ答え。それによって「ワタルの」〈幻界〉は守られた。現世での運命は何も変わらなかったが、ワタルは大きく成長し、これからの運命も乗り越えていく力を得る。半身となったミツルの現世での在り方について少し疑問は残るが、ファンタジーであり児童向けの小説のように思える今作は間違いなく誰が読んでも楽しめる作品だと言える。

  • 1人の男の子の冒険成長ファンタジーで終わらないところがすごい。。。

    大人になった今読み返すと、本当に色んなことを考えさせられました。中学の時に読んでいた頃はどこまで考えて読んでいたのかなぁ。

    ワタルは成長しました。
    自分の欠点を見つめ、それを認める勇気を持ちました。

    ベッドの下で震えていたあの頃のワタルとは違う。人間的に大きく成長したワタルに私も勇気をもらえました。

    • yukimi516さん
      フォロー&コメントありがとうございます(^^)予想外に重たいスタートでしたが、読み終わる頃には晴れ晴れとした気持ちになったのを覚えています。...
      フォロー&コメントありがとうございます(^^)予想外に重たいスタートでしたが、読み終わる頃には晴れ晴れとした気持ちになったのを覚えています。ステキな物語でしたね(^^)
      2016/08/01
  • 感情移入してしまって止まりませんでした。
    ファンタジーという事で大人が読むのを避けてしまうには勿体ない作品。
    物語中は、現実に関わる問題が出てきて考えさせられる。
    ラストは、思っていたとうりに終息。
    それが安心してこの物語を終える事が出来た。
    面白かったです!!

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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