巷説百物語 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (530ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043620029

作品紹介・あらすじ

怪異譚を蒐集するため諸国を巡る戯作者志望の青年・山岡百介は、雨宿りに寄った越後の山小屋で不思議な者たちと出会う。御行姿の男、垢抜けた女、初老の商人、そして、なにやら顔色の悪い僧-。長雨の一夜を、江戸で流行りの百物語で明かすことになったのだが…。闇に葬られる事件の決着を金で請け負う御行一味。その裏世界に、百介は足を踏み入れてゆく。小豆洗い、舞首、柳女-彼らが操るあやかしの姿は、人間の深き業への裁きか、弔いか-。世の理と、人の情がやるせない、物語の奇術師が放つ、妖怪時代小説、シリーズ第一弾。

感想・レビュー・書評

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  • 巷に伝わる伝承をアレンジした時代小説。(と、思います)市井の悪党を妖怪の仕業と見せかけて、恨みを晴らしてくれる、又市一行必殺仕事人グループ。そこに、不可思議なお話を蒐集したい百介が絡む。
    読み始めは、話の流れを掴めなくて、というか流れが見事で、夢か現か幻か?悪党さん達と一緒に騙されて、すっかり妖怪のお話だと思ってしまった。
    それにしても、京極さんの知識がすごい。作中に出てくる古書の類は全部読破されているんでしょう。
    しかも、妖怪大好きなのに、妖怪の仕業にはしない。
    古今東西、世の中の解決できない納得できない事象を上手く妖怪の物語に仕立ててきたんでしょうね。

    • おびのりさん
      土瓶さん、情報ありがとうございます。
      みんみんさん、怖いって、楽しみだねえ。
      土瓶さん、情報ありがとうございます。
      みんみんさん、怖いって、楽しみだねえ。
      2022/12/21
    • みんみんさん
      おびさんと一緒で
      怖いものないんだけど〜笑
      おびさんと一緒で
      怖いものないんだけど〜笑
      2022/12/21
    • 土瓶さん
      ブグログやってる女史は肝がぶっとい説あるね(笑)

      怖くて哀しいから楽しめると思うよ。
      ブグログやってる女史は肝がぶっとい説あるね(笑)

      怖くて哀しいから楽しめると思うよ。
      2022/12/21
  • 再読。

    改めて巷説百物語シリーズを「遠巷説百物語」まで揃えたので、第一巻の本作から読み始める。

    物怪話しにからめて、世の悪人悪事をバッサバッサと切っていくその手際がまことに鮮やか。又一はじめおぎん、治平がなんとも魅力的で引き込まれる。
    どういうふうに落とし前をつけるのだろうという話もあるが、又一達に絡め取られる悪人とおなじように、自分も見事に絡め取られて話の落とし所に納得してしまう。

    切ない話も多いのだが基本的に悪事は裁かれるので読後感は悪くない。

  • 久々の京極夏彦。百物語、怪談をモチーフに、ミステリ的な展開を見せながら、謎解きされる。必殺仕事人みたいな話でもある。
    百鬼夜行シリーズの難解なイメージがあったが、小説としては非常に話がわかりやすくて、面白い。ただ、口語調であったり、読みやすくはないかと思う、

  • 再読。
    初読は図書館にて。再読は文庫を購入。

    うん。2度読んでも面白いね、この世界観。
    この愛すべき小悪党ども。

    御行の又市……小説好きになって10年強の間に出会った、様々な作品のキャラクター達の中でも5指に入るくらいに好きだわぁ。

    巷説、続巷説、前巷説、後巷説……と読んで、シリーズは完結してるらしいのが残念。

    ★4つ、9ポイント。
    2019.11.03.古、再読。

    ※番外編?で「西巷説…」の存在はもちろん知っている。知ってはおるけど……(番外編ではあっても)それを読んでしまうと文字通り完全に「巷説…」の世界を読み尽くしてしまうのだと思うと、なかなか手に取れない・・・。

    京極さん、、、、
    人気の出た連ドラみたいに「2匹目のドジョウを狙いやがって」とか思ったりしないから、、、
    IWGPのように、secondシーズンを描いてくれぇ~。

  • 僕に読書の楽しさを教えてくれた運命の1冊。
    今回で読むのは3度目だけれど、読むたびに初めて出会った大学2回生(2004年)の夏を思い出す。
    あの頃この本に巡りあっていなければ、今の自分はなかったと思う。

    第130回直木賞を受賞した『巷説』シリーズのいちばんのおもしろみは、御行の又市一味が、江戸にはびこる悪事を妖怪がらみの大仕掛けで解決していくという時代小説風の凝ったストーリーにある。
    しかし僕はそれ以上に、京極さんの言葉の使い方に魅了された。
    圧巻は、「小豆洗い」でおぎんにさせているような一人語りだ。
    1人の人物に対話者の発言や質問を代弁させ、それによってただ1人の言葉だけで会話を進行させていくというその手法を初めて知ったとき、僕は本当に感動した。
    一方で、啖呵を切るようにまくしたてる又市のセリフも小気味よい。
    小説家って言葉を操る人なんだなって思った。

    1つ1つの文をなるべく短くすることにより、文が絶対にページをまたぐことがないよう編集されているのも意匠化である作者に似つかわしく、すばらしい(こういう美しさが僕は大好きなんだなあ)。
    カバーの装丁も含めて、この本は1つの芸術作品であると僕は思っている。

    シリーズで一貫して書かれているテーマは、人の世の悲しさだ。
    恨み、妬み、嫉み、憎悪、あるいは想いが届かぬ苦悩。
    理屈では割り切れない、ましてやお金では解決することができない人間の負の感情を丸く収めるべく、又市は悪を斬り、大掛かりな仕掛けをくり出す。
    生きていくっていうのはこんなにも悲しいことなんだと、又市の背中は読者に訴えかけてくるようだ。

    これからの人生で何百冊の小説を読んだとしても、この『巷説百物語』はきっと自分の中で「好きな小説トップ5」に入り続けているだろうな。

  • 伏線の張られ方、後始末の仕方・・・
    又市ほか、影のある仲間たちの魅力。
    引き込まれます。

  • 一つ目の物語を読み終えた時点で、「あ、やばい」とは思っていた。
    「これ、だめなやつだ」とも。
    それでも何とか耐えてきたのに、最後の最後、「帷子辻」でもう、限界を超えてしまったらしい。
    京極先生、私、ファンになります。

    もう、「すげぇ」なんて阿呆みたいな言葉しか出てこない。
    元々こういう話が好きというのもあるが、話の根底に流れているものが、好みど真ん中。
    「帷子辻」の又市の語りには、もう首を縦に振ることしかできなかった。

    怪力乱神を語らず、とは流石に君子ではないので言い切れないが、私自身、自分の目で見た事のない「あの世」は信じない性質だ。
    いや、というより、稲田殿と同じように、「いちゃもんの通じないものを求めるからこそいちゃもんつけるタイプ」とでも言うべきか。
    そんな私にとって、又市の言葉は、自分のかねてからの思いを代弁してくれたようなものだった。
    それは、「御行為奉――」の時だけではなく、物語の最後の台詞も含めて。
    上手く言えないけれど、心のどこかで、やっぱり、変わらないもの、終わらないもの、そういう何かを信じたい気持ちもある。
    けれど、生きていくには、信じてばかりいられないのだ。
    だからこそ、否定することで自分を納得させようとしているのかもしれない。
    そういう思いを、どこか又市と共有したような気持ちになった。
    だからこそ、「ドンピシャ」なのだ。

    というわけで、ちょっと続編探してくる。

  • お友達に勧められた本です。1999年発表の、京極夏彦さんの時代小説。
    勧めてくれた言葉通り、割と理屈抜きで愉しめる、勧善懲悪の江戸時代モノ。
    味わいとしては、鬼平犯科帳が横溝正史さんになったような感じ、という印象。
    お勧めの言葉通り、肩の凝らない、胃にもたれない、大人の娯楽小説、愉しめました。

    江戸時代を舞台に、レギュラーの「必殺仕事人」的な、善玉小悪党たち?とでも言うべき、個性的な面々が、法を逃れた非道な殺人者を、懲罰していきます。
    あるいは自殺に追い込み、あるいは、直接描写されないまでも殺します。
    (中には、悪党というよりも、「可哀そうな殺人愛好者的な変態さん」というのも含まれますが)
    で、この小説の仕掛けは、全てが「魑魅魍魎、妖怪、怪談」と言った類の仕業に見せかけて終える、というところです。例外はありますが。

    読み始めて判ったのは、前に読んだ「姑獲鳥の夏」もそうだったんですが。
    まあ、強引と言えば強引なんです。
    「それってものすごい偶然というか…あり得なくない?」
    という部分も、たいていあります。

    だけど、そこは小説としての面白さとは別次元なんですね。
    横溝正史さんの金田一耕助だって、ホームズだって、そういうところはありますから。

    謎があって、それが解けて、勧善懲悪になる。そこに、ヒトの業とでも言うべきやるせなさとか、無常観みたいなものが残る。人間ドラマになっている。

    そういうことですね。
    言ってみれば、ホームズから始まって、殺人と解決のミステリー物語の王道、と言えます。
    それが、舞台が江戸時代で、仕掛けが怪談妖怪話。
    そこのところで、嘘が跳ねて、小説が粗筋から飛翔する娯楽があるなあ、と思いました。
    「気味が悪い」を「鬼魅が悪い」と書くような、歴史的な整合性は知りませんが、京極さん独特の(かどうかも判りませんが)、深い(狭いのかもですが)博識を基にした、確信犯な演出が冴えていると思いました。

    連作短編な訳ですが、俯瞰的に説明するところから、証人の一人称をぶん回す下りまで、実に読み易く自在な筆運び。パチパチ。

    「姑獲鳥の夏」「巷説百物語」と読んでみて、成程、京極さんの持ち味と旨さ、なんとなく分かった気になりました。
    この人の本は、なんていうか…「所詮、そういうことでしかない」という限定を自覚した上で、小説、コトバ、日本語、という武器をしたたかに使って、独自の水木しげる/横溝正史的世界観に、ぐいっと連れて行ってくれる強力さがありますね。
    今後も、慌てず愉しみたいと思いました。

    連作短編、ヒトによって好みがあると思います。
    僕は、「殺人愛好者の変態さん」の巻よりは、「頭が下がるほどの悪党」が出てくる回の方が面白かったです。
    「塩の長司」「白蔵主」あたり、好きでした。













    ####以下、思いっきりネタバレの個人的な備忘録です####



    ●小豆洗い
    無念を持ち死んだ小僧がいた家で、小豆を数える?音が聞こえる、という怪談?をもとにして。
    かつて殺人を犯した男を、百物語で脅して自殺させる。

    ●白蔵主
    悪党の一味がいて、その手下の男がいる。
    手下はかつて、キツネ狩りの猟師だった。
    殺生を止めるように説いた僧を殺したのを、悪党の親玉に見られて、手下に。
    狐の怨霊、みたいな怪談で騙して、親玉と手下を会わせ、親玉を殺させる。
    親玉は長年、寺の僧に化けていた。

    ●舞首
    女を誘拐してレイプして、というホントに悪い男がいる。
    それに妹を浚われて、言いなりになっている巨漢がいる。
    その街を仕切っている悪党のやくざがいる。
    この三人をそれぞれに騙しておびき寄せ、殺し合いをさせる。
    最後に、三人の首のない死体を遺棄。
    クビが殺しあった、という怪談にのっとって。

    ●芝右衛門狸

    徳川の御落胤という若者がいる。
    表に出れずに失意の日々を送り、殺人愛好者になる。
    この人を葬るために、淡路の国の狸の怪談というか言い伝えを利用。
    狸が化けたもの、として、葬る。
    淡路の国の人形浄瑠璃の話が印象的。

    ●塩の長司

    加賀の国。
    馬を売買する金持ちの商人がいる。
    そこに、兄弟の悪党が、狙いを定める。
    知能犯で馬に詳しい弟が入り込み、気に入られ、婿になる。子も出来る。もう、悪党であることを止める。
    収まらない兄が、手下と、その商人の道中を襲う。
    そして、ほぼみな殺し。弟と顔が似ているので、入れ替わる。
    そのからくりを見破って、もともと兄がもう病身であったので、狂わせ自害させる。
    馬の霊みたいなものが取りつく、という怪談を利用。

    ●柳女

    品川宿。
    大きな宿屋があり、中庭に大きな柳がある。
    色々言い伝えがある。
    そこの当代の主人が、良い人なんだけど、「赤ちゃんを殺す」という癖がある。
    その人が、妻も含めて殺してはのち添えを貰っている。
    そのからくりを暴いて、殺す?。
    柳の仕業、みたいなことにする。

    ●帷子辻

    京都、広隆寺近く、帷子ノ辻(今は撮影所がある)。
    かつて皇族の誰かが、無常を知らせるため、自分の死骸を放置させた、という言い伝え。
    京都の役人が妻を病気で失う。
    この人が、死体愛好者?という癖がある。
    妻も含めて連続して、殺しては死体を保持し、腐っては帷子の辻に捨てる。
    狂ってくる。
    このからくりを暴いて、自死させる。
    全体を、無関係なヒトの犯行に見せて、役人の名誉を守る。

  • 面白いことは面白いけど一冊読んだら疲労困憊してしまう極太京極堂シリーズとは違い日本の伝統を感じさせる静かで端正な筆遣い。一日一遍ずつじっくり楽しめた。「嗤う伊右衛門」に始まる大江戸怪談再解釈シリーズ?も読んでみたくなった。ただデビュー作は「姑獲鳥の夏」で」良かったと思う。「巷説シリーズ」や「江戸怪談シリーズ」ではあの爆発的な京極夏彦シンドロームは起こらなかった思う。なんにしろこの多種多産ぶりには恐れ入る。

  • 一番好きなのは最終話。<br>考えさせられるけれども、答えは見つからず。

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著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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