巷説百物語 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (530ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043620029

感想・レビュー・書評

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  • 1話目の雨の降る森の描写から美しい。羨ましくないけど羨ましくなるような、こんな綺麗な場所に生きているのになあと言いたくなるような。
    京極堂と嗤う伊右衛門しか読んだことなかったけれど、この人は短編の方が面白いかもしれない。帰結までが早いし毎回手が込んでいるし。
    人間は弱いから、力が弱い立場が弱い生きている限り強いものに虐げられる、それに心も弱いから幽霊や妖怪が必要なんですね。
    愛とは仏教用語なら執着。慈しむ、という概念はあれど明治以前には理解し難い、それだからむしろ伸びやかな時代だったのかもしれないな、なんて。
    人間は生きているだけで美しい。

  • 巷説百物語シリーズ第1弾
    再読

    収録作品:小豆洗い 白蔵主 舞首 芝右衛門狸 塩の長司 柳女 帷子辻

  • 昔アニメを見ていたので原作を読んでみました。
    いつも読んでるような分野と違って最初は難しかった。
    でもストーリーが楽しいのと、アニメのキャラクターが脳内でしゃべり出すので後半は読むスピードも上がりました。

  • 怪異譚を集めて旅する山岡百介が出会った奇妙な者たち。小股潜りの又市とその一派。シリーズ第一弾。最も面白いのは百介が又市たちと出会う第一話「小豆洗い」。又市たちの正体が知れぬだけにかなり効果的だ。2話目以降はこれが通用しないのが痛い。骨格は必殺仕事人なのだがこのように描くといい味が出る。

  • ハードカバーからの再読。以前ハードカバーで読んだときは初の京極夏彦で、旧字体や京極夏彦独特の文体に、読むのに時間を要したが、再読までの間の時間に、いくつか京極さんの本を読んだおかげか、比較的すらすら読むことができた。妖怪話をもとに、人間の住まう『現実』を明らかにする、御行又市とその仲間たちご一行の活躍には目を見張るものがある。そしてこの作品を読んで一言。「やはり一番怖ろしいものは人間である」。

  • "妖怪"を用いて現実の事件を解決するという、百鬼夜行シリーズとは対照的な作品。と言ってもどう説明しても何のことやらわかりづらいので、実際に読んでみるのが早いだろう。同時に読み進めていた『豆腐小僧双六道中ふりだし』と共通の妖怪が多く出てくるのも面白い。『豆腐小僧』の方が妖怪に関する説明は詳しいので、こちらを読んでからの方が楽しめるかもしれない。連作ながらも1話完結の短編集形式だが、次作以降へと繋がりそうなラストが気になるところ。

  • 必殺仕事人みたい。

    依頼を受けて、正規手続きでは裁けない者どもを小芝居で嵌めて駆逐する小悪党達の物語。主役は、『嗤う伊右衛門』に登場した小股潜りの又市。
    読んでると情景が浮かぶ、時代劇化しそうなしっかりした描写で、実に都合良く成功する彼らの仕掛けと、最後の親切すぎるネタばらしが、京極夏彦らしくパターン化されている。考え物の山岡百介は、一味じゃないんだけど事情説明無しに毎度コマとして使われるのが、なんか笑える。
    この形式を京極堂シリーズの人物に当てはめたのが『百器徒然袋』なんだ!と納得した。
    一応ミステリの範疇なんだろうか。宮部みゆきの三島屋シリーズとは違って現象の説明が合理的ではあるけど、ミステリに分類するには躊躇する。

    登場人物に愛着が湧けば好きになるかもしれないけど、今のところそうでもない。時代設定もキャラ設定もフィクション感が強いせいかな。

    「小豆洗い」…又市一味の仕掛けに百介が居合わせる、出会いの物語。我が子を姉弟2人殺された父親からの依頼で、雨中の山中でターゲットを小屋に導き、雨宿りの間百物語でやり過ごす流れになる。話し手の話が過去の行いにリンクしていることに気づいたターゲットは、死者の亡霊に慄く。
    しょき。って音は結局空耳だったのか。

    「白蔵主」…狐の狩人が、狩りを諫めた僧を殺したことがキッカケでヤクザの子飼いになる。足を洗わせたい恋人からの依頼で動く又市一味だが、その恋人はよりによって彼の手で殺される。依頼主が居なくなっても依頼を遂行する又市の心意気は粋である。一歩間違えれば危険な目に遭うのにしっかり役目を務めるおぎんも充分に小股潜りで通る。

    「舞首」…腕に覚えのある悪人どもを巧く誑かして玉突き的に始末させ合う、という「そんなに上手く行く?」感が最も強い話。

    「芝右衛門狸」…斬りたい病のご落胤を表沙汰にせず消す、という難しいミッション。狸がヒトの姿で恩を返すという仕掛けのコミカルさとご落胤の闇深さが対極。

    「塩の長司」…豪農の娘婿長次郎が実は盗賊の双子の棟梁の片割れで…ってのは(分からなかったけど)無いトリックでもないけど、馬肉の味が忘れられなくて、ってくだりはなかなか斬新!
    徳次郎の馬を呑み込む術、正面から見たかった。

    「柳女」…大きな柳の木を抱えるように建つ品川の旅籠柳屋は、商売は繁盛してるけど、主人の最初の妻との子は柳の枝垂れ枝が首に巻き付いて命を落とし、妻は落胆の余り自害する。以来娶る妻が死ぬか狂うかを繰り返し、世間は柳の祟りだと噂する。
    この人も殺したい病に取り憑かれた人。

    「帷子辻」…京都の帷子辻に女性の腐乱死体が出現する話。
    この話だけ書き下ろしらしい。他の話では達観したような又市の態度がこの話だけ違って湿っぽく、ちょっと異色。この話のおかげで『嗤う伊右衛門』との繋がりが明確になる。
    又市を通して語られる死生観は、他の作品でも見え隠れする(『陰摩羅鬼の瑕』とか)京極夏彦節である。こういう要素がもう少し盛り込まれてくると、堪らないシリーズになるかも。

  • 2003(平成15)年発行、角川書店の角川文庫。7編。解説は大塚英志。単行本で一度読んでいる。結構記憶に残っていた。『舞首』が登場人物が追加されていくこともあってややこしく、理解が追いつかないのを除けば、他の編は筋を追うのも単純。どういう仕掛けなのかというのは明かされず、なんとなく読めるような気にはなってもはっきりとは分からないだろう、たいていは伏線もないし。でも、それが面白い。ただ怪奇的なものはそのままおいといて種明かししない方がいい人もいるだろう。理に勝過ぎるのはこの人の特徴ではある。

    収録作:『小豆洗い』、『白蔵主』、『舞首』、『芝右衛門狸』、『塩の長司』、『柳女』、『帷子辻』、他:1999(平成11)年、角川書店より刊行された単行本の文庫化。

  • 久しぶりに読んだ、京極夏彦氏の妖怪もの。以前読んだ魍魎の匣はとても面白かった。
    本書は少し趣がちがう。短編に分かれているが、登場人物は一部固定で、いつもながら京極氏本人のような物書きの青年が出てくる。江戸時代の京都や江戸で起きた奇怪な事件や現象のなぞ解きを読者と共にしていく展開である。
    妖怪系第一人者の京極氏の力作、どれもとてもよく練られていて、どんでん返しというか、読み始めた時に想像しない結末が待っている。
    京極氏の教養の深さにはいつもながら舌を巻く。当時の文化や言葉遣いや漢字などもよく調べてあり、慣れないとやや読み下しにくい面はあるが、流石、の一言である。

  • 京極先生の作品は百鬼夜行シリーズしか読んでなかったため、どんな感じかな〜?と思ったけど短編集のため百鬼夜行シリーズより読みやすかった。
    又市や百介、お銀、治兵とキャラクターのそれぞれの役割もはっきりしているし、次はどんな手で騙してくるのか?と読んでいてワクワクした。
    エンタメ色が強いため京極作品を初めて読む人にはオススメだと思った

  • 読了

  • 戯作者志望の青年、山岡百介が、雨宿り先で偶然出会った
    謎の3人組。

    闇に葬られる事件をヒソカに決着させる裏世界の仕置き人。
    騙るは妖し。業への制裁

    時間をかけて仕組んでいくカラクリ世界のようで
    読んでいてわくわく。シリーズ読んでみます

  • 魅力的なキャラクターと各話のバックグラウンドにある妖怪譚に惹き込まれる。言葉遣いは古臭いもののとても読み易く、時代物の入門編としても良さそう。

    『嗤う伊右衛門』を先に読んでいたことで、特に最終話は又市の心中に抱える翳りが手に取るように分かった。

  • 再読。作者の別作品の百鬼夜行シリーズも好きなんだがこっちのシリーズも好きなんだよなぁ。どの話も闇に葬られるべき事件を怪異に見立ててそれらしい形へと収めていく時代小説。色んな小悪党が登場するがどのキャラも個性的で面白い。それでいて京極夏彦らしく妖怪を上手く事件に当て嵌めていくものだから読んでいて気持ちがいい。続編もまた再読したいと思う。

  • 晴らすに晴らせぬ弱者の恨みを請け負う、怪談になぞらえた京極版・必殺仕事人。巷で語り継がれている妖怪の理(ことわり)をギミックとして罠に仕込み、「妖怪は人が生み出すもの」として悪人を精神的に追い込んでいく様が面白い。山猫廻しのおぎん姐が妖艶で鮮やか。京極さん入門書としてはお勧めの一冊。

  • シリーズ第一弾。

    江戸の蝋燭問屋の若隠居である「考物の百介」こと山岡百介は、怪異譚を収集して諸国をめぐっています。そんな彼が、旅先で偶然出会った「小股潜りの又市」と「山猫廻しのおぎん」という二人の人物の策略によってもたらされた怪事件に巻き込まれ、それ以来三人は協力しながらさまざまな事件を解決にみちびくことになります。

    著者特有の語り口で物語られる怪異譚の背後に、人間世界の闇にまつわる事件がひそんでいることが明かされ、最後に百介がワトソンの役割を演じるかたちで、一連の奇妙な出来事はそれを解決するために又市たちの仕組んだ策略であることが種明かしされるという形式で書かれた連作短編集となっています。

    著者ならではの作品世界がしっかり構築されており、江戸時代を舞台にした物語とキャラクター性の強い人物造形がそのなかにうまく収められています。著者のストーリー・テラーとしての手腕が存分に発揮されているシリーズであるように思います。

  • 読み易い京極夏彦、という事で友人の勧めで、読みました。確かに短編で読み易く面白かったです。

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  • 社会人K、「怪淡活が“山岡百介とおぎん、又市によって、最後に奇想天外の仕掛けで解決するシリーズ。哀切を極めた結末となる」

  • 逆百鬼夜行シリーズ、というか。
    怪奇現象を暴いて問題解決、でなく、怪奇現象に見立てて問題を解決するというスタイル。
    短編が集まっているので読みやすいし、夏にはぴったり。

  • 京極さんもこれで何冊目だろうか。これもおもしろかった。キャラがいいですよね。

    ネットで調べてみたらこれはアニメになったみたいですね。大人の日本昔話として多くの人に普及させてほしい。

    妖怪って昔は恐れられていたんだろうけど、江戸時代ではやっぱり娯楽や金儲けの道具だったんだろうと思う。心霊写真というのが一時期はやりましたよね。あれとおんなじ。

    デジカメになってからなぜか言われなくなりましたが、きっと幽霊はデジタルには対応していないんでしょうね。

    妖怪の説明が冒頭であり、それに絡んだ物語が展開していくというものです。京極氏の独特の言い回しや雰囲気がにじみ出ていて安心して読むことができます。

    ほんと繰り返し読みたくなるような作品です。

  • 会社の先輩のお勧めの本。どうにもならない悪事を妖怪の所為に見立てて処理する御行一味と作家志望百介の短編集。ところどころ仕掛けに無理があるように感じられる箇所もなくはないが、各話きちんと種明かしのシーンも挿入されているので変なモヤモヤは残らない。

  • 妖怪さんネタだけど、実際は人間が妖怪さんネタで困った事件とか復讐したいってのを解決するお話。

    この巻には、次の妖怪さんネタが収録されていました。
    ・小豆洗い
    ・白蔵主(はくぞうす)
    ・舞首
    ・芝右衛門狸
    ・塩の長司
    ・柳女
    ・帷子辻

    「御行 奉為(したてまつる)-」
    ってのがキメ台詞みたい。

    山猫廻しのおぎんさんとか、考物の百介(ももすけ)さんだとか、御行の又市さんだとか、とりあえず定番のメンバーがいて、日本各地で「御行 奉為-」って短編シリーズでした。

    まぁ、それなりに面白いけれど、百鬼夜行シリーズに比べたら軽い読み物って感じかな。
    夕方の4時くらいから再放送されているテレビシリーズっぽいって言うか…。

    ちょっとベタかなぁ…って気もするけれど、まぁ楽しめました。

  •  大好きなシリーズの再読です。妖怪に興味を持って、少し勉強していたのですが、それで読むとまた別の目線から見ることができました。
     今まで、小説の中に登場する妖怪は初めて知るものが多く、名前を見て「ふーん」と思う程度でしたが、なぜこのタイミングでこの名前が出てきているのか、妖怪の由来を知った後だとそれが理解できりょうになりました。
     そしてなにより登場人物の名前。そのようかにまつわる人物の名前や妖怪の名前をそのまま引用したものだとわかりました。
     このシリーズをこれから再読していこうと思っていますが、楽しみで仕方ないですね。

  • うまい!

  • 闇に消えゆく悪事に,綿密な計画と巧みな話術で光を当てる.
    時は江戸時代.大雨で山越えを断念せざるを得なくなった修行僧は,山中の古小屋で雨を明かすことになった.偶然集まったはずのその小屋の面々が語る怪異譚は,どこか身に覚えのある内容であった.
    京極夏彦のダークヒーロ時代小説.

  • どうしようもないことを丸く収めるのに妖怪を生み出す仕掛けにただただ飲み込まれていく作品。 登場人物もみな魅力的でページを繰る手が止まらない。 京極夏彦作の別シリーズにもつながる話なので、それに気がついたら倍面白く読めるシリーズです。 又市さんが唯一自分の弱みを見せる帷子辻の台詞は、シリーズを最後まで読んで、再読したらもっと重く心に響く台詞になるんだろうなと思う。 何度も読んで、何度も又市たちに魅了させられたい。

  •  妖怪にまつわる作り話をしていると思いきや、そこに出て来る人物の名前や境遇に、身に覚えがあると怯えながら話を聞いている男がいて。
     実はその話にも、そもそもその話を聞くはめになった事態にも裏がある……ていう、最後に引っ繰り返される感じがおもしろい。

     それにしても百介さん、毎回毎回何にも分からないね…。

     あと、この本のジャンルというか、カテゴリに悩む。
     時代小説であり、妖怪が登場するファンタジーのようでもあり、謎解き的なものもある、て。

  • 時代小説短編連作。
    んー妖怪とか不思議な出来事があって、それを裏で仕掛けている人たちがいて、最後は種明かしで終わる感じ。
    必殺仕事人の、自分たちは手を汚さないバーションみたいな?

  • 遣る方も遣られた方も同じようにお客様。
    人が人の物差しで他人を測ると、必ず不平が出る。
    世の中で一番賢いのは、誰が賢いかを知っている人。

    「ステータス」とは何でしょうか。この小説は、社会が要求する「ステータス」に疑問を感じた人が過ちを犯す過程が書かれています。

    社会人で言えば「資格」でしょうか。一種の身分証明書にはなるでしょうが、身分を保障するものではないと思います。資格を「得る」ことよりも、資格を「維持」することの方が重要です。「資格を得て、それでお終い」では何の芸もありません。

    前にも書きましたが、現状維持は後退です。

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著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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