後巷説百物語 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 1853
レビュー : 124
  • Amazon.co.jp ・本 (802ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043620043

作品紹介・あらすじ

文明開化の音がする明治十年。一等巡査の矢作剣之進らは、ある島の珍奇な伝説の真偽を確かめるべく、東京のはずれに庵を結ぶ隠居老人を訪ねることにした。一白翁と名のるこの老人、若い頃怪異譚を求めて諸国を巡ったほどの不思議話好き。奇妙な体験談を随分と沢山持っていた。翁は静かに、そしてゆっくりと、今は亡き者どもの話を語り始める。第130回直木賞受賞の妖怪時代小説の金字塔。

感想・レビュー・書評

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  • 百物語シリーズ3作目です。
    時代は幕末から明治へと変わり、御行の又市、山猫廻しのおぎん、事触れの治平らが登場することはありません。かれらの過去の活躍が、思い出として語られるだけです。けれど当時の仕掛けが時を経て、明治の世へ引き継がれていたりもします。
    語り部である山岡百介もすっかり歳をとり、本書では一白翁と名を変え、薬研堀で隠居暮らしをしています。時が流れていくということは、寂しいものですネ。
    この世は、辛く悲しいものです。ですから人は自分を騙し、世間を騙しながら、嘘の中でなんとか生きているのです。この世はすべて嘘だらけ。その嘘を本当のことだと信じ込んでしまったら、いつかはきっと破綻してしまいます。けれど、嘘を嘘だとしてしまえば、それはそれで悲しく、辛く、生きてはいけません。だからこそ嘘を嘘と承知で信じることしか、健やかに生きていく術はないのかもしれません。騙し騙され、それでも良いと夢を見る。人は誰しも、夢を夢だとわかっていながら、夢の中で生きているのかもしれませんネ。



    べそかきアルルカンの詩的日常
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    べそかきアルルカンの“スケッチブックを小脇に抱え”
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    べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
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  • 大好きになったシリーズ。切なすぎる最後だったけど、きっと山岡百介さんは幸せな生涯だったと思う。小夜ちゃんの口調がおぎんさんに似ていたからきっと、、って思って読み進めたらやっぱり。「道を通せば角が立つ。倫を外せば深みに嵌る」又市さんの存在が百介さんにどれだけ大きな存在となってるのか苦しくなるくらいの想いがつまっていた百物語の最後でした。

    • hs19501112さん
      「百物語」のシリーズ、おもしろいですよね。自分はこれをきっかけに京極夏彦に興味をもちました。
      「百物語」のシリーズ、おもしろいですよね。自分はこれをきっかけに京極夏彦に興味をもちました。
      2017/09/08
  • 明治の初め、怪しい相談を持ち込む若衆4人組に対して、枯れた隠居が自らの体験談を語る物語です。

    前作までとは案内役が異なるため、当初4人の内誰の台詞か分かりにくかったり、本題に入るまでの下りや蘊蓄が長いなど、多少テンポが悪い気がしました。

    他方本作は単なる殺人狂や色狂いのような極端な悪役が少なく、しかし最終話のみはその前作までを思わせる悪役により物語を締めるという憎い演出でした。

    また神仏や占いが未だ生き続ける現代を見据え、どうにもならない問題や生き辛さに折り合いをつけて生きることの意義にまで踏み込んだ本作は更に深みを増したと言えます。

    読者と一緒に旅をし、最後の最後まで読者と一緒に騙されてきた百介との別れは寂しいものですが、次の世代への希望が描かれたのは救いとなりました。

  • あれは又市の仕掛けだったのか。でも、もう会えないと思うと淋しい…。

  • 地震の日に泊り覚悟の夜明かし本として買ったもの。一話目は、まさかあんなことになっているとは知らずに読みふけっていました。。。
    なんだか、これまでの巷説のなかで一番好きかも。
    百介さん、アニメの印象が強いけどどんな爺さんになったんだろう~??
    爺ぶりもなかなかでしたが、いつもの見ててハラハラする百介ぶりが最後にチラッと見えて、少しほっとしました。

  • 小股潜(くぐ)りの又市さんらと別れてからずっと後。
    徳川幕府が倒れ、明治になってから、薬研堀に引っ越した百介さんが、若いお兄ちゃんたちに昔話をするという設定でいくつかの物語が語られていました。

    どれも妖怪譚って感じではあるけれど、実際は人が起こしたやり切れない事件や出来事を「妖怪のしわざ」ってことで落としどころを得るようなお話。

    結局、人の哀しみや苦しみを全部人のせいだと暴いてしまうと、心の癒しが全くできなくなることがあるんだろうね。

    今の日本だって、犯人が逮捕されても被害者やその家族は、そいつを殴ることも切り刻むことも自由に罵ることも同じような目に遭わせることもできないじゃん。

    人ではない理屈や正論から離れたこの世の論理が通じない「あやかし」にやられたってことにすれば、なんとなくまだマシに思えることってあるんだろうな。

    最後は文章としては出版しなかった百物語を蝋燭を吹き消す実践で行って、おぎんさんの娘さんをなぶり殺した悪者を焙りだすことで、長く一緒に暮らしてきた娘さん(おぎんさんのお孫さん)の無念を晴らしてから百介さんは静かに亡くなりました。

    -御行奉為。

  • 『続』の方が話としては面白いのですが、こちらにはまさかの仕掛けが施されています。

    京極夏彦の作品全ての、契機になっている作品で、これを読まないと髄まで愉しむ事が出来ないのです。
    本編自体も、必殺仕事人的面白さは健在で単体で読んでも十二分に楽しめますが。

    このシリーズ程、続編が読みたいものはない。

  • 江戸で妖怪が受け入れられていた時代から、近代化を押し進め妖怪は古いと言われるようになった明治での巷説百物語。 八十を超えた百介が又市たちと関わった不思議な出来事を懐かしく思いながら語っていく話。 百介からの視点なので、百介が又市一行をどのように捉え、感じていたかが分かる。越えられない一線の向こう側で生きる又市たちに憧れを持っているのが切に分かった。 最後の「風の神」は長い仕掛けの幕閉じであり、涙がほろりと零れそうになる。

  • 又市の物語の締めの一冊……かな。
    「西の……」は未読だが、どうやらあちらはスピンオフ的な内容らしいので。

    出てくる話、出てくる話、皆どこかで聞き覚えのあるような説話……シリーズの小編ひとつひとつに繋がっているのだから、当然か。

    一冊目から再読したくなってくる(笑)。

    又市の仕掛けを話のメインに据えておきながら、その実、又市は一度も登場しないという作りが、何ともにくいね。

    続編は書かれていないとのことなので、既存の御行話は読み尽くしてしまったということ……が、寂しい限り。

    ★5つ、10ポケット。
    2016.03.24.図。


    ※「五位の光」は……、遥かに時を越えての、『狂骨の夢』の前日譚か?
    京極ファンにはニンマリものだね。

  • 「巷説百物語」から時を隔て、そのころ若者であった山岡百介も80歳。遠縁の娘である小夜と静かに一白翁と名のって隠居暮らしをしている。

    その一白翁の庵に、彼の持つ巷説の博識を頼りにふしぎ話を読み解くべくやってくる4人がいる。

    見習い同心から一等巡査になった剣之進、藩士から貿易会社奉職になった与次郎、剣術の達人だが経営する道場が閑古鳥の惣兵衛、徳川の重鎮を父にもつ洋行帰りにして無職の正馬といった面々。
    明治維新後のいづれも新しい人々である。

    そのような4人が持ち込むものは世に伝わる怪談の真偽だ。
    一白翁が自身の若き頃、諸国を渡り歩いて集めた奇談を開示しながら怪談のもつ意味を諭し、時に巡査剣之進のかかえた事件まで解決に導く。見事である。

    今は過去となった江戸で一白翁が、百介として一番生を輝かせていたころのお話を懐かしみながら、現在に過去に、妖かしの世界に現実にと、読者を自在にひっぱっていく。

    そして最終話”風の神”にいたっては”小股潜りの又市”、”山猫回しおぎん”といった、過去に百介を輝かせたカリスマ?たちの登場もあって、百介の青春回顧録といったふう。百介という現し世に住まうまっとうな人間と裏稼業で悪人を懲らしめる表には出てこない人間という対比が光と闇として溶け合う。

    また、現在と過去との地続きである小夜の存在。
    涙がとまらなかった。

    タイトル通りに”百物語”がなされる最終章はほんとうに引きこまれた。

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著者プロフィール

京極 夏彦(きょうごく なつひこ)
1963年、北海道小樽市生まれ。小説家としてだけでなく、世界妖怪協会・世界妖怪会議評議員(肝煎)など妖怪研究家であり、他にも装幀家、アートディレクター、俳優など様々な顔を持つ。
広告代理店を経てデザイン会社を設立。1994年、そこで暇つぶしに書いた『姑獲鳥の夏』を講談社に送ったところ極めて評価を受け、同年、即出版・デビューに至る。瞬く間に執筆依頼が殺到する人気作家に上り詰めた。
1996年に『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、1997年『嗤う伊右衛門』で第25回泉鏡花文学賞、2002年『覘き小平次』で第16回山本周五郎賞、2004年『後巷説百物語』で第130回直木三十五賞、2011年『西巷説百物語』で第24回柴田錬三郎賞など、数多くの受賞歴がある。
代表作に「百鬼夜行シリーズ」「巷説百物語シリーズ」「豆腐小僧シリーズ」など。

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