覘き小平次 (角川文庫)

著者 : 京極夏彦
  • 角川グループパブリッシング (2008年6月25日発売)
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  • レビュー :101
  • Amazon.co.jp ・本 (414ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043620067

覘き小平次 (角川文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 『嗤う伊右衛門』とおなじく、切ない読後感に酔いしれています。
    小平次の様子に、異様さ、不気味さを感じつつ、なぜか、お塚がののしるほどの嫌悪は感じませんでした。読み進めていくにつれ、彼を「強く頼もしい」存在に感じ、好意を持ってしまうのは、なぜでしょう。彼ら以外の登場人物は、あるべき自分の姿を探し、ないものを埋めようと必死です。人々の、あさましさや愚かさを描きながら、なぜか彼らを憎めないのは、自分の中にも同じものがあることを自覚させてくれるからかもしれません。そして、自分にはない強さを感じるから、小平次に好感を持ってしまうのかも。いずれにせよ、京極さんの、異形な者への優しいまなざしが、この切なく温かい読後感に繋がるのだと思います。あくまで主観ですが、お塚は小平次が愛しくてたまらないのだと思います。それゆえの、もどかしさ、腹立たしさを、ひしひしと感じました。こんな、不器用な夫婦愛を描かせたら、京極さんの右に出る者はいない、と私は思います。

  • この物語への引きこまれ方は、「嗤う伊右衛門」のあの心地よさだ。
    登場人物が少しずつつながりを見せてくるときの爽快感や、妻であるお塚のラスト近いセリフの小気味よさ。

    このストーリーは素晴らしいデザインのポスターに魅入られたときの感覚に似ている。
    ストーリー全体がデザインされているかのように、芸術的な素晴らしさ、心地よさがある。

  • 「妾は嫌がらせしたかったンだ。厭な厭な小平次にね」
    だから一緒にいるんだというお塚のセリフに、潔さを感じます。
    どんな形であれ、相手の存在がある事で自分の存在が認められる。
    相手に依存してしまったり、思うが故に自分を見失ったり。そんな愛の形より、よっぽど深い想いを感じました。
    愛憎は表と裏の紙一重なんだなぁ。

  • 登場人物それぞれが抱える心の闇が、話が進むにつれ、1つにまとまっていく構成が巧み。
    読了後の解説で知ったのだが、小幡小平次は、江戸時代の怪談話に登場する架空の歌舞伎役者。
    物の人が書いた作品の登場人物を、別の切り口で組み立て、世界観に厚みを増す、京極夏彦の技術は名人芸の域だと思う。
    ちりばめられる雑学も、描写が豊かになり、また非常に勉強になる。

  • 京極夏彦は噛み合わないけどなんだかんだ良い夫婦っていうのが好きなのかなって…

  • 素晴らしすぎて言葉も無い。
    さすがの京極夏彦の禍々しさだけど
    勧善懲悪的なキャラが存在しないことによって
    世界観が剥き出しでした。

  • 1711 語り口と言い描写と言い京極ワールド全開で読み応え十分。最後の一文までじっくりと楽しめました。

  •  巷説シリーズを読み返している流れで覘き小平次を読みました。この作品については、今回が初読みでした。
     巷説シリーズの長編2作目、になるのでしょうか。又市は影くらいしか出ませんが、治平さんはがっつり登場しました。
     やっぱり治平さんはいい人だなぁと思いました。
     本編ですが、登場人物の気持ちがどうしてもわからない、そんな感想でした。小平次とお塚、この2人はどんな関係なのだろう・・・でも依存関係であることは伝わってきました。

     <以下引用>
     コトは語って初めてモノになる。語らなくちゃ何もねェんだ。嘘でも法螺でも吹きゃ吹いただけモノになるんだ。

     この言葉好きだなと思いました。色んなことを思いました。語られないことは誰も知らない、残らない、嘘もついたら、そしてそれが後に真実となる。真実が伝わらずに嘘が伝わればウソがホントになる。
     私たちが真実だと認識している過去にはそんなホントがたくさんあるんだろうな。

  • 愛とか欲とか、恨みとか妬みとか、本当とか嘘とか全部なくなってその中はみんな結局空っぽのがらんどうでした、という江戸ホラーというか、ホラー……うーん……サスペンス……かな……。
    陰気な幽霊役者小平次と、その妻お塚、鼓打ちの多九郎、立女形の歌仙、浪人の運平、盗人上がりの治平が入れ代わり立ち代わり、過去の因果と現在が入り乱れて、それこそ芝居の場面転換のように進む物語で、読み進めるほどに面白いっちゃ面白いけど、わりと話が陰気なので面倒くさいと言われれば面倒くさい話である。

  • 幽霊役者の木幡小平次を中心に、彼を取り巻く様々な人間たちの因縁が絡み合っていく物語です。

    小平次の妻は、幼い頃に見た絵画の男に惚れたというお塚で、彼女は押入れの中に閉じこもって口をきこうともしない小平次を嫌い抜いていました。そんな彼女に懸想している囃子方の安達多九郎が、小平次に仕事の話を持ち込んでくるところから、物語は始まります。小平次を雇いたいという玉川座で女形を務める玉川歌仙は、幼い頃両親を殺され、この世界に入り込むことになります。さらに、人を殺すことを何とも思わない動木運平という素浪人とその仲間の破落戸が、いっそう事件を複雑なものにしていきます。

    人間関係を過剰なほどに絡み合わせることで一つの事件の背景に何本もの補助線を引いていくという手法で作り込んだ小説になっています。ただ、ケレン味の強いキャラクターのおかげでリアリティに欠けるといったことは気にならない作品世界を構築しているのはさすがだと思わずにはいられません。とくに小平次という人物像を、文章だけでここまで彫りの深い造形に仕上げていることに感嘆させられます。

    小平次とお塚の奇妙な夫婦生活は、いわゆる「愛」と呼ばれているものとはかなり異なる様相を持っています。少なくとも、そこにはお互いに求め合うようなことはいっさいありません。幽霊だと世間の人々から恐れられようとも、小平次が押入れから覗き見る家に暮らし続けるお塚に、どこか小平次と同じ生き様が感じられるように思います。それは、ままにならない人生に対する諦念を共有しているということなのかもしれません。

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