覘き小平次 (角川文庫)

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レビュー : 103
  • Amazon.co.jp ・本 (414ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043620067

作品紹介・あらすじ

押入で死んだように生きる木幡小平次は、天下随一の幽霊役者。ある時、旅巡業の声がかかるが、それは凝り続けた愛と憎しみが解き放たれる修羅の幕開けであった。女房・お塚を始め、小平次の周りに蠢く生者らの欲望、悲嘆、執着が十重二十重に渦巻き絡み合い炸裂し-やがて一つの異形の愛が浮かび上がる。人間という哀しい華が圧倒的に咲き乱れる、これぞ文芸の極み。古典怪談に材を取った『嗤う伊右衛門』に続くシリーズ第二弾。第16回山本周五郎賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 古典階段をベースにした京極さんの真骨頂。
    安積沼での殺人やその後の江戸の自宅でのクライマックスは、まるで文楽の芝居を見ているような気分になりました。

    人間の欲の深さや執着のおどろおどろしさと、執着を持たずに行きている人間への嫉妬・羨望。
    逆に執着を持たないで生きる人間の心の殺伐さ。

    生きるっていろいろあるのだよなぁ…と思わせられる作品でした。

    素直に好きな人と好きだよって言い合いながら、他人をうらやまず、今ある日常を受け入れて、シンプルに生きていられるしあわせを感じたよ。

  • 『嗤う伊右衛門』とおなじく、切ない読後感に酔いしれています。
    小平次の様子に、異様さ、不気味さを感じつつ、なぜか、お塚がののしるほどの嫌悪は感じませんでした。読み進めていくにつれ、彼を「強く頼もしい」存在に感じ、好意を持ってしまうのは、なぜでしょう。彼ら以外の登場人物は、あるべき自分の姿を探し、ないものを埋めようと必死です。人々の、あさましさや愚かさを描きながら、なぜか彼らを憎めないのは、自分の中にも同じものがあることを自覚させてくれるからかもしれません。そして、自分にはない強さを感じるから、小平次に好感を持ってしまうのかも。いずれにせよ、京極さんの、異形な者への優しいまなざしが、この切なく温かい読後感に繋がるのだと思います。あくまで主観ですが、お塚は小平次が愛しくてたまらないのだと思います。それゆえの、もどかしさ、腹立たしさを、ひしひしと感じました。こんな、不器用な夫婦愛を描かせたら、京極さんの右に出る者はいない、と私は思います。

  • この物語への引きこまれ方は、「嗤う伊右衛門」のあの心地よさだ。
    登場人物が少しずつつながりを見せてくるときの爽快感や、妻であるお塚のラスト近いセリフの小気味よさ。

    このストーリーは素晴らしいデザインのポスターに魅入られたときの感覚に似ている。
    ストーリー全体がデザインされているかのように、芸術的な素晴らしさ、心地よさがある。

  • 「妾は嫌がらせしたかったンだ。厭な厭な小平次にね」
    だから一緒にいるんだというお塚のセリフに、潔さを感じます。
    どんな形であれ、相手の存在がある事で自分の存在が認められる。
    相手に依存してしまったり、思うが故に自分を見失ったり。そんな愛の形より、よっぽど深い想いを感じました。
    愛憎は表と裏の紙一重なんだなぁ。

  • 登場人物それぞれが抱える心の闇が、話が進むにつれ、1つにまとまっていく構成が巧み。
    読了後の解説で知ったのだが、小幡小平次は、江戸時代の怪談話に登場する架空の歌舞伎役者。
    物の人が書いた作品の登場人物を、別の切り口で組み立て、世界観に厚みを増す、京極夏彦の技術は名人芸の域だと思う。
    ちりばめられる雑学も、描写が豊かになり、また非常に勉強になる。

  • 京極夏彦は噛み合わないけどなんだかんだ良い夫婦っていうのが好きなのかなって…

  • 素晴らしすぎて言葉も無い。
    さすがの京極夏彦の禍々しさだけど
    勧善懲悪的なキャラが存在しないことによって
    世界観が剥き出しでした。

  • 嗤う伊右衛門から続くこのシリーズ。
    最初と最後で何が変わったと言えば、何も変わっていない。
    心持が少しほど変わったくらいか。それでも小平次たちにとって、大きな一歩なのだろう。
    治平の「嘘も触れ回れば霊験を顕すものよ」から「楽に生きるばかりが能じゃねえだろうよ」の下りには、辛酸舐めてきた者の言葉の重さがあった。

  • 1711 語り口と言い描写と言い京極ワールド全開で読み応え十分。最後の一文までじっくりと楽しめました。

  •  巷説シリーズを読み返している流れで覘き小平次を読みました。この作品については、今回が初読みでした。
     巷説シリーズの長編2作目、になるのでしょうか。又市は影くらいしか出ませんが、治平さんはがっつり登場しました。
     やっぱり治平さんはいい人だなぁと思いました。
     本編ですが、登場人物の気持ちがどうしてもわからない、そんな感想でした。小平次とお塚、この2人はどんな関係なのだろう・・・でも依存関係であることは伝わってきました。

     <以下引用>
     コトは語って初めてモノになる。語らなくちゃ何もねェんだ。嘘でも法螺でも吹きゃ吹いただけモノになるんだ。

     この言葉好きだなと思いました。色んなことを思いました。語られないことは誰も知らない、残らない、嘘もついたら、そしてそれが後に真実となる。真実が伝わらずに嘘が伝わればウソがホントになる。
     私たちが真実だと認識している過去にはそんなホントがたくさんあるんだろうな。

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著者プロフィール

京極 夏彦(きょうごく なつひこ)
1963年、北海道小樽市生まれ。小説家としてだけでなく、世界妖怪協会・世界妖怪会議評議員(肝煎)など妖怪研究家であり、他にも装幀家、アートディレクター、俳優など様々な顔を持つ。
広告代理店を経てデザイン会社を設立。1994年、そこで暇つぶしに書いた『姑獲鳥の夏』を講談社に送ったところ極めて評価を受け、同年、即出版・デビューに至る。瞬く間に執筆依頼が殺到する人気作家に上り詰めた。
1996年に『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、1997年『嗤う伊右衛門』で第25回泉鏡花文学賞、2002年『覘き小平次』で第16回山本周五郎賞、2004年『後巷説百物語』で第130回直木三十五賞、2011年『西巷説百物語』で第24回柴田錬三郎賞など、数多くの受賞歴がある。
代表作に「百鬼夜行シリーズ」「巷説百物語シリーズ」「豆腐小僧シリーズ」など。

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