前巷説百物語 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
4.25
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本棚登録 : 1612
レビュー : 89
  • Amazon.co.jp ・本 (737ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043620074

作品紹介・あらすじ

江戸末期。双六売りの又市は損料屋「ゑんま屋」にひょんな事から流れ着く。この店、表はれっきとした物貸業、だが「損を埋める」裏の仕事も請け負っていた。若き又市が江戸に仕掛ける、百物語はじまりの物語。

感想・レビュー・書評

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  • 目次
    ・寝肥(ねぶとり)
    ・周防大蟆(すおうのおおがま)
    ・二口女(ふたくちおんな)
    ・かみなり
    ・山地乳(やまちち)
    ・旧鼠(きゅうそ)

    又市がまだ願人坊主になる前の、双六売りだったころの若い頃の事件いろいろ。
    飄々とした又市ではなく、青臭くて理想の前で右往左往したあげく、自分の至らなさに打ちのめされる又市。
    ああ、だけど。
    青臭い又市、嫌いじゃない。

    妖怪の仕業としか思えない怪事件を、人の所業と断じるのが京極堂なら、人と人とのやり取りなら収拾がつかなくなるところを、妖怪の仕業にして丸く収めるのが又市なのである。
    神も仏も信じやしない又市が、何故妖怪を引っ張り出すのかというと、とにかく人死にを出したくないから。
    誰かのせいなら恨みが残るところを、妖怪のせいにすると「しょうがねえなあ」とあきらめもつく。
    善だ悪だ、損した得したを言い続けても詮無いところを、妖怪を出すことによって、力業でフラットに押しつぶす。

    百介と出会った頃は飄々とした風情ではあったけれど、百介と一線を画していたのは多分、好奇心でキラキラした目を向ける百介の心に、自分と同じ繊細さを感じていたからだと思う。
    そして、関わった人たちをいつまでも遠くから気に掛けていたのは、つい目を離した時に敵の手に落ちてしまったおちかの件があったからなんだ。
    又市よ、最後まで青臭いじゃねえか。

    双六売りの又市が、いつ小股潜りを名乗り、御行の又市になったのか。
    多くの仲間を失い、関係のない人たちを巻き添えにした痛みを抱えてなお、敵にも味方にも人死にはなるべく出したくないという又市の青臭さ。
    軽口の裏に隠された彼の真情が、このシリーズの通奏低音となっているのだと思いました。

  • 再読。巷説百物語シリーズ第四弾にして又市が御行の又市になる前の物語。再読というだけあってちらほらとは覚えていたのだがこのシリーズは何度読んでも感情が揺さぶられる。特に今作はまだ青臭い又市さんが語り部というのもあって、今までのシリーズでは分かりにくかった彼の根っこの部分がよく見えるようになっている。こういう下地があってこそあの又市さんになったんだなぁ…。

  • いやー、面白い。最後の旧鼠に至ってはホントに読むのが止まらなくなった。又市にあんな過去があったとは。続きが読みたいなぁ。

  • 小股潜りの又市が御行となるまでのお話

    まだ若く、青臭いところのある又市が魅力的
    悩み、悔やみ、そして裏の世界で生きてゆく決心をする。

    「窮鼠」は、「続」に出てきたあの話に繋がるのだなぁと納得

    分厚いですが後半は一気読み
    テンポの良い会話は、落語のようです(笑)

  • やることなすこと青臭く、仕掛けも稚い若き日の又市が、いかに御行になりにしか。悩み多き又市を中心に、様々な人々が巻き込まれ、妖怪たちが事件に意味を与える。

    我々の世代では江戸社会の構造を「士農工商」と習い、今の子供たちは「武士-百姓/町人」の二層構造で習っているそうだが、この本はその構造の外側の人びと、更には「外側の人びと」という枠にも入れない人びとにスポットを当てた物語。調べれば調べるほど、江戸東京の文化・芸能において被差別民が担った役割は大きい。

  • 又市が御行になる前の物語。
    ぶっきらぼうで青臭くて周囲に舐められてる又市が見られるのは良い。
    「嗤う伊右衛門」はこの後かな?
    山崎さんの最期が悲しくてね、読むのが辛くなる。

  • シリーズ第四弾。

    今回は、小股潜りの又市がまだ若いころの物語です。ある事件をきっかけに、裏稼業を引き受けている「ゑんま屋」の仕事を請け負うことになった又市は、ひとが死んでしまうような解決策を嫌うという青臭い正義感にこだわろうとしながら、身に降りかかってくるさまざまな事件に対処します。

    連作短編なのですが、クライマックスには、『続巷説百物語』で最終的に決着がつけられることになる祇右衛門との最初の対決が配されており、そこへ向かってしだいにストーリーが盛り上がっていくにつれて、又市の苦悩が深まっていく様子がていねいにえがかれており、読者を物語にぐいぐい引っぱり込んでいきます。

  • 再読。青臭い又市さんがすごく良いです。ここから小右衛門とおぎんと同じ道に入って行ったのだな。旧鼠はこわい話だった。ただの人なんでもない人たちでも集団になると1つの化け物になってしまう。山崎さんは最後までカッコよかった。さてシリーズ最後の西はどんな話だったかな?

  •  巻頭から「あれ、読む順番まちがえたかな?」と泡を食ったけど、執筆順とシリーズ作品内の時間軸が異なっているのはサマーの常套手段だったっけ( ´ ▽ ` )ノ

     おなじみ京極版必殺!( ´ ▽ ` )ノ
     主な舞台が損料屋で妖怪がらみってと「つくも神貸します」(アニメ版の酷さは伝説級)とおなじだけど、雰囲気はまったく違うし、格も面白さもこっちのほうが断然上( ´ ▽ ` )ノ
     一編一編すすむうちに、ラスボスの正体とその目的がだんだん明らかになっていく過程がサスペンスフル( ´ ▽ ` )ノ

     従来タブーとされている穢多非人、さらにその枠にすら入らない野非人をフィーチャーしてるところが非常に興味深かった……( ゚д゚)ウム
    「カムイ伝」を読んだ人なら、この時代の身分制度の「異常な精妙さ」については既におなじみのはずだよね( ´ ▽ ` )ノ

     とにかくキャラがみな立ちまくっていて先行した同シリーズ中でも屈指の出来( ´ ▽ ` )ノ
     語り口も絶妙( ´ ▽ ` )ノ
    「旧鼠」だけは別として、どの話も基本は「落語」と考えると読みやすくなるはず( ´ ▽ ` )ノ
    「寝肥」「かみなり」なんてアイディア・筋立てがまんまだし、全編 段取りもキャラ造形も会話のペースも間のとり方も、もろに落語( ´ ▽ ` )ノ
     ハードボイルドタッチなところも、じつは落語と通底してるんだよね( ´ ▽ ` )ノ

     にしても、第二作「魍魎の匣」以来のサマーの「こだわり」(文章のページまたぎをしない)がだんだん邪魔くさくなってきたな……(´ヘ`;)ウーム…
     どの作品も長いからどこでも本を閉じやすくするため、というのが当初の目的だったらしいけど、後になるとそれがそれ自体目的化してるというか、なんというか……(´ヘ`;)ウーム…
     ページ内に収めるためにムリヤリ文章を引き延ばしたり改行を増やしたりしてるところが、少なからず見受けられる……(´ヘ`;)ウーム…
     こんなことするより、章分けを増やすほうがずっといいんじゃないか?、と最近は思う……(´ヘ`;)ウーム…

     あと、解説ね……(´ヘ`;)ウーム…
     ほんと、出身地が同じな時代劇作家だから依頼したとしか思えないけど、いくらなんでもあれはひどいな……(´ヘ`;)ウーム…
     文庫の解説なんかふだん一切読んでない人なんだろうな……(´ヘ`;)ウーム…
     ルール一切無視。自分話ばっかり。あらすじで枚数稼ぎ。ネタバレ連打……(´ヘ`;)ウーム…
     他人の本だから好き放題やらかして構わないと思ってるんだろうけど、こんなことやってると結局自分のためにならないよ、デブのウェザーちゃんヽ(`Д´)ノプンプン
     これまであなたの本 一冊も読んだことなかったけど、今後もぜったい読まないと決めたヽ(`Д´)ノプンプン

    2019/05/09

    追記/あ……
     いま調べたら、宇江佐真理さん、2015年にお亡くなりになってた……気まずい……

  • 又市が、今の稼業に関わり、御行乞食になるまでの話。百介さん(少年)は友情出演。
    後の又市よりはるかに青く、真っ直ぐで余裕のない又市。無印巷説、続、後では、何だかんだで人死も出していたはずなので、大人になったり、諦めたり、そういう気持ちもわかったり、ということもあったのだろうが、又市の仕掛けの根っこには、若い頃の経験が見える。仲間を思う気持ちも。祇右衛門との第一ラウンドは辛勝か惜敗か。後に又市がカタをつけるわけだが、本作を読むとさらに感慨深く思える。
    おまけ?の巷説百物語相関図を見て散っていった仲間達に思いを馳せる。

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著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家、全日本妖怪推進委員会肝煎。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞を受賞。著書に『幽談』『冥談』『眩談』『鬼談』『ルー=ガルー』『南極(人)』『厭な小説』『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』 『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『遠野物語拾遺retold』 ほか多数。

「2021年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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