前巷説百物語 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
4.24
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本棚登録 : 1417
レビュー : 79
  • Amazon.co.jp ・本 (737ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043620074

感想・レビュー・書評

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  • 百物語シリーズのある意味一番最初を描いた作品。
    又市さんが江戸に来て、どのような経緯で「御行奉為-」ようになったかを描いた作品でした。

    京極さんのお話は他のシリーズも含めて順序立てて読んでいかないとわからないものが多いです。
    この本も順番通り読まないと、最後に起こる紛争とか、よくわからないかもしれません。

    いずれにしても世の中の損を引き受けるというのは、身だけではなく心もすり減らすことなんだなぁ…と思いました。

    本音と建て前ってバランスが難しいし、自分のなかで自分の外面と本当の自分と自分が思い込んでいるものを調和させるのも難しい。

    楽に楽しく生きていきたいけれど、ときには苦しんででも自分を自分が好きでいられるような生き方をしなくてはいけないねぇ…。

  • 小股潜りの又市・靄船の林蔵が若くて血気盛んだったころ、江戸の損料屋「ゑんま屋」の雇われ仕事をしていた頃の話。

    損料屋とは物を貸し付けて、その物が傷むなり減るなりすることで生まれる”損”を代金として取り立てる生業である。
    現代の何でもレンタルの時代にも通じる職業といえる。

    しかし損料屋「ゑんま屋」は物以外にも、人の命や行状の損得の取り立ての依頼を受けて動く。すなわち一文字屋同様の稼業と言える。

    「前巷説百物語」が他の巷説百物語と違うのは、他のは全てきっちり台本のある舞台を演じる劇場型の仇うちや復讐譚であり、種明かしは最後に来るのに対し、今回はまずはじめに仕掛け・手の内を明かした上で、それを妖怪話になぞらえて、やや行き当たりばったりに仕掛けが進むというところ。又市たちも”青い”時代なのである。

    しかし又市がこの「ゑんま屋」で働く時代が、人助けという仕掛けの ”図面=台本” の作り方を会得していく時代であり、他の巷説百物語の ”御行又市” が出来上がる時代でもある。 

    その”台本”に欠かせないのが妖怪である。
    妖怪とはその存在の有るか無きかを証明しえるものでもなく、人の心が在ると思えばそこにはあり、無しと思えはそこには無いという曖昧なもの。
    今回はその妖怪のし掛けをこしらえて(計画を練る・小道具大道具を作る)妖怪のみならず神まで出現させるという奇抜ぶりに驚かされる。

    市井におこる哀しい話が切実なところもあるけれど、妖怪譚として読むことで後味は悪くない。

  • 巷説百物語シリーズの前日譚。
    法で裁けぬ悪を斬る「必殺仕事人」の体裁を保ちつつ、その在り方に当人たちが悩むようになるというミステリにおける「後期クイーン問題」のようなテーマまで踏み込む。
    本の厚みに見合った重厚な主題。

  • (2015.4.7)
    (737P)

  • 「―損料屋の手下でも双六屋でもねェ。俺は今日から・・・ただの御行乞食よ―」

    又さんが、御行になるまでの未熟さを愛でる巻。ういやつめ。

    百介が「又市さんは臆病なほど、死人を出さないことに気を遣っている」的なことを言っていましたよね。納得。納得。凄まじい展開でした。死線くぐり過ぎ。

    「旧鼠」から"続"の「狐者異」に繋がってるんですねー。感慨深い。

  • 京極夏彦の文体は年々しつこくなってきている
    京極シリーズの印象というのもあるんだろうけど短編もなんか読みづらいんだよね
    巷説百物語シリーズだけはなぜかそれがなく読みやすいのは不思議。時代物だから京極節が緩和されてるんかねえ
    おすすめは後なんだけどこれを楽しむためには最初から読まないといけないという罠
    これは又市がまだ御行になる前の物語
    1冊目にも出てた祇右衛門を絡めて見事に又市を御行に仕立て上げたなと
    しかし久瀬棠庵はどうなったのか

  • 巷説シリーズ第4作。

    4作目ではあるけど、言わば「エピソードゼロ」の位置付け。
    御行・又市誕生の物語を後に繋がる伏線たっぷりに描いている。

    各話は基本的に「起承“結”転」という感じで展開。
    解説(蘊蓄披露)役の本草学者・久瀬棠庵が仕掛けのミソとなる妖怪の話を語り、狂言回し役の同心・志方兵吾が「表側」から見た仕掛けの顛末を見聞きし、又市らによって仕掛けの「裏側」が語られる。
    巷説シリーズで考物作家・山岡百介が担っていた役を、棠庵・志方の2人が演じているという寸法。

    これまで見せてきたクールさは何処へやら、『前』の又市は“青臭さ”全開の若造。
    「どんな悪党だろうが死んでいい命なんてねぇ」
    という信念の下、事件を収めるべく奔走・奮闘する姿は少年漫画の主人公のよう。

    ただ、ストーリーは充分おもしろいのだけど、作者が登場人物に語らせる「人生論」にはちょいと鼻白むことも…
    自殺未遂をした女の脇で、又市と手遊屋・長耳の仲蔵がその女の生き方について議論するシーンなんて、読んでいてもう小っ恥ずかしいのだ。

    単純な好みで言えば、これまでのシリーズの方がおもしろい。

  • 妖怪「寝肥」
    ごくごく身近にいるような気が・・・

  • またまた、勢いで再読。そもそも小股くぐりの発端と結末に至る因縁の端緒が描かれている。改めて読み返すと、靄船から百介までも登場しているので、本当に前の話である。サーガものとしては前日譚を描くことは良くある話ではあるが、矛盾なく成立しているところは凄い。続けて読めば良く分かる。

  • 短編だから読みやすい  
    と、書きたいところですが、今回ばかりは長かった……  
    以下ただのメモ  

    「寝肥」  
    はじまりのはじまり  
    ここで大体役者がそろうやつ  
    好きあっているのに疎んでしまうのはやるせないばかり  

    「周防大蟆」  
    又市の「殺しはしたくない」精神が良く見て取れる  
    六人が死ぬところを一人でとどめたのは流石、と私なら思ってしまうけれど、又市はそれでも釈然としないらしい  
    そしてまさかの(?)……  
    お幸せに、とは言えないのかもしれないけれど、お幸せに  

    「かみなり」  
    中盤にしてクライマックス??  
    こ、小右衛門キタ━(゚∀゚)━!  
    万三が凄くいいやつ  
    というか同心と岡っ引きコンビが凄く良い  

    「山地乳」  
    江戸版デスノート  
    祇衛門  

    「旧鼠」  
    こんなに殺す?と思うほど、敵も味方もたくさん死ぬ  
    ゑんま屋一党ではないおちかまで  
    双六売りの又市が、巷説以降のような姿になったきっかけのお話  
    おぎんさんもでる

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プロフィール

京極 夏彦(きょうごく なつひこ)
1963年、北海道小樽市生まれ。小説家としてだけでなく、世界妖怪協会・世界妖怪会議評議員(肝煎)など妖怪研究家であり、他にも装幀家、アートディレクター、俳優など様々な顔を持つ。
広告代理店を経てデザイン会社を設立。1994年、そこで暇つぶしに書いた『姑獲鳥の夏』を講談社に送ったところ極めて評価を受け、同年、即出版・デビューに至る。瞬く間に執筆依頼が殺到する人気作家に上り詰めた。
1996年に『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、1997年『嗤う伊右衛門』で第25回泉鏡花文学賞、2002年『覘き小平次』で第16回山本周五郎賞、2004年『後巷説百物語』で第130回直木三十五賞、2011年『西巷説百物語』で第24回柴田錬三郎賞など、数多くの受賞歴がある。
代表作に「百鬼夜行シリーズ」「巷説百物語シリーズ」「豆腐小僧シリーズ」など。

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