世界が完全に思考停止する前に (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (279ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043625031

感想・レビュー・書評

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  • 森達也さんは、切れ味鋭いとか、客観的でわかりやすいとか、そういう表現者じゃない。逡巡し、矛盾を抱え、右往左往している。そしてときに感傷的だったりもする。だから私は彼のことが信頼できるんだと思う。
    世の中の出来事は、善と悪、賛成と反対という二項対立で割り切れない複雑なことで溢れてるから。
    森さんは他者への想像力をめぐらせ続け、同時に一人称で思考し表現し続ける。誰かが使った言葉ではなく、自分の言葉で。
    ドキュメンタリーが客観的で事実そのままだというのは嘘だという。ドキュメンタリーこそ主張がある、主観的な表現物(であるべき)だと。なるほどねー。ほんと、そうだわ。
    「A」を観たという高校生に沖縄で声をかけられたエピソードは良かった。

  • 一人称で語り続ける稀有なジャーナリスト、森達也のアンソロジー。でも、朝日や週刊金曜日のもつ定型性や暴力性はスルーなの?立ち場を持つ思考停止のかたちと揺れ?

  • 少し、勘違いをしていたみたいだ。

    わたしは彼のことを、時事問題を新たな視点から
    論じてくれる評論家のような人だと思っていた。
    しかし、実際の彼は映画監督であり、
    それ以上でもそれ以下でもない、という意識で
    文章を書いているようだ。

    だからこそ、失礼だとは思いながらも言わせてもらえば
    この本は世の中に出版するものにしては、
    テーマに対して考え方や内容が稚拙である感が拭えなかった。

    それでも、この本が売れているということは、
    共感する人たちがいるということなのだろう。

    何も考えていない人が、新たな気づきを得るために
    読む分には良いかもしれないが、そうでない人には
    浅薄な考えをただ並べたものにしかみえないのでは
    ないのだろうか。

    わたしは著者の考えが他人とずれているとも思えないし、
    彼のように考えている人は寧ろ多いと思う。
    大多数の人は、安易で一見わかりやすく語りかけてくる
    著者のことばに、手放しで賛同してしまうのだろうか。

    もしそれが事実であるならば、怖ろしくて考えたくもないが
    世界は既に思考することをやめている。 

  • 森達也の随筆集。解説で姜尚中が述べているように、森達也は"一人称の思考と感性"を体現しており、全体主義的な日本では珍しいタイプの知識人だ。彼の個人の視座に立った文章は、今の日本に疑問を抱く多くの人に感慨を与えると思う。

  •  たまには硬い本を読んで勉強をしたいと思うことがあって買ったのが10年以上前で、しかも文庫なので、元の本は2004に書かれており、時事問題を扱っているので今ではうっすらと記憶にあるような話題が多い。でもあまり硬くなくて読みやすかったし、難しくもなかった。人々の感覚の「麻痺」を強く指摘していて、今ではもっとひどくなっている。特に麻痺しているのはオレ自信で、もはや社会問題にほとんど関心がなく、消費税が何に使われていても、どれだけ上がってもどうでもいいとしか思えない。感覚としてはどうでもいいのだけど、実際問題このままではよくないので頭のいい人に頑張ってもらうしかない。

  • 図書館

  • イラク戦争や、北朝鮮拉致問題、
    オウム事件などについての矛盾や欺瞞、
    そういった、「メディアでは語られないもの」について、
    「語られていないものがある」という自覚を持つこと。

    寄稿された文章が中心で、重複する内容も多いため、
    途中で投げだそうかとも思ったが、
    読んでいるうちに、どんどん引き込まれてしまった。

    ある意味正論ではあるが、「では正しいって何?」という
    問題設定から入らなくてはならなくなる。

    そういう問題設定を促す読み物なのかもしれない。

    表現されている時点で、ノンフィクションというものはなく、
    ノンフィクションというものがあるとすれば、
    それは表現ではなく情報だ、という見方が根本かもしれない。

    その情報すら、意図的に、もしくは無意識的に、
    選別された結果である可能性が高いのだが。

    [more]
    (目次)
    世界は今、僕らの同意のもとにある。
    (作られる聖域、戦争は嫌だという「感情」 ほか)

    いつになったら、日本は大人になるんだろう。
    (タマちゃんを食べる会、で、何だったんだろう、あの牛丼騒ぎって。 ほか)

    メディアは、どこまで無自覚に報道し続けるのだろう。
    (メディア訴訟は黒星続き、消された五分間 ほか)

    二十一世紀のメディアを生きる人々
    (戦場のフォトグラファー、精神科救急研修医。 ほか)

  • 世界が完全に思考停止、したのか。

    単行本としては2004年に出たもの。著者が警告した世界になっているのではないか。思考停止しているのではないか。「一人称の主語」から離れ、「我々は」「私達は」「我が国は」で語っていないか。悪を罰することを楽しんでいないか。不特定多数の主語となって、正しくない人や物事を裁いていないか。この人のことばは、きっとますます忌避されているだろう。でも著者が、この世界にいる限り、私も「私は」で考えたい。私がどうするのか。

  • 著者の本は好きです。

    が、これはあんまり好みじゃなかった。

    多分、時系列でエッセイをまとめたものでなんか物足りなかった。

  • なんでも、かんでも、反対ばっかり。
    死刑反対、オウム 北朝鮮 擁護、でイヤな感じ。
    私の中では、小田嶋隆さんを同じようなくくりにしています。でも、小田嶋さん方が明るい、シャレが効いてる。
    と思って読んでましたが、途中でプロレス好き、であることを知りました。
    その事だけで、前言を撤回して、森さんを大好きになりました。

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著者プロフィール

森 達也(もり・たつや) 1956年、広島県生まれ。ディレクターとして、テレビ・ドキュメンタリー作品を多く製作。98年オウム真理教の荒木浩を主人公とするドキュメンタリー映画『A』を公開、ベルリン映画祭に正式招待され、海外でも高い評価を受ける。2001年映画『A2』を公開し、山形国際ドキュメンタリー映画祭で特別賞・市民賞を受賞する。11年『A3』(上下巻、集英社文庫)で講談社ノンフィクション賞を受賞。現在は映像・活字双方から独自世界を構築している。16年に映画『FAKE』、19年に映画『i-新聞記者ドキュメント-』で話題を博す。著書に『死刑』(角川文庫)、『「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい』(ダイヤモンド社)、『ニュースの深き欲望』(朝日新書)、『虐殺のスイッチ』(出版芸術社)など多数。

「2021年 『定点観測 新型コロナウイルスと私たちの社会 2020年後半』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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