それでもドキュメンタリーは嘘をつく (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
3.76
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本棚登録 : 267
レビュー : 28
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043625055

作品紹介・あらすじ

「公正中立」な視点という共同幻想に支えられながら、撮り手の主観と作為から逃れられないドキュメンタリーの虚構性と魅力とは何か?情報が「正義」と「悪」にわかりやすく二元論化され、安易な結論へと導かれる現代メディア社会の中で、ドキュメンタリーを作る覚悟と表現することの意味を考察したエッセイ。自らの製作体験や話題の作品を分析しつつ、自問と煩悶の末に浮き彫りにした思考の軌跡。

感想・レビュー・書評

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  • 森達也のドキュメンタリー論とでも呼ぶのが正しいのだろうか。

    たしかに本書に書かれているように、「ドキュメンタリー=公正なもの」という意識は我々の中に根付いている。
    ただ、実際は監督の意思にそって進められている映像作品であり、それが正義だとは限らない。
    しかし、観ることで自分のなかに問題定義を呼びかけてくる作品かどうかは重要で、少なくとも私にとって森氏の映像作品や著者はそういう存在であることは確かだ。

    ドキュメンタリーが好きだと自負する人こそ、本書を読んで頭をガツンと殴られてほしい。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「「ドキュメンタリー=公正なもの」という意識は」確かに見る時は、そこからスタートしている。これからは気を引き締めて見始めなきゃ。。。
      「「ドキュメンタリー=公正なもの」という意識は」確かに見る時は、そこからスタートしている。これからは気を引き締めて見始めなきゃ。。。
      2012/03/02
    • ayami Imanishiさん
      ドキュメンタリーを観て「かわいいそう」だとか「いい話」だとか思うのは簡単なのですが、映像から何を嗅ぎとるかということが大事なのかなぁと思いま...
      ドキュメンタリーを観て「かわいいそう」だとか「いい話」だとか思うのは簡単なのですが、映像から何を嗅ぎとるかということが大事なのかなぁと思います。難しいんですけどね……。
      2013/03/13
  • もりたつは、私のメディア的なものへの視点に大きな影響をくれた人です。
    「真実」を語るジャーナリストと「現実」を語るドキュメンタリーが何よりもうさんくさいと思う私には、好きなメディア論。

    ・ドキュメンタリーが描くのは、異物が関与することによって変質したメタ状況なのだ。作り手が問われるべきは、その事実に対して、どれだけ自覚的になり、主体的に仕掛けられるかだろう。
    ・その仕事は、客観的な事実を事象から切り取ることではなく、主観的な真実を事象から抽出することだ。
    ・わかりやすさばかりが優先された情報のパッケージ化をマスメディアが一様に目指す状況だからこそ、あいまいな領域に焦点をあてるドキュメンタリーの補完作用は重要な意味をもつ。
    ・自らのパーソナルな主観・世界観を表出することが最優先順位にあるドキュメンタリーと、可能な限りは客観性や中立性をつねに意識におかなければいけないジャーナリストとは、本来は水と油の関係のはずだ。
    ・内面的な矛盾や葛藤が過剰であればあるほど、被写体としての魅力は増大する。
    ・撮る側の主体と意識が問われる・・・その覚悟がなければ、現実に負ける。
    ・アメリカの病理の本質は、高揚した正義であり、徹底した善意でもある。
    ・言葉の最大の機能は規定だ。そして僕の考えるドキュメンタリーは、その規定からつねにはみだす領域にある。だからこそ、ドキュメンタリーそのもを規定できない。

    ・・・読みながら、「THE COVE」を見た時感じた強烈な違和感がはっきりしました。なるほどね。

  • 2020年10月3日読了。

  • (01)
    ドキュメンタリーの作り手によりドキュメンタリーが解説される。そこには、ドキュメンタリーが本当か嘘かという葛藤とともに、内幕や内情、そして弁明も、言語(*02)として領域化している。つまり、「ドキュメンタリーは嘘をつく」という言明によって、嘘をつくドキュメンタリーを救いつつ、ドキュメンタリーの作り手は、「嘘をつく」ことに嘘をつかずに真摯に向き合っている姿勢が示される。

    (02)
    特に序盤では、ドキュメンタリーの歴史が綴られ、映画界とテレビ界の双方で占めていた位置が指し示される。著名なドキュメンタリーの作家や作品、著作も紹介され、ドキュメンタリーの入門編として読むこともできる。こうした作り手との交流の場面や著作からの引用もところどころに挟まれながら、著者自身の自作の制作プロセスについても言及されている。
    報道との違い、セルフドキュメンタリーの内向きなど、ドキュメンタリー内外の差異についても触れており、逆に劇映画におけるフィクション性とは何かを考える機会も与えている。

  • 「 A 」観たいなぁ。
    「 A2 」も。
    「 A3 」にも期待。

  • 170814読了

  • ドキュメンタリーに特化したエッセイだけに、いつものようにテーマの使い回しがなく、またドキュメンタリー映画案内としても参考になる。

  • 何事もやればやるほど、新鮮味は落ちていく。

  • 僕にとっての愛読書で、学部生の時に買って、読むのは今回で三回目。
    「A」、「A2」や、最近だと「311」といったドキュメンタリー映画で知られるドキュメンタリー作家の森達也が唱えるドキュメンタリー論。

    一般的には、「事実・現実をそのまま写したもの」として認識されている「ドキュメンタリー」というジャンルが持つ虚構性、恣意性、劇映画との境界のなさをテーマに語ったもの。

    森達也の本は好きでわりと色々読んだのだけど、個人的にはこれが一番おもしろい。

  • ある視点にはその人物の恣意性が絶対に付いてくる.
    恣意性を排除することはできないが、その事には常に自覚的でいないということを繰り返し教えてくれる.
    誰かを傷つけているという自覚や覚悟無しに自分の意見は表明できない.

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著者プロフィール

森 達也(もり・たつや) 1956年、広島県生まれ。ディレクターとして、テレビ・ドキュメンタリー作品を多く製作。98年オウム真理教の荒木浩を主人公とするドキュメンタリー映画『A』を公開、ベルリン映画祭に正式招待され、海外でも高い評価を受ける。2001年映画『A2』を公開し、山形国際ドキュメンタリー映画祭で特別賞・市民賞を受賞する。11年『A3』(上下巻、集英社文庫)で講談社ノンフィクション賞を受賞。現在は映像・活字双方から独自世界を構築している。16年に映画『FAKE』、19年に映画『i-新聞記者ドキュメント-』で話題を博す。著書に『死刑』(角川文庫)、『「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい』(ダイヤモンド社)、『ニュースの深き欲望』(朝日新書)、『虐殺のスイッチ』(出版芸術社)など多数。

「2021年 『定点観測 新型コロナウイルスと私たちの社会 2020年後半』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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