疾走 下 (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043646036

作品紹介・あらすじ

誰か一緒に生きてください-。犯罪者の弟としてクラスで孤立を深め、やがて一家離散の憂き目に遭ったシュウジは、故郷を出て、ひとり東京へ向かうことを決意。途中に立ち寄った大阪で地獄のようなときを過ごす。孤独、祈り、暴力、セックス、聖書、殺人-。人とつながりたい…。ただそれだけを胸に煉獄の道のりを懸命に走りつづけた少年の軌跡。比類なき感動のクライマックスが待ち受ける、現代の黙示録、ついに完結。

感想・レビュー・書評

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  • あまり、重松清さんらしい作品ではないと感じました。
    暗い話だったけどどこか心に残る気もします。
    いつものようなあたたかい気持ちになる本が好きな人は好みじゃないかもしれません。

  • 中谷美紀さんのエッセイの中で、「疾走」の台本が~、と書かれていて気になっていました。しかし、この表紙はなんとからならないものか。「よまなくちゃ」と思っていても、なかなか手が伸びなかったです。

    中谷さんの配役は、、、そう。アカネさんでした。
    どんな演技をされているのでしょう。
    気になります(が、その他の配役を見て、これはだめだ、と)。
    観ないと思います。ごめんなさい。

    読み終えて。
    みなさん言われるように、重くて暗いです。
    でも、本人も、エリも、悪いでしょうか。
    その立場に置かれて同じ人生を歩め、といわれたらどうでしょう。
    もっと悲惨な結果になったかもしれません。

    寂しい。人とつながりたい。
    そう思って、苦しんで。

    海外の書籍になりますが、「ザリガニの鳴くところ」、読まれましたが?
    誰も助けてくれないのです。
    自分で解決するしかありません。
    (社会も、法律も守ってくれない。逆に足かせになることもあるかもしれません=そんな意味でいっています。人間だってただの動物です。)

    でも、人間以外の動物たち、自然も、みんな自分で解決しています。
    自分で解決して、そのペナルティが課される、それが人の社会です。

    無茶ぶり、ダークな世界があって、それが隠されています。
    闇が口を開け飲み込もうとしています(最近、特に感じるのです。こわいです。そんな本ばかり読んでいるからかな? でも違うとおもいます)。

    +++

    繋がりたい。
    そう思うことは全く自然であるし、当然のこととおもいます。
    この本では牧師さんが出てきます。
    彼の存在、ひまわりの存在は大きかったと思います。
    宗教は心の支えになっていくものだ、と思いました。

    日本の他の宗教はどうなのでしょう。
    そこまで心の支えになっていないかもしれません。
    それが宗教離れにつながっているのだともおもいます。

    キリスト教は・・・
    どうでしょう。こうした救いの面は素晴らしいです。
    でも、闇が深すぎると感じます。
    ワシントンDCが何たるや、大量の金塊をどうやって入手したか、アドレノ◯◯◯ 。
    DCがいま、どうなっているか。
    報道されないのは、知らせたくないからにほかなりません。

    (訂正)
    > 闇が深すぎると感じます。
    そんな甘いものではなかったです。知らないほうが幸せかもしれません。
    https://booklog.jp/item/1/B09MSM7SQC

  • 痛い…痛すぎる…(༎ຶ⌑༎ຶ)



    この手の小説は、読んでいてとても辛い…。
    苦手分野です。

    15歳の少年シュウジが背負った運命が辛すぎるお話です。

    彼の住む干拓地がリゾート計画で変わってしまうのと同時に、優秀でプライドの高い兄が犯罪に手を染め、家族が崩壊していく。

    干拓地の教会で聖書を手にして以来、聖書の言葉が引用されながら話が進みます。

    中学生になったシュウジは兄の犯罪が原因で、学校で酷いいじめにあいます。

    ーーーーー

    おまえは思い出す。いつだったか、あの頃はまだおまえの「親友」だと言っていた徹夫と、教会の講話会で教わったことを話したのだった。
    「孤立」と「孤独」と「孤高」の違いについて、だった。
    仲間が欲しいのに誰もいない「ひとり」が、「孤立」。
    「ひとり」でいるのが寂しい「ひとり」が、「孤独」。
    誇りのある「ひとり」が、「孤高」。(中略)
    おまえは、まだ自分の「ひとり」が三つのうちどれに当てはまるか、わからないでいる。
    (本文より)

    ーーーーー

    誰かと繋がっていたい。と思ううちは孤独です。

    社会から孤立した時に思い出しそうな言葉。

    神父には弟がいて、人を殺した犯罪者です。
    弟が、シュウジに会いたいと言ったのです。

    シュウジは空っぽの彼を見て衝撃を受けます。

    ーーーーー

    「俺たちは、同じ、だ」
    (本文より)

    ーーーーー

    自分の恋人一家を殺した弟は、からっぽの、穴ぼこのようだった。

    多感な年頃の中学生には影響が強すぎる…。

    弟が言った言葉も描き方が秀逸。
    魂の宿っていないセリフということが読んでいて伝わってきます。
    痛い…(T-T)


    まさに「疾走」というタイトルがピッタリ。

    過酷な人生を駆け抜けた少年の、衝撃のラスト。

    いつまでも心に残る作品だと思います。

  • 良かった。

    全体的には最初から最後まで重くて暗いトーンで物語は進んで行きますが、後半には雲の切れ間から日が射すような暖かい気持ちになれます。

    重松清さんは本当に思春期から青年時代の心理描写を描くのが上手いと思います。

    オススメです!

  • やっぱり重いなぁ
    出てくる人たち概ね不幸(・_・;

    性的描写ちとキツイ...

    これでもかぁ、これでもかっ!ってくらいにどんどん落ちていく感じです。
    誰かと繋がっていたいというシュウジ、あたしんとこ来い!

    正直、好きなお話ではありませんが、すごく印象的でした。

  • 目を背けたくなるような描写のなか、シュウジがほんの僅かでも救われることを願いながら読みました。
    よく人が“堕ちていく”と言うけれど、シュウジはこの物語の初めから堕ちていたと思います。タイトルのあらわすように“疾走”だったなと思います…。

    最初から最後まで苦しいけれど、シュウジのような、それよりも苦しい人生も必ずどこかにあるんだと思うと行き場のない悲しみを感じる。

  • この作品は今まで読んできたものとは違う まさしく衝撃作でした。
    伝えたい事はよくわかるのですが、性的な表現や暴力的な表現がきついので、読んでいて辛くなりました。
    読み始めの頃に映画化もされていることを知り、DVDも買ってしまいました。
    今は観ようか 迷っています。
    次は 少しほのぼのとした作品を選んで読みたいと思います。

  • 読み終わった。そっか、こんな最後だったっけ。
    シュウジという少年が背負わされた過酷な運命を、私も共に駆け抜けた。誰かとつながりたい、ただそれだけのことなのに、どうしていつも私たちは「ひとり」でしかいられないんだろう。シュウジも、エリも。もどかしくて行き場のない気持ちが溢れ、苦しくて苦しくてしかたなかった。「ひとり」と「ひとり」が一緒に生きるって、こんなに難しいことなのか。
    読み終わったあとは、それこそ全力疾走したかのように疲労し、息切れしていた。当時、私の世界はここから一変したのだ。

    「シュウジ、遠くの町に行っても、これだけは忘れないでください。あなたの憎んだふるさとの片隅の小さな庭に、ヒマワリが咲いていることを。その花は、いつも太陽のほうを向いている、ということを」

    送り出すときに神父さんが言ってくれたこの言葉の尊さを思う。誰かが待ってくれているということは、きっと想像を遥かに越え人間を強くする。
    シュウジは自分の生を一生懸命に生きた、生き抜いた。それは確かなことだ。
    ふるさとでは、今年もまたヒマワリが咲いていて、生が続いている。失われない命がきらめいている。

    「伝道の書」第一章。
    世は去り、世はきたる。
    しかし地は永遠に変らない。
    日はいで、日は没し、その出た所に急ぎ行く。
    風は南に吹き、また転じて、北に向かい、
    めぐりにめぐって、またそのめぐる所に帰る。
    川はみな、海に流れ入る、
    しかし海は満ちることがない。
    川はその出てきた所にまた帰って行く

    なんだか「生きるってなんだろう?」「死ぬってなんだろう?」「どうせ死ぬのにどうして生きなきゃいけないんだろう?」とか、そういう原点に立ち返るような素朴な疑問を、ひさしぶりに思い出した。
    たとえば俳優の彼は、どうして自死を選んだのだろう。
    順風満帆な仕事、充実した私生活、容姿端麗。才能に溢れ未来も明るい恵まれた人生に思える。いったいなにが彼の心から光を奪ったのだろう?彼はずっと「ひとり」だったんだろうか。
    考えても答えがわからないことを、それでも考え続けたい。彼が生きた証、命のきらめきを、私はぜったいに忘れない。

  • うわああああああ、きつい。
    全部通してとってもきつい作品でした。すごく闇が深い!

    友達とキャッキャ戯れるお兄ちゃんの後を追っかけ回す純粋な子どもだった時代からの没落。沼にはまり込んでもがいても抜け出せない。そのうち抜け出すことを諦め沈んでいく足元を眺めるようになってしまう。

    どうして誰一人として隣に並んでくれる人がいなかったんだろう。
    特に両親がね。
    神父さんは別枠なんだろうな。ただそこに在る人として必要な大人。

    ただひたすら人と繋がりたくて、隣りにいてほしくて、故郷に帰りたかった。
    切なくて苦しいです。
    最期にエリちゃんを悪者にしないで故郷で撃たれて亡くなったのが、彼にとっては本当に救いだったと思う。

    最後の章はよかったー!
    キラキラとしてて泣いてしまいます。

    ものすごい人間くさい救いのない小説でした。(褒め言葉)




    @手持ち本

  • 初めて読んだときの衝撃たるや・・・
    しばらくほかの本を読めなかった。
    ほかに移る前に連続で4回読み返したかな。
    それくらい繰り返し読んで消化しないといけなかった。

    重松作品にはそれまで
    「いろんな困難はあるけれど、最後はあたたかいんだよね」みたいなイメージを
    もっていたので・・・こんなに残酷なことができる人なのか!と怖くなった。
    でも、まったく救いがない中でも、
    たしかに重松作品だなと思うフレーズがたくさんあって、
    かなり影響受けたと思う。

    二人称で語られているのも、めちゃめちゃ合うんだよな。
    「おまえ」って言われると自分に言われているような気になるというか、
    自分も苦しくなってきて本当にしんどい。
    大人に振り回されてしまうシュウジ。
    「幸せになるために人は生まれ、生きていくというのなら――
    その「幸せ」の形を見せてくれ。ここを目指せばいいんだ、と教えてくれ」
    まだ子どもなのに。。。やるせない。
    子どもだからやっぱり限界はあるし、逃げても逃げても檻の中で、
    それを上から見ているかのような語り手が「おまえ」って語り続ける。
    すごく残酷。

    ずっと息苦しくて、
    読んでいる間はまさに「疾走」しているかのような感覚だった。
    (こんなに秀逸なタイトル・・・)
    最初怖いなと思っていた表紙も、
    読み終えるころにはいとおしく(?)思えてきてしまうくらいに。
    はぁ、しんどかったな。

    「わたしはエリのために祈ります。シュウジのために祈ります。
    災いや不幸せをとりのぞくためではなく、二人が、
    災いや不幸せを背負ったままでも前に進めるように。
    いや、前に進む必要すらないかもしれない。
    立ち止まっていても、うずくまっても、
    体を起こす気力すらなく寝そべっていたってかまわない。
    ただ、絶望しないでほしい。
    わたしが祈るのは、ただそれだけなのです。」

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著者プロフィール

重松清
1963年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。91年『ビフォア・ラン』でデビュー。99年『ナイフ』で坪田譲治文学賞、『エイジ』で山本周五郎賞、2001年『ビタミンF』で直木三十五賞、10年『十字架』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『流星ワゴン』『疾走』『その日のまえに』『カシオペアの丘で』『とんび』『ステップ』『きみ去りしのち』『峠うどん物語』など多数。

「2023年 『カモナマイハウス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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