哀愁的東京 (角川文庫)

著者 : 重松清
  • 角川書店 (2006年12月22日発売)
3.41
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  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043646043

哀愁的東京 (角川文庫)の感想・レビュー・書評

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  • しっとりとした空気感の連作長編。

    絵本作家としての仕事も、プライベートも出口の見えないスランプに陥っている中年男性のものがたり。

    彼が副業のフリーライターの仕事を通して出会う人々は、やっぱり何かを失っているか、失おうとしている人たちで、決して幸せな話ではない。
    主人公同様、この作者自身が文章に中途半端な優しさをもちこまないのだろう。
    それでも読み終わったときに静かな充実感がある。

    見過ごしてきたもの、見ようとしなかったものと向き合いはじめてから彼が描きとったスケッチが、新しい絵本となる終わり方は、美しい。

  • 絵本を出版したことのあるフリーライター、進藤宏。もう今では絵本が書けない。
    ゴーストライターやゴシップ雑誌の読み飛ばし記事、名前の出ない汚れ仕事でも何でもやる男。
    雑誌の取材や自身の過去と向き合うために、何人かのひとたちと会って話す。進藤さんも含め、出会うひと全員がかつて輝いた時期があった。そして今は落ちぶれている。負け犬と呼ばれる人々なのかもしれない。
    過去の栄光を忘れられず、お互いの傷跡を傷をなめ合う負け犬たちがただただセンチメンタル。哀愁的。

    -------------------------------

    人生プラスマイナスゼロという話がある。良いことがあればその分の悪いことがあり、その逆もまた然り、という話。

    充実している時間を過ごしているひとはそれを失わないように幸せにしがみつくし、
    今がどん底だと思うひとはこれから人生巻き返しだと儚い希望を生きる糧にする。

    人の一生がプラスマイナスゼロなわけない。
    だけど、今あるものを失う不安は捨てられないし、勝手な希望を持ってしまう。だからどうしたと言われればそれまでなんだけど、そういう弱さに人間味を感じる。
    過去を振り返るとき、思い出に勝てるものなんてない。弱くて当たり前なのに勝とうとする、自分だけは勝てるような気がしてしまう。そんな弱さを人間味とかそういうふうに呼ぶのかな。

  • 哀愁、歳を重ねないとわからないもの。懐かしみであったり後悔であったり。じっくりと読むことができて良かった。

  • 最後の章を読んで、やっとわかった。
    自分のこのモヤモヤ感、喪失感が何か。


    哀愁とは、何かを失って終わりかけていることなんだ。
    この作品の全ての章を振り返れば、確かに「終わり」「結末」がないことに気付く。
    その後どうなったの?って。


    最後の章で、小さな無邪気な子が、
    東京タワーの双眼鏡を覗き込み、
    「あったよ!ぼくんちがあったよ」
    とはしゃいでいる姿。
    こんな広い景色で、
    こんな広い東京で、
    自分の家なんか見つかるわけないのに、
    小さな子は、喜んでいる。
    私には、
    自分の家や自分の住む町どころか、
    自分の存在さえ、見つけることできないんだろうなぁ。
    きっと、進藤が流した涙と同じ涙を流すことが出来ると思う。



    大好きな重松作品。
    大事な1冊になった。
    私は、まだ20代なのに、
    この本に共感できるくらい、哀愁漂ってます。
    ちょっとやばい?

  • 絵本が書けなくなった絵本作家がフリーライターの仕事でかかわる様々な人、応援してくれる編集者などとのつながりを通じて話は進んでいく。終わりまで読むと、哀愁的東京というタイトルそのものの話だなーと。
    様々な登場人物を通して プロとは何かということを考えさせられ、プロゆえの重圧と哀しさが伝わってくる。これが重松清さんのプロ意識か? とすると、昭和的でこれこそ哀愁的。。。演歌的である。

  • 重松清の文章は人間らしい生っぽさみたいなものがあって好き。
    その人の人生の連続性が見えるからそう思うのかなー。

  • 短編集。
    舞台は東京ですね。現代東京の小市民達。
    人のノスタルジーを掘り起すような作品で
    読んでいると、あぁ、こういう風景有るかもー。と。

    遊園地とかのぞき部屋とか、
    今は廃れて錆び付いているような、
    見た事無いのに行った事が有るような
    知らないのに、こう言う所有ったねー、と思うような。

    「哀愁的東京」
    「◯◯的◯◯」
    こういう言葉遊び、イイナー。

    誰もいない何も無い場所に居るよりも
    たくさんの人が居る都会の方が
    「哀愁」的な気持ちが有るような気がする。

  • 重松清の小説は、子供の話も良いが大人のも良い。ちょっと突っ張った感じだが、主人公の真剣に向き合う態度、真面目さが伝わってくる。地方から都会に出てきた人の殺伐たる人の生活、人いきれ。そこからいろんな事を吸収して年老いてゆく。2017.2.24

  • 読み始めからとても惹かれた。
    暗めのトーンや誰が救われているかも分からないような
    でもそれが人生や人間ってもんだなと思えるし、リアリティがあった。
    しかしながら死が多すぎて、逆にそれでフィクションだなと
    引き戻されてしまった。本末転倒な残念さでトーンダウン。

  • 新作を書けなくなった絵本作家。副業フリーライターの進藤宏が、最後に書いた絵本「パパといっしょ」から繋がりで東京の哀愁を綴った連作長編小説。
    そんな「パパといっしょ」が読みたい。

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