哀愁的東京 (角川文庫)

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感想 : 148
  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043646043

作品紹介・あらすじ

破滅を目前にした起業家、人気のピークを過ぎたアイドル歌手、生の実感をなくしたエリート社員……東京を舞台に「今日」の哀しさから始まる「明日」の光を描く連作長編。

感想・レビュー・書評

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  • 絵本が書けなくなったフリーライター進藤。フリーライターの仕事で生計をたて、様々な人に出会う。
    出会い、見送ってきた東京。
    タイトル通りのイメージのお話でした。最後に少しは希望がみえるものの、主人公が関わる九編これでもかと暗く重くのしかかってきました。
    憧れの華やかな東京、だからよけい、もの悲しさを感じる。時が流れることの悲しみ、東京という街で織りなす人たちのドラマ。
    主人公進藤は40歳、働き盛りという年齢、もっとエネルギッシュに突っ走ってほしい。と思うのですが、苦悩あり、自分の居場所も見えてくる頃、実際心の内側はこうなんだなと思いました。
    哀愁はなにかを喪うことで感じる。それの繰り返し、そこからなにかを見出すのは自分。

  • 9編からなる連作です。
    重松氏の実生活に重なる「フリーライター」の物語。
    短編集とは違う、とても深みのある作品に仕上がっています。
    特にタイトルにもなっている最後の「哀愁的東京」は哀しすぎです。
    人生の悲しさ・哀愁いっぱいの作品です。
    でも読後感は悪いものではなく、そっと心の中に収めておきたい感情です。
    この本も大切なコレクションにしたいと思います。

  • しっとりとした空気感の連作長編。

    絵本作家としての仕事も、プライベートも出口の見えないスランプに陥っている中年男性のものがたり。

    彼が副業のフリーライターの仕事を通して出会う人々は、やっぱり何かを失っているか、失おうとしている人たちで、決して幸せな話ではない。
    主人公同様、この作者自身が文章に中途半端な優しさをもちこまないのだろう。
    それでも読み終わったときに静かな充実感がある。

    見過ごしてきたもの、見ようとしなかったものと向き合いはじめてから彼が描きとったスケッチが、新しい絵本となる終わり方は、美しい。

  • 絵本を出版したことのあるフリーライター、進藤宏。もう今では絵本が書けない。
    ゴーストライターやゴシップ雑誌の読み飛ばし記事、名前の出ない汚れ仕事でも何でもやる男。
    雑誌の取材や自身の過去と向き合うために、何人かのひとたちと会って話す。進藤さんも含め、出会うひと全員がかつて輝いた時期があった。そして今は落ちぶれている。負け犬と呼ばれる人々なのかもしれない。
    過去の栄光を忘れられず、お互いの傷跡を傷をなめ合う負け犬たちがただただセンチメンタル。哀愁的。

    -------------------------------

    人生プラスマイナスゼロという話がある。良いことがあればその分の悪いことがあり、その逆もまた然り、という話。

    充実している時間を過ごしているひとはそれを失わないように幸せにしがみつくし、
    今がどん底だと思うひとはこれから人生巻き返しだと儚い希望を生きる糧にする。

    人の一生がプラスマイナスゼロなわけない。
    だけど、今あるものを失う不安は捨てられないし、勝手な希望を持ってしまう。だからどうしたと言われればそれまでなんだけど、そういう弱さに人間味を感じる。
    過去を振り返るとき、思い出に勝てるものなんてない。弱くて当たり前なのに勝とうとする、自分だけは勝てるような気がしてしまう。そんな弱さを人間味とかそういうふうに呼ぶのかな。

  • 哀愁、歳を重ねないとわからないもの。懐かしみであったり後悔であったり。じっくりと読むことができて良かった。

  • 最後の章を読んで、やっとわかった。
    自分のこのモヤモヤ感、喪失感が何か。


    哀愁とは、何かを失って終わりかけていることなんだ。
    この作品の全ての章を振り返れば、確かに「終わり」「結末」がないことに気付く。
    その後どうなったの?って。


    最後の章で、小さな無邪気な子が、
    東京タワーの双眼鏡を覗き込み、
    「あったよ!ぼくんちがあったよ」
    とはしゃいでいる姿。
    こんな広い景色で、
    こんな広い東京で、
    自分の家なんか見つかるわけないのに、
    小さな子は、喜んでいる。
    私には、
    自分の家や自分の住む町どころか、
    自分の存在さえ、見つけることできないんだろうなぁ。
    きっと、進藤が流した涙と同じ涙を流すことが出来ると思う。



    大好きな重松作品。
    大事な1冊になった。
    私は、まだ20代なのに、
    この本に共感できるくらい、哀愁漂ってます。
    ちょっとやばい?

  • 「今見ている景色は、10年後にはどのように映るのだろうか」

    景色は全く変わらなかったとしても、自分が変わっていればその感じ方は変わるだろう。

  • 表紙がすごく小説の世界感を表していると思う。ちょっと切なくて非現実的な感じ。

  • 連続短編ということでかなり期待して読み始めたけれど、どんどんと暗くなっていく。月日を経ることで人が離れていったり、亡くなったり。
    絵本作家としての希望が皆無で
    全体に明るさが感じられなかったのがとても残念。

    ただところどころ素敵な言葉、文章にめぐりあえたのが良かったかな。

  • 絵本を書けなくなりフリーライターをしている中年絵本作家が様々な人々との出会いながら揺れていく。輝いた時代を持つ者、輝けなかった者。それでも人生は続いていく。明るい話ではないが何だか前向きになれる話。

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著者プロフィール

1963年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。出版社勤務を経て、執筆活動に入る。1999年『ナイフ』で坪田譲治文学賞、『エイジ』で山本周五郎賞、2001年『ビタミンF』で直木賞、2010年『十字架』で吉川英治文学賞、2014年に『ゼツメツ少年』で毎日出版文化賞をそれぞれ受賞。小説作品に『流星ワゴン』『愛妻日記』『カシオペアの丘で』『赤ヘル1975』など多数。

「2020年 『ルビィ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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