風車祭 上 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043647064

作品紹介・あらすじ

九十七歳の生年祝い「風車祭」を翌年に控えたオバァ・フジの楽しみは長生きと、迷惑をかえりみない他人いじり。あの世の正月と云われる節祭の日、島の少年・武志はオバァのさしがねで美しい盲目の幽霊・ピシャーマと出会い、恋におちてしまう。そのせいでマブイ(魂)を落とした武志の余命は一年弱。彼は無事、マブイを取り戻すことができるのか!?沖縄の祭事や伝承、歌謡といった伝統的世界と現代のユーモアが見事に交叉する、沖縄版「真夏の夜の夢」。

感想・レビュー・書評

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  • 沖縄を舞台にした小説が読みたい第二弾!

    前回読んだ「カフーを待ちわびて」とは
    全く違った世界観なのに、
    どちらも沖縄らしさを感じる素晴らしさ。
    こちらはコテコテの沖縄!って感じ。

    97歳の風車祭を人生の糧に生きてきた
    物凄くキャラの濃いおばあちゃんと
    それに振り回される主人公の関係が楽しい。
    沖縄の風習や歌なども出てきて、
    ますます沖縄に興味が湧いてくる!

  • ★今日カジマヤーを迎えることができて、とにかくハッピーだった。(p.12)
    3つのええとこ(1)読まなきゃもったいない! というタイプのお話。個人的感想ですけど。(2)伝説や呪法が連綿とつながり此岸と彼岸の境界が曖昧な島の豊かさおもしろさ。(3)強烈なキャラたちが好き勝手に跋扈する。それがなければ肉体を失った娘に恋をした男子高校生の武志というよくあるゴーストストーリーなのでこれはやはりキャラたちと、島の風習、雰囲気を楽しむお話でしょう。

    ■簡単なメモ
    【一行目】今日の島は朝から賑やかだ。旧暦の九月七日の始まりは、木々の無数のざわめきと、いつになく大きく鳴り響く潮騒、そして島唄と三線の微かな音色の重なりだった。

    【愛】《愛とは絶叫である。ギーギーはその声に満足した。》(上巻p.376)
    【赤嶺/あかみね】ご近所のユタ。
    【アマミキヨ神】創世の神。
    【アラピキ橋】妖怪がたくさんいる。
    【泡】アラピキ橋の下を流れる川がときどき泡立つのはギーギーが「洗濯」をしているから。いろいろ化学変化にのっとって泡を起こし記憶を失ってすっきりして戻ってくる。
    【郁子/いくこ】玉城郁子。武志の同級生である睦子の妹。《赤毛の硬い髪。ひと月寝こんだくらいでは、色が落ちない日焼けした褐色の肌。一旦口を開いたら自己主張をやめない性格。泥と共生関係にある汚れた衣服。この娘は島の子供の典型をいくつも備えている。》(上巻p.103)。父親が医師なのでいつの間にか医術用語を覚えてしまい人形を手術して殺してしまった。美少女ヒロインに変身したい。フジに負けず劣らずキャラが強い。うっかりするとメンヘラ系。
    【石垣島】舞台は石垣島と思われる。
    【石敢當/いしがんとう】T字路に設置する魔除けのようなもの。石ころに「石敢當」と彫ってある。スーパーでも販売されている人気商品。ぼくもひとつ持ってます。同じ発想の発展形のようなものとして門に設けられる「ピーフン」という壁がある。
    【意識】《だったら魂と意識はまた別のものなのではないか。だとすれば、意識というのは肉体が生みだすちうことになる。》上巻p.237。《『記憶』、それだと思った。意識は昨日という過去が生みだすものなのだ。現在の自分は過去の記憶を引き継いで、明日に間違いなく渡すだけの通過点にすぎない。それを意識と呼ぶならなんと矮小な存在であろう。》上巻p.237
    【イシクス山】この山を崩して近代的な都市を作ったが、人口に比して大きすぎる都市には人がいない。そして、イシクス山は重要な位置づけにあったので神は島を滅ぼすことに決めた。
    【御嶽/ウタキ】七大御嶽などあるらしい。男性の立ち入りは禁止されているようだ。
    【ウマチー】旧暦二月十五日、麦の豊作を予祝する行事だが今は麦を作る農家がなくなったのでひっそりした祭りになってしまった。
    【お茶】沖縄の水はカルシウムを多く含みかき混ぜると泡立ち、メレンゲ状にした茶を飲むのが沖縄の茶道で王侯たちは泡立った「ブクブク茶」を愛した。
    【オバァ】オバァには三種類ある。①市民階級の中での最高位に位置する高貴な称号で世襲制ではない。成人女性。知識と経験が豊富。孤独でない。健康体であること。最重要なのは市民から好かれていること。トミなどがこれにあたる。②厚かましくて身勝手な高齢女性に対する蔑称。階級社会の最下層になる。条件はほぼ上記の高貴な称号と同じ。最重要なのは市民から嫌われていること。当然フジなどがこれにあたる。③何事にも動じなく世間の評価と関わりなく泰然自若と生きている様を表す言葉としてのオバァ。残飯オバァなどがこれにあたる。
    【思い出】《思い出があるんだろ。退屈じゃないよ》(上巻p.105)
    【風車祭/カジマヤー】《カジマヤーとは沖縄の数え九十七歳の長寿を祝う祭りである。たくさんのカラフルな風車をオープンカーに飾ってパレードをする。仲村渠のオバァはこの日のために今まで長生きしてきた。もっと厳密にいうならば、この日のためだけに生まれてきたといっても過言ではない。オバァの九十七年の間の様々な罪が許される、島をあげての祝いの日だ。》(上巻p.11)。なんか、えらい日ですね。フジのカジマヤーから話は始まる。
    【カメ】前新川首里大屋子家の直系の子孫。
    【ギーギー】沖縄の豚はブーブーではなくギーギーと鳴くことになっているので呼びかけるとき「ギーギー」と言ったりするようだ。ピシャーマといっしょにやってきた巨大で六本足の雌豚は自分がピシャーマの面倒を見ているつもりで目の見えないピシャーマを誘導する盲動豚の役を果たしているがついつい残飯などの臭いところに引き寄せられたりする。もとはただの豚だったが飼い主が成長の限界に挑戦してしまい子牛ほどになったときエンゲル係数が高すぎるので捨てられた。その後必要に迫られ乳房が変貌し二本の足が増えた。その頃から妖怪化してきたと思われる。現在は八百キロを超える体重。武志に恋をし、フジの入れ知恵で人間に変身できるようになる。《ギーギーの特技はブーイングである。これはすべての豚に備わった能力だ。》(上巻p.364)
    【北崎倫子/きたざき・のりこ】武志が好きな女優。
    【グソー】後生。あの世のことかと。
    【慶田盛のオジィ/けだもりのおじい】月のいい夜には味わい深い枯れた声で三線を弾き語りしながら散歩しているオジィ。歌は聞こえども姿を見ることはなかなかできない。三十番まである長い物語歌「マヘラチィユンタ」を好んで歌う。
    【サーダカー生まれ】生まれつき霊力の高い人のことらしい。
    【残飯オバァ】残飯入れから腐る直前の美味しい上澄みを掬って食べるオバァ。彼女による残飯占いの的中率は高い。
    【刺激】《何しろ天国に近いこの島では、刺激的な日々とは無縁なのであるから、積極的に事を起こさないと、昨日も今日も明日も変化がないのである。》上巻p.32
    【シチの日】旧暦八月十五日。あの世の正月。各地で失われていっているが、川平(かびら)地区ではシチ祭が盛大に行われている。
    【シニマブイ】落としてから長時間を経てもう戻すことができなくなったマブイ。見つけることができたらむしろ生き生きしている。
    【十八番街】旧歓楽街。梯子に梯子を重ねて行き着く先。睦子が出没する。
    【十六日祭/ジュウルクニチ】旧暦一月十六日、島中の人間が墓場に集まりどんちゃん騒ぎや社交をする。
    【淳子】《最悪、あたしだったらいっそ死ぬね》(上巻p.441)
    【植物】島の植物は旺盛な繁殖力を持ち、人間と勢力争いをしている。油断したらすぐ密林を作ってしまう。
    【精神医療】《沖縄では本土と比べてとりわけ精神病治療の遅れが目立つ。それは風土がもたらす事情が治療行為を阻むからだった。ちょっとした風変わりな言動は、神がかりとして別の治療者の手にかかることになったり、珍重されたりする。通常では入院すべき人物でも生まれが高い人間だからとか、先祖の拝みが不足しているからだとか、超常的な解釈がなされそのまま社会に受け入れられている場合が多いのである。》上巻p.312
    【ターチーマーチュー】飲んだくれ兄弟のひとり。つむじがふたつという意味の名前。チーチーマーチューの弟。ともにいい海人だったが親戚に騙されていたことを知り飲んだくれになった。兄の絵や弟の船の彫刻をもらうと商売繁盛するとかで商売の神のような存在になって世話を焼いてもらえ日々飲んだくれている。
    【ダートゥーダー】懲罰神。
    【だからよー】《当事者意識のない無責任な肯定または否定》(上巻p.34)のとき使う。対応する日本語はないらしい。関西弁なら「せやなあ」あたりが近いかも。ほとんどすべての受け答えがこれで可能。
    【武志/たけし】比嘉武志。商工高校に通う高校生。とっつきにくいが驚くほど素直。さまざまな風習を知っているトミを尊敬してくれている数少ない人物の一人で、フジやハツを嫌っている。バスケットボール部員。小柄だが前進バネみたいでジャンプ力がある。
    【種子取祭/タニドウル】旧暦十月立冬。
    【玉城郁子/たまき・いくこ】→郁子
    【玉城睦子/たまき・むつこ】→睦子
    【チーチーマーチュー】飲んだくれ兄弟の一人。つむじがひとつという意味の名前。ターチーマーチューの兄。彼が描いた絵を飾ると商売繁盛するのでわりとみんなから大事にされている。
    【菊酒/ちぐざぎ】重陽節。旧暦九月九日。男子の節句。
    【ツカサ】二種類いる巫女のひとつ。御嶽を専門に守り島の祭祀を任されている。沖縄本島ではノロと呼ばれる。七つの役職があり《最高位のホールザーマイから順にイラビンガニ厄除け願いをするキライ、航海安全担当神職のシドゥとフンナイ、豊年、豊作と水元の願い担当の神職であるユヌヌシィ、御嶽の管理担当神職のヤマアタリと分けられている。》(上巻p.396)
    【テーテームーニー】舌っ足らずの娘。美少女ヒロイン。
    【冬至/トウンジー】旧暦十一月十一日。
    【トートーメー】先祖の位牌。
    【トミ】フジの娘。八十歳。出戻ってきて半世紀。年寄り三世代の一家の中でいちばん苦労している。母と娘にいつか天罰が下ればいいと思っている。
    【長崎御願/ながさきおがん】島の七大御嶽のひとつ。神聖とされるアラマリナー泉がある。ギーギーはピシャーマはここで出会った。
    【仲村渠家/なかんだかりけ】《こんど結婚する優子が十九歳。優子の母の美津子が四十四歳。美津子の母のハツが六十二歳。ハツの母のトミが八十歳。トミの母のフジが九十五歳……》(上巻p.102)ということで五世代が健在。
    【仲村渠フジ/なかんだかり・ふじ】→フジ
    【生ゴミ】生ゴミの腐敗臭も島の風物詩を構成するひとつなんだとか。(上巻p.216)
    【ニーニー】お兄さん。
    【ニーブイカーブイ】居眠りでうとうとしている人。悪の権化。
    【ニーラスク】全ての命が生まれる国。
    【ニライカナイの国】根の国。
    【ニライ神】ニーラスクの国からやって来る。島に命を運ぶのが役目。
    【ヌスクマーペー】恋人と別れ別れにされ石になった娘。大戦のとき島を守るためにわが身を犠牲にしすでにグソーに帰っている。
    【ハーメー】祖母。
    【ハツ】トミの娘、フジの孫。数年前出戻ってきた。六十二歳。古くからの風習を「迷信」として軽んじはじめた世代。
    【ピーフン】石敢當と同じ発想から発展した魔除け。魔物や邪気はまっすぐやっている発想から入り口に設けられた壁のようなもの。ときおり沖縄の家で見かけます。
    【比嘉武志/ひが・たけし】→武志
    【ピシャーマ】琉球王朝時代では士族の女の童名で「お嬢さん」の意。マイアラカーシナゴーヤー(前新川首里大屋子)の娘で一七五〇年に石垣島に生まれずっと生きて(?)きた。二十歳前後に見える。紅型を着ている。本人は幽霊ではないと言う。盲目のようだ。花嫁行列のときに石になりそれから二百四十六年間島にいる。石の身体は明和の大津波のときに砕け視力と声を喪った。《ずっと彼女は島の夢をみている。彼女の島は二百二十八年前の島だった。》(上巻p.109)
    【ビッチンヤマ御嶽】旧歓楽街の十八番街あたりにあるらしい。元はシーサイドの庭園のような場所だったらしいが長年の開発により海岸は遠ざかりビルに囲まれることとなった。チーチーマーチューとターチーマーチューの根城。異人が住むとされ忌避感のある神域となっている。
    【宏明/ひろあき】武志の友人でクラスメートで同じバスケットボール部員。背が高い。両親は日本人(ヤマトンチュ)らしい。睦子に気があるようだ。
    【フジ】石垣島の九十七歳。強靱な肉体と精神と食欲を持つ。虫歯もなく自前の歯が全部揃っている。カジマヤーを迎えるために生きてきた。「金も愛も権力も、そんなものは糞である」(上巻p.12)と言った。《人の幸福ならたとえ娘のものでも妬ましい》(上巻p.21)というタイプ。《安全を確保したところから、ゴタゴタを見ることを有意義としている》(上巻p.31)。《少女と中年と老婆の三つの精神を併せ持った彼女の女心は、とても複雑である。起こらないことは波風立ててでも起こそう、と決めたのだ。》(上巻p.33)。《彼女の皺で、苦労のために作られたものは一本もない。苦労すると寿命が縮まると信じているから、フジの顔はすべて笑い皺で構成されている。》(上巻p.33)。改名前の名前は「ミダグ」といい、八重山にしかない珍しい名だった。
    【フジへの質問】何か質問したらその回答には金を取る。松竹梅コースがあり、最低価格の梅は「ほとんどすべてが大嘘の煙に覆われて聞くに値しない」で、竹は「嘘も交えているが、よく考えれば納得することもある」で、松は「大きな真実の前で小嘘をついて事実を捩じ曲げる」。
    【豚】沖縄の豚は本土の狐や狸のように人を騙す動物。沖縄で妖怪と言えば化け豚。ギーギーと鳴く。
    【冬】日本本土でなら初夏くらいの感じ。過ごしやすい季節。
    【フルウチガナシ】便所の神様。なぜか、落としたマブイを探し出してくれるらしい。
    【ホールザーマイ】大阿母。最高神職の位。
    【マーペー】ピシャーマ同様、島に残された使者。
    【前新川首里大屋子/マイアラカーシナゴーヤー】ピシャーマの実家。なんとフジのひいひいお祖母さんの実家でもある。子どもの頃フジはひいひいお祖母さんに相当いじめられた。
    【マジムン】魔物のこと。
    【マゾームノーナ】妖怪火。近づいてくると臭うらしい。
    【マニアック】《いきなりマニアの世界から紹介するのがフジのやり方だ。》(上巻p.402)
    【マブイ】魂とは異なるらしい。上巻p.281から数ページ書かれているけど、解釈してみるに、マブイは個にして全、全にして個といったところか。過去からの文化や慣習を流れとして受け継ぎつつ、一瞬だけ現世にあらわれている部分が個でありマブイと呼ばれるもの。マブイを落とすというのはその流れから個が切り離されて「いまここ」にいる資格を失った状態で魂と呼ばれる状態。
    【マブイを落とす】マブイを落とすことは日常茶飯事なのだとか。落としたら探してユタにマブイ籠めしてもらう。フジは都合三十四回落としザルと呆れられた。島のユタはフジのマブイを拾うので消耗して早死にしたが、娘にもうフジの魂だけは拾うなと遺言を遺している。マブイを落とすと喉が渇く。ピシャーマと出会い、武志と郁子はマブイを落としかけている。
    【マユンガナシィ】ニライ神の使者。
    【美香】マブイを落とした女子高生。
    【三崎町】新しい歓楽街。観光客や宏明が出没する。
    【ミルク】豊穣の女神。
    【鬼餠/ムーチー】旧暦十二月八日。
    【睦子/むつこ】玉城睦子。武志の同級生で武志に気があるようだ。バスケットボール部マネージャー。胸が大きい。十六歳にして深酒をしなければ眠れない体質になっている。旧歓楽街の十八番街によく出没し泥酔し路上に転がっている。《睦子もまたこの道を覆う泥酔者の常連である。刺殺死体の現場検証さながらに、仰向けに転がった睦子は、午前六時頃にさわやかな朝を道で迎える。ぐいと背伸びをして、寝ている他の人を起こさぬよう、そっと立ち上がって制服のプリーツスカートをぱんぱんと払う。鞄からブレザーを取り出して羽織ると学校に行く時間になっている。睦子は毎日元気よく登校する善良な皆勤学生なのだ。》上巻p.248
    【明和の大津波】明和八年八重山諸島を襲った大津波。最大波高八十五メートルを超えるとされる。八重山だけで津波による死者千九百十三人。このとき石になったピシャーマの身体が砕けマブイが解放された。
    【ユタ】二種類いる巫女のひとつ。ツカサとは異なり日常的なさまざまを解決してくれる在野の巫女。マブイを落としてもマブイ籠めで戻してくれる。
    【六本足】ギーギーには足が六本できた。六本あるとけっこう便利なので四本の動物より進化したものと思われる。
    【ワジワジー】ムカつくよ。
    【ワン】俺。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/759361

  • 2021年78冊目

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/759361

  • 沖縄の文化や風習を知るのに一番の入門小説。

  • 沖縄の暑い日差しの中、九十七歳の生年祝いを迎えるオバァ。それに翻弄される少年、親族、六本足の豚。沖縄の方言が飛び交う中、物語は右往左往しながら進んで行く。面白い!

  • 感想は下巻にまとめて。

  • 石垣島を舞台に、数え年九十七歳の祝いである風車祭を楽しみに生きてきたフジと、マブイを落としたことでこの世ならぬ妖怪やマブイの姿が見られるようになった高校生の武志の一年。肉体や帰るべきグソーはなくなっていた。一年が、マブイを落としたまま生きていける人の限界だそうだ。しかしマブイを入れてしまうとピシャーマの姿は見えなくなってしまう。ピシャーマに好意を抱く武志は悩む。ピシャーマをどうグソーに行かせてやれるか考える。
    マブイについてピシャーマの子孫のオバァが言っていた、石垣島に生まれてそこで子々孫々と受け継がれていくもの、みたいな意見、やはり沖縄に生まれ育たない限り持ち得ない文化・宗教観なんだろうなと思った。よしもとばななが沖縄の人に「本土にはマブイを落としている人が沢山居てびっくりした」みたいに言われてたけど、別の土地で生まれた別の土地の人同士が一緒になって生まれた子にマブイの持ちようがない。

    表紙が上下巻並べて見るととても綺麗です。沖縄の温かな空気、風車祭の様子、ピシャーマとギーギーまで描かれています。

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著者プロフィール

池上永一
一九七〇年沖縄県那覇市生まれ、のち石垣島へ。九四年、早稲田大学在学中に『バガージマヌパナス』で第六回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。九七年刊の『風車祭』が直木賞候補に。二〇〇八年刊の『テンペスト』はベストセラーとなり、一一年の舞台化をはじめ、連続テレビドラマ、映画にもなった。一七年『ヒストリア』で第八回山田風太郎賞を受賞。他の著書に『シャングリ・ラ』『レキオス』『ぼくのキャノン』『統ばる島』『トロイメライ』『黙示録』などがある。

「2023年 『海神の島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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