ユリイカ EUREKA (角川文庫 あ 39-1)

  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043656011

感想・レビュー・書評

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  • 映画の原作本

  • 限りなく彼岸に近い場所だった。
    夜明け前の海岸に延々と座り込んでいるみたいだった。
    自分の意思や責任とかけ離れたところから来る大きな渦に飲まれてしまった人たちの、ぞっとするほどのリアルがここにある。
    どんなに誠実に生きていてもどんなに地に足をつけていても、大きな波がひとたび来れば人はそれに抗う術はない。いっそのこと狂えればいいのだけれど人間はしぶとく出来ているのでただただ日常を重ね続けていくしかない。食べて寝て起きて夢を見て現で目覚めて違和のなかで食べて寝て起きて、彼岸がすぐ後ろに来ているのに振り返ることはできない。
    世界から切り取られた兄妹と、唯一同じ場所に取り残されてしまった男の、かなしいほどに留まろうとしている物語。
    青山真治のすごいところは同じ話を映像と文字という別々の手法からそれぞれアプローチを試みて、なおかつどちらも確立された独自の世界観を損なわないだけの力量があることだと思う。監督としても作家としても。
    機会があれば映画と小説、両方見ることをお勧めします。映画の中に流れる空気がそっくりそのまま小説で体現されていることもさることながら、著書の圧倒的な文章力を是非ご堪能して頂きたい。
    この映画、主演の役所広司と渡り合えるほどの存在感を放つ当時の宮崎あおいにも注目です。

  • 「ユリイカ」とはギリシャ語で「発見」の意味だとか。なるほど、そうだったのか。って読んだ後に調べてみてわかった。始めの方、登場人物の関係がよくわからなくて読みづらいなぁって思ったけど、徐々にじわじわはいってくるかんじでした。登場人物たちが経験したことがあまりにも重たくて、それは死と直面したっていうことだけど、ちょっ想像しきれないところがあって、難しかった。話自体がっていうことではなく、その状況、心理状態が。トラウマとか、PTSDとかってよく聞く言葉になってしまったけど、そういう言葉が上辺だけだと思った。この本は一言で言ってしまえば結局はトラウマなんだけど、そういう言葉がほとんど出てこない。でも、これがそういうことなんだ、傷ってこういうことなんだ、ってすごく伝わる書きかたをしている本でした。

  • バスジャックされたバスに乗っていた、幼い兄弟と運転手だった男の話。解説の金子氏が言うとおり、文章がしっかりしていて面白く、先が気になる作品だった。ただ、しっかりした文章と好みの文章とはちがうもので、読むのには苦労した。運転手の沢井は結構若い兄ちゃんってイメージだったけど、映画は役所さんで、それはそれで、ぴったりかなとも思った。
    映画、宮崎あおいチャンがでてる。

  • 「三島由紀夫賞」受賞作。
    映画版を先に観て内容がいまいちわかりにくい部分もあったので読んでみたけど
    宮崎あおいが演じていた子供たちの心情もあまり描かれていなかった…。
    でも題材やストーリーは好き。

  • 映画版は役所さんが出てるよ!3時間も。バスジャックされた運転手と、被害者に遭った兄妹の、その後。

  • バスジャック事件で人質となった運転手の沢井は、乗客の兄妹直樹・梢と共に助かるが、心に深い傷を負う。彼は街から失踪し、兄妹も母の家出、父の自殺後心を閉ざし二人だけの世界に引きこもってしまう。二年後、街に戻ってきた沢井は、兄妹の家に同居し家族のように暮らし始めるが、同じ頃連続して殺人事件が起き、そして──沢井がとった行動とは……。カンヌで世界の絶賛を浴びた映画作家が描く『癒し』と『再生』の叙事詩。デビュー作にして第十四回三島由紀夫賞受賞。早くも文庫化!

  • 映画とは違う展開。映画とは違う感動。映画を観てから読むと情景が浮かびわかりやすいかもしれない。

  • 映画もいいけど本もいいなぁ

  • 最近映画のほうを見て好きだったので読んでみた。映画だけでよかったです。解説がすげえ、誰この人w

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著者プロフィール

1964年7月13日、福岡県北九州市門司に生まれる。立教大学英米文学科卒。
1996年『Helpless』で劇場映画監督デビュー。2000年『EUREKA』がカンヌ国際映画祭で国際批評家連盟賞とエキュメニック賞をW受賞。同作の小説版が三島由紀夫賞を受賞。2011年『東京公園』でロカルノ国際映画祭金豹賞審査員特別賞受賞。2015年度まで4年間、多摩美術大学映像演劇学科教授。2016年度、京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)映画学科の学科長を1年のみ務める。2020年公開の『空に住む』が遺作となった。2022年3月21日逝去。

「2023年 『青山真治クロニクルズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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