神隠しと日本人 (角川ソフィア文庫)

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レビュー : 27
  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043657018

作品紹介・あらすじ

「神隠し」とは人を隠し、神を現し、人間世界の現実を隠し、異界を顕すヴェールである。異界研究の第一人者が「神隠し」をめぐる民話や伝承を探訪。迷信でも事実でもない、日本特有の死の文化を解き明かす。

感想・レビュー・書評

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  • 神隠し体験談と昔話を緻密に分析することで、民俗社会に共通の異界のイメージを探る試み。隠し神として現れるのには、天狗や鬼が多いとか、天狗の場合は男の子が攫われるのに対し、鬼の場合は若い女性が多い、など。
    現代ではほぼ語られることのなくなってしまった神隠しとは何か。示唆に富む良書。

  • 小学生の頃、学校から帰宅するとランドセルを放り出してすぐに
    外へ遊びに行っていた。え?宿題?そんなものは知りません。
    やってなくてもどうにかるという、いい加減な子供だった。

    「行って来ま~す」と玄関を出る私の背に、亡き祖母は決まってこう
    言った。「日の沈む前に帰っておいで。暗くなったら神隠しにあうよ」。

    真剣には聞いていなかった。でも、ある日、小さな神社で友達数人
    と遊んでいるうちに時間を忘れた。あたりが暗くなって来るのと同時に、
    何故か怖くなって来た。

    遊び場所が神社だったからかもしれない。祖母の言う「神隠し」にあって、
    家に帰れなくなったどうしよう。こうなるともう遊んでなんかいられない。

    普段の運動神経の鈍さはどこへやら。全速力で家に駆け戻り、半べそを
    かきながら祖母に抱きついたのを覚えている。

    神隠し。ある時、突然、生活圏から人が姿を消す。現代では失踪とか
    家出、誘拐などの言葉に置き換えられるようになったが、昭和のある
    時期までは人々はそれを「神隠し」と読んだ。

    本書は民族学者が採取した各地に残る神隠し現象をひも解いた民俗学
    の入門書…になるのかな。

    現代ではほとんど使われなくなった言葉「神隠し」だけれど、きっと人が
    忽然と姿を消す原因は昔も今もあまり変わらないだろうと思う。

    ただ「神隠し」というベールに包んでしまえば、そこからは生々しさは
    減少される。姿を消した原因が、間引きや蒸発であったとしてもだ。

    自分たちの住む「こちら側の世界」と、神に攫われた「あちら側の世界」。
    異界を設けることで辻褄を合わせていたのではないだろうか。

    自殺も、誘拐も、失踪も、間引きも、「神隠し」としてしまえたのは日常の
    すぐ隣に「闇」があったからかもしれない。

    今ではよぼどの山間部に行かなければ闇に出会わないものな。人家の
    少ないところでも、ぽつんと自動販売機があってほんのりと灯がある。

    闇のなかには異界があり、時々、人を隠す。現実から目を逸らす手段
    として神隠しは存在したのかな。

  • 各地に伝わる神隠し伝承を詳細に分析していて実に面白い。神隠しが民俗社会にかつてあった不思議なお話というだけではなくて、よくできた社会の救済システムで あることがわかる。現代でも神隠しがありなら気軽な感じに失踪できてもっと生きるの楽かもしれない。失踪したいなー!

  • 文庫版まえがき
    プロローグ
    第1章 事件としての神隠し
    第2章 神隠しにみる約束ごと
    第3章 さまざまな隠し神伝説
    第4章 神隠しとしての異界訪問
    第5章 神隠しとは何か
    参考文献

  • 警察白書によれば、
    毎年およそ10万人弱の行方不明者の届けがあるという。[more]

    残された人びとほとんどは、
    その失踪の原因を「神隠しだ」とは、
    考えていない。はずである。

    信仰としての神隠しは消え去り、
    ほとんどすべて人間世界の内部に原因と結果が求められる。
    失踪者が消え去った異界としての「向こう側」、
    神が隠した「あちら」はもう、無い。

    では、剥がされた「神隠し」というヴェールは、
    一体なんだったのだろう。

    その真相を探求するのが本書のテーマである。

    【目次】
    プロローグ
     不思議な出来事
     異界の消失
     神隠し願望
     文学作品のなかの「神隠し」
     異界に遊ぶ
    1.事件としての神隠し
     村の失踪事件
     帰ってきた失踪者
     家出・自殺・神隠し
     束の間の失踪
     神隠し幻想
     狐に化かされる
     体験者の証言
     「神」に選び出された者
     「神隠し」へのアプローチ
    2.神隠しにみる約束ごと
     神隠し譚の類型
     夕暮れどき
     隠れ遊び=隠れん坊
     隠れ遊びの約束ごと
     神と人が融け合うとき
     鉦・太鼓による捜索の作法
     音による異界との交信
     神隠し事件の四つのタイプ
     やさしい社会のコスモロジー
     失踪者の異界報告
     天狗信仰
     天狗と異界イメージ
     人間界と異界の媒介者としての少年
     行方不明の娘たち
     神隠しの理想型と諦めの儀式
    3.さまざまな隠し神伝説
     民俗社会の異界イメージ
     隠し神としての天狗イメージ
     天狗信仰の歴史
     妖怪から怨霊へ
     江戸時代の天狗隠し
     狐隠し
     幻想の人間社会
     狐はなぜ人をだましたがるのか
     鬼のイメージ
     鬼と天狗
     酒呑童子伝説
     対抗世界としての鬼の王国
     山姥から口裂け女へ
     「脂取り」と纐纈城
    4.神隠しとしての異界訪問
     浄土=ユートピアとしての異界
     夢と異界訪問譚
     異界体験談から昔話への変換
     異界の時間・人間界の時間
     人間と神との交換
     「いばら姫」と「浦島太郎」の時間比較
     超時間装置「四方四季の庭」
     社会復帰する「竜宮童子」
     異界イメージの多義性
    5.神隠しとは何か
     現代の失踪事件
     「神隠し」のヴェールを剥ぐ
     人さらいと大袋 
     人身売買のネットワーク
     児肝取り伝承
     「阿弥陀の胸割」
     神隠しの現実隠し
     夢が異界へいざなう
     神隠しなき時代
     社会的な死と再生の物語

  • 現在では失踪とか蒸発という言葉で表現される現象そのものは変化があるわけではない。筆者はこれを神隠しにあったものとして受け入れるというユニークなアプローチを採ることによって、神隠しの本質を浮き彫りにしてゆく。

  • 神隠しとは何かについて当時の時代背景を考慮して科学的に考察しています。
    昔の人も現代人と同じ感覚を持っているところもあるんだなーと思いながら読んでいました。

  • 隣に人殺しがいても、バレなければ神隠しとして解釈され社会は存続できる。隣近所を疑いながら限界状況で生きることを防ぐ人類の知恵。
    神格的な理由を付与して社会を持続させる方便、それは魔女狩りであり、サキュバスであり、狐憑きであり、気ぐるいである。
    最近、陰陽屋というドラマで、問題を無理やり狐のせいにして調和を目指す話を見ましたが、まさにこれ。神話をなくした現代人はこのスケープゴートがない。それは非常につらいが、いい面もあるので一概には是非の判断はつかない。
    ただ、人の想像力というものは根本的に、常に自分や、自分の延長線上の社会を守り持続させるために存在すると思った。

  • 神隠しというオカルトを否定も肯定もせず、「ある現象」として認め論理的に考察分類されている。自分の中でぼんやりと存在した神隠しのイメージ、約束というものをきちんと説明されてスッキリした。

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著者プロフィール

1947年生まれ。国際日本文化研究センター名誉教授。専門は文化人類学、民俗学。著書に『神隠しと日本人』『妖怪文化入門』『呪いと日本人』『異界と日本人』『鬼と日本人』『聖地と日本人』(角川ソフィア文庫)、『妖怪学新考――妖怪からみる日本人の心』(講談社学術文庫)、編著に『妖怪学の基礎知識』(角川選書)など。2013年紫綬褒章受章、2016年文化功労者。

「2021年 『禍いの大衆文化 天災・疫病・怪異』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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