神隠しと日本人 (角川ソフィア文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043657018

感想・レビュー・書評

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  • 神隠し体験談と昔話を緻密に分析することで、民俗社会に共通の異界のイメージを探る試み。隠し神として現れるのには、天狗や鬼が多いとか、天狗の場合は男の子が攫われるのに対し、鬼の場合は若い女性が多い、など。
    現代ではほぼ語られることのなくなってしまった神隠しとは何か。示唆に富む良書。

  • 小学生の頃、学校から帰宅するとランドセルを放り出してすぐに
    外へ遊びに行っていた。え?宿題?そんなものは知りません。
    やってなくてもどうにかるという、いい加減な子供だった。

    「行って来ま~す」と玄関を出る私の背に、亡き祖母は決まってこう
    言った。「日の沈む前に帰っておいで。暗くなったら神隠しにあうよ」。

    真剣には聞いていなかった。でも、ある日、小さな神社で友達数人
    と遊んでいるうちに時間を忘れた。あたりが暗くなって来るのと同時に、
    何故か怖くなって来た。

    遊び場所が神社だったからかもしれない。祖母の言う「神隠し」にあって、
    家に帰れなくなったどうしよう。こうなるともう遊んでなんかいられない。

    普段の運動神経の鈍さはどこへやら。全速力で家に駆け戻り、半べそを
    かきながら祖母に抱きついたのを覚えている。

    神隠し。ある時、突然、生活圏から人が姿を消す。現代では失踪とか
    家出、誘拐などの言葉に置き換えられるようになったが、昭和のある
    時期までは人々はそれを「神隠し」と読んだ。

    本書は民族学者が採取した各地に残る神隠し現象をひも解いた民俗学
    の入門書…になるのかな。

    現代ではほとんど使われなくなった言葉「神隠し」だけれど、きっと人が
    忽然と姿を消す原因は昔も今もあまり変わらないだろうと思う。

    ただ「神隠し」というベールに包んでしまえば、そこからは生々しさは
    減少される。姿を消した原因が、間引きや蒸発であったとしてもだ。

    自分たちの住む「こちら側の世界」と、神に攫われた「あちら側の世界」。
    異界を設けることで辻褄を合わせていたのではないだろうか。

    自殺も、誘拐も、失踪も、間引きも、「神隠し」としてしまえたのは日常の
    すぐ隣に「闇」があったからかもしれない。

    今ではよぼどの山間部に行かなければ闇に出会わないものな。人家の
    少ないところでも、ぽつんと自動販売機があってほんのりと灯がある。

    闇のなかには異界があり、時々、人を隠す。現実から目を逸らす手段
    として神隠しは存在したのかな。

  • 現在では失踪とか蒸発という言葉で表現される現象そのものは変化があるわけではない。筆者はこれを神隠しにあったものとして受け入れるというユニークなアプローチを採ることによって、神隠しの本質を浮き彫りにしてゆく。

  • 神隠しとは何かについて当時の時代背景を考慮して科学的に考察しています。
    昔の人も現代人と同じ感覚を持っているところもあるんだなーと思いながら読んでいました。

  • 各地に伝わる神隠し伝承を詳細に分析していて実に面白い。神隠しが民俗社会にかつてあった不思議なお話というだけではなくて、よくできた社会の救済システムで あることがわかる。現代でも神隠しがありなら気軽な感じに失踪できてもっと生きるの楽かもしれない。失踪したいなー!

  • 隣に人殺しがいても、バレなければ神隠しとして解釈され社会は存続できる。隣近所を疑いながら限界状況で生きることを防ぐ人類の知恵。
    神格的な理由を付与して社会を持続させる方便、それは魔女狩りであり、サキュバスであり、狐憑きであり、気ぐるいである。
    最近、陰陽屋というドラマで、問題を無理やり狐のせいにして調和を目指す話を見ましたが、まさにこれ。神話をなくした現代人はこのスケープゴートがない。それは非常につらいが、いい面もあるので一概には是非の判断はつかない。
    ただ、人の想像力というものは根本的に、常に自分や、自分の延長線上の社会を守り持続させるために存在すると思った。

  • 神隠しというオカルトを否定も肯定もせず、「ある現象」として認め論理的に考察分類されている。自分の中でぼんやりと存在した神隠しのイメージ、約束というものをきちんと説明されてスッキリした。

  • 失踪、誘拐や家出も神隠しとして扱ってきた日本の昔ながらの文化が衰退してしまったことを嘆く。

  • 神隠しを否定するでも無く科学的に検証する一冊。
    コミュニティの維持のためになされた殺人(口減らし等)、狂気に駆られた人間の行動、そして失踪といった陰惨な事実をかくすヴェールとして、神隠しを提示する。神隠しのエピソードは紋切り型のイメージが多いが、そのような言説から要素をピンポイントで取り出し分析する方法は面白かった。また、人を隠す神として、天狗、狐、鬼などを個別に考察しているところも興味深い。
    こどもの頃、親から「夕方になると人さらいが現れる」と言われ早々に帰宅したものだけど、大人になった今でも「神隠し」とはちょっと怖く、妙に惹かれる言葉だ。

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プロフィール

(こまつ・かずひこ)1947年、東京都生まれ。国際日本文化研究センター所長。埼玉大学教養学部教養学科卒業、東京都立大学大学院社会科学研究科(社会人類学)博士課程修了。専攻は文化人類学・民俗学。著書は『いざなぎ流の研究─歴史のなかのいざなぎ流太夫』(角川学芸出版)、『神隠しと日本人』『妖怪文化入門』『呪いと日本人』『異界と日本人』(角川ソフィア文庫)、『百鬼夜行絵巻の謎』(集英社新書)、編著に『妖怪学の基礎知識』(角川選書)など、多数。2013年、紫綬褒章受章。2016年、文化功労者。

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