- Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043689033
無用の達人 山崎方代 (角川ソフィア文庫)の感想・レビュー・書評
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おのずからもれ出る噓のかなしみがすべてでもあるお許しあれよ
山崎方代
多くの評伝を手掛けたノンフィクション作家田澤拓也は、山崎方代をスローライフの達人と呼ぶ。しかも方代は、〈山崎方代〉なる異端の歌人像を、全身で演じた人物でもあった。
1914(大正3)年、山梨県生まれ。26際で応召後、チモール島で顔面に爆撃を受け、右目を失明。左目の視力も衰え、傷病兵として敗戦の日を迎えた。だが、戦争のことは語らず、歌作を生の糧とした。
定職にはつかず、妻も子もなく、晩年は歯もなくなっていた。昼から冷や酒をあおる日々だったが、巧みな話術は人々をおのずと引き寄せた。住まいも知人が提供してくれ、晩年を過ごした鎌倉では、山菜などを採っては知人たちにふるまう自由な暮らしぶりだったという。
一度だけ本当の恋がありまして南天の実が知っております
この代表歌は、和歌山に住むある女性への恋と言われているが、その逸話は方代自身が作り上げたものらしい。だが、みずから伝説を創作した背後に、「オレは、いまにも自殺しそうな人にオレの短歌を読んでもらいたいんだ」という言もあった。
こんなにも湯吞茶碗はあたたかくしどろもどろに吾はおるなり
語り口調で心にしみ入る作風は、ねばり強い推敲の成果でもある。掲出歌のような「かなしみ」を知る方代の歌だからこそ、疲れた現代人にも響くのだろう。
85年に肺がんで没。享年71。枕の下には600万余の貯金通帳が残されていた。
(2012年5月27日掲載)詳細をみるコメント0件をすべて表示
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