症例A (角川文庫)

  • 角川書店 (2003年1月24日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (576ページ) / ISBN・EAN: 9784043690015

作品紹介・あらすじ

精神科医・榊、担当患者で17歳の亜佐美、そして女性臨床心理士の広瀬。亜佐美は境界例か、解離性同一性障害か? 正常と異常の境界とは? 三つの視線が交わる果てに光は見出せるのか?

みんなの感想まとめ

精神疾患や人間の心理に深く切り込んだ作品で、臨場感あふれる描写が特徴です。著者の長年の構想から生まれたこの物語は、精神科医や臨床心理士の視点を通じて、正常と異常の境界を探求します。博物館の話と精神病院...

感想・レビュー・書評

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  • 約7年の構想を経て書き上げたという作品なだけあり 現場を知る者にとっては臨場感がある
    精神とは何か 正常とは何か
    後半の回顧録の部分は少し理解に苦労したが 綿密に組み込まれた展開だった
    後日譚も読みたかった
    著者が行方不明になって随分経つ 記憶がなくなっていたとしても どこかで無事に生きていることを願うばかり

  • 亜佐美も、広瀬由起も、これからどうなる…!?っていうところで物語が終わってしまった。
    でも治療の行く末を見守るには先が長すぎるし、そもそも何を治療のゴールとみなすのかが難しい。この先は読者に委ねるしかないのかな。
    "症例A"とはいいつつも、〈Aさんの場合〉のような実際の治療例を読みたい知りたいわけでもないし。

    それと、博物館の謎のくだりは本筋に必要だったかが疑問。

  • 昔読んだ、五番目のサリーを思い出す。
    ディティールが似ている。
    症例Aを治療すると見せかけて、最後に治そうとするのは…。
    心理描写が細やかで引き込まれる話だった。

  • 読み終えて、「えっ!これで終わり?」という感想です。
    あまりに最後があっけないというか、はっきりしないまま終わったというか・・・。

    タイトルのように、精神病の症例や治療法について詳しく書かれた本です。
    特に最初の方は専門的な事をつらつら丁寧に書いてあり、小説とノンフィクションのあいのこのような印象を受けました。
    それだけちゃんと専門的知識を詰め込んでいるのと比較してストーリー部分はおざなりというか・・・物足りないと思いました。

    ストーリーは主に2つの方向から進んでいき、主なストーリーは精神科医の男性の話。
    榊は事故で亡くなった医師の担当していた患者を引き継ぐ事となる。
    その患者とは17歳の女子高生、亜左美。
    彼女と面談を繰り返す内、榊は彼女に虚言癖があると感じる。
    やがて、同僚で心理士の女性から榊は彼女の病気について意外な見解を聞く。

    その主体となるストーリーにさしはさまれるように書かれているのが博物館に勤める女性の話。
    彼女は自分の勤めている博物館で所蔵している狛犬が偽物でないかという疑惑を抱き、その真相を知っていると思われる人物に会いに行く。
    その人物とは榊が勤める精神病院にいる患者の一人だった。

    精神病を扱った小説というとその部分をセンセーショナルにとりあげてインパクトをもたせるものが多いですが、これはあくまでも理知的に淡々に描かれていると感じました。
    だから余計にリアルに感じられ、まるでノンフィクションを読んでいるような気になります。

    ただ、肝心の本筋と思われる話が途中でちょっとおざなりになってないか?という気がしました。
    最後ははっきりしないまま終わったのでモヤモヤ感が募ります。
    もっとそこを知りたかったのに・・・という感じ。

    それに、ちょっと疑問に思ったのは多重人格という稀で複雑な症例の人が精神病の患者をみる側になれるものなのか?ということ。
    自分がみられる側と同じような経験をしているので共感できる部分があるとは思うけど、それってあまりに危ういという気がしました。
    ここにも書かれているけど、そういった病気を抱えていない人でも精神病の人と常に接している内に感化され、取り込まれる事もある訳だから・・・。

    理想をもった医師が現場にいる内にそういったものを失くしていくというのは似たような事を知っているだけにやるせなく感じられ、何となく分かる気もしました。

  • 読んでいてノンフィクションではないか?と思うぐらいリアルに感じる小説でした。
    多少精神の知識を持っている自分からしたらほんとにリアルで、コミュニケーションをとる時にも何処か別の世界にいてさらに電話越しに話しているそんな感じをとても詳細に書いていてどんどんのめり込んでいきました。
    この小説を読んで改めて精神を型にはめるのはどうなのかとも思いました。確かに治療という行為を行う上で伝えるときや定義等はしっかりするメリットはあると思うが、それを決める事で先入観や思い込みというデメリットも生じてしまう。
    この小説を通じさらに自分の精神の特徴を知りたいと思えるようになりました。

  • 博物館の話と精神病院の話がどのように繋がるのか訝しながら読み進めたが、次第に一つ一つのパーツがパズルのようにはまっていき、どんどん引き込まれていった。
    自分の知らない世界を垣間見たり、世界を広げたりするのが読書の醍醐味だが、まさにそれを体現してくれる一冊であった。
    本の最後にある多数の「参考文献」のリストを見て、作者がいかに深く多くを学んで思いを込めて本書を書いたかを想像した。

  • 精神診療におけるお話。
    興味深いテーマとして読み始める。
    精神疾患は難しい。データや数値には表す事が出来ない中で診察が進められる。

  • 多重人格。いろんな伏線が回収しきれてない印象

  • ある精神科病院に新任してきた若手医師が主人公。前任の医師が事故死したため、彼の患者を引き継いだのだが、その中に統合失調症とうたがわれる厄介な10代の美少女の患者がいた。主人公はほかの病気の可能性も疑いつつ治療を進めていくが、彼女の自由奔放で天真爛漫な態度に振り回されそうになる。そんな中、彼女の担当臨床心理士から多重人格の可能性を指摘されるが主人公は受け入れられない。しかしある事がきっかけで多重人格に対する認識を改め、例の患者に対しても多重人格の可能性を疑い始めた時に見えていなかったものが明らかになっていく。

    ひとことで言えば、多重人格ってあるんだよという話。
    1人の患者のせいで医師や看護師が振り回されて病院内がぐちゃぐちゃになるみたいな話かと思っていたが、多重人格ってのはこんな病気でそれに向き合うにはこういう心構えでないとダメです、ということが主旨。
    患者の話と並行して、ある博物館の美術品が偽物であるという話も語られているが、このストーリー必要なんだっけ?という感じ。

  • 多重人格を扱った小説なので、てっきりどんでん返しやサイコな感じの内容なのかと思ったけれど、かなり真面目な話でした。
    先の見えない精神病治療に、何だか読んでいる私も鬱々としてきてしまう。

    一見関係のなさそうな精神病院の話と博物館の話がどう繋がるのか、と思い最後まで読み切りましたが
    これは病院の話1本でも良さそう。

  • とてもよくできた作品。
    読んでよかった。

  • 久しぶりにのめりこんだ小説だった。
    テーマは精神医療。医療そのものが個人的に興味のある分野で、最初からぐいぐい引き込まれた。
    主人公の精神科医、榊とつかみどころのない不思議な少女の患者。当初統合失調症という診断だったが、多重人格ではないかとの疑問が浮上する・・・。
    以前分裂症と呼ばれた統合失調症というのは、言葉のイメージより思い病気だということがわかった。作者はものすごい数の文献を読んで病気のことを研究したようだ。
    「ミステリー」に仕立てようと、博物館に隠された秘密など細かく出てくるが、読み終わってみるとあまり必要ではなかったように思われる。
    ラストがしょぼくて、というか尻切れトンボで物足りない。作者は途中で疲れてしまったんだろうな、という感じ。とはいえ、全体としては先が気になって仕方がないほど夢中になれたので、満足感は高い。
    この本の著者、多島氏はここ数年遺書のようなものを残して失踪しているという。

  • 主人公の精神科医は境界例が疑われる亜佐美という少女の治療が思うように進まず、振り回されてばかりいる。そこに臨床心理士の広瀬由起が解離性同一性障害ではないかとの疑問を呈し、最初解離性同一性障害という病気自体が医原性のものであると考える主人公は、この症状名を持ち出してきた広瀬にも反発を覚えるが、広瀬の心理士としての師匠のもとを訪れて講義を受けるうちに主人公の診断に対する姿勢が変わってゆく。
    で、その講義というのが独特で、広瀬自身がじつは解離性同一性障害を患っていて、本名は別で、広瀬由起というのは実はその中の人格の一つであると知るに至る。
    この講義自体が100ページほど続くのだけど、全身全霊で著者が読者を説得しにかかってくる。気迫がすごいし、スリルがある。
    精神の病や障害は、体と違って確証が得にくい。その分誤診も多いし、患者自身病識を得にくかったりもする。
    著者は七年かけてこの作品を書いたらしい。頷ける。
    巻末の参考文献の凄まじさよ。
    エンターテイメント小説というよりは何か資料を読んでいるような気分にもなるけれど、面白い。
    で、ここまで壮大な内面の冒険を読んできて、ラスト、もっと険しい道に進むことを決めた主人公の決断は応援したいけど、え、大丈夫かい?と声をかけたくもなった。

  • 五回くらい読んだ。最初は、ラストがすっきりしなかったけれど、繰り返し読むに連れてだんだんとしっくりきた。

  • まったくちっとも興味はなかったけど
    全然知らない作家を読もうと思って買ってみた本

    「たぶんつまんないだろうなー」と予想したので
    元気のあるうちにと読み始めたが
    元気・・・なくなる内容だった・・・

    そんなに暗い話ではないけど
    こういう精神がどうのいう話は
    読んでるほうの精神をどうかしちゃいがちだとオモウ
    自分だけかもしんないけど・・・
    まだ読み終わったばかりなので
    「自分のこんなことになったらどうしよう」と不安になっている
    内容がどうのというより
    とにかく自分がこんなことになったらもう一体どうしたら?!
    そんな不安でイッパイになっている

    ちょっと主人公の心変わりが唐突な気がする
    不信感でイッパイだったのに
    知らないおっさんの話をあそこまで熱心に聞けるだろうかー
    その心変わりが唐突に見えないように
    あのおっさんの語り部分が長々とあったんだろうかー

    読みやすい文章だったし
    オ?とオモウ展開もちょっとあったし
    厚さの割にはしゅる~っと読めたので
    星は3つ半くらいかなー

  • 913.6-Ta-

  • ある精神科医が、新しく勤めることになった病院で
    受け持った1人の少女。
    高校生の彼女を診断していくうちに、
    主人公はある症例と対峙することになる…といった
    ストーリー。

    途中で明かされるが
    多重人格ものである。
    姉が人格の1人だというタネはすぐ分かるが、
    この物語の凄いところは、リアルさ。

    膨大な資料から生み出された圧倒的リアルさ。
    サイコものにありがちな、作り物っぽいおどろおどろしさではなく、実際の治療現場をそのまま見ているような錯覚を覚える。

    心理学や精神医療に興味があればあるほど
    楽しめる作品。

    ホントの意味でのリアルなサイコホラーに、
    美術品の闇取引というもう一つのストーリーが
    うまく溶け合い、キャラクターたちの行動を動機づけていく。

    作者の多島斗志之先生が
    失踪してしまっているのも
    より物語に深みを感じてしまう。

  • 途中までなかなか良かったのに、唐突にラストで医者と患者がくっつくって。なんじゃそりゃ。

  • あれ、ここで終わるの?という感じ。
    余韻を大事にするというか、読者の想像力に任せる感じなのだろうか。
    榊医師をめぐる3人の女性達はその後どうなるのだろうか?博物館の件は?
    キレイに回収する必要はないかもしれないが、調子良く読めてただけに意外な終わり方でした。
    続編欲しいかも。

  • ながっ

    医学系は大好き分野だからかもだけど
    最後まで、とても面白く読ませていただきました

    今までちょっと難しい分野も読んできたこともあるけど
    多島さんの作品が一番分かりやすかった
    あんまり勉強してきてない私でもすべて理解して読めました

    精神科医の榊と、博物館の学芸部員瑤子と、舞台が二つにわかれており
    ほぼ交互に進行していき読みやすかった
    もちろん、最後のネタばらしはしないけど
    博物館の過去の秘密のところはフィクションとはわかっていてもすごく壮大でロマンチックだと思った

    榊先生の、もっと下品な(?)男子チックなところがもうちょっと見たかった(笑)

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著者プロフィール

1948年大阪生まれ。広告代理店に勤務。1982年、小説現代新人賞を受賞し作家デビュー。主な作品に、『海賊モア船長の遍歴』『クリスマス黙示録』『仏蘭西シネマ』『不思議島』『症例A』などがある。

「2021年 『多島斗志之裏ベスト1  クリスマス黙示録』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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