症例A (角川文庫)

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著者 : 多島斗志之
  • 角川書店 (2003年1月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (574ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043690015

作品紹介

精神科医の榊は美貌の十七歳の少女・亜左美を患者として持つことになった。亜左美は敏感に周囲の人間関係を読み取り、治療スタッフの心理をズタズタに振りまわす。榊は「境界例」との疑いを強め、厳しい姿勢で対処しようと決めた。しかし、女性臨床心理士である広瀬は「解離性同一性障害(DID)」の可能性を指摘し、榊と対立する。一歩先も見えない暗闇の中、広瀬を通して衝撃の事実が知らされる…。正常と異常の境界とは、「治す」ということとはどういうことなのか?七年の歳月をかけて、かつてない繊細さで描き出す、魂たちのささやき。

症例A (角川文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 読み終えて、「えっ!これで終わり?」という感想です。
    あまりに最後があっけないというか、はっきりしないまま終わったというか・・・。

    タイトルのように、精神病の症例や治療法について詳しく書かれた本です。
    特に最初の方は専門的な事をつらつら丁寧に書いてあり、小説とノンフィクションのあいのこのような印象を受けました。
    それだけちゃんと専門的知識を詰め込んでいるのと比較してストーリー部分はおざなりというか・・・物足りないと思いました。

    ストーリーは主に2つの方向から進んでいき、主なストーリーは精神科医の男性の話。
    榊は事故で亡くなった医師の担当していた患者を引き継ぐ事となる。
    その患者とは17歳の女子高生、亜左美。
    彼女と面談を繰り返す内、榊は彼女に虚言癖があると感じる。
    やがて、同僚で心理士の女性から榊は彼女の病気について意外な見解を聞く。

    その主体となるストーリーにさしはさまれるように書かれているのが博物館に勤める女性の話。
    彼女は自分の勤めている博物館で所蔵している狛犬が偽物でないかという疑惑を抱き、その真相を知っていると思われる人物に会いに行く。
    その人物とは榊が勤める精神病院にいる患者の一人だった。

    精神病を扱った小説というとその部分をセンセーショナルにとりあげてインパクトをもたせるものが多いですが、これはあくまでも理知的に淡々に描かれていると感じました。
    だから余計にリアルに感じられ、まるでノンフィクションを読んでいるような気になります。

    ただ、肝心の本筋と思われる話が途中でちょっとおざなりになってないか?という気がしました。
    最後ははっきりしないまま終わったのでモヤモヤ感が募ります。
    もっとそこを知りたかったのに・・・という感じ。

    それに、ちょっと疑問に思ったのは多重人格という稀で複雑な症例の人が精神病の患者をみる側になれるものなのか?ということ。
    自分がみられる側と同じような経験をしているので共感できる部分があるとは思うけど、それってあまりに危ういという気がしました。
    ここにも書かれているけど、そういった病気を抱えていない人でも精神病の人と常に接している内に感化され、取り込まれる事もある訳だから・・・。

    理想をもった医師が現場にいる内にそういったものを失くしていくというのは似たような事を知っているだけにやるせなく感じられ、何となく分かる気もしました。

  • とてもよくできた作品。
    読んでよかった。

  • 久しぶりにのめりこんだ小説だった。
    テーマは精神医療。医療そのものが個人的に興味のある分野で、最初からぐいぐい引き込まれた。
    主人公の精神科医、榊とつかみどころのない不思議な少女の患者。当初統合失調症という診断だったが、多重人格ではないかとの疑問が浮上する・・・。
    以前分裂症と呼ばれた統合失調症というのは、言葉のイメージより思い病気だということがわかった。作者はものすごい数の文献を読んで病気のことを研究したようだ。
    「ミステリー」に仕立てようと、博物館に隠された秘密など細かく出てくるが、読み終わってみるとあまり必要ではなかったように思われる。
    ラストがしょぼくて、というか尻切れトンボで物足りない。作者は途中で疲れてしまったんだろうな、という感じ。とはいえ、全体としては先が気になって仕方がないほど夢中になれたので、満足感は高い。
    この本の著者、多島氏はここ数年遺書のようなものを残して失踪しているという。

  • 主人公の精神科医は境界例が疑われる亜佐美という少女の治療が思うように進まず、振り回されてばかりいる。そこに臨床心理士の広瀬由起が解離性同一性障害ではないかとの疑問を呈し、最初解離性同一性障害という病気自体が医原性のものであると考える主人公は、この症状名を持ち出してきた広瀬にも反発を覚えるが、広瀬の心理士としての師匠のもとを訪れて講義を受けるうちに主人公の診断に対する姿勢が変わってゆく。
    で、その講義というのが独特で、広瀬自身がじつは解離性同一性障害を患っていて、本名は別で、広瀬由起というのは実はその中の人格の一つであると知るに至る。
    この講義自体が100ページほど続くのだけど、全身全霊で著者が読者を説得しにかかってくる。気迫がすごいし、スリルがある。
    精神の病や障害は、体と違って確証が得にくい。その分誤診も多いし、患者自身病識を得にくかったりもする。
    著者は七年かけてこの作品を書いたらしい。頷ける。
    巻末の参考文献の凄まじさよ。
    エンターテイメント小説というよりは何か資料を読んでいるような気分にもなるけれど、面白い。
    で、ここまで壮大な内面の冒険を読んできて、ラスト、もっと険しい道に進むことを決めた主人公の決断は応援したいけど、え、大丈夫かい?と声をかけたくもなった。

  • 五回くらい読んだ。最初は、ラストがすっきりしなかったけれど、繰り返し読むに連れてだんだんとしっくりきた。

  • まったくちっとも興味はなかったけど
    全然知らない作家を読もうと思って買ってみた本

    「たぶんつまんないだろうなー」と予想したので
    元気のあるうちにと読み始めたが
    元気・・・なくなる内容だった・・・

    そんなに暗い話ではないけど
    こういう精神がどうのいう話は
    読んでるほうの精神をどうかしちゃいがちだとオモウ
    自分だけかもしんないけど・・・
    まだ読み終わったばかりなので
    「自分のこんなことになったらどうしよう」と不安になっている
    内容がどうのというより
    とにかく自分がこんなことになったらもう一体どうしたら?!
    そんな不安でイッパイになっている

    ちょっと主人公の心変わりが唐突な気がする
    不信感でイッパイだったのに
    知らないおっさんの話をあそこまで熱心に聞けるだろうかー
    その心変わりが唐突に見えないように
    あのおっさんの語り部分が長々とあったんだろうかー

    読みやすい文章だったし
    オ?とオモウ展開もちょっとあったし
    厚さの割にはしゅる~っと読めたので
    星は3つ半くらいかなー

  • 「断絶感を覚えます。自分だけ別の世界に生きている。別のの法則でうごいている異世界。とても孤独。」あぁそれを感じることは医師にはできない。しちゃいけないのかは分からない。日本古来の美術品にかかわる人々とひそやかな精神病院の医師と患者と心理士のそれぞれの世代を超えた過去がつらなってく話。流れてく雰囲気の描写はゆったりと流れるラブストーリーのようだった。

  • とても真面目で丁寧に精神病を扱っているが故にかなりのボリューム。読み通せるだけの魅力はあるけれどずいぶん時間がかかった。ラストに物足りなさを感じる人が多そうだけれど私はこれぐらいの描き方で十分だった。
    センセーショナルになりがちな「解離性同一性障害」というネタを真摯に描いているのをどう評価するかで好みが分かれそう。

  • 割と話が長かったり、えらく説明っぽい記述で攻めてくるところもあるけど、概ねグイグイ読ませる。
    しかし精神病ってのはどうにも定義があいまいというか、見かけじゃ分かんないし、やらせなのか本当なのかも分かんないし、なんだってこんな難しいものなんか。全部性格ってことで片付けちゃえば良いのに、ってわけにもいかんのかなぁ。だって本当にいろんな人いるし。女の人ってこんな感じで押せば引くというか、引けば攻め込まれるというか、大概面倒くさいじゃん。。ってこれを言うのはナシか。まぁ男も違う意味で面倒なのはいっぱいいるしね。
    でも限度ってのがあってそれを超えると、性格とか言ってられないんだろうな。そういう人と真剣に向かい合っていかなきゃいけない医者ってのは、本気でやればいくらでも大変で、適当にやればいくらでも楽にできそうで、教師もそうだけど、ちゃんとした人になってほしいよねぇ。

  • 雰囲気としては久坂部さんみたいな。それほど医療ものとして優れていると思う。なんといってもその参考文献の数。卒論かと思ったよ。勉強熱心な人だ。
    精神病院で働く医師と、多重人格である臨床心理士、そしてその患者のストーリーA。そして博物館で働くうちに、その博物館の秘密をかぎつけるストーリーB。AとB、どう絡むのかとおもいきや…。
    しかしこの人ってあと一歩大好きってとこまでいかんのよね。

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