風の音が聞こえませんか (角川文庫)

著者 : 小笠原慧
  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (2010年10月23日発売)
3.50
  • (5)
  • (13)
  • (8)
  • (5)
  • (1)
  • 本棚登録 :101
  • レビュー :14
  • Amazon.co.jp ・本 (492ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043705030

風の音が聞こえませんか (角川文庫)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • 幻聴を聞き、自分が異星の王子だと思い込んでいる男・晃(ひかる)。
    晃を社会復帰させようと、アパートに通うケースワーカー・美知。
    晃の主治医であり、美知の相談役でもある精神科医・佐伯。
    以上の三人がメインキャストです。

    精神分裂病(後に統合失調症と呼ばれる)を患う晃と接するうちに愛してしまい、仕事のラインを超えてしまった美知の物語です。
    晃と佐伯は共にイケメンで、美知は小柄で可愛らしいタイプです。
    「ドラマ化を狙っているのか?」とツッコミたくなるようなビジュアルですね。

    帯に「切なくも、愛おしい」と書いてありました。
    作者の小笠原さんは、現役精神科医だそうです。
    名前を見て女性かと思っていましたが、美知のキャラクターを考えれば、男の人が書きそうですよね。

    「レナードの朝」のような話かと期待していましたが、蓋を開けてみれば身勝手な内容でした。
    切なさよりも苛立ちを強く感じました。
    美知に好感が持てるか否かで、感動度は大きく左右されます。

    幻聴との交信と、世間との断絶。
    美知との交流によって、自分の現状を理解して、社会復帰しようとする努力。
    健常者を愛するが、病人の自分は何も出来ない不甲斐なさ。
    親しかった人物の死がキッカケになった逆行。
    美知は結婚してしまうが、それでも好きという想い。
    精神的な病の元凶は父だったこと。
    美知と死を選ぶが、未遂に終わったこと。
    美知の為に、自ら病院通いを決断。
    ようやく気付く、身近にいた愛しい存在。

    好意的に見れば、惜しかったと思います。
    最初から最後まで晃視点で通せば、帯に偽りはなかったかもしれません。
    晃の苦悩は伝わってきたし、行動も理にかなっています。
    ラストも、幸せになれて良かったと素直に思えました。

    ただ、美知がメインだった為に台なしになっています。
    美知はタチの悪い女だと思います。
    如何にも男が助けてあげたくなるタイプです。
    何事も中途半端なんですよね。
    それでいて「私が悪いんです」とすぐさま言うので、ブチ切れたくても黙るしかありません。
    この怒りは、どこにぶつけろと?

    晃が作成所に通うところまでは、まだ良かったんですよね。
    当初は、元気で一生懸命なあまりに失敗をしてしまうドジっ子だと思っていました。
    ベタではあるけど、こちらの方が断然良かったわ。

    美知には、母親の愛人と肉体関係を結んでいた過去があります。
    この設定は必要なのかしら。
    美知が晃に惹かれた理由の一つは、浅ましい自分とは違ったクリーンな部分かもしれませんが。
    母親の死に関することは必要ないと思ったし、お金に困ってバーで働くエピソードもいらないですよね。
    バー勤めは晃の登場ですぐ辞めたし、結局は佐伯に工面して貰いましたから。
    ハナから晃に返さなければいいのに。

    佐伯との関係も意味不明です。
    晃を愛したことや過去のトラウマを告白したことがキッカケで、美知は佐伯と付き合うようになります。
    美知は、晃にフラフラ、佐伯にフラフラしています。

    この辺りは、舌打ちしながら読んでいました。
    佐伯を突っぱねることもなく、結婚をOKしています。
    一方で、晃を諦めきれなくて、アパートを見に行くというストーカー紛いのことをしています。

    結婚式当日には、晃と失踪しています。
    いくらフィクションでも、社会人としてやってはいけないことだと思います。
    晃とのデッドエンドで終わっていたら、白けた気持ちで本を閉じていました。

    美知は、晃とは会わないようにと元同僚に強く言われて、佐伯と別れた後は今まで住んでいた場所を離れる。
    晃と結ばれることも佐伯とヨリを戻すこともなく、自分の道を進むオチだったので、私の苛立ちは幾分鎮まりました。
    ジュンちゃんは一途ないいコなので、晃と結ばれて良かったです。

    皆は美知に甘過ぎます。
    ラストで、元同僚の前田さんは厳しくも優しいことを言って欲しかったです。
    「犯した罪は深いけど、これからは自分の幸せと見つけて」みたいなセリフを期待していたんですけどね。
    「あなたは悪くない」って、どこが?

    佐伯には同情しませんでした。
    美知と付き合うまでは、好意的に見ていました。
    佐伯先生も、恋人を亡くした過去は必要ないよね?

    後半は色ボケし過ぎです。
    仕事よりも美知を優先しています。
    そこまで縛り付けるまでの女かと思いました。
    その軽薄さは本人も気付いていたし、反省しているようですが。

    佐伯には、美知のサポートに徹して欲しかったです。
    ラストで「あなたは杉浦さんしか見ていなかったでしょうけど、実は…」という感じだったならば、最高に萌えられたと思います。

  • 精神科医の作品だけあってリアル。とても切なくなる。

  • 物語の前半と後半で読者の好みが別れそうですね。ラブストーリー視点で読んでないので自分は前半の描写のほうがトントンと読み進めました。後半からがちょっとわかりにくかったです

  • 読了後に様々なレビューを拝見したところ、評価は分かれている様です。
    特に医療小説としてとらえた場合に、著者自身が精神科医であることもあって、非常に否定的な意見が多いようです。
    また恋愛小説としてみた場合ですが、最終的な結末に同意できる人、出来ない人で評価が分かれています。
    物語序盤で晃視点の場面があるのですが、後半はほとんどなくなってしまい、晃が結婚を決断する辺りの状況が判らないため、納得できない方が居るのでしょう。
    娯楽的な意味で楽しむ分には、十分な内容だと思います。

  • ---
    もし、愛した人が精神を病んでいたら--。幻聴や妄想に苦しめられ、アパートに引きこもった晃(ひかる)の訪問指導を引き受けた新人ケースワーカーの美知。晃と気持ちを通じ合うことは容易ではなかったが、美知のひたむきさに、晃は少しずつ心を開き始める。美知も晃の純粋さに安らぎを見出していく。だが、美知は晃の主治医・佐伯にも惹かれていくのだった…。優しさが溢れる筆致、美しいラストシーンが胸を打つ、究極の恋愛小説。

  • 胸にしんとくるラブストーリー。打算と自分の大切なことを貫くということの選択を迫られ、どういう決断をするか。何が幸せなのか。心の贅肉がそぎおとされて純化されるようなきれいな物語。

  • 前半、うまく行きすぎ
    後半、先が読める
    現実味が少ない。

  • 難しいテーマにもかかわらず、重苦しいというよりはむしろ爽やかな気持ちになれたのは驚きです。
    ラストの締め方も誰かの死や、元の鞘に収まって幸せに暮らすといった予定調和的で陳腐なものではなく、作者なりの考え方が充分に込められていると感じました。

  • 幻聴、妄想に苦しむひきこもり青年と担当する新人ケースワーカーとの恋のお話。
    難しい題材だと思うけど、精神科医の作者ならではの細かい描写が胸打ちます。
    純粋ゆえにせつなく、苦しい恋が描かれていて、読んでいてつらくなります。
    本人同士だけの問題ではなく、家族や友人、病院関係者との無視することが出来ない関係もちゃんと描かれている。
    現実を直視し何を受け入れ、諦めなければならいかに向き合っていく姿に感動しました。

  • 前半の二人はとてもほほえましく、若干にやけます。
    統合失調症とか忘れてしまうくらい、関係を保とうと努力する姿が眩しかった。
    読み進めていくうちに、いろんな関係が交差して、大人の世界を垣間見た気が。
    終わり方が個人的に少し腑に落ちない部分もあるけれど、次の展開がとても気になって一気に読めました。

全14件中 1 - 10件を表示

風の音が聞こえませんか (角川文庫)のその他の作品

小笠原慧の作品

風の音が聞こえませんか (角川文庫)に関連する談話室の質問

風の音が聞こえませんか (角川文庫)はこんな本です

風の音が聞こえませんか (角川文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする