「おじさん」的思考 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043707058

感想・レビュー・書評

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  • Webに書き溜めたものを編集した、いつもの内田先生スタイル。憲法9条、教育論、倫理的生き方…等々、「おじさん」的には溜飲下がる切れ味のよいエッセイ。(切れ味のよさに惑わされ、自分で理解できた思っているだけかもしれませんが)。
    その中で特に印象に残った言葉は、sauve qui peut 「生き延びることができるものは、生き延びよ」。船が沈没したり、最前線が崩壊したりしたときに、最後に指揮官が兵士たちに告げる言葉で、内田先生が娘さんの旅立ちに送った言葉。集団として生き延びることが困難な局面では、一人ひとりが自分の才覚で生き延びる他ないと。厳しい時代ではありますね。

  • ■書名

    書名:「おじさん」的思考
    著者:内田 樹

    ■概要

    現代の最も信頼できる論客が、今や時代遅れと言われる「正しいお
    じさんとしての常識」を擁護しつつ、世の中の出来事に処すべき思
    想的態度を説いた、目からウロコの知的エッセイ
    (From amazon)

    ■感想

    久しぶりの内田さんの著書です。
    読む度に「本当によく分からない思考だな~」と思います。

    論理的とも少し違うような強引な導き方の時もありますが、この人
    なりに筋が通っており、そういう視点でこの話を切るんだ~という
    のが多いです。
    よくあるのは、戦争という視点で論法するのですかね?
    でも、この本では少なかった気がします。

    いつも気づきをたくさん与えてくれる人なので、この人の本は好き
    です。
    (でも、すぐに忘れちゃうんですけどね)

    こういうの読むと、頭が活性化される気がします。
    (気のせいかもしれないけど。)

    ■気になった点

    ・法律は、「よいことをさせる」ためでなく、「悪いことをさせな
     い」ために制定されていると考えている。

    ・人間はペナルティがなければ、ほとんど必ず「悪い事」をする。

    ・憲法9条は「戦争させない」ために制定されている。
     それは、ほっておけば、人間は必ず「戦争をする」からである。

    ・物事が単純で無いと気持ちが悪いというのは「こども」の理論
     である。大人はそういうことはいわない。

    ・人を殺してもよい条件を確定した瞬間、「人を殺してはならない」
     という決まりは無視される。
     人を殺してもよい条件を決めれば、人は、その条件をクリアする
     事に頭を使うからだ。

    ・師弟関係は本質的にエロティックなものである。

    ・売買春で取引されているのは、「器官的な快楽」ではなく、
     「人間の尊厳」である。

    ・倫理的であるとは、あらゆる場面で「お先にどうぞ」という言葉を
     躊躇なく言えるかどうかである。
     そしてこの言葉は、不平等の上にしか成り立たない。

    ・私は私の多重人格の一つに過ぎない。

    ・いま終わりが来ても平気である。だって思い残す事が無いからだ。

    ・やり残したことがある人間は、強い意志を持たないと、「お先に
     どうぞ」とは言えない。だってやり残したことがあるのだから。

    ・「終わりですよ」といわれて「はいはい、そうですか」と言える
     人間が幸福な人間だと思う。

    ・幸福な人は、他人を幸福にする。

    ・破局的な時、平常心の人にはついていくな。
     平常心の人は、今日わが身に起こる事を想像できない人である。

    ・ものを習うとは、「知っている人間」からやり方の説明を聞き、
     それを自分なりに受け入れ、与えられた課題に応用し、うまく
     いかない時はどこが違っているか指摘してもらうという、コミュ
     ニケーションの訓練を通じて、基本的なマナーを学ぶことで
     ある。

    ・子供たちの行動は、年長者の模倣です。
     子供を変えるには、私達大人が変わればいいのです。

    ・一緒に仕事をするのが楽しい人間は、フレンドリーで正直で公正
     な人間であるということに尽きる。

    ・「今大企業」である企業のほとんどが私が大学卒業の頃は、名前
     も知られていない企業だった。そして、その頃学生を大量採用し
     ていた企業のいくつかは、今、影も形もない。

    ・「毎日会社に行くのが楽しみである」ような仕事を選ぶといいよ。

    ・生き延びる事が出来るものは、生き延びよ。

    ・人間というのは「やるな」と言われたことはやりたがり、「とて
     もいいことだからどんどんやりなさい」と言われたことは、とたん
     にやる気をなくしてしまう困った生き物である。

    ・「子育てについてすべてが私の責任です」と言明する人が親である
     と私は思います。

  • 以下の言い回しが最高に心に残った。自分の子供にも伝えたい。

    必要なのは「知識」ではなく「知性」である。
    「知性」というのは、簡単にいえば「マッピング」する能力である。「自分が何を知らないのか」を言うことができ、必要なデータとスキルが「どこへいって、どのような手順をふめば手に入るか」を知っていること。
    〜中略〜 自分が何を知らず、何ができないかを言うためには、自分自身を含むシステム全体についての概括的な「見取り図」を持っていることが必要である。

  • もともとが10年ほど前の本とは思えないほど面白く、そしてわかりやすい。
    ただし、最後の章は難しく感じた。

  • 武道家(凱風館館長、神戸女学院大学名誉教授)の二冊目のエッセイ(一冊目は「ためらい倫理学」らしい)。
    ※『「おじさん」的思考2』もでているらしいね。

    内田樹のホームページにまとめたエッセイと、書き下ろしの『「大人」になること〜漱石の場合』をまとめたもの。

    エッセイでは、内田樹の本音を偽りなく描いたと思われるもので、まったく同感とは行かないものの、この人の思考がある程度トレースできた。
    一般的なものから離れたところからの視点が、一般を定義しているような、そんな思考。

    この本を読むきっかけとなったのは、夏目漱石に関しての記述があるという情報を得たから。
    主に漱石の「虞美人草」と「こころ」から、漱石が描いた”大人”についての話が内田樹なりの視点から深く掘り下げられている。
    こちらはエッセイとは趣を異にして、かなり参考になった。
    ただ物語を追うというのではなくて、こういう解釈が出来たら楽しいだろうと思えた。

    ----------------
    【内容紹介(amazonより】)
    現代の最も信頼できる論客が、今や時代遅れと言われる「正しいおじさんとしての常識」を擁護しつつ、世の中の出来事に処すべき思想的態度を説いた、目からウロコの知的エッセイ

    内容(「BOOK」データベースより)
    こつこつ働き、家庭を愛し、正義を信じ、民主主義を守る…。「日本の正しいおじさん」たちが心の支えとしてきたモラルや常識が棄て去られてしまった現代、「おじさん」たちは何を指針に生きれば良いのか。最も信頼できる論客が、今こそ「正しいおじさん」の功績を讃え、思想体系を整備し、成熟した大人として生きるための思考方法を綴った、知的参考テキスト。
    ----------------
    【目次】
    第1章 「おじさん」の正しい思想的態度
    ・「普通じゃない」国日本の倫理的選択
    ・国際社会における威信より大事なもの
    ・「護憲」派とは違う憲法九条擁護論 
     ほか
    第2章 老人国日本にむけて
    ・夢の中年シングル生活
    ・「人類の滅亡」という悪夢の効用
    ・「お先にどうぞ」という倫理的生き方
     ほか
    第3章 「説教」はおじさんの義務であり権利である
    ・大学全入時代にむけて
    ・押し掛けお泊まり中学生
    ・フリーターの隠れた社会的機能
     ほか

    第4章 「大人」になること―漱石の場合
    ----------------

  • 『別姓夫婦の「先進性」に異議あり』の終わりがきれいにまとまっていて好き。他の話も好き!ただ4章は微妙…私の好みからしたらなしでいい、と言うか書き方が好みでないので。

    とても面白い内容だった!

  • 新しい本を読む気になれないときには、既読の内田樹さんのブログコンピ本をつまみ食いしています。
    お気に入りの内田節を読むと、むずむずと誰かに贈りものをしたくなります。

  • こういう考えの人がいるというのは,心強いですね。

  • 初内田先生。
    普段からtwitterで拝見していたけれど、やっぱりパワフルなちょい悪おじさんでした。

    色々思った事はあるけれど、一番思ったのは一周回って「文学」読まねぇとなってことかな。

    今のところ僕のロールモデルは『ダンス・ダンス・ダンス』の主人公なわけだけれども。

  • 2012/06/16-01:48 新たな方向からもやもやがすっきりする。

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。神戸女学院大学を2011年3月に退官、同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。著書に、『街場の教育論』『増補版 街場の中国論』『街場の文体論』『街場の戦争論』『日本習合論』(以上、ミシマ社)、『私家版・ユダヤ文化論』『日本辺境論』など多数。現在、神戸市で武道と哲学のための学塾「凱風館」を主宰している。

「2023年 『日本宗教のクセ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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