さまよう刃 (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043718061

作品紹介・あらすじ

長峰重樹の娘、絵摩の死体が荒川の下流で発見される。犯人を告げる一本の密告電話が長峰の元に入った。それを聞いた長峰は半信半疑のまま、娘の復讐に動き出す。遺族の復讐と少年犯罪をテーマにした問題作。

感想・レビュー・書評

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  •  長峰の最愛の一人娘であり、唯一の肉親の絵摩が死体となって荒川から発見された。未成年少年グループにレイプされた末、遺棄された。しかし、少年グループに仮に罪が認められても、軽い刑罰で済んでしまうというのが最大の問題点でした。そこで、長峰は自らの手で復讐をすることを決意する。
     この本のテーマは、正義とはなんということかが問われます。他人から見ると未成年は更生するために罪は軽いほうがいいのではと思うのですけど、被害者遺族からみたら罪は重くあってほしいものですよね。すごく重いテーマでした。
     やっぱり後味が悪い。でも、その分余韻に浸ることが出来ました。テーマが重いだけあってやっぱり、目を背けたくなるようなシーンが有りました。文章なのに頭で映像となって本当に許せない気持ちになりました。そう考えると長峰の選択は正しかったのか正しくなかったのかと思うと私は正しかったかもしれないなと思いました。

  • 以前よりずっと気になっていた作品でしたがなかなか手が出せず…事前情報で重たい内容というのは知っていたので、心して読みました。
    少年法とは…あんな残忍な事をしておいて少年法に守られるのか?あぁ…最後もなんともやるせない気持ちになり本を閉じました。
    しかしさすがの東野圭吾作品!!今回も読む手が止まらずあっという間に読み終わりました。

  • 娘の命を残酷に奪われた父親の苦悩と復讐心が痛いほど伝わってきた。
    正義とは何か、そして少年法や未成年者犯罪の「更生」を重視する法律の矛盾を突きつけられる。
    「この問題を真剣に考えたことはあるか」(P450)と問われたら、私も答えられない。
    そんな私も「この世の中を作った共犯者」(P450)だと指摘されたようで、はっとした。
    現実の犯罪報道を見るたび、この物語の重さを思い出すだろう。
    誰もが一度向き合うべきテーマだと感じた。
    「正義」は正しい方向を向いているのか、「悪」を断ち切る力を持っているだろうか(P474)と、刃に例えたタイトルに深く納得した。

    • Manideさん
      なおなおさん、この感想がすごいまじめ

      いろいろ考えるのは大切だけど、
      暗い方向にいかないでね。
      なおなおさん、この感想がすごいまじめ

      いろいろ考えるのは大切だけど、
      暗い方向にいかないでね。
      2024/11/18
    • なおなおさん
      Manideさん、この感想は難しくて。
      本書の中で心に残った文から、懇意にしているAI君(←真面目なタイプ)と一緒に考えたの。
      ( ̄∇ ̄*)...
      Manideさん、この感想は難しくて。
      本書の中で心に残った文から、懇意にしているAI君(←真面目なタイプ)と一緒に考えたの。
      ( ̄∇ ̄*)ゞ
      2024/11/18
    • Manideさん
      (^-^)
      (^-^)
      2024/11/18
  • 少年法の問題・重みを突き詰めた小説。他の東野圭吾作品のようなコミカルな部分を殆ど排除しているため全体的に重たい作風となっている。罪を犯したにも関わらず罪から逃げようとする者、犯人に私刑を下そうとする者、その者を止めようと動く者、正義と法律の狭間で苦しむ者、それらの感情を利用しようとするマスコミ関係者など様々な人間達の正義や思惑が様々な場所を舞台に繰り広げられていくところが、とてもハラハラして面白かった。そして東野圭吾作品特有の伏線回収とミスリードも、中々面白かった。最初は密告者は中井だと思っていたが、まさかの人物でびっくりしてしまったがこの人も正義と現実の狭間で悩んでいたのだなぁと考えるとこの好意を攻めることは出来ないと感じた。もうすぐ、成人年齢も引き下げられるが、これからこの法律もどのように変わっていくかを見ていきたいと思った。

    この作品をアニメ化した際の声優陣を自分なりのキャスティングしてみたので読む際に参考にしてください(敬称略)。
    長峰重樹:大塚明夫
    織部孝史:杉田智和
    丹沢和佳子:高山みなみ
    木島隆史:緒方賢一
    菅野快児:花江夏樹
    菅野路子:ゆきのさつき
    伴﨑敦也:江口拓也
    伴崎幸代:日高のり子
    中井誠:小野賢章
    中井泰造:諏訪部順一
    岩田忠広:平田広明
    小田切和夫:津田健次郎
    鮎村:森久保祥太郎
    久塚:平川大輔
    真野:三宅健太
    川崎:遊佐浩二

  • 辛く悲しい物語でした。
    娘を残忍な殺され方をした被害者。その彼が行った復讐。
    彼らを通して少年犯罪の更生の在り方。特に被害者家族の心情。
    法では許されないけど彼に共感する人も多いんじゃないかな。
    自分もそのひとりですが。
    長めの小説だけど衝撃の連続であっという間の読了。
    意外な黒幕。そして終わり方。
    虚しさを感じるものの心に残る作品でした。

  • 少年犯罪の量刑のあり方と被害者家族の苦痛(苦痛という表現では十分ではないと思うが…)を描いた作品。

    自分が被害者の親だったらと思うと、ものすごく感情移入してしまい、読むのが止まらなくなりました。

    前に読んだ「人魚の眠る家」もそうでしたが、法律の抱える矛盾とその法律に翻弄される関係者という構図の中で「どれが正解?」と悩んでしまうテーマを扱うのが、本当にうまいと思います。

    ラストがなんらかの形で一筋の光が見えて欲しかった…。

    ですが読み応え十分。オススメです!

  • かなり重いテーマの作品で辛いシーンや心震えるシーンもちらほら。。正義とは何か、悪とは何かをいろいろと考えさせられる悲しくも苦しいお話しでした。最後の方はノンストップで読んじゃいました!

    スガノカイジ達、ほんとに許せない。長峰さんに復讐して欲しかったっていうのが正直な気持ちでした。

  • 少年法を問う作品でした。序盤は読むのも辛く断念しようと思ったけれど、どんどん引き込まれていきました。

    被害者、加害者、親、警察、法律...それぞれの角度からの感情。
    どんな法律があっても、やり場のない怒りと悲しみは制御できないんだろうな。
    親ならみんな長峰さんを復讐を応援したくなったのではと思う。それが法に反するとわかっていても。

  • 読みやすくて、あっという間に読み切った。描写やストーリーが生々しく、読んでいて怒りや気持ち悪さが募っていく。少年法を盾に残虐な行為をする未成年者がいたとして、もし自分や家族に危害を加えるとしたら復讐を考えるのは長峰と同じかもしれない。
    殺人を計画して行動できるかは現実的に厳しいにしても、少年が逮捕されて少ない刑期を終えて出てくるなんて現実は受け止められないだろう。

    最後の展開は予想できなかった。
    鮎村の登場に、そのまま菅野を殺すのか?
    長峰の銃弾が誤って和佳子に当たるのか?
    織部が菅野を打つのか?など
    色々頭に浮かんでドキドキした。
    血を流して倒れた男は誰?
    「お前の判断は間違っていない」…
    さまよっていた"刃"が誰の物だと最後に明かされて、う〜んという結末に思えたけど娘の仇を打ったつもりで最期を終えたのは長峰にとっては幸せだったのではないかと思えた。

    非現実的なストーリーなのにいつの間にか感情移入し、現実か非現実か分からなくなってしまうのは東野圭吾のすごい所だと改めて感じた。
    細かい描写がリアル。未成年の浅はかな考え方や行動はニュース番組以上に怖さを感じてしまう。

  • 長峰は一人娘を、未成年の非行少年達に、殺された。
    謎の密告者からの電話で、犯人を知った長峰は、一人の犯人を殺してしまう。
    もう一人の犯人・カイジを追う長峰。

    長峰が宿泊したペンションの経営者・和佳子に、正体がバレてしまうが、和佳子は、息子を事故で亡くした過去があり、長峰を匿い、カイジ探しを手伝う。

    長峰と、カイジを追う刑事達の中には、
    少年法に守られた少年達の罪と被害者遺族の深い悲しみ。法が裁き切れない犯罪に悩む刑事達がいた。

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著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

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