さまよう刃 (角川文庫 ひ 16-6)

著者 :
  • 角川グループパブリッシング
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感想 : 2020
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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043718061

作品紹介・あらすじ

長峰重樹の娘、絵摩の死体が荒川の下流で発見される。犯人を告げる一本の密告電話が長峰の元に入った。それを聞いた長峰は半信半疑のまま、娘の復讐に動き出す――。遺族の復讐と少年犯罪をテーマにした問題作。

感想・レビュー・書評

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  • 少年法の問題・重みを突き詰めた小説。他の東野圭吾作品のようなコミカルな部分を殆ど排除しているため全体的に重たい作風となっている。罪を犯したにも関わらず罪から逃げようとする者、犯人に私刑を下そうとする者、その者を止めようと動く者、正義と法律の狭間で苦しむ者、それらの感情を利用しようとするマスコミ関係者など様々な人間達の正義や思惑が様々な場所を舞台に繰り広げられていくところが、とてもハラハラして面白かった。そして東野圭吾作品特有の伏線回収とミスリードも、中々面白かった。最初は密告者は中井だと思っていたが、まさかの人物でびっくりしてしまったがこの人も正義と現実の狭間で悩んでいたのだなぁと考えるとこの好意を攻めることは出来ないと感じた。もうすぐ、成人年齢も引き下げられるが、これからこの法律もどのように変わっていくかを見ていきたいと思った。

    この作品をアニメ化した際の声優陣を自分なりのキャスティングしてみたので読む際に参考にしてください(敬称略)。
    長峰重樹:大塚明夫
    織部孝史:杉田智和
    丹沢和佳子:高山みなみ
    木島隆史:緒方賢一
    菅野快児:花江夏樹
    菅野路子:ゆきのさつき
    伴﨑敦也:江口拓也
    伴崎幸代:日高のり子
    中井誠:小野賢章
    中井泰造:諏訪部順一
    岩田忠広:平田広明
    小田切和夫:津田健次郎
    鮎村:森久保祥太郎
    久塚:平川大輔
    真野:三宅健太
    川崎:遊佐浩二

  • 辛く悲しい物語でした。
    娘を残忍な殺され方をした被害者。その彼が行った復讐。
    彼らを通して少年犯罪の更生の在り方。特に被害者家族の心情。
    法では許されないけど彼に共感する人も多いんじゃないかな。
    自分もそのひとりですが。
    長めの小説だけど衝撃の連続であっという間の読了。
    意外な黒幕。そして終わり方。
    虚しさを感じるものの心に残る作品でした。

  • 少年犯罪の量刑のあり方と被害者家族の苦痛(苦痛という表現では十分ではないと思うが…)を描いた作品。

    自分が被害者の親だったらと思うと、ものすごく感情移入してしまい、読むのが止まらなくなりました。

    前に読んだ「人魚の眠る家」もそうでしたが、法律の抱える矛盾とその法律に翻弄される関係者という構図の中で「どれが正解?」と悩んでしまうテーマを扱うのが、本当にうまいと思います。

    ラストがなんらかの形で一筋の光が見えて欲しかった…。

    ですが読み応え十分。オススメです!

  • 少年法を問う作品でした。序盤は読むのも辛く断念しようと思ったけれど、どんどん引き込まれていきました。

    被害者、加害者、親、警察、法律...それぞれの角度からの感情。
    どんな法律があっても、やり場のない怒りと悲しみは制御できないんだろうな。
    親ならみんな長峰さんを復讐を応援したくなったのではと思う。それが法に反するとわかっていても。

  • かなり重いテーマの作品で辛いシーンや心震えるシーンもちらほら。。正義とは何か、悪とは何かをいろいろと考えさせられる悲しくも苦しいお話しでした。最後の方はノンストップで読んじゃいました!

    スガノカイジ達、ほんとに許せない。長峰さんに復讐して欲しかったっていうのが正直な気持ちでした。

  • 読みやすくて、あっという間に読み切った。描写やストーリーが生々しく、読んでいて怒りや気持ち悪さが募っていく。少年法を盾に残虐な行為をする未成年者がいたとして、もし自分や家族に危害を加えるとしたら復讐を考えるのは長峰と同じかもしれない。
    殺人を計画して行動できるかは現実的に厳しいにしても、少年が逮捕されて少ない刑期を終えて出てくるなんて現実は受け止められないだろう。

    最後の展開は予想できなかった。
    鮎村の登場に、そのまま菅野を殺すのか?
    長峰の銃弾が誤って和佳子に当たるのか?
    織部が菅野を打つのか?など
    色々頭に浮かんでドキドキした。
    血を流して倒れた男は誰?
    「お前の判断は間違っていない」…
    さまよっていた"刃"が誰の物だと最後に明かされて、う〜んという結末に思えたけど娘の仇を打ったつもりで最期を終えたのは長峰にとっては幸せだったのではないかと思えた。

    非現実的なストーリーなのにいつの間にか感情移入し、現実か非現実か分からなくなってしまうのは東野圭吾のすごい所だと改めて感じた。
    細かい描写がリアル。未成年の浅はかな考え方や行動はニュース番組以上に怖さを感じてしまう。

  • 長峰は一人娘を、未成年の非行少年達に、殺された。
    謎の密告者からの電話で、犯人を知った長峰は、一人の犯人を殺してしまう。
    もう一人の犯人・カイジを追う長峰。

    長峰が宿泊したペンションの経営者・和佳子に、正体がバレてしまうが、和佳子は、息子を事故で亡くした過去があり、長峰を匿い、カイジ探しを手伝う。

    長峰と、カイジを追う刑事達の中には、
    少年法に守られた少年達の罪と被害者遺族の深い悲しみ。法が裁き切れない犯罪に悩む刑事達がいた。

  • 流石、東野圭吾というべき圧巻の作品。

    物語の疾走感と緊張感を全身で感じながら、
    どうか彼の復讐が遂げられますように、どうか彼に心穏やかな未来が訪れますようにと、祈るようにページを追っていった。
    どちらも満たされた未来などないことは充分わかっていたけれど、それでもそう祈らずにはいられないほど苦しかった。


    物語の展開と結末が気になりすぎてラストはほぼ駆け足で読んでしまって少しだけ、後から後悔、笑
    初読のドキドキとハラハラは一回しか味わえないものだから、もっと噛み締めながら読んだほうがよかったかなあ、なんて思ったり思わなかったり。




    正義とはなんなのだろうか

  •  娘をあんな形で殺されるなんて。父親(長峰)の気持ちを考えると、とてつもなく悲しくなった。同じような境遇に遭ったら、全ての親が殺してやりたい、と思うだろう。


     悲しくやるせない物語ではあるけれど、読んで良かったと心から思えた。胸を打つ沢山のメッセージが散りばめられていた。特に下記2つがとても印象に残っている。


    「人が生きていることは、食べて呼吸しているだけではない。周りの様々な人と繋がり、思いのやりとりをする。蜘蛛の巣の網目の一つ一つになること」
    人が突然居なくなるというのは、周りの人達の網目がくるい、悲しみに変わる。そう思った。


    「警察というのは、何だろうな。人を守っているのではなく、法律を守っているだけだ」
    刑事たちのつぶやきがせつなく、心に刺さった。

     

  • 「さまよう刃」 東野圭吾 さん

    1.購読動機
    2021年WOWOWでのドラマ化。
    映画もドラマも観ていないのですが、好きな東野圭吾さんということもあり購読しました。

    2.⭐️五個の理由
    未成年犯罪の被害者・遺族側の視点での物語の展開であること。
    被害者、警察、そして事件にかかわる周辺人物の「考え方」が描写されていること。

    2004年に生まれた さまよう刃。
    東野さん『天空の蜂』と同様に、
    読者に対して「たちどまって考えて、、、」
    と聴こえたように思えたのは私だけでしょうか?

    3.本書より
    「人生はチェスのようなものだ。
     動けば動くほど、敵を倒せるが、自らも様々なも   
     のを失う。」202ページ

    「自分たちが正義の刃と思うものは、本当にただしいことと言えるのか?
    本当に悪を断ち切る力をもっているのか?」
    474ページ

    4.タイトル「さまよう刃」に思う。
    ①被害者・遺族の刃
    大切な人をなくした加害者対する途方もない憤り・刃。
    加害者に向けたい気持ちと、法律との間にさまよう。
    ②警察の刃
    被害者が加害者を殺し一転被疑者に。
    法律のもと被疑者の逮捕を目指す刃。もとは被害者である事実がゆえににさまよう。
    ③世論の刃
    1人娘を殺害され、犯人を復讐目的で殺害。
    法律のもとでは被疑者に対し弁論の余地はなし。
    しかし、被疑者が被害者であるがゆえに、世論がさまよう。

    #東野圭吾さん好きな人とつながりたい




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著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

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