さまよう刃 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 26516
感想 : 2028
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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043718061

感想・レビュー・書評

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  • 誰もが長峰に同情し、長峰の復讐が叶うことを望んでいる。その思いはこの事件を担当している警察官たちも同じであった。しかし立場上、警察は法を守る為の行動をしなくてはならない。それがたとえ自分の気持ちに反していても。
    「自分たちが正義の刃と信じているものは、本当に正しい方向を向いているのだろうか・・・」
    この物語の結末は最も後味の悪いものになったが、少年法などの法律が持つ問題を深く考えさせられた。

  • 2018021

    娘をふたりの少年に殺されたことを知った父親の長峰は猟銃を取り復讐を誓う。

    少年法の存在する意義や被害者の家族のケアなど、時間が経った今でも考えさせられる事ばかりでした。誰の為の法律なのか、社会的な存在意義よりも視聴率を優先するメディア。発売から10年以上経過した今も何一つ解決していない気がしました。

    社会的には駄目な行為でも、ひと道理に照らせば復讐と言う行為は正当に見えてしまう。法律は万能ではないと分かっていても、やりきれなさが残りました。

  • 2017/3/2 No.8
    考えさせられるテーマ。少年法とは?法律は誰のためのもの?被害者の気持ちはどこに向かえば良い?当たり前の日常が当たり前でなくなり、復讐に向けた人の心の動き、声高に正論とはとても呼べないが、誰もが感じるであろう感覚。いち、1人の人生とは何か、命の重みと、それを支える不完全な法律に、疑問を投げかけた素晴らしい作品。

  • 少年犯罪の問題。娘を強姦されて殺された父が長野に逃げた犯人を追う。 さまよう刃とは少年法が持つ保護の強さは本当に正しいのかということを問うための比喩。描写の臨場感が溢れていて面白かった。犯人を追い詰めていく様子、ペンションの女性との関わりなど、が印象に残った。

  • さまようって言葉、小学生のときに初めて知って、底知れぬ恐怖を感じた。
    たぶんドラクエの敵キャラの名前にそんなのがついてたんだと思う。
    「迷う」は怖くなかったのに、「さ」がついただけでこの世の未知がぽっかり穴をあけて足元をすくおうとしてるような気になり、それに抗えず途方に暮れていた。
    まあ、彷徨うと迷うは違うんだけど、子供心に「一文字ついただけで、めちゃくちゃ怖い」って感じた。

    500ページくらいのボリューム、分厚いなぁ…何日費やすかな?なんてのんきに構えてたら、休日を丸一日使って読み切ってしまった。
    時折しおりをはさみ、食事したりスマホ触ったりしてたけど、こんなに集中して読めたのは久々。

    妻を亡くした男性が、宝物同然だった一人娘を未成年の犯罪で亡くし、人生を大きく狂わせ、自滅していく話。

    そう!自滅なの。破滅でもいいや。
    それも本人にしたら最悪の、たぶん想定外だったかたちで。
    報われなさすぎる。

    少年法とは?更生とは?警察とは?
    多くの疑問符を投げつけてくる作品。
    読んだ後は疑問符がこびりついて離れず、何度か感情を揺さぶられ泣いたことも忘れ、私はまた「さまよう」という響きで途方に暮れた。

    私個人は、長峰には生きてほしかった。
    カイジには死んでほしかった。
    とはいえ、どんな結末でも満点にはできなかっただろう。
    この手の物語には、誰しもが納得する終わり方なんてきっとないんだ。

    自首をして、罪を償いながら娘の供養をするという最善の道、生き抜く大きなチャンス。
    それを奪ったのが誠ではなく、警察側の密告っていうのに震えた。
    途中で違和感に気づくも、最初からずっとミスリードされてた!
    悔しい。

    ていうか誠、最後まで腹立たしかった。
    父親も最悪だ。この親にしてこの子あり、と作中に出てくるように、何となくどの加害者の親もそこそこのクズに見えた。
    最たるものが誠の父親だけど。

    長峰の命を奪ったのが刑法でもカイジでもなく、一介の刑事で、しかも織部というあたりにもえぐさを感じた。
    彼の心境は多くの読者を共感させていたと思うから。

    冒頭からクライマックス付近まで、長峰や、または彼を擁護する者の視点で語られていた。
    だからこそカイジや和佳子の目前で、長峰が警察の手により射殺されるシーンは、油断したとしか言いようがない。
    残りページが少なくなるにつれ、結末が読めなくなり、突然投げ出された気持ちになった。
    読み終えて反芻してみても、やはりいたたまれない。

    さまよう刃というのは、何なのだろうと最初からずっと考えていた。
    たとえばカイジのような残酷で卑劣で、それでいて結局「子供」の化物たち。
    被害者の身内の「できることなら自分の手で殺してやりたい」という気持ち。
    法治国家のやるせなさにどうにか立ち向かおうとする一部の刑事であった、というのが最終的にしっくりくるんだけど、刃は刃。
    信念を貫くため、守るためのものではなかったという読後の脱力感。

    やっぱりゆるせないのは、更生の見込みがないクソガキとかいうレベルじゃない、胸糞悪いカイジが生き延びてしまったこと。
    そして相変わらず生ぬるい少年法とかいうやつに護られてしまうであろうこと。

    東野圭吾さんで言うなら「容疑者Xの献身」の結末くらい、読後の突き放され感と虚無感がキツかった。
    限りなく5に近い4。他の方のレビューを拝読して何度もかみしめてみよう。

  • 少年法については重い。
    少年法に限らず、なぜ加害者は守られ、被害者はプライバシーもすべて流出してしまうのか常々疑問。
    少年犯罪で子供を亡くした親による復讐劇は、いくつか読んだけども、どれもいたたまれない。

    この話も東野さんにしては荒唐無稽ぶりが少なくて、社会派小説として面白かった。
    とはいえ、一般人の和佳子が縁もゆかりもなく、そのうえ、これから娘の復習を遂げようとする長峰をここまで守るだろうか。
    和佳子の娘も事故死ではなく殺されてしまったのかとも思ったけど、そういうわけでもなさそうだし・・・。
    あと密告電話も、犯人の仲間ではなく、警察官がかけていたのではという含みも・・・むむむ。

  • とにかく内容が重く、読んでいてとても辛く苦しくなるお話です。1つの事件とそこから起こる更なる事件を、複数の登場人物の視点から見て、それぞれの考えに触れられるので、とても物語に感情移入しやすいです。その分、1人の人間として自分はどう思ったか、どんな答えを出すのか、ということを真に突きつけられ考えさせられました。

  • 東野さんはエンターテイメント的なおもしろい話とかも、うまいなと思うけど、こういう重いテーマの泣ける話もやっぱりうまいですね。
    読みやすくて続きも気になるから一気読みしました。
    嫌なシーンでは顔をしかめながら、泣けるシーンでは思わず目が潤みながら読んでました。

    少年犯罪に関しては、被害者遺族側からしたら、少年法がおかしいと思うのも当然だと思いました。
    ただ、作中でも言われてたんですが、自分が事件に関わってないという人にとってはそういうことを考えることもないというのもその通りだと思いました。
    事実私もおそらく私の周りの人も深く考えてないです。
    でももしこれが事件の被害者だったらと考えると、少年法を非難せざるを得ないんじゃないかと思います。
    加害者のことを考えるのも大切だけど、この事件のように被害者に非がない場合はそれよりも被害者のことをもっと考えてほしいなということを考えながら読みました。
    ラストは哀しいけれども、納得というか、良い終わり方だと思いました。

    それにしても、私も一応年頃の女として、こんな事件には巻き込まれたくないです。
    こんな事件で人生めちゃくちゃにさせられたらもう…。
    考えただけでも恐ろしいです。

  • 父親のやりきれなさがガンガン伝わってきて、悲しいお話です。
    「正義とは」「法とは」を考えずにはいられません。
    つらいお話ですが、決定的な部分は暗示するような手法で、少し救われます。
    筆致が軽く、読みやすいです。内容が重いだけに助かりました。

  • 二重にも三重にもやりきれない話だった。
    視点が多くて把握が少し大変だけど
    それぞれの展開が気になるような巧みな書き方で一気に読めた。
    本当にやりきれない話だけど読み物としてはよくできていると思う。

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著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

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