さまよう刃 (角川文庫)

著者 :
  • 角川グループパブリッシング
3.76
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本棚登録 : 17989
レビュー : 1692
  • Amazon.co.jp ・本 (499ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043718061

感想・レビュー・書評

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  • 長峰の一人娘・絵摩の死体が荒川から発見された。花火大会の帰りに、未成年の少年グループによって蹂躙された末の遺棄だった。謎の密告電話によって犯人を知った長峰は、突き動かされるように娘の復讐に乗り出した。犯人の一人を殺害し、さらに逃走する父親を、警察とマスコミが追う。正義とは何か。誰が犯人を裁くのか。世論を巻き込み、事件は予想外の結末を迎える…。重く哀しいテーマに挑んだ、心を揺さぶる傑作長編。

  • 話の内容はかなり重い。
    今まで読んだ東野圭吾さんの本の中で、一番重くて読むのが辛かった。

    耐えきれないくらい辛いシーンの連続で、途中で読むのをやめようか
    と思ったほど。

    しかし、この小説はぜひたくさんの人に読んでもらいたい。

  • さまようって言葉、小学生のときに初めて知って、底知れぬ恐怖を感じた。
    たぶんドラクエの敵キャラの名前にそんなのがついてたんだと思う。
    「迷う」は怖くなかったのに、「さ」がついただけでこの世の未知がぽっかり穴をあけて足元をすくおうとしてるような気になり、それに抗えず途方に暮れていた。
    まあ、彷徨うと迷うは違うんだけど、子供心に「一文字ついただけで、めちゃくちゃ怖い」って感じた。

    500ページくらいのボリューム、分厚いなぁ…何日費やすかな?なんてのんきに構えてたら、休日を丸一日使って読み切ってしまった。
    時折しおりをはさみ、食事したりスマホ触ったりしてたけど、こんなに集中して読めたのは久々。

    妻を亡くした男性が、宝物同然だった一人娘を未成年の犯罪で亡くし、人生を大きく狂わせ、自滅していく話。

    そう!自滅なの。破滅でもいいや。
    それも本人にしたら最悪の、たぶん想定外だったかたちで。
    報われなさすぎる。

    少年法とは?更生とは?警察とは?
    多くの疑問符を投げつけてくる作品。
    読んだ後は疑問符がこびりついて離れず、何度か感情を揺さぶられ泣いたことも忘れ、私はまた「さまよう」という響きで途方に暮れた。

    私個人は、長峰には生きてほしかった。
    カイジには死んでほしかった。
    とはいえ、どんな結末でも満点にはできなかっただろう。
    この手の物語には、誰しもが納得する終わり方なんてきっとないんだ。

    自首をして、罪を償いながら娘の供養をするという最善の道、生き抜く大きなチャンス。
    それを奪ったのが誠ではなく、警察側の密告っていうのに震えた。
    途中で違和感に気づくも、最初からずっとミスリードされてた!
    悔しい。

    ていうか誠、最後まで腹立たしかった。
    父親も最悪だ。この親にしてこの子あり、と作中に出てくるように、何となくどの加害者の親もそこそこのクズに見えた。
    最たるものが誠の父親だけど。

    長峰の命を奪ったのが刑法でもカイジでもなく、一介の刑事で、しかも織部というあたりにもえぐさを感じた。
    彼の心境は多くの読者を共感させていたと思うから。

    冒頭からクライマックス付近まで、長峰や、または彼を擁護する者の視点で語られていた。
    だからこそカイジや和佳子の目前で、長峰が警察の手により射殺されるシーンは、油断したとしか言いようがない。
    残りページが少なくなるにつれ、結末が読めなくなり、突然投げ出された気持ちになった。
    読み終えて反芻してみても、やはりいたたまれない。

    さまよう刃というのは、何なのだろうと最初からずっと考えていた。
    たとえばカイジのような残酷で卑劣で、それでいて結局「子供」の化物たち。
    被害者の身内の「できることなら自分の手で殺してやりたい」という気持ち。
    法治国家のやるせなさにどうにか立ち向かおうとする一部の刑事であった、というのが最終的にしっくりくるんだけど、刃は刃。
    信念を貫くため、守るためのものではなかったという読後の脱力感。

    やっぱりゆるせないのは、更生の見込みがないクソガキとかいうレベルじゃない、胸糞悪いカイジが生き延びてしまったこと。
    そして相変わらず生ぬるい少年法とかいうやつに護られてしまうであろうこと。

    東野圭吾さんで言うなら「容疑者Xの献身」の結末くらい、読後の突き放され感と虚無感がキツかった。
    限りなく5に近い4。他の方のレビューを拝読して何度もかみしめてみよう。

  • 2018021

    娘をふたりの少年に殺されたことを知った父親の長峰は猟銃を取り復讐を誓う。

    少年法の存在する意義や被害者の家族のケアなど、時間が経った今でも考えさせられる事ばかりでした。誰の為の法律なのか、社会的な存在意義よりも視聴率を優先するメディア。発売から10年以上経過した今も何一つ解決していない気がしました。

    社会的には駄目な行為でも、ひと道理に照らせば復讐と言う行為は正当に見えてしまう。法律は万能ではないと分かっていても、やりきれなさが残りました。

  • 我が娘を蹂躙され殺害された父親の復讐劇。現代版の”敵討ち”を描いた作品。

    少年犯罪、被害者遺族の心境、警察の葛藤、法律とは、正義とは…、重厚な人間ドラマに色々と考えさせられる。非常に重たいテーマを扱いながらも、テンポがよくスリリングでストレスを感じさせない。人間ドラマを楽しむもよし、娯楽として気楽にミステリー&サスペンスを楽しむもよしといった感じ。

    ラストは…、う〜ん…救われない。わかってはいながらも切ない気持ちにさせられる。ただ、最後の最後にちょっとしたどんでん返しが入ることで柔らかな着地になっていたような気がする。

    作者は、「家族を殺されて悔しい。復讐をしたい」という気持ちを汲み取るシステムが今の社会には存在しない点に矛盾を覚え本作を執筆したとのこと。法律の存在意義とはなんなのだろうか。個人的には、支配者にとって都合がいいから存在しているような気がしてならない。支配者にとっては、法律で市民を守ることにより、市民が安心して労働に精を出してくれるのが最も望ましいのだろう。それと合わせて民主主義による多数決の原理が世の中を強烈に支配することによって、「多数派=正しい」という誤った洗脳が生まれ、マイノリティが不遇を味わう社会が出来上がっているような気がする。今のところ、人類は万人が満足する社会システムを発明できていない。支配者からすれば、現時点でベストと思われる民主主義のシステムの中で、マイノリティは少し我慢してくださいねってことなのだろう。「多数派=正しい」という誤った価値観が社会を支配しているうちは、マイノリティである被害者遺族の気持ちが報われる日は遠いような気がする。

  • 罪の意識もない。それどころか悪いことなのかそうでないかの区別さえ出来ていない。
    そんな少年たちが犯罪を犯す。そして少年法は殺人者である彼らを守る。
    理不尽に娘の命を奪われた遺族の悲しみはどこにぶつければいいのか。
    突然に奪われた日常。
    残された者がかかえて生きていかなければならないやりきれない辛さ、痛み。
    反省すればいいというものではない。
    けれど、せめて反省する気持ちくらい持ってもらわねば・・・。
    長峰の強い憤りに引きずられるように、物語は展開していく。
    いつのまにか長峰の怒りが読み手にも伝染し、哀しみや痛みを上まわる「どうしようもない思い」につぶされそうになる。
    長峰の行動は間違っていたのかもしれない。
    では、何がいったい正解だったというのだろう。
    人を殺した少年には人権があり、法律でしっかりと守られている。
    無惨に殺された被害者の人権はどこにあるというのか。
    生きている人間の未来をつぶしてはならない。
    そんな理想的な思いが少年法の根底にあるのかもしれない。
    だが、無軌道な行いの果てに他人の命を奪った者に未来などない・・・と思う。
    取り返しのつかないことがこの世にはあるのだ。
    テーマも展開も結末も、すべてが衝撃的な作品だった。
    少年法とは何のために、誰のためにあるのか。
    考えさせられる作品だった。答えは・・・簡単には出ないだろう。

  • ストーリーは、娘を弄ばれて殺された父親が、犯人に復讐を行うというものです。
    文にしたら一文ですが、内容は物凄く濃く、ハードです。
    この犯人というのが、未成年の少年たちで、たとえ捕まったとしても、いわゆる少年法に保護されるわけです。
    話も当然そこを中心に進んでいきます。

    まず、はっきりいってこの小説に出てくる少年たちはクズです。
    本当に他人の事を考えずに、自分の事しか考えていない。それも異常なレベルでです。
    でも、実際今の世の中やったらおるんやろうなって感じです。

    そんな奴らが、自分の大切な人を奪っていったらどうしますか。
    警察に捕まえてもらい、裁判にかけて罪を償わせますか。
    でも、そんな奴らが3年やそこらで罪を懺悔して更生すると思いますか。
    素知らぬ顔で社会に出てくるんですよ。まぁ、全員がそうとは言い切れませんが。
    そもそも、人を殺しておいて更生って何って感じです。
    どう、更生するん?何を償うん?

    今まで少年法についてら考えた事なかったけど、被害者からしたら泣き寝入りするしかない法律やな。
    でも、少年の可能性を信じるっていう点では、それも必要やと思うけど。
    でも、実際に自分が被害者の遺族っていう立場になったら、どうやろな。
    さすがに、復讐まではいかんと思うけど。いや、それもこんな普通の状態じゃないやろうから、わからんわ。

  • 悪人を思い返した。
    それぞれの登場人物の気持ちが分かるし
    1つの殺人で多くのことが巻き起こる。

    非常に面白かった。

  • 非常にグロテスクでショッキングなシーンから始まるので、苦手な人は読まないほうがいい。
    特に、年頃の娘さんがいる人は。
    分厚いのに、一気に読んでしまった。
    以下感情的なレビューなので注意。



    こういう残酷な少年犯罪の犠牲者や遺族の心情を考えると、
    私は何も言葉をかけられない。
    作中でも、一人娘を無惨に殺された父親の復讐劇に意見が分かれる。
    誰も、事件を追っている刑事さんですら答えが出せない。

    時代が進んだ今だって、犯罪に遭った被害者・遺族に配慮なんてない。
    少年犯罪ならなおさら。
    意図的に他人の命を奪った人間に未成年も何もない。
    殺人者に人権を与えるなんて言語道断。
    だって、加害者は結局数十年で出てきて普通の暮らしして、被害者は何も悪いことしてないのに一生その傷に苦しめられなきゃいけない。
    狭い日本なのに、ニュースを見れば毎日誰かが殺されてる。
    他人には陰険で残酷な日本人なんだから、せめて被害者が余計な悪意から守られる制度ができてほしい。
    そんな風に思われてならない。

    とりあえず「人権派」弁護士という口だけ詐欺師と
    殺人事件すら自分たちのために娯楽に変えるマスゴミは滅びればいい。
    そんな思いを新たにする小説でした。

  • 重い。上手い。

著者プロフィール

東野圭吾(ひがしの けいご)
1958年大阪市生野区生まれ。大阪府立大学工学部電気工学科卒。大学在学中はアーチェリー部主将を務める。1981年に日本電装株式会社(現デンソー)にエンジニアとして入社し、勤務の傍ら推理小説を執筆する。1985年『放課後』で第31回江戸川乱歩賞を受賞し、小説家としてのキャリアをスタート。2006年『容疑者Xの献身』で第134回直木三十五賞を受賞。2013年『夢幻花』では第26回柴田錬三郎賞を受賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞受賞。現在、直木三十五賞選考委員を務めている。代表作としてガリレオ・新参者シリーズに加え、映画化された『手紙』『ラプラスの魔女』。ほかにもテレビドラマ・映画化された作品が多い。2018-19年の作品では、『人魚の眠る家』、『マスカレード・ホテル』、『ダイイング・アイ』、そして今後の映画化作として玉森裕太、吉岡里帆、染谷将太らの共演作『パラレルワールド・ラブストーリー』(2019年5月31日映画公開)がある。なお、中国で『ナミヤ雑貨店の奇蹟-再生-』が舞台化・映画化され、映画はジャッキー・チェンが西田敏行と同じ雑貨店店主役で出演する。2019年7月5日、「令和」初の最新書き下ろし長編ミステリー『希望の糸』を刊行。

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