一瞬の光 (角川文庫)

著者 :
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感想 : 324
  • Amazon.co.jp ・本 (589ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043720019

作品紹介・あらすじ

三十八歳という若さで日本を代表する企業の人事課長に抜擢されたエリート・橋田浩介。彼は、男に絡まれていたところを助けたことがきっかけで、短大生・中平香折と知り合う。社内での派閥抗争に翻弄されるなか、橋田にとって彼女の存在は日増しに大きくなっていった。橋田は、香折との交流を通じて、これまでの自分の存在意義に疑問を感じ、本当に大切なことを見いだしていくのだった…。-混沌とした現代社会の中で真に必要とされるものは何かを問う、新たなる物語。各紙誌書評で絶賛と感動の声を集めた気鋭のデビュー作、待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 読みやすい文章の中に、生きるとは何か、愛とは何か、という示唆が散りばめられていて、素敵な小説だった。

    自分を愛していないと人を愛することはできないが、人を自分以上に愛して初めて本当に自分を愛することができる

    というメッセージは心に刺さった。

    自分も死にたいと思った時に必ず顔が浮かぶ人がいる。その人のことを思うと、自分の死後その人はどれだけ悲しむだろうかと思うと死ぬことなどできないと思わされる。
    もし自分が1人だけだったら自殺など簡単にできてしまう気がするが、私はその人を自分以上に大切にしたいと思えるから自分のことも大切にしようと思うのだ、と本書を読み終えて言語化できた。

    『僕のなかの壊れていない部分』も良かったが、哲学書のようで、小説という観点だと個人的に本書の方が好みだ。

  • これが白石さんのデビュー作かぁ…という感じ。(良い意味で)
    内容重め、香折のことイマイチ好きなれない、でも先が気になって一気読みだった。
    読後感もよくないけど、なぜか惹きつけられるのが白石作品。笑

  • 主人公は一人の短大生と出会う。香折は母親と兄から言われ無きイジメを受けてきた。そのトラウマ故に、精神を病む。そして、その後の兄の暴力で寝たきりになった。主人公は「これからはずっと二人で、絶対、離れ離れにならずに生きていこう。」と。重い一言に感動。

  • よかった。とてもよかった。こんな形で一緒になってほしくなかったけど、最後お互いの気持ちに気づけてよかったとは思う。いつものことながら白石一文の描く主人公が登場人物たちを分析するくだりが精緻で普段我々も感じているなんとなくの雰囲気とかを的確に表現している。

  • 主人公とヒロインに全く共感出来ない。社内抗争の部分が一番スリリングに読めた。

  • 大手企業の出世頭として嘱望されていた橋田浩介は、派閥抗争に破れた。それはトップに君臨して会社を牽引していた人物の裏切りだった。彼の手腕を認めた反対派の誘いがあったが、彼はそれまでの闘志も意欲も失ってしまっていた。
    面接官として出会いバーで二度目の出会いをした香折が、男に絡まれているたのを助けたことでかかわりが出来る。
    辞表を出した後も、複雑な生い立ちをした香折が気にかかり、何かと面倒を見る羽目になる。
    浩介には上司の縁続きの女として完璧な彼女、瑠衣がいた。人が振り返る美しさと聡明さを持ち絶品の料理まで作る。ひたすら愛し続けてくれる彼女はいたが、孤独で人生を投げたような香折が常に気になっていた。

    彼は、辞表を出した後でも、理想的な家庭を築けそうな瑠衣との人生を選べば、社内でも安定して昇進していけただろう。別の道を選んでもそれでも着いて行くと瑠衣はいっていた。

    作者は瑠衣の美しさ純粋な愛情を浩介にぶつけてくる。そして親と兄からDVを置け続け、欝に悩み、今でもおびえて暮らす香折が常に心にある浩介を書く、女として愛しているのではない、瑠衣を置いてでも香折には手を差し伸べねばと思っている。

    エリートとして抜擢された地位が揺らぎ、会社経営の暗部を見てしまった、確かに現代社会には明るい面は少ない、彼はそれを是として飲み込んできたが、わが身に及んだ深い人間不信の感情は、拠って立ってきた大きな柱を微塵に砕くものだった。

    生活はそう純粋な温室で育つようなものではない、濁った水に揉まれていると、澄んだ流れに出会うこともある。

    読者としては、孤独な戦いをしてきた浩介に瑠衣という贈り物をささげたくなる。香折は兄に襲われ人事不省から回復しても意識がいつ戻るかわからない。浩介に関わって欲しくないと読みながら思う。

    浩介の決断は作者の書くという姿勢が見える。

    非の打ち所のない瑠衣と傷だらけの香折、どちらに寄り添って生きるか。感動的な幕切れを書いた、白石という作家が世に出た読み甲斐のある作品だった。

    社内の抗争、政治がらみで経営の深部までの話は浩介の立場を現すものだろうが、結果的に人間性を探るものならもう少し簡単でもいいような気がした。

    たがそれは欲張りな感想で、この作家のものをもう少し読んでみたくなった。

  • 国を代表する企業で若くして人事課長になった橋田は、偶然入ったバーで、バーテンダーが面接に来ていた短大生・香折であることに気付く。帰り際、男に絡まれているところを助けたことをきっかけに、香折との縁が生まれる。

    はーーーぜんっぜん共感できなかった〜。もう何より香折が鬱陶しい。瑠衣さんから見たらこんなにクソムカつく女なかなかいなくない?ていうか橋田は何でそんな香折に入れ込んでんの?ぜんっぜん分からん。以上。

  • 自分と似たものを他人の中にみつけ、それが愛する理由になるというのは、自己愛なんじゃないかと思うけど、孤独な二人が寄り添うことに気持ちの種類など関係ないのかもしれない。

    登場人物がこぞって孤独だけど、特に自殺した上司、ガンで死んだ親友のくだりは考えさせられた。

  • 今更ながら読んだ。処女作。

    白石一文、表現したいことがはっきりしていていい。
    全部同じ話みたいに見えることもあるけど。

    登場人物の誰にも共感できないけど、全員に共感できるような、変な感覚。
    登場人物が皆極端だからか。主人公も、ヒロインも。
    今の世の中に生きてる人、特に私みたいに本読んでああだこうだうだうだ考えてる人の中に、こんな極端な考え方できる人なんてなかなかいない。
    みんな複雑にふらふらしながら生きてる。と私は思ってる。
    少なくとも私の中には浩介も香折も瑠衣もいて、それがうだうだと反応していた。
    だからこその小説なんだろうけど。


    運命と、愛。
    「この世の全部を敵に回して」を読んだときに、こんなに複雑な深い愛を文章で表現できるなんて、なんてすごい人だろう、と思った。
    この人は処女作の段階からずっとそれを書き続けてきたんだと思うと何故か泣けてきた。
    自分を大切にしたうえで、相手を大切にしてあげられる愛。
    相手を大切にすることでしか、自分を大切にできない愛。
    甘えること、心を許すこと。
    どれも愛だと思うし、結局はどんな相手と巡り合うか、巡り合ったことに気づけるか、なのだと思う。



    政治や社会面の描き方もぬかりなくて、流石元記者。
    普通に裏社会モノ書くだけでも相当面白いの書くんだろうなと思う。
    多分読まないけど。
    あとザ・バブル!って感じのらぐじゅありーかつ泥臭い世界観もすき。


    瑠衣さんのような二番目のヒロインが私は割と好き。
    現実的で、強くて、一直線で直接的な愛に溢れていて、弱くて。
    現実に周りにいたら絶対敵に回してしまうタイプだけど。
    どれだけ主人公が鼻白んでいようが自分の考えを滔々と述べる姿に憧れる。
    それはとても正しい考え方だと思うし。
    「むかしは私ももっと突っ張ってた。でも、ほんとうは男の人たちを見て、いつも大変だなあって思ってた。」

    あなたのそばにいさせて、じゃなくて、私なら絶対にあなたを幸せにできるから誰にも渡さない、って言い切れる女性、凄いと思う。
    それはもちろんわたしはあなたがいなきゃだめなの、て意味でもあるんだけど。

  • 白石一文さんの作品を何作か読んできたが、共通したテーマはきっと運命とか宿命のようなものなんだろう。

    それに翻弄され、迷い戸惑いながらも一番大切なものを守るため険しい道を選ぶ、というパターン。

    美貌、家柄、能力、人柄、料理の腕までもが完璧な瑠衣と酷い虐待を受けて育った影響で常に情緒不安定な香折。
    全く違う性質の2人の女に深く関わるうち、浩介の心情に変化が起きてくるのだが。

    男性陣は「放っておけない、守ってあげたい」薄幸タイプの女子に弱いよなぁ…瑠衣だって、なんでも手にしているように見えたって平気な訳ないのに。

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著者プロフィール

白石 一文 (しらいし・かずふみ)
1958年福岡県生まれ。’00年『一瞬の光』でデビュー。’09年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で山本周五郎賞、’10年『ほかならぬ人へ』で直木賞を受賞。『不自由な心』『すぐそばの彼方』『私という運命について』『神秘』『愛なんて嘘』『ここは私たちのいない場所』『光のない海』『記憶の渚にて』『プラスチックの祈り』『君がいないと小説は書けない』『ファウンテンブルーの魔人たち』など著作多数。

「2021年 『我が産声を聞きに』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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