不自由な心 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店
3.10
  • (31)
  • (81)
  • (314)
  • (59)
  • (16)
本棚登録 : 1322
レビュー : 114
  • Amazon.co.jp ・本 (429ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043720026

作品紹介・あらすじ

大手企業の総務部に勤務する江川一郎は、妹からある日、夫が同僚の女性と不倫を続け、滅多に家に帰らなかったことを告げられる。その夫とは、江川が紹介した同じ会社の後輩社員だった。怒りに捉えられた江川だったが、彼自身もかつては結婚後に複数の女性と関係を持ち、そのひとつが原因で妻は今も大きな障害を背負い続けていた…。(「不自由な心」)人は何のために人を愛するのか?その愛とは?幸福とは?死とは何なのか?透徹した視線で人間存在の根源を凝視め、緊密な文体を駆使してリアルかつ独自の物語世界を構築した、話題の著者のデビュー第二作、会心の作品集。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • すこぶる胸糞悪い小説だった。次から次にろくでもない男ばかりでてくる。ちなみにすべて不倫。
    身勝手で独善的で、ばっかじゃないの?と思わず吐き捨てたくなるような愚かさのオンパレード。
    でも、それを知っていてもなお、そんなろくでもない生物をどこか愛おしく思えてしまうのは何故だろう。
    既婚男性と尻軽独身女性の組み合わせばかりだからありきたりでチープに感じてしまうけれど、男も女も似たようなものかもしれない。
    誰だって自由に生きたい。誰がどう思おうが誰がどうなろうがどうでもいい。愛する人と一緒にいたい。でも愛する人はころころ変わる。
    そんなもんでしょ。所詮みんなゲスなんですよ。
    と私はこの本を読んで思いましたね。

    極め付けは表題作の「不自由な心」。
    作家自身が、この話に入り込みやすくするために前の四編を書いたっていうぐらいの渾身作。
    不倫で盲目になって相手と一緒になろうとしてそれに発狂した妻が自殺未遂をして、それで頭が冷えて家庭に戻ったものの、ほとぼりが冷めればまた別の人と不倫にはしる江川。
    妹の旦那がかつての自分と同じように不倫の果てに離婚しようとするのを引き留めるが、なんの説得力もナシ。妹の旦那に説教した内容ぜんぶ江川本人が自分に言い聞かせてきただけの薄っぺらいものだ。
    半身不随になってしまった妻を石塊呼ばわりまでして、あのとき死んでしまったら良かったのにだなんて、クズすぎて言葉がでてこない。
    こういうタイプの人間は本当の意味で誰かを愛することなんてできやしないんだ。結局自分のことしか愛せない。
    社会的に理性的に生きていかんとするならば、不自由な心をどうにかなだめすかして飼いならして、押し込めて、なんなら首を捻り上げて、そうやってやっていかなきゃならないんだ。

  • 【あらすじ】
    大手企業の総務部に勤務する江川一郎は、妹からある日、夫が同僚の女性と不倫を続け、滅多に家に帰らなかったことを告げられる。その夫とは、江川が紹介した同じ会社の後輩社員だった。怒りに捉えられた江川だったが、彼自身もかつては結婚後に複数の女性と関係を持ち、そのひとつが原因で妻は今も大きな障害を背負い続けていた…。(「不自由な心」)人は何のために人を愛するのか?その愛とは?幸福とは?死とは何なのか?透徹した視線で人間存在の根源を凝視め、緊密な文体を駆使してリアルかつ独自の物語世界を構築した、話題の著者のデビュー第二作、会心の作品集。

    【感想】

  • 作者の精神性に上手くついていけず、評価なし。しかしあとがき(あとがきにかて)がこの本の意義を雄弁に語っていて、ようやく腹落ちした気持ち。

    この前に向田邦子と辻仁成を読んでたけど、やっぱ男性が書いたか女性が書いたかって文章に出るのね。

    この本の筋とは関係ない話になるけれど、作品集(に限らず、CDアルバムとか個展とかでも)を作る時って順番とか、並べ方までちゃんと作者の思いがあるんだなぁ。短篇集なんかそのへんふわっと気にせず読み流しちゃったりするけど、今後そのへんも楽しみになりそう。

  • このテーマでタイトルが「不自由な心」ってなんとも言い得て妙というのか、舐めてるのか

    男の勝手な言い分をここまで書き連ねると、男の読者である俺でも辟易としてくる。ほんでまた都合エエんだ。自殺したり飛行機が堕ちたり、個人的な出来事について自分が主人公気取りで勝手にクライマックス盛り上がってるのを傍から読まされるの正直ツラいねんなぁ。

    って「駄作掴んだ」と思ったら、最後に載ってた表題作でちょっとだけ盛り返した。それでもやっぱり身勝手を言い訳してる範疇からは越えられてないなぁ。

    人間だれでも身勝手なもんで、他人様が身勝手なことをしてもお互い様、本来そこを責めるのは筋がちゃうっていうたらちゃうんだけど、身勝手だから自分以外には厳しくなってしまう。で、身勝手な自分が誰かに責められて「俺はなんて不自由な境遇なんだ」と思う。

    そういう道筋で考えたら、タイトルの意味は分からないでもないが…しかし、身勝手だなぁ、俺が思うんだから相当身勝手だ。

  • どうして不倫男というのは自分が一番の迷惑な存在のくせにああなんて俺は不幸で罪深いんだとうじうじうじうじうじうじうじうじ嘆きながら実は女を不幸にしてきた武勇伝を自慢したいだけで結局なにも解決させないまま終わるバカばっかなの?

  • 究極の男性像の描写。男の「性」の追求。真面目な顔して会議で発言するおっさんも美人の女子社員を前にすると理屈抜きに本性が露わになってしまう。男って何て単純で不完全なんだろう。どんなに年齢を重ねても「自我」が確立されない。露わにならない。

    女性の視点から見ると本書で描かれてる男性像は到底理解し難いものだろう。男のわたしでさえ嫌悪する部分があるくらいだから。
    白石さんが小説を通じて伝えようとしているメッセージを抜きにすれば、男尊女卑の肯定かという考えさえ脳裏を過る。
    だが、白石さんが小説に託す想いには並々ならぬものが感じられる。それこそが、彼の描く人物像(総じて不完全で不器用、ナルシズムの塊である場合も少なくない)に対して時折共感だったり、哀れみだったりを私達に思わせる。

    「浮気」する男がいる。勿論、女の中にもいる。
    彼らは皆ふつうの生活をしている。妻、子がいて傍目には順風満帆の人生に見える。彼らの心の矢を別の誰かに向かわせるきっかけは何なのか。多々あるだろうけれど、やはり人間の弱さこそが決定的な理由と言えるのであろう。
    私たちは弱い。圧倒的に弱い。
    助けが必要でぬくもりや潤いがなければ生きていくことは難しい。

    「死」を意識するほどの状況に陥った時思い浮かべるのは誰か。その時必要な人は誰か。
    この小説の中では、死を目前にした男たちが、最期の時を目前に控え、妻ではない他の女性を強く想う様が描かれる。
    結局愛というのは変化の激しいものなのだろうか。それとも人間の性質が私たちの考えている以上に荒々しく、波間を揺さぶる地平線のごとく安定しないものなのか。
    やれやれ。まだ若造の私には難しすぎるテーマである。でもたとえ年齢を重ねても分からないのかもな。

    私が思うに白石さんが不倫している男性(皆一様に悪気がない)を頻繁に描くのには、人間存在の不可思議や男と女の愛の終着点など、とにかく様々な事柄に言及したいとの理由からなのだろう。そういう観点から見ると、白石さんの小説の中では人の「弱さ」や「意地」がハッキリと映し出される場面に何度も遭遇する。こちらが恥ずかしくなってしまうような屁理屈に屁理屈を上乗せした論理。大人だからこそ素直になれないのが人間の性。

    何年かしたらもう一度読み返してみようと思う。何かが掴める気がする。

  • この話を読み終わってからあとがきの「小説の役割」を読むと、
    なるほど自分が小説に求めていたものがずばり書いてあって納得。

    肝心の小説の内容については、
    「まぁ男の人ってこんな人も多いよね。共存してる女も女だけど。」
    と言ったところかな。
    何だかんだで、みんなしたたかに生きてるんですよね、実は。

  • 短編のすべてに「不倫」という題材が組み込まれているが、嫌悪よりも人間らしい愛情が描かれていることを感じ、深く響いた。
    例えばもう二度と繋がることの出来ない相手でも(今現在傍らにいる人であれば尚いいが)、心の中に優しい傷となって生き続ける。
    自分の中で記憶が形を変えながら死を迎えるその日まで共に歩み続ける。そんな愛情の素晴らしさに触れた作品だった。
    この作品を読んでいると己にあった既存の常識が少し砕け破壊されたように思う。
    個体で生まれて個体で死んでいくのには変わりがないが、胸の中を覗けば無数の物語があり、それらに時に苦しめられ時に励まされている。
    そんなふうにして今日もやっと呼吸して、酸素を二酸化炭素に変えて、食料を血と肉に変えて自分は生きているんだと思った。
    抗えない運命に絶望するなんて最終手段で、どんなふうにでも自分も変われるんだと思いたくなった。
    時が経てば平凡な愛情と日常は刺激のないつまらないものに思えてしまうが、そうじゃなくて自分の捉え方感じ方一つで
    同じ相手と無数に枝分かれが出来る。
    白石さんが書いたこの小説は苦しいほど哀しいが私はそう信じたい。

  • 誰もが生きていく上で何が大切なのか・
    どうすれば真剣に生きられるのかを模索するように、
    この小説を通して人間が生きることの大切さを
    強く突き詰めていくことができる。

    スポーツ・政治・経済など
    日々ドラマが演じられ続ける世界とは
    直接繋がることのない、
    より個人的で切実なもの…

    「日常」。

    描写豊かに描かれた日常を読むことで、
    自らの足元にある凝視すべきものに気付かされる。

    緊急着陸をひかえ爆発する可能性大な機内から
    主人公が恋人に最後の電話をかけるシーンは、
    号泣。

  • タイトルに惹かれて購入した一冊。

    人は何のために人を愛するのか?その愛とは?
    幸福とは?死とは何なのか?

    明晰な視線で人間存在の根元を見つめ、緊張感溢れる文体で綴られた作品集です。

    「本当に自分の愛する者を失くしたとき、この世界の他のすべての価値は色あせ、人は生への執着からはじめて離れることができる。」

    此の一文を読んだ時、じーんときました。
    色色と考えさせられる作品。

全114件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

白石 一文 (しらいし・かずふみ)
1958年福岡県生まれ。’00年『一瞬の光』でデビュー。’09年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で山本周五郎賞、’10年『ほかならぬ人へ』で直木賞を受賞。『不自由な心』『すぐそばの彼方』『私という運命について』『神秘』『愛なんて嘘』『ここは私たちのいない場所』『光のない海』『記憶の渚にて』『プラスチックの祈り』『君がいないと小説は書けない』『ファウンテンブルーの魔人たち』など著作多数。

「2021年 『我が産声を聞きに』 で使われていた紹介文から引用しています。」

白石一文の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
江國 香織
宮部みゆき
本多 孝好
有効な右矢印 無効な右矢印

不自由な心 (角川文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする
×