不自由な心 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店
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本棚登録 : 1181
レビュー : 112
  • Amazon.co.jp ・本 (429ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043720026

作品紹介・あらすじ

大手企業の総務部に勤務する江川一郎は、妹からある日、夫が同僚の女性と不倫を続け、滅多に家に帰らなかったことを告げられる。その夫とは、江川が紹介した同じ会社の後輩社員だった。怒りに捉えられた江川だったが、彼自身もかつては結婚後に複数の女性と関係を持ち、そのひとつが原因で妻は今も大きな障害を背負い続けていた…。(「不自由な心」)人は何のために人を愛するのか?その愛とは?幸福とは?死とは何なのか?透徹した視線で人間存在の根源を凝視め、緊密な文体を駆使してリアルかつ独自の物語世界を構築した、話題の著者のデビュー第二作、会心の作品集。

感想・レビュー・書評

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  • 作者の精神性に上手くついていけず、評価なし。しかしあとがき(あとがきにかて)がこの本の意義を雄弁に語っていて、ようやく腹落ちした気持ち。

    この前に向田邦子と辻仁成を読んでたけど、やっぱ男性が書いたか女性が書いたかって文章に出るのね。

    この本の筋とは関係ない話になるけれど、作品集(に限らず、CDアルバムとか個展とかでも)を作る時って順番とか、並べ方までちゃんと作者の思いがあるんだなぁ。短篇集なんかそのへんふわっと気にせず読み流しちゃったりするけど、今後そのへんも楽しみになりそう。

  • このテーマでタイトルが「不自由な心」ってなんとも言い得て妙というのか、舐めてるのか

    男の勝手な言い分をここまで書き連ねると、男の読者である俺でも辟易としてくる。ほんでまた都合エエんだ。自殺したり飛行機が堕ちたり、個人的な出来事について自分が主人公気取りで勝手にクライマックス盛り上がってるのを傍から読まされるの正直ツラいねんなぁ。

    って「駄作掴んだ」と思ったら、最後に載ってた表題作でちょっとだけ盛り返した。それでもやっぱり身勝手を言い訳してる範疇からは越えられてないなぁ。

    人間だれでも身勝手なもんで、他人様が身勝手なことをしてもお互い様、本来そこを責めるのは筋がちゃうっていうたらちゃうんだけど、身勝手だから自分以外には厳しくなってしまう。で、身勝手な自分が誰かに責められて「俺はなんて不自由な境遇なんだ」と思う。

    そういう道筋で考えたら、タイトルの意味は分からないでもないが…しかし、身勝手だなぁ、俺が思うんだから相当身勝手だ。

  • どうして不倫男というのは自分が一番の迷惑な存在のくせにああなんて俺は不幸で罪深いんだとうじうじうじうじうじうじうじうじ嘆きながら実は女を不幸にしてきた武勇伝を自慢したいだけで結局なにも解決させないまま終わるバカばっかなの?

  • 究極の男性像の描写。男の「性」の追求。真面目な顔して会議で発言するおっさんも美人の女子社員を前にすると理屈抜きに本性が露わになってしまう。男って何て単純で不完全なんだろう。どんなに年齢を重ねても「自我」が確立されない。露わにならない。

    女性の視点から見ると本書で描かれてる男性像は到底理解し難いものだろう。男のわたしでさえ嫌悪する部分があるくらいだから。
    白石さんが小説を通じて伝えようとしているメッセージを抜きにすれば、男尊女卑の肯定かという考えさえ脳裏を過る。
    だが、白石さんが小説に託す想いには並々ならぬものが感じられる。それこそが、彼の描く人物像(総じて不完全で不器用、ナルシズムの塊である場合も少なくない)に対して時折共感だったり、哀れみだったりを私達に思わせる。

    「浮気」する男がいる。勿論、女の中にもいる。
    彼らは皆ふつうの生活をしている。妻、子がいて傍目には順風満帆の人生に見える。彼らの心の矢を別の誰かに向かわせるきっかけは何なのか。多々あるだろうけれど、やはり人間の弱さこそが決定的な理由と言えるのであろう。
    私たちは弱い。圧倒的に弱い。
    助けが必要でぬくもりや潤いがなければ生きていくことは難しい。

    「死」を意識するほどの状況に陥った時思い浮かべるのは誰か。その時必要な人は誰か。
    この小説の中では、死を目前にした男たちが、最期の時を目前に控え、妻ではない他の女性を強く想う様が描かれる。
    結局愛というのは変化の激しいものなのだろうか。それとも人間の性質が私たちの考えている以上に荒々しく、波間を揺さぶる地平線のごとく安定しないものなのか。
    やれやれ。まだ若造の私には難しすぎるテーマである。でもたとえ年齢を重ねても分からないのかもな。

    私が思うに白石さんが不倫している男性(皆一様に悪気がない)を頻繁に描くのには、人間存在の不可思議や男と女の愛の終着点など、とにかく様々な事柄に言及したいとの理由からなのだろう。そういう観点から見ると、白石さんの小説の中では人の「弱さ」や「意地」がハッキリと映し出される場面に何度も遭遇する。こちらが恥ずかしくなってしまうような屁理屈に屁理屈を上乗せした論理。大人だからこそ素直になれないのが人間の性。

    何年かしたらもう一度読み返してみようと思う。何かが掴める気がする。

  • この話を読み終わってからあとがきの「小説の役割」を読むと、
    なるほど自分が小説に求めていたものがずばり書いてあって納得。

    肝心の小説の内容については、
    「まぁ男の人ってこんな人も多いよね。共存してる女も女だけど。」
    と言ったところかな。
    何だかんだで、みんなしたたかに生きてるんですよね、実は。

  • 短編のすべてに「不倫」という題材が組み込まれているが、嫌悪よりも人間らしい愛情が描かれていることを感じ、深く響いた。
    例えばもう二度と繋がることの出来ない相手でも(今現在傍らにいる人であれば尚いいが)、心の中に優しい傷となって生き続ける。
    自分の中で記憶が形を変えながら死を迎えるその日まで共に歩み続ける。そんな愛情の素晴らしさに触れた作品だった。
    この作品を読んでいると己にあった既存の常識が少し砕け破壊されたように思う。
    個体で生まれて個体で死んでいくのには変わりがないが、胸の中を覗けば無数の物語があり、それらに時に苦しめられ時に励まされている。
    そんなふうにして今日もやっと呼吸して、酸素を二酸化炭素に変えて、食料を血と肉に変えて自分は生きているんだと思った。
    抗えない運命に絶望するなんて最終手段で、どんなふうにでも自分も変われるんだと思いたくなった。
    時が経てば平凡な愛情と日常は刺激のないつまらないものに思えてしまうが、そうじゃなくて自分の捉え方感じ方一つで
    同じ相手と無数に枝分かれが出来る。
    白石さんが書いたこの小説は苦しいほど哀しいが私はそう信じたい。

  • タイトルに惹かれて購入した一冊。

    人は何のために人を愛するのか?その愛とは?
    幸福とは?死とは何なのか?

    明晰な視線で人間存在の根元を見つめ、緊張感溢れる文体で綴られた作品集です。

    「本当に自分の愛する者を失くしたとき、この世界の他のすべての価値は色あせ、人は生への執着からはじめて離れることができる。」

    此の一文を読んだ時、じーんときました。
    色色と考えさせられる作品。

  • 【あらすじ】
    大手企業の総務部に勤務する江川一郎は、妹からある日、夫が同僚の女性と不倫を続け、滅多に家に帰らなかったことを告げられる。その夫とは、江川が紹介した同じ会社の後輩社員だった。怒りに捉えられた江川だったが、彼自身もかつては結婚後に複数の女性と関係を持ち、そのひとつが原因で妻は今も大きな障害を背負い続けていた…。(「不自由な心」)人は何のために人を愛するのか?その愛とは?幸福とは?死とは何なのか?透徹した視線で人間存在の根源を凝視め、緊密な文体を駆使してリアルかつ独自の物語世界を構築した、話題の著者のデビュー第二作、会心の作品集。

    【感想】

  • すこぶる胸糞悪い小説だった。次から次にろくでもない男ばかりでてくる。ちなみにすべて不倫。
    身勝手で独善的で、ばっかじゃないの?と思わず吐き捨てたくなるような愚かさのオンパレード。
    でも、それを知っていてもなお、そんなろくでもない生物をどこか愛おしく思えてしまうのは何故だろう。
    既婚男性と尻軽独身女性の組み合わせばかりだからありきたりでチープに感じてしまうけれど、男も女も似たようなものかもしれない。
    誰だって自由に生きたい。誰がどう思おうが誰がどうなろうがどうでもいい。愛する人と一緒にいたい。でも愛する人はころころ変わる。
    そんなもんでしょ。所詮みんなゲスなんですよ。
    と私はこの本を読んで思いましたね。

    極め付けは表題作の「不自由な心」。
    作家自身が、この話に入り込みやすくするために前の四編を書いたっていうぐらいの渾身作。
    不倫で盲目になって相手と一緒になろうとしてそれに発狂した妻が自殺未遂をして、それで頭が冷えて家庭に戻ったものの、ほとぼりが冷めればまた別の人と不倫にはしる江川。
    妹の旦那がかつての自分と同じように不倫の果てに離婚しようとするのを引き留めるが、なんの説得力もナシ。妹の旦那に説教した内容ぜんぶ江川本人が自分に言い聞かせてきただけの薄っぺらいものだ。
    半身不随になってしまった妻を石塊呼ばわりまでして、あのとき死んでしまったら良かったのにだなんて、クズすぎて言葉がでてこない。
    こういうタイプの人間は本当の意味で誰かを愛することなんてできやしないんだ。結局自分のことしか愛せない。
    社会的に理性的に生きていかんとするならば、不自由な心をどうにかなだめすかして飼いならして、押し込めて、なんなら首を捻り上げて、そうやってやっていかなきゃならないんだ。

  • 読書会のお題が 「異性がわからなくなった」本は?
    そんなの、考えたこともなかったーーだって、そもそも異性って異物じゃないか?
    わかるんか??
    困り果てた挙句に、初期白石作品=男の身勝手本だよ という情報を得て、表題作のみ読んでみた。

    なるほど、わからんわ(笑)
    まさに男の身勝手本。
    身勝手な上に、この主人公は自分のことすらわからずにぐらぐらし続けてるだけなんじゃないか?

    そこそこの会社に勤める35歳の男性が主人公。
    彼の妹が離婚するんだと言ってくるところから話がはじまる。
    妹の夫は、主人公が紹介した彼の5歳下の部下。
    離婚なんて冗談じゃない、と腹を立てるのだけれど、ご本人は結婚してからも次々に会社の女の子をつまみぐい。
    それが原因で妻は自殺未遂で半身付随になっているのに、自分は運が悪かったと思っているーーーで、子も妻もなくして、後を追うように死んだ友達を理想化しちゃってる。
    挙句の果てに、妹の夫を追いんで、ごつぅ暴力ふるって「でも、急所ははずしてやったぜ」ヲレ、いい奴だよね、か?

    こういう男にひっかかる女って、いるんだ .....

    主人公が九州出身の男であるのに対して、妹の夫が都心の私立でエスカレーターのぼんぼんという対比が、たぶん、主人公の ”結婚とはいったん籍を入れたら離婚さえしなきゃカッコがつくもの”というガチガチかつボロい固定観念=不自由な心 を浮かび上がらせる装置になっているのだろう ...... と、途中までは思ったが、暴力締め/しかも自己満足。

    要するに子供の頃はそこそこデキが良くて、都会にでてきたはいいが、ただの人だったという事実と向き合えないガキじゃん、という感じ。

    なにが人間の心の深淵だか?
    まぁ、たしかに 評判通りの身勝手な話でした。

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著者プロフィール

1958年、福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。出版社に勤務しながら、2000年に『一瞬の光』を刊行し、多方面で絶賛、鮮烈な作家デビューを果たす。09年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で山本周五郎賞、10年『ほかならぬ人へ』で直木賞を受賞。『不自由な心』『すぐそばの彼方』『私という運命について』『神秘』『愛なんて嘘』『ここは私たちのいない場所』『光のない海』『記憶の渚にて』など著作多数。

「2018年 『一億円のさようなら』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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