私という運命について (角川文庫)

著者 :
  • 角川グループパブリッシング
3.67
  • (230)
  • (365)
  • (346)
  • (77)
  • (24)
本棚登録 : 2989
感想 : 365
  • Amazon.co.jp ・本 (495ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043720040

作品紹介・あらすじ

大手メーカーの営業部に総合職として勤務する冬木亜紀は、元恋人・佐藤康の結婚式の招待状に出欠の返事を出しかねていた。康との別離後、彼の母親から手紙をもらったことを思い出した亜紀は、2年の年月を経て、その手紙を読むことになり…。-女性にとって、恋愛、結婚、出産、家族、そして死とは?一人の女性の29歳から40歳までの"揺れる10年"を描き、運命の不可思議を鮮やかに映し出す、感動と圧巻の大傑作長編小説。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 主人公にどっぷりはまって感情移入してしまう私には、ものすごく感動した作品でした。「選ばなかった未来なんかどこにもない」という一説は、「あの時ああしとけば良かった」と思うことが多い自分には、痛かった。
    それにしても最後の最後、本当に悲しかった。

  • 読み終えて、胸がつまるというか、ぼんやりと考え込んでしまうというか。
    お話自体はきちんとすっきり終わるのだけど、内容を自分と重ね合わせてしまう感じがある。
    29歳から40歳までの、女の10年の物語。
    自分自身がその只中にいる年齢だからこそ、そんな風になったのかも。

    大手メーカーの営業部に総合職として勤務する冬木亜紀。
    バブル期を抜けて、男女雇用機会均等法が成立して少し後の時代、亜紀は元彼である康の披露宴の招待状の返事を出しあぐねていた。彼からはプロポーズされたが断った過去がある。
    別れから2年の歳月を経て、亜紀は康の母・佐智子から届いたまま封を切っていなかった手紙を初めて読み、自分の運命というものを見つめはじめる。

    29歳からの10年、多くの女性はたくさんの選択を迫られたり、自分の往く道について思い悩んだりする。
    結婚はするのか。出産はするのか(できるのか)。
    結婚するとしたら、仕事は続けるのか。相手の家族と同居するのか。
    出産後は主婦になるのか、仕事復帰するのか。
    結婚しない人生を選んだとしたら、その後の生き方はどうするのか。
    理想通り、思った通りにはほとんどならない人生の中で、どのような選択をして、進んで行くのか。

    この小説の主人公・亜紀もそんな普通の女性の一人で、恋人と別れたり、また別の人と出逢ったり、仕事の面でも転勤になったりまた本社に戻ったり、家族の病気や身内の死、友人との関係の変化などが10年の間にさまざま起こる。
    比較的厚めの一冊にぎゅっと凝縮された10年だからものすごく波乱万丈に思えるけれど、実際は比較的落ち着いた時期や事件めいたことは起きない穏やかなときもあるだろうし、恋愛だってまったくしない時期もある。そういう余白を思えば、こういうこともあるだろう、という10年だと思う。

    10代や20代のときは、私自身、人生というものは自分で選択して切り開いていくものだと思っていたけれど、今になってみると少し違って、与えられた運命や自分の力では変えられない運命を受け入れて進んでいくことも、選択のひとつなのだと思う。
    当然自分で自分の思う道を選ぶことも必要なのだけど、それと同じくらい、受け入れることも実際は多いのだということ。
    諦めのように見えるけれど、それ自体自分の選択のひとつ。

    人はよく選ばなかった道に思いを馳せたりするけれど、実際手に出来るのは、選んできたその道だけ。
    <選べなかった未来、選ばなかった未来はどこにもないのです>
    佐智子の手紙の一節が、すとんと腑に落ちた。
    別れた人とまた出会うという運命の流れも時にはあって、それを自ら掴みに行くかどうかは自分の選択にかかっていたりする。

    色んな人の色んな人生が絡み合って、ひとつの舟に乗って進んでいく。
    時に自分がその舟を降りて別の舟に乗り換えたり、どうしようもない運命に引っぱられて誰かがその舟を降りることもある。
    自分が往く先はどこなのか。選択の只中にいる私は、考えずにはいられなかった。

    余談としては、白石一文さんの小説ってもっと理屈っぽいイメージがあったのだけど、この小説はとても読みやすかった。

  • 結婚について、現在あるいは過去に、惑い、悩み、考えている(いた)女性は、自らを置き換え、読むこともあるだろう。
    29歳で恋人にプロポーズされ、逡巡のうえ別々の道を歩み、40歳で再会後に結婚する女性の物語。
    彼女がこだわり、常に離れないのが「運命」という存在。

    義母となる人からの手紙に
    「選べなかった未来、選ばなかった未来はどこにもないのです。未来など何一つ決まってはいません。しかし、だからこそ、私たち女性にとって一つ一つの選択が運命なのです」
    義妹の手紙で
    「運命というのは、たとえ瞬時に察知したとしても受け入れるだけでは足りず、めぐり合ったそれを我が手に掴み取り、必死の思いで守り通してこそ初めて自らのものになるのだ」

    読んだ誰でもが、私という運命について、考えを巡らせてしまう小説といえよう。

  • すごい、すごすぎる。今までいろいろ本を読んできたが、こんなに揺さぶられたことはない。中盤から涙があふれ続け、読破した直後は声にならない声を出しながら、号泣してしまった。
    「運命」の伏線に触れる度に「ああっ」と頭をかかえたりして。出会ったことのない衝撃をくれた小説でした。
    冷静になった今、他の人のレビューを読むと自分ほどの大きな感動を受けた人がいないことにそーなのかと思ってしまう。人の感じ方ってほんと人それぞれ。

  • 運命、恋愛、運命、別れ、運命、結婚、運命、出産、運命、死
    何が運命で何が運命ではないのか。

    結局、ひとつの選択を運命と決めるのは自分で、運命ではないと決めるのも自分。
    そうだとすると、単純な選択以上の「運命」とはなんなのだろうか。
    個人的には、ただの後付け的な都合のいい言い訳にすぎない気もするが、
    それ以上の主体的な選択以上の何かを信じたい気もする。

    白石さんの作品を読むと、運命というものを信じてみようかなという気にもさせられる。
    運命を扱っていても、安易に結びつかない、ひねくれた運命だからこそ魅かれるのかも。

    前は、恋愛小説とか好きじゃなかったけど、最近は意外と抵抗なく読んでるな。

    「選べなかった未来、選ばなかった未来はどこにもない。未来など何一つ決まってはいない。だからこそ、一つ一つの選択が運命なのだ。私たちは、運命を紡ぎながら生きていく」

  • 「運命は受け止めるだけじゃだめで、必死に掴んで守り通そうとして初めて自分のものになる」というフレーズが印象的だった。

    女性の10年間の話。

    • 1511597番目の読書家さん
      私は受け身過ぎています。
      それで守り通したこともありません。
      私と言える人生を持ちたいものです。
      私は受け身過ぎています。
      それで守り通したこともありません。
      私と言える人生を持ちたいものです。
      2021/05/17
  • 亜紀と義理の母親との温泉道中が一番好きな場面ですが、エピソードで印象に残っているのは田中角栄。
    ページレイアウトがベタだけどドラマのように展開するので、初見はドキドキした。2回目以降は主人公2人以外の人生も興味を持ってより深く読める。
    JUJUの春雪を聴きながら年1回は読みたい本。

  • 細川連立内閣が成立した1993年。
    男女雇用機会均等法の成立で女性総合職のトップバッターとして、大手情報機器メーカーに入社した冬木亜紀は29歳だった。
    かつて交際しプロポーズまで受けた相手、佐藤康が、亜紀の後輩と結婚することとなり、亜紀はふたりの結婚式に招待されるも出席を迷っているところから物語は始まる。
     「雪の手紙」29歳、「黄葉の手紙」33歳、「雷鳴の手紙」34歳、「愛する人の声」37歳。そして40歳を迎えての2004年10月23日まで、私たちは亜紀という一人の女性の人生を追っていくことになる。
    読みながら、幾度も"運命"という言葉にふれ、幾度もその"運命"とやらに想いを巡らせた。

    重い心臓病をもつ沙織
    「子供の発達を研究していて私が知ったのは、人間にとって最も大切なのは愛されることだ、という点ですね。愛することが重要なのではなくて、愛されることが重要なんだと思います。だから、人と人との関係は、互いに愛し合う関係ではなくて互いに愛され合う関係でないと駄目なんだっていう気がします」
    「例えば、現在の母子関係の様々な問題も、児童心理学的に言うと、母親の子供への愛情が不足したり歪んだりしているからというよりは、母親側が、我が子がどれほど自分を必要とし、愛してくれているかということを掴み取れなくなっているところに最大の原因があるんです。」

    (愛してくれる人を愛することと、愛している人に愛されることと、それはどこがどう違うのだろう。)

     (あのとき、康との結婚を選ばなかったことは、私にとっての運命だったのだろうか。
     私は、ただ選ばなかった、選べなかっただけではなかっただろうか。佐知子の言うように選ばなかった未来など何もないのに、何もない未来を何かがある未来と錯覚して、単に自分を自分ではぐらかしただけではなかったろうか。選ばないことを選び、私のほんとうの未来を安易に投げ捨ててしまっただけではないだろうか。)

    純平の車に轢かれ怪我をした明日香からの手紙
    「冬姉ちゃん、人と人とのあいだには、きっと取り返しのつかないことばかり起きるけれど、それを取り返そうとするのは無理なのだから、取り返そうなんてしない方がいいんだと私は思います。大切なのは、その悲しい出来事を乗り越えて、そんな出来事なんかよりもっともっと大きな運命みたいなものを受け入れることなんだと思います。」

    【人生は自分自身の意志で切り開く】
    【運命という存在に身を任せ、あるがままを受け入れていく】
    この二つは矛盾なく両立するのだろうか。
    康と別れてしまった折に佐知子から綴られてきた手紙にある言葉を、気づけば私も亜紀のようにくりかえし読み返していた。

    《選べなかった未来、選ばなかった未来はどこにもない。未来など何一つ決まってはいない。だからこそ、一つ一つの選択が運命なのだ。私たちは、運命を紡ぎながら生きていく》

    それにしても、女性の10年間にはこれだけのことが起きる。私は今年28歳。まだこの物語のスタートラインにも立っていない。これからの未来は、きっとまだ決まっていない。決まってなどいないのだ。

  • 初読の作家で、かつ、タイトル買い。
    一気に読んじゃったよ。

    ヒロインが29歳から40歳までの11年が描かれる。
    誰かに見えていて自分には見えなかった「運命」。
    出逢いと別れを繰り返し、最後にした選択。

    途中、何度か出産、命をつなぐことの意味が問われるのですが、
    あたしもヒロインがそれをあきらめた、33歳。
    ヒロインは、今のあたしと同じように出世する道もなくなり、
    結婚もしていず、当然子どももいない。
    先が不安になってマンションを購入する。
    それで、50歳になったら早期退職をして
    細々と生きて行こう、と誓う。

    …ヒロインみたいにバブル期に大手メーカーに勤めていたら
    (たぶんこれ、NECだよね)
    それも可能だったかもしれないけど。
    時は1993年、インターネット前夜。
    ケータイがどんどん進化していく過程とかが背景として描かれるので、
    時間の流れがリアルタイム世代はつかみやすく、
    感情移入しやすい。
    現実の歴史(もはや歴史だよね)が紛れてくるので、
    実際にある「事件」か「事故」に物語が関係してくのかなと
    思っていたら、案の定の結末でした。

    あたしの運命はどこにつながっているのかな。
    どうしても、
    ヒロインみたいに「誰か」につながっていることを
    いまでも気にしてしまう。

    少女漫画っぽい話だったけど、
    今のあたしが読む運命としか思えない、
    よい小説だった。

    あーあたしも赤子産みたい。
    あたしの「欲しい」は
    その過程の想像がいっさいないから
    きっとかなわないんだろう。

    小説だって、何か出逢いや人生を変える転機は
    ヒロインは動く。
    転勤をするし、出張するし。
    あたしはいつもこたつで待ってる。
    …ダメだあ…。

  • なんだか、こわい。
    後半は狂気を感じる。
    自分と考え方が違いすぎるからかもしれないけど、こんなに依存できる人生ってすごい。

全365件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

白石 一文 (しらいし・かずふみ)
1958年福岡県生まれ。’00年『一瞬の光』でデビュー。’09年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で山本周五郎賞、’10年『ほかならぬ人へ』で直木賞を受賞。『不自由な心』『すぐそばの彼方』『私という運命について』『神秘』『愛なんて嘘』『ここは私たちのいない場所』『光のない海』『記憶の渚にて』『プラスチックの祈り』『君がいないと小説は書けない』『ファウンテンブルーの魔人たち』など著作多数。

「2021年 『我が産声を聞きに』 で使われていた紹介文から引用しています。」

白石一文の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
村上 春樹
東野 圭吾
村上 春樹
有効な右矢印 無効な右矢印

私という運命について (角川文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする
×