福音の少年 (角川文庫)

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  • 角川書店 (2007年6月23日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (416ページ) / ISBN・EAN: 9784043721078

作品紹介・あらすじ

小さな地方都市で起きた、アパートの全焼火事。そこから焼死体で発見された少女をめぐって、明帆と陽、ふたりの少年の絆と闇が紡がれはじめる──。あさのあつこ渾身の物語が、いよいよ文庫で登場!!

感想・レビュー・書評

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  • 高校の図書室の雰囲気とか、友だちとの何気ない会話とか、当たり前と思ってた過去のものが描かれてて懐かしくなりました。柏木陽の色気にやられました。かっこいいんだよなあ、声がかっこいい人っていいよね。終わり方もよかったし、『薄桃色の一瞬に』がかなりグッときました

  • 明帆と陽の関係性がすごく曖昧だ。友達でもない、同情でもない、仲間意識でもない。明帆は陽がこれからどう生きていくか、どう死んでいくかをそばで見ていきたいし、陽は明帆に生きていてほしい、自分の両親や藍子のように失いたくないと思っている。
    私はこの関係性に名前を付けることができない。多分恋とか愛とかでもないし、相棒というくくりでもないだろう。
    事件とか、真実とかは二の次で、ただ似ている性質を持った2人の少年が、藍子という少女を介して複雑に絡み合ってしまっただけ。その瞬間を、その部分だけを作者はこの本に記しただけなんだろうなと思う。
    この2人が事件によって絡まっていく様を、私はただ見ているだけ。読み終わってしまった今、この2人の交わりはどうなるのか、だれにも分からない。
    個人的にはこれからもこの関係性を続けてほしいけれど、あのラストでもしかしたら交わりは断ち切れ、片方にだけ絡まった痕跡を残して、2人の交流は終わるのかもしれない。それとも2人共が相手に自分を残して、徐々に絡まりは解けていくのかもしれない。ひょっとしたら、私の望んでる以上の関係になっているかもしれない。
    私は高校生の頃、この少年少女と同じ年頃のときに読み、全然彼らの心情が分からなかった。ただ面白かったし、少年、特に陽に心惹かれた。かっこよかった。斜に構えた雰囲気、魅力的と言われる声、明帆への他人へ向けるのとは違う感情。
    それから10年以上経ち、オーディブルの朗読でこの本を聴いている。声が付くことで印象は変わったし、あの頃より理解が出来る気もする。けれどやっぱり分からない事も多い。でも一つ分かったのは、あの少年少女は今の私よりも大人だったということ。
    高校生らしさもあるけれど、根本的な考え方、物事の読み取り方、考えていることがとても深い。それは彼らにとって良いことなのか私には分からないけれど、でも今、私はこの歳になってもこの少年たちに魅力を感じてしまうのだ。

  • 言うまでもなく「バッテリー」で名を広めた著者なので、児童書というイメージがある方もいらっしゃるかもしれない。
    実際、あさのあつこはたくさんの児童書を書いている。
    でも、児童書を書くと同時に大人向けの物語も書くのがあさのあつこ。
    バッテリーとはもちろん違った文体だけれど、弥勒の月ともまた違った文体で。
    七色に変わる文章がたまらなく好き。
    そしてこの「福音の少年」の世界観というか、細かな描写にそそられ(すぎ)た。これはすごい。好みすぎてやばいです。
    「夜と山の織り成す闇が存在していた。目を凝らせば、闇にも濃淡があると知れる。風に木々がしなる度に、闇の密度が変化する。」
    こういう表現とか、たまらない。くすぐられます。

    あと、柏木陽の声。

    "「大人なら、人を殺しても冗談ですむのかよ」
    美しい声だった。艶がある。巧妙な愛撫のような声だ。
    おとなならひとをころしてもじょうだんですむのかよ。
    声に誘惑されている気がした。"

    "「すっげえ、お邪魔なタイミングやな。悪ぃ」
    美しい声だった。美しいという形容は、必ずしも適切ではないのだけれど、それより他に形容する言葉が浮かばないような声だ。未知の音、名も知らぬ異国の楽器が奏でる旋律。特異な声だ、確かに。"

    こんな描写されたら、一度耳元で囁かれてみたいと思ってしまいます。

    著者自身が「一番書きたかった作品」と語る本書、だからこそ手にとった。
    うん、満足。
    綺麗な、巧みな、時に爽やかで、時にはダークな、この文章だけで十分楽しめると思う。

    ストーリーとラストについてはもちろん賛否両論あるだろうと思うけど…(正直ラストは物足りない)

  • ひとつ前に本棚に登録した畠中恵著《百万の手》を読んでからしばらくして出合い共通項の多さにセットで記憶に残った作品だった。しかし《百万の手》は読後数年を経ても覚えていたにもかかわらずこちらの《福音の少年》はうろ覚えでレビューのために手にとってみた。そうだった。こういう物語だった。読み出してすぐに思い出した。でもやめられずに結局、最後まで再読してしまった。二人の少年と一人の少女の物語だ。危うい、思春期というにはもっと駆け足でその先へたどり着いてしまった、青春というには哀しい時間のなかで足掻いている彼らの一人が死に、遺された二人は彼女の真実を追う。誰にとって誰が福音の少年だったのか。幾重にも読むことができるだろう。ラストで少年の一人、秋帆はまるでそのいのちを脅かされているように読める。そして殺し屋がいう、罰だと。罰などではない。たしかに彼一人で犯人と、さらには犯人に雇われた殺し屋と会うなど無謀だ。一人にすれば死ぬと警告してくれる大人もいたというのに。しかし、私は彼の生存を信じる。絶望したわけではないという殺し屋の言質もその根拠のひとつだ。殺し屋がそういう以上、この先に殺し屋と秋帆の再びの接点が予言されている。だが、最大の根拠は秋帆を失いたくないと強く願う者の存在にある。頽れ、倒れ三日月をその手に掴もうとした秋帆にはそう強く願う者がいる。それは必ず生への楔となる。ほんの微かにでも歩む角度が違っていれば人殺しとなっても不思議はないと思わせる少年だ。しかし彼は、殺し屋の誘惑を自らの意志ではね除けた。そんな彼が殺し屋に屈し、安易にいのちを捨てるわけはない。だが、結末は物語のなかで明確に語られることはなく、幕を閉じる。著者がそれ以上を物語ることなく沈黙するのならば読者は唯々諾々と従うまでだ。けれど私は信じる。彼の明日を。彼を失わぬ未来を。

    ちなみにバッテリー、NO.6未読。本作が初あさのあつこ作品。

  • こういう目に見えないエネルギーの爆発に共感できないくらい年をとってしまったのかな、とさみしくも眩しくも思う。
    ただ、回収されない謎が多過ぎて、消化不良… 何かがじゃりじゃりと残るような読後感。

  • 2007年10月21日読了。

    どっちの少年が主人公なんだろうと思う。優等生の永見明帆と、独特な声の柏木陽。明帆が、あまり好きでないけど陽の声に惹かれるシーンが多々ある。明帆と付き合っていた陽の幼馴染、藍子。その友人、陽に憧れる絵美は「声が好き」と言った。なので福音の少年とは陽のことで、良い声を持つ、といった意味に取ってたのだけど、【福音】=喜ばしい知らせ らしい。とはいえこの話の中で実際あまり喜ばしいことはなかったんだけど。

    今まで、透明で純粋な少年少女たちのイメージがあさの作品にはあった。だが今回のはかなり違ってる。事件があり、事故があり、いろいろ大変な話、見たくないシーンいっぱい。なのに読み続けてしまったのは、やはりこの少年たちが気になるから。

    主人公はふたり、という解釈で良いのかな。

  • あさのさんらしい終わり方でした。どうなったんだろうと思いを馳せながら、あの子達はどうなったんだろうと読者の心に跡を残していく物語。2人の少年の友達とも家族とも言えない関係、恋にも似た執着が不思議だった。何から解き放たれたとき、人は自由を手にするのだろう。死んだ後だって結局その人を思っていた人々がその思いで魂を縛り付けている気がしてならない。自由なんてあるのだろうか。そんな事を考えた一冊でした。

  • 半分まではなんかかったるいと感じてやめようかと思ったが突如大変化。しかし最後が難しい!

  • 惹き込まれなかった。絶妙にギリギリのラインでなんだか世界観に入り込めないというか、、
    しかしミステリとして読んでないのでよく言われているラストへのガッカリ度は低かったです。
    ただ本当にこの少年たちの怪しげな、陰を持ちながらも年相応の新鮮さ。そのアンバランスな危なっかしさを描きたかったんだろうかという感じ。
    このセリフが書きたいから物語を後付け後付けしたと感じてしまうような辻褄の微妙さ
    有り体にいえば萌えなかった

  • 初のあさのあつこさんの作品だったけどいまいちだった。
    なにしろ文章が読みづらくて仕方なかった。
    物語としてもなぜこの少年少女たちは闇を抱えているのか、藍子はなぜ政治家相手に売りをしていたのか、その藍子にそこまでのめり込む魅力ってなんなのか、全く伝わってこなかった。
    そして時々思い出したように入れてくるどこかの地方の方言。その設定って必要だったのかなぁ。
    とりあえずもうよっぽどのことがない限りあさのさんの作品は読まないかなぁ。

  • 明帆と陽、違和感を感じながらも、擬態して普通の生活を送る2人。お互い自分達が異質な存在であると理解している。心の中に何か暗い部分があると感じている。そんな中で、明帆が陽を、陽が明帆を現実につなぎ止める役割を果たしているように感じた。2人が出会っていなければ、明帆は最後、殺し屋の誘いに応じていたのではないか。

    これからも2人は互いの中の闇を見つめつつ、ともに生きていくのだろうか。ラストは不穏だが、これからも2人は生きていくと信じている。
    続編はなさそうだが、2人の少年がこれからどういう風に生きていくのか、続きを知りたい気持ちになる。

  • 彼女の身に起きたこと。
    大人として考えて行動する事が出来ず、子供に依存気味だと嫌われそいだよな。
    逃げ出すことが出来なかったのだろうが、終わる日の事を思うと不安もあっただろうな。

  • 明帆、陽、藍子、それぞれが闇を抱えている。彼らがなぜそんな闇を抱えているのかはわからない。それぞれの親に問題があるようにも思えない。どんな人も実は自分でも気がつかない闇を抱えているのかもしれない。でも、彼らはそれを自覚している。いいとか悪いとか、正しいとか正しくないとか、幸せとか不幸せとかの問題でもないのかもしれない。でも、オイラには彼らが健全とは思えない。藍子はそれを取り戻そうとしたんじゃないかな。明帆に振り向いてもらえないとわかっていても。明帆は失ってはじめてなにかに気がついたのかもしれない。オイラは明帆の親父さんみたいになりたい。子どもに対してちゃんと大人の役割を果たそうとする姿に惹かれる。オイラにできるだろうか。都合よく子供っぽくなったりしている気がする。無条件に子どもたちを守る親でいるだろうか。大切な人を全力で守れる人が大人なのかもしれない。だから大人って年齢に関係なくなっているのかもしれない。

  • どこか似ていて、それでも相反する二人の少年。あさのあつこの得意?な線引きのできない人間関係が惜しみなく書き綴られている。

    永見も柏木も人間として欠落した部分があるように描かれている。そのことに関して、柏木のほうが箍が外れてるんじゃないかと思っていたけれど、むしろ「自分は人とずれている」ことに対して重荷に感じている柏木は人間らしさがあった。あらすじにもある「おまえを失いたくない」という台詞はもしかすると自分を自分として留めたい気持ちから発言したのかなあ、とも。

    ラストシーン、永見に柏木の声はどう届いたのか。タイトルに『福音』が使われていることからも、永見にとって柏木の叫びは、自分を留めるための救いになったのだと信じたい。

    永見も柏木もどこか似た雰囲気の少年だ。性質に欠落のある少年同士。
    決定的に堕ちてしまう危うさを持ちながらも、互いに互いを留め合う、唯一の関係なのだろう。

  • 【紙の本】金城学院大学図書館の検索はこちら↓
    https://opc.kinjo-u.ac.jp/

  • ラストはどう解釈したらいいの?!
    気になる

  • 残り3ページくらいのところで、あ、やばい、全然わかんないのに終わりそうだぞって焦った。

    響かなかった。

    ちょっと厨二臭かったかも。好きな漂わせ方ではなかった。

    勿体ぶった言い回しより不意の本音を介したやりとりに萌える。

    描写にある事実から解けるものが少なかった。
    サスペンスものだと思って読んだら拍子抜けする。

    この2人の少年、死んだ少女のことを掴めないまま
    わりと闇深く少年少女時代を過ごした自覚があるけどこの子たちのことはなに一つわからなかった。

    なんか悔しい。

  • 夜空に大きな月が出て鉄塔の影が見える、この方が原作の雰囲気に合うと思うが、それも随分愛読されたと見えてよれよれだった。検索すると少女の表紙が出てきた新しい版なのだろう。かわいいのでまぁいいかな。


    書き出しは、少年たちに情報を与える役の秋庭が来るところから始まる。戦地で記者として働いてきた彼は、余命一年を宣告されている。9人が焼死したアパートの跡地に立ってみようと思っていた。彼は焼死した少女を見かけたことがあった。

    このあたりはいつもの浅野さんの筆致ではない重い感じから始まる。細かい風景と心象描写が読ませる。こういう風に進んでいくのかと思っていると、高校生の話になると、やはり読みなれた調子に戻る。

    文章通り読んでいけばいいので楽なのだが、作者の「渾身の物語」と書かれているだけに、「死」をはさんだ二人の少年の物語は重かった。

    明帆という詩的な名前の少年と、焼死した藍子はカップルだった。しかし秀才の明帆は藍子の愛情を受け止めるには心理的に距離があり、のめりこめないところを、最後になってしまった藍子の、別れの台詞で「可哀そう」と言われてしまう。

    柏木楊は藍子のアパートの隣りに住んでいるので幼馴染だった。火事の時は外に出ていて一人だけが生き残る。

    柏木は何度も繰り返し述べてあるように、心にふわりとしみるような美しい情感のある声をしていた。

    親切で男気のある明帆の父は、同級生で孤児になった柏木を住まわせる。

    丸焼けになった火事に不審を抱いた二人は、藍子について、家事の原因について調べようとする。

    秋庭は、高級ホテルで見かけた少女が焼死体で見つかったという写真を見て、少年たちとは違う角度から、藍子の行動について探り始める。

    明帆と柏木という二人の少年は、相容れない自我を抱えながら、同じ目的で行動するが、いつもお互いの生き方を見つめ続けている。

    殆ど大人の人格を持ちながら、まだどこか曖昧な部分を残している少年たちが、読んでいると、共通の部分では重なって見えるが、独立した個人の部分では、違った方向を見ているような、かみ合わない会話など浅野さんはよくみて書いてある。

    一ヶ月後、秋庭の情報力もあり、犯人が浮かんでくる。
    犯人から連絡があって焼け跡で落ち合うことになる。
    明帆はとめる柏木を振り切って、焼け跡に走っていく。

    このシーンは少し不可解な感じもするが、「可哀そう」と藍子が言った意味に、時間がたってかすかに思い当たる、彼の中にも実感がある、明帆の一種の「贖罪」ではなかったかと思う。図書館の聖書の話もある。

    勝手な想像だが、秀才と言われるものは、自己にこだわり、他所に思いやりがない場合が多い。明帆もそういった成長過程にあったのだろう。

    純粋であるだけ他者を傷つけることも、高校三年生という年齢には越えていく一つの人生体験だろう。


    後半になって、秋庭の戦争体験の話が出てくる、人の死を身近で見たということだろう。柏木は秋庭の記事を読んでいたというが、ここにいたって、何か違和感を覚えた。


    若者の手前にある少年たちの心を捉えて読みやすいが後に残るものも多い、いい作品だった。

  • 残念
    読み進めるうちに
    いろんな伏線が散りばめられているが
    読み手の勘違いか。全くその伏線が生きてこない
    あっと驚く最終章を期待していた
    無駄に考えすぎた

  • この方の本をまだ読んだことがないな、と思い読み始めた。久々に読んだ本で登場人物が多かったので途中分からなくなってしまった(完璧なるブランク)。表現が結構好き。

    サスペンス的な感じ。
    締めに取りかかるにはもうページ数がなくないか?と思っていたら衝撃のラストが待っていた。
    終わりが急に来てびっくりした。
    最後は読者に予想させる終わりにしたのかな。

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著者プロフィール

あさの あつこ:1954(昭和29)年、岡山県生れ。青山学院大学文学部卒業。小学校講師ののち、作家デビュー。『バッテリー』で野間児童文芸賞、『バッテリーII』で日本児童文学者協会賞、『バッテリーI~VI』で小学館児童出版文化賞、『たまゆら』で島清恋愛文学賞を受賞。著書は『福音の少年』『No.6』シリーズ、『弥勒の月』『アーセナルにおいでよ』など多数。

「2025年 『あなただけの物語のために』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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