愛がなんだ (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043726042

作品紹介・あらすじ

OLのテルコはマモちゃんにベタ惚れだ。彼から電話があれば仕事中に長電話、デートとなれば即退社。全てがマモちゃん最優先で会社もクビ寸前。濃密な筆致で綴られる、全力疾走片思い小説。

感想・レビュー・書評

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  • 風邪をね、引いちゃったんです。
    病院行ったら、隔離されて発熱外来が始まるまで待たされて、抗原検査をしたらコロナは陰性で、全く医療機関の方にご迷惑かけまくりで。
    大事をとって仕事を少し休んだものの、まあ暇だこと。
    頭はボーっとするから長い映画はしんどくて、バチェロレッテを見出したらはまっちゃって!
    その、バチェロレッテが作中ずっと「真実の愛」って言ってて、正気か?とか思っちゃう自分が性格悪い自覚はある。でも実は、自分が一番それを求めてたりして。
    その時心の中でこうつぶやいたんだ。
    「愛がなんだ」

    映画の記憶がまだまだ鮮明な中で原作を読む体験というのはすごく久々で、登場人物はすっかり映画の人物に変換されてしまう。それでも、映画には入りきれなかった部分が原作で描かれているように、完璧には一致しないのであった。

    その、映画には入りきれなかった部分。
    P20「多くの恋人たちは部屋で何をして過ごすのだろう。言いなりにならないようにしたり、つけあがったりしないようにしながら、ごはんを食べて並んでテレビを見るのだろうか。そんな毎日の中で、けれど、相手を好きだと思うかたちのない気持ちや気分を、いったいどんなふうに示すんだろう?」
    P32「私に用がないのなら、私は決して姿を見せない。これがストーカーという人種なら、世の中は至極平和だと思う。平和で、慈愛に満ちていると思う。」

    病み上がりなのに夜中までぶっ通しで読み続けてしまった。
    P150「プラスの部分を好ましいと思い誰かを好きになったのならば、嫌いになるのなんかかんたんだ。プラスがひとつでもマイナスに転じればいいのだから。そうじゃなく、マイナスであることそのものを、かっこよくないことを、自分勝手で子どもじみていて、かっこよくありたいと切望しそのようにふるまって、神経こまやかなふりをしてて、でも鈍感で無神経さ丸出しである、そういう部分を全部好きだと思ってしまったら、嫌いになるということなんて、たぶん永遠にない。」
    どこまでいっても嫌だなぁこんな男、とおもっていたのに、何故わたしはマモちゃん演じる成田凌にあんなに惚れ込んだのか。どうしてこれまでダメな人のダメなところに心身をもっていかれたのか、わかったような気がした。

    こういう、魅力がだだ漏れしている人は隙があるし、こちらの隙をついてくるのもうまい。こちらがもう騙されまい、と思っても、ちょっと油断した瞬間に、すっと、わたしの心の隙から、グイグイと心の奥の方に侵入してくる。
    マスクをしていても、風邪をひいてしまうように。

    テルコの中の何が、わたしの中の何が、こんなに暴走させるのだろうか。
    それは、自己肯定感であるとか、そういった陳腐な言葉で済ませられるものなんだろうか。
    だとしたら、教えてほしい。
    それは何処から湧き出ているのでしょう?
    いつかこの暴走を、止めることはできるのでしょうか?
    自分でブレーキを踏むしかないのでしょうか?

    このままでは、例え沼のような恋愛からは抜け出せても、また別の何かに依存して、暴走して生きていくような気がしてしまうの。

    • naonaonao16gさん
      ゆうママさん

      こんばんは!
      コメントありがとうございます^^

      この時期の発熱って怖いですよねー( ´・ω・`)しかも38.7℃って高熱!...
      ゆうママさん

      こんばんは!
      コメントありがとうございます^^

      この時期の発熱って怖いですよねー( ´・ω・`)しかも38.7℃って高熱!
      よくなったみたいでよかったです…!

      暑いですしゆっくりいきましょう~
      お互い風邪や熱中症には気をつけましょうね!!
      2021/07/21
    • メイさん
      こんばんは。naonaonao16gさん。

      夏風邪はきついですよね。なかなか体も休まらないですよね。
      3月だったと思いますが、私もかぜをひ...
      こんばんは。naonaonao16gさん。

      夏風邪はきついですよね。なかなか体も休まらないですよね。
      3月だったと思いますが、私もかぜをひきました。喉の痛みと倦怠感ぐらいで、発熱はなし。診察して血液検査をやりました。採血結果を見てお医者さんが言った言葉が「コロナではないね。」です。軽く疑ってたみたいで、少しショックでした。

      noteのコラム読みました。なかなかシビアな問題ですよね。
      私はその人の事をよく知らなくて、報道の情報でしか判断が出来ないって 感じでした。
      8割はその人駄目だよね、2割はみんな人のあら探しばかりしてるよな、と思いました。そして一番に発表するのを争っている。
      コラムを読んで、こういう問題はもっと考えた方がいいと思いました。

      まだまだ暑い日が続きますが、お身体大事にして下さい。
      2021/08/03
    • naonaonao16gさん
      メイさん

      こんにちは!コメントありがとうございます^^
      お返事が遅くなってごめんなさい…

      3月に体調を崩されたとのこと…その後...
      メイさん

      こんにちは!コメントありがとうございます^^
      お返事が遅くなってごめんなさい…

      3月に体調を崩されたとのこと…その後は体調崩されてないですか?
      わたしは東京在住ということもあって、その時より、だいぶコロナが身近になったように感じています。
      これまでは感染症の蔓延について誰かを責めたりすることはしてきませんでしたが、最近、さすがに国の無策さに呆れているところです。

      note読んで下さりありがとうございます。
      わたしも音楽好きですが、あんまり彼の音楽も彼自身のこともよく知らない立場です。なので今の自分が持っている想像力や経験を最大限使って書いたもので、彼をよく知る人からしたらクソみたいなものかもしれません(汗)
      でも、彼は出演を控えていたフジロックまで出演を見合わせる事態になってしまいました。
      この件に関して、そういうことなのか…?という疑問が続く毎日です。

      熱中症にも気を付けましょうね!
      また是非遊びにいらしてください!
      2021/08/07
  • 角田光代さんは、「曾根崎心中」と「対岸の彼女」以来。本屋さんで限定カバーが可愛くてつい購入してしまった。

    映画は見たことがありましたが、原作が断然良かった。テルちゃんは愛すべきやばい人です。
    最後のナカハラの決断が大多数の人だ。正解はナカハラだと思うし、テルちゃんが本当に仲の良い友人なら本気で止める。そんな友情もテルちゃんの恋愛には決して勝てないだろうが。
    でもほんの少しだけどこかに眩しいものがあるように感じてしまったから、この物語をおもしろいと感じたのかもしれない。いろんな計算とか、いろんなリスクを考えることが普通だと思っているからこそ、マモちゃんのこと以外なんにも考えずに生きれるその強さはなんだ?そこまでバカになれるのはなんなんだ?どんなに恋愛に沼っても、仕事は行くし、ご飯だって食べれる。それは自分をきちんと好きだからなのだなぁと思った。好きな人にあれほど自分を捧げれるなんて、それが本当に自分より相手を好きになっているということなのだろうか?私には経験できない感情だ。

    島本理生さんのあとがきがとても良かったです!自分の心中をそのまま文章にしてもらった感じでした。

  • マモちゃんみたいなクズ男、いるわぁ…笑
    恋に盲目すぎるテルコの言動はひくけれど、わからなくもないところもあった。

    好きになった人からの連絡には全力で応えに行くテルコ。
    そんな重々しい20代女に好かれ、自分を雑に扱う30代のサバサバガサツ女すみれに惹かれてしまうマモちゃん。側から見れば意味不明だけど、でもこちらもわからなくもない。

    テルコとマモちゃんは付き合っても絶対にうまくいかない。だからこれでよかったと思う。
    これで何か学ぶものがあればいいなと思うけれど、多分2人の性格はこのままこれからも変わらないんだろうな。

    映画版のキャストもぴったりだった。
    成田凌、クズ男役がとても似合う。

  • このリアル感が角田さんだな、と思った。

    ***最も気に言った部分***
    プラスの部分を好ましいと思い誰かを好きになったのならば、嫌いになるのなんかかんたんだ。プラスがひとつでもマイナスに転じればいいのだから。そうじゃなく、マイナスであることそのものを、かっこよくないことを、(略)そういう全部を好きだと思ってしまったら、嫌いになるということなんて、たぶん永遠にない。
    ***************

    片思いの終わりは振られた時ではない。
    自分の中で終わりにした時だ。
    大人になるほど、はっきり振られることなんてなくなる。
    関係性があいまいになる。
    片思いって認識をしても
    相手にとって都合のいい存在だと理解しても
    ずるずるその状態を続けていく
    でも、
    その時間が長くなればなるほど
    自分の意思で
    終わらせることなんてできないんだなと思う。
    それが当たり前になってしまうから。

    駆け引きをしかけたつもりで
    それが上手くいかないと
    逆に自分がはまっていってしまう
    そんなとき
    相手は駆け引きなんて考えてないことが多い気がする。
    不思議なものです。

    深読みして空回りするなんてよくある話で。
    自分が好きでやってるんだからって言いつつ
    相手に振り回されてることに気づきたくなくて。

    相手が、自分に話があるって言ってきて、
    「もう会うのやめよう」
    って言われているシーンは
    直視できなかった。

    相手が、自分を必要としてくれている
    それが自分の存在意義になってしまう。
    好きな人の好きな相手と仲良くなることで
    好きな人と会う口実を作る。
    好きな人の友達と親しくする。
    そんな最後も角田さんらしい。リアルだった。
    ここで、あきらめて踏み出そう!って終わりだったら
    評価の星数は減っていた。
    そう、そんな簡単にいかないのが現実だろうと思う。



    さすがに
    仕事ほったらかしてとまではいかないけど
    なんにも他人事じゃなかった。
    自分のことを言われている気がした。
    そんな
    本気で片思いした人には
    本気でリアルな小説。

  • 久々に途中で読むのをやめようと思った。続きも気にならないし、最後どうなろうとどうでもいいや、と思った。けど、人から借りた手前、読み切った方がいいかなと頑張った。

    何ひとつ共感できなかった。

    若かったら楽しく読めたのかな・・・とも思うけど、そもそも好みの問題なのかもしれない。

  • 『愛がなんだ』読了。
    一途な片思いなのに不完全燃焼で終わらなかった。テルちゃんはマモちゃんに出会い恋に落ちた。片思いなのにマモちゃん最優先。それだけですごいのに。
    熱して離れない、一途な気持ちがべっとり絡んでいく。
    生々しい好きという感情が波打っても永遠と好きでいたい気持ち、わかる。
    狂気に近い恋愛観をもつテルちゃんはいまの日本の若い人たちからみたらすごく愛が重すぎてウザいだけの女になると思う。
    が、その不器用なところが武器になっちゃうところがすごいな。
    最終的に相手が自分のことを好きじゃなくてもずっと好きでいたい気持ちを小さくして持ち続けるなんて、素敵だと思った。
    なんていうか、私も初恋に見切りつけるのに7年ぐらいかかったし、数年前に好きだった人も今は何をしてるかなって気になるし、やっぱり好きという感情は小さくなっても続くんだろうな。その点においても私も重い女って自覚してるんだけど、重いんじゃなくて、熱いの。熱い思いで溢れてる。

    2020.4.26(1回目)

  • 恋は盲目……とはこういうことか。
    と、途中まで思いながら読んでいましたが、主人公のテル子は結局自分が一番かわいいんだなぁ。
    激しく想いを寄せているマモちゃんの都合のいい女化していて、マモちゃんもテル子を便利に使っていて、最初はマモちゃん最低と思っていましたが……

    どんな形でもいいから彼との繋がりを切りたくないと足掻くテル子の妄執の方が上回っていて怖かった。
    一歩間違えれば、誰でもこんな風になるのか、ならないのか……なんだか読んでいてモヤッとしちゃいました。

  • 「彼になりたい…」究極の《片思い》の描き方 ~角田光代『愛がなんだ』に見る名場面|話題|婦人公論.jp
    https://fujinkoron.jp/articles/-/4005

    「恋愛を勝ち負けで考えている人って多い」。角田光代さんと語る恋のカタチ:telling,(テリング) 2019/04/16
    https://telling.asahi.com/article/12294788

    「愛って何だろう?」と悩むすべての女性へ。『愛がなんだ』原作者・角田光代さんに「現代の愛のカタチ」を聞く | Precious.jp(プレシャス) 2019.4.18
    https://precious.jp/articles/-/10935

    愛がなんだ 角田 光代:文庫 | KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/200501000062/

  • 人生で一度は経験したことがあるのではなかろうか...片思い。辛く、苦しく、切なく、眠れぬ夜を過ごしたことを...。
    テルコ以外の登場人物の心情や背景が、より物語を際立たせている。自分がテルコだったら、マモちゃんだったら、ナカハラだったら...。その時、その状況下での決断が、未来にどう繋がるんだろうと想像してみる。自分はきっとみっともなく足掻くんだろうなぁ。

  • ナカハラくんのように、片思いというのは自分で諦める踏ん切りをつけないかぎり終わらない。

    第三者から見ればマモちゃんは所謂クズ男だが、恋愛の渦中にいたらそんなこと冷静に考えられないし気づけないんだろうなあと思った。

    ハッピーエンドで終わらないところも、現実ってそんなもんだよなと思わせてくれる角田光代さんならではの良さが出ていた。

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著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年『幸福な遊戯』で「海燕新人文学賞」を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で、「野間文芸新人賞」、2003年『空中庭園』で「婦人公論文芸賞」、05年『対岸の彼女』で「直木賞」、07年『八日目の蝉』で「中央公論文芸賞」、11年『ツリーハウス』で「伊藤整文学賞」、12年『かなたの子』で「泉鏡花文学賞」、『紙の月』で「柴田錬三郎賞」、14年『私のなかの彼女』で「河合隼雄物語賞」、21年『源氏物語』の完全新訳で「読売文学賞」を受賞する。他の著書に、『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『月夜の散歩』等がある。

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