白い部屋で月の歌を (角川ホラー文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
3.52
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本棚登録 : 474
レビュー : 80
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043735013

作品紹介・あらすじ

ジュンは除霊のアシスタントを務める少年だ。様々な霊魂を自分の体内に受け入れる際、白い部屋に自分がいるように見える。ある日、少女エリカと白い部屋で出会ったジュンはその面影に恋してしまったのだが。

感想・レビュー・書評

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  • 2003年日本ホラー大賞を受賞した時に一度読んでる。
    除霊の話しで、ジュンが特別な少年で、ホラーだけど美しいなぁ…と思ったことは覚えていた。
    不幸にしてあの世に行けず、この世に影響を与える霊魂を回収することを生業とする先生の元で回収のお手伝いをするジュン。
    少女エリカと白い部屋で出会い、心を持ってしまったときからジュンの世界は変わりはじめる。
    どうしようもなく救いようのないラストシーンが切ない。

    「鉄柱~クロガネノハシラ」
    世界一幸せな町に隠された秘密。
    都会から越してきた夫婦は、親切すぎる町の人たちに不信感を抱えながらもいつしか溶け込んで行く。その先にある町のオキテにいつしか飲み込まれることも知らず。
    好きなことをすればいい…人生最高の瞬間に死ねる幸せ。それは満足死。

    今年の21冊目
    2020.8.1

  • 「生きる」ことにまつわる2つの作品からなる。
    それぞれの作品のストーリーは独立している。

    ホラーというジャンルだが、決して「おどろおどろしい」いわゆるホラー小説ではない。

    一作目は、霊を剥がすことを生業とする霊能力者の話。そこに登場する憑坐(よりまし)の仕事をする『青年』が本当の主人公。
    体の自由がきかないその青年は、ある仕事を通じて知り合った女性に恋をすることで、自分の生い立ちに疑問を感じ始める。

    そこからストーリーは一気に進んでいくのだが、「生きている」ということはどういうことなのか、人間・霊・魔・人形、様々な存在を登場させることで、「人として生きる」ことの意義を読み手に問いかける、そんな作品のように感じられた。


    2作目は「満足死」について。
    会社での不倫問題で異動を命じられた男性が、妻と共に移り住んだ小さな町が舞台。

    そこは、「例え人を傷つけたとしても、自分のやりたいことをまっとうすることをよしとする」、少し変わったところ。

    しかし、住人は皆親切で、ふたりは幸せに暮らしていく。あるひとつの問題、「人生で最高に幸せを感じたときには、その最高の状態で自ら死を選ぶことができる」というものを除いては。

    「自らの意思で生きる」、「幸せに生きる」とはどういうことかを、「自らの意思で、幸福な最後を迎える」という切り口から考える。

    「安楽死」にも通じるその考え方は、医療が進歩し、高齢化が進む先進国が直面しなければならない最も新しい課題のようにも感じられた。

    どちらもすごくおもしろかった。

  • 表題作について。
    この作品のホラー要素はいったいどれか。未練の残った霊たちの醜い執着のありさまか。それを操ろうとする霊能者とその弟の歪んだ心理か。
    霊が怖いというよりは、そこまで執着してしまう人間という存在そのものがホラーだと思えてくる。ジュンという主人公が発する違和感の正体が最後でわかるようになっているが、そういう事がある、ということよりも、やはり、そんなことをしてしまうシシィという霊媒師の精神のほうがよほど恐ろしい。
    そして、この作品の底に流れる「生きるとはどういうことか」という問いが、もうひとつの「鉄柱(ハガネノミハシラ)」でくっきりと描かれる。
    初読の時は、主人公と同じように、「自殺なんて!」とか「死んではいけないのだ」という思いを抱いたのだが、今回読んだときはこの町の風習もそんなに悪くないんじゃないか、と思ってしまった。
    「今日はどうする?生きるかい?」と毎日問われるのはしんどいことではあるが、「今日は生きる……ことにするよ」と応えて毎日を生きるのは、実は大事なことのように思う。作品のトーンとしては「しんどいこっちゃで」という嘆息混じりではあったが。

  • 第10回ホラー小説大賞の短編賞受賞作の表題作。

    白い壁、白い柱、白い床の何もない部屋。鈍い銀色の天井から巨大な鉗子で人を掴む…なんだこれは?と最初設定に不安を覚えたが読み進めるうちにすぐに解決。

    朱川さん、グロめホラーを書かれてもどこか品がある。やっぱりいいなと改めて感じた。

    表題作の他に「鉄柱」と作品が。こちらは前述の霊的なホラーではなく、ある田舎町のある慣習による不気味な怖さを醸し出していた。その町では誰もが幸せに暮らせる。しかしここが自分の人生最良の日だと判断したらば人生をそこで終わらせることが…

    朱川作品、切なさと美しさで壊れてしまいそうなところが素晴らしい。好きな作家さんだわ。

  • 朱川さんがホラー大賞を取った作品含む二篇。朱川さんと言えば昭和を描く方、という感じがしますが、この本に収録されている話では余り前面に出ていない感じ。

    ・白い部屋で月の歌を
    オチは途中で読めます。
    白い部屋の描写と、そこに鉗子という無機質なものが飛びこんでくる除霊(?)の描写がとてもいい。
    ラストシーンはとても印象的で、月に照らされる壊れた人形の姿がありありと思い描けて切ないです。
    語り手が丁寧語で話しかける文体とホラーってハマるなぁと思いました。

    ・鉄柱
    人生のいいタイミングで首吊り自殺できるように、と公共の施設として首吊り台が設置してある奇妙な街。
    この首吊り台が鉄柱(クロガネノミハシラ)。
    他人が自分の手で命を落とすことを見届けることが、この鉄柱を受け入れることにつながるのか。
    それともこの鉄柱とともに暮らすうちに、その行為を心が受け入れてしまうのか……。
    主人公は奥さんをこの鉄柱によって失い、不幸な気もしますが、そもそも浮気体質が招いたことなのでどうもなぁ…。
    鉄柱のふもとのこの町には、そんな人たちが吸い寄せられている気がします。

  • 朱川湊人を初期作品からおいかけて読んでみようと思い手に取った本。

    表題作は角川ホラー大賞短編賞を受賞している作品。
    うん、上手い。荒削りではあるものの(特に主人公の正体やそれが暴かれる描写あたりはかなりザツいと個人的感想)文章は美しくてやるせなくて、澄んでいるかと思えば淀み、血の匂いがするかと思えば涙に変わり…

    読ませ方が実にうまいのだけど、物語の展開が気になってドキドキとページを繰るような感覚とは違う。物語の世界にスワーッと沈み込んでいくような感覚。それこそ気がつけば白い部屋で月の啼き声を聞いていてもおかしくないような。

    ラストの1文がちょっと作為的に悲しいが、それも味だと思わせる世界を構築しているのが良いねぇ。

    併載のもう一作「鉄柱」は逆。文章の美しさはそれほど感じられず、むしろ物語の展開が気になってドキドキページをめくる系。これまた荒削りな部分があるものの(鉄柱掘るシーンなど)、テーマも深いし起承転結のエッジの効いてるし、表題作よりエンタメ性は圧倒的にこっち。俗ではあるがはしたなさが感じられなくて良い。

    どちらも、もろ手をあげて「是非読んでぇ」とは言えないけど、最近作に至る朱川作品の根源がばっちり詰まっている良作、ホラー小説に怖さじゃなくて切なさ求めるなら、読んで損なし。

  • 1話目はファンタジックなホラーであり、主人公の正体が分かる最後はホラー要素はあったが、怖いとは思えなかった。
    2話目は世にも奇妙な物語でありそうな現実味のありそうな話で面白い。若干展開も読めてしまうが、「満足死」とは幸せの絶頂の時だけでなく、明日は今日より確実に不幸になると思えた時選択するものであると言う、隠れた意味があった。

    「言葉、視線、息遣い、、自分の中からにじみ出るすべてが1つの雲になって、心を悟っていたに違いない。雲の流れでやがてくる悲しみを知った。明日は今日より確実に不幸になるや」

  • 表題作「白い部屋で月の歌を」、最後はまさかの展開で日本版ピノキオの異常な世界とも言うべき作品。しかしこの思わせぶりな題名はいただけない。
    もう一つの短編「鉄柱」は死の選択というテーマ。テーマが重い割に不倫等の下世話な内容もあり読後感は今ひとつ。

  • 中編ふたつが入った一冊。
    どちらの話も現実感の乏しい、ファンタジックなホラーです。
    こういう系統は好きなので面白く読みましたが、どうも読んだことがあるような無いような…

  • 『白い部屋で月の歌を』『鉄柱(クロガネノミハシラ)』
    以外にも、タイトルの方が短編。

    巻末に第10回ホラー小説大賞についての批評があって
    『姉飼』『相続人』『ぼっけえ きょうてえ』『光 A Light』『蜥蜴』も気になる。。

    タイトルの作品のラストの月は、きっと青くて白いのだろうなぁ、と、イメージが浮かぶ。
    大どんでん返し、な激しい展開なのに、ラストは静かな余韻が残るというか。。

    『鉄柱』は再読すると主人公以外の隣の奥さんや町内会長が気になる。
    主人公は…
    妻の「こんな静かなところにきても、この病気からは解放されないのね」コレって、主人公の事を指しているのでは??と思ってしまう。

    これからの長い人生、主人公はどんな選択をして、どんな終わり方を選ぶのだろう。。。

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著者プロフィール

朱川湊人(しゅかわ みなと)
1963年、大阪府生まれの作家。『都市伝説セピア』が直木賞候補。05年『花まんま』で直木賞受賞。ノスタルジックホラーというジャンルを開拓した。小説業のかたわら『ウルトラマンメビウス』の脚本も手がけるなど活動は多岐にわたる。著書に『サクラ秘密基地』『月蝕楽園』『冥の水底』『キミの名前』など多数。
2018年9月、『アンドロメダの猫』を刊行。

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