白い部屋で月の歌を (角川ホラー文庫)

著者 :
  • 角川書店
3.52
  • (27)
  • (68)
  • (93)
  • (13)
  • (2)
本棚登録 : 433
レビュー : 75
  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043735013

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 「生きる」ことにまつわる2つの作品からなる。
    それぞれの作品のストーリーは独立している。

    ホラーというジャンルだが、決して「おどろおどろしい」いわゆるホラー小説ではない。

    一作目は、霊を剥がすことを生業とする霊能力者の話。そこに登場する憑坐(よりまし)の仕事をする『青年』が本当の主人公。
    体の自由がきかないその青年は、ある仕事を通じて知り合った女性に恋をすることで、自分の生い立ちに疑問を感じ始める。

    そこからストーリーは一気に進んでいくのだが、「生きている」ということはどういうことなのか、人間・霊・魔・人形、様々な存在を登場させることで、「人として生きる」ことの意義を読み手に問いかける、そんな作品のように感じられた。


    2作目は「満足死」について。
    会社での不倫問題で異動を命じられた男性が、妻と共に移り住んだ小さな町が舞台。

    そこは、「例え人を傷つけたとしても、自分のやりたいことをまっとうすることをよしとする」、少し変わったところ。

    しかし、住人は皆親切で、ふたりは幸せに暮らしていく。あるひとつの問題、「人生で最高に幸せを感じたときには、その最高の状態で自ら死を選ぶことができる」というものを除いては。

    「自らの意思で生きる」、「幸せに生きる」とはどういうことかを、「自らの意思で、幸福な最後を迎える」という切り口から考える。

    「安楽死」にも通じるその考え方は、医療が進歩し、高齢化が進む先進国が直面しなければならない最も新しい課題のようにも感じられた。

    どちらもすごくおもしろかった。

  • 表題作について。
    この作品のホラー要素はいったいどれか。未練の残った霊たちの醜い執着のありさまか。それを操ろうとする霊能者とその弟の歪んだ心理か。
    霊が怖いというよりは、そこまで執着してしまう人間という存在そのものがホラーだと思えてくる。ジュンという主人公が発する違和感の正体が最後でわかるようになっているが、そういう事がある、ということよりも、やはり、そんなことをしてしまうシシィという霊媒師の精神のほうがよほど恐ろしい。
    そして、この作品の底に流れる「生きるとはどういうことか」という問いが、もうひとつの「鉄柱(ハガネノミハシラ)」でくっきりと描かれる。
    初読の時は、主人公と同じように、「自殺なんて!」とか「死んではいけないのだ」という思いを抱いたのだが、今回読んだときはこの町の風習もそんなに悪くないんじゃないか、と思ってしまった。
    「今日はどうする?生きるかい?」と毎日問われるのはしんどいことではあるが、「今日は生きる……ことにするよ」と応えて毎日を生きるのは、実は大事なことのように思う。作品のトーンとしては「しんどいこっちゃで」という嘆息混じりではあったが。

  • 朱川さんがホラー大賞を取った作品含む二篇。朱川さんと言えば昭和を描く方、という感じがしますが、この本に収録されている話では余り前面に出ていない感じ。

    ・白い部屋で月の歌を
    オチは途中で読めます。
    白い部屋の描写と、そこに鉗子という無機質なものが飛びこんでくる除霊(?)の描写がとてもいい。
    ラストシーンはとても印象的で、月に照らされる壊れた人形の姿がありありと思い描けて切ないです。
    語り手が丁寧語で話しかける文体とホラーってハマるなぁと思いました。

    ・鉄柱
    人生のいいタイミングで首吊り自殺できるように、と公共の施設として首吊り台が設置してある奇妙な街。
    この首吊り台が鉄柱(クロガネノミハシラ)。
    他人が自分の手で命を落とすことを見届けることが、この鉄柱を受け入れることにつながるのか。
    それともこの鉄柱とともに暮らすうちに、その行為を心が受け入れてしまうのか……。
    主人公は奥さんをこの鉄柱によって失い、不幸な気もしますが、そもそも浮気体質が招いたことなのでどうもなぁ…。
    鉄柱のふもとのこの町には、そんな人たちが吸い寄せられている気がします。

  • 朱川湊人を初期作品からおいかけて読んでみようと思い手に取った本。

    表題作は角川ホラー大賞短編賞を受賞している作品。
    うん、上手い。荒削りではあるものの(特に主人公の正体やそれが暴かれる描写あたりはかなりザツいと個人的感想)文章は美しくてやるせなくて、澄んでいるかと思えば淀み、血の匂いがするかと思えば涙に変わり…

    読ませ方が実にうまいのだけど、物語の展開が気になってドキドキとページを繰るような感覚とは違う。物語の世界にスワーッと沈み込んでいくような感覚。それこそ気がつけば白い部屋で月の啼き声を聞いていてもおかしくないような。

    ラストの1文がちょっと作為的に悲しいが、それも味だと思わせる世界を構築しているのが良いねぇ。

    併載のもう一作「鉄柱」は逆。文章の美しさはそれほど感じられず、むしろ物語の展開が気になってドキドキページをめくる系。これまた荒削りな部分があるものの(鉄柱掘るシーンなど)、テーマも深いし起承転結のエッジの効いてるし、表題作よりエンタメ性は圧倒的にこっち。俗ではあるがはしたなさが感じられなくて良い。

    どちらも、もろ手をあげて「是非読んでぇ」とは言えないけど、最近作に至る朱川作品の根源がばっちり詰まっている良作、ホラー小説に怖さじゃなくて切なさ求めるなら、読んで損なし。

  • 中編ふたつが入った一冊。
    どちらの話も現実感の乏しい、ファンタジックなホラーです。
    こういう系統は好きなので面白く読みましたが、どうも読んだことがあるような無いような…

  • 【昔読んだ本】
    初期の方の作品らしい。ノスタルジックは影を潜め、ホラー色強め。花まんまやかたみ歌からが好きな私には刺激が強そう…とドキドキしながら読んだけど、大丈夫だった。面白かった。
    オチにびっくりの”白い部屋で月の歌を”と理解は出来ないけど引き込まれてしまう”鉄柱(クロガネノミハシラ)”の2作を収録。

  • 『白い部屋で月の歌を』『鉄柱(クロガネノミハシラ)』
    以外にも、タイトルの方が短編。

    巻末に第10回ホラー小説大賞についての批評があって
    『姉飼』『相続人』『ぼっけえ きょうてえ』『光 A Light』『蜥蜴』も気になる。。

    タイトルの作品のラストの月は、きっと青くて白いのだろうなぁ、と、イメージが浮かぶ。
    大どんでん返し、な激しい展開なのに、ラストは静かな余韻が残るというか。。

    『鉄柱』は再読すると主人公以外の隣の奥さんや町内会長が気になる。
    主人公は…
    妻の「こんな静かなところにきても、この病気からは解放されないのね」コレって、主人公の事を指しているのでは??と思ってしまう。

    これからの長い人生、主人公はどんな選択をして、どんな終わり方を選ぶのだろう。。。

  • 霊を剥がすことができる先生のお手伝いをしている誰か。その正体は、読んでいてもはっきりせず、その本人自身もよくわかっていないようだ。徐々にその正体がわかってくる。霊剥がしの依頼こどに読み進めれるので、手軽に面白く読める一冊。

  • 2話目の話はとてもおもしろかったが、1話目がそこまで面白いと思えなかったので一応☆4つ。
    2話目は世にも奇妙な物語に出てきそうな話で、どうなるか予想もつかない展開だった。
    学会先に持っていき、移動時間で読んでいたが、いい暇つぶしにはなった。

  • 表題作『白い部屋…』は幻想的だが淫らで醜い世界観が絶妙なバランスで描かれている。心の清らかな主人公に感情移入するがラストのオチの弱さで多少興醒めはする。非現実的な話だが著者の読ませる上手さがあるので結果面白い作品だと思う。もう1編の『鉄柱(クロガネノミハシラ)』は完全に表題作を喰っている。どこか正しくどこか間違っていたり、賛成は出来ないけど理解は出来るという、欲深い人間の幸福論が醜くそして美しく描かれている。不幸は人を殺すが幸福もまた人を殺すもの。この作品は面白い。

全75件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

朱川湊人(しゅかわ みなと)
1963年、大阪府生まれの作家。『都市伝説セピア』が直木賞候補。05年『花まんま』で直木賞受賞。ノスタルジックホラーというジャンルを開拓した。小説業のかたわら『ウルトラマンメビウス』の脚本も手がけるなど活動は多岐にわたる。著書に『サクラ秘密基地』『月蝕楽園』『冥の水底』『キミの名前』など多数。
2018年9月、『アンドロメダの猫』を刊行。

白い部屋で月の歌を (角川ホラー文庫)のその他の作品

朱川湊人の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

白い部屋で月の歌を (角川ホラー文庫)に関連するまとめ

白い部屋で月の歌を (角川ホラー文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする