わくらば日記 (角川文庫)

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レビュー : 158
  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043735020

作品紹介・あらすじ

姉さまが亡くなって、もう30年以上が過ぎました。お転婆な子供だった私は、お化け煙突の見える下町で、母さま、姉さまと3人でつつましく暮らしていました。姉さまは病弱でしたが、本当に美しい人でした。そして、不思議な能力をもっていました。人や物がもつ「記憶」を読み取ることができたのです。その力は、難しい事件を解決したこともありましたが…。今は遠い昭和30年代を舞台に、人の優しさが胸を打つシリーズ第1作。

感想・レビュー・書評

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  • 人や物がもつ記憶を読み取る能力がある“姉さま”とその妹“ワッコちゃん”。昭和30年代の東京を舞台に、人と人とのつながりや温かさ、少しの哀しみが沁みる連作短編小説。

    時を経て、40年ほど前の子ども時代を、ワッコちゃんが柔らかな語り口で回想するかたちでストーリーは展開していきます。盗難事件や殺人事件、悲しい出来事が続きますが、姉さまやワッコちゃんを始めとした人間味溢れる登場人物のおかげで悲しいだけは終わりません。
    この作品には「善か悪か」を読み手に問うシーンが多く登場し、ひとつの大きなテーマになっています。犯罪自体は悪です。しかしなぜ犯罪に手を染めなければならなかったのか、その背景には本人が苦しんだ過去や嘘や事実が隠されている場合もあり、悲しさと切なさが綯い交ぜになりました。
    事件ものが多いなか、『流星のまたたき』は切なくも淡い恋模様が描かれとても優しい気持ちになります。

    夕日が照らす土手や煙突、部屋に響くミシンの音、三つ指揃える礼儀など、古き良き昭和の情景が鮮やかに広がりノスタルジックな気分に。
    『わくらば』の意味は追々分かってくるのでしょうか。続編も楽しみ。

  • 不思議な力を持つ姉と、それを見守る妹のお話。

    妹が過去を振りかえる形で物語が進んでいくけれど、
    これがすごく面白い。

    上品で、繊細な文章と素直な表現。
    まるで流れるようにすっと入ってくる。
    浅野いにおさんの挿絵通りの登場人物が頭の中で動き回って、
    まるで一つの映画を観てるような気持ちになれた。

    「全ての物事は二面性をもつ」
    この言葉の重さを改めて考えさせられます。

    きっと温かくて、優しい気持ちになれます。

  • 二度目。
    追慕抄が長らく未読で放置されてきたので、一作目を思い出そう、と。
    随分と昔、中学か高校の頃に読んだと思うのだけれど、改めて自分の環世界の広がりを実感する。
    まず、昔、独特な絵だなぁと、好きと嫌いがない交ぜになったかの様な微妙な感情を抱いていた挿絵が、浅野いにおだった。捲って吃驚した。こんな所で、過去に一度、出会っていたのか。
    とか。あとなんか、途中刺さった言葉が有ったのだけれど、物語に集中し過ぎて忘れてしまった。多分また読み返しても刺さるだろうから、それでいい。

  • 朱川作品は「かたみ歌」以来、2作目。
    昭和初期のなんともノスタルジックで不思議なお話に
    心がザワザワしたのですが、今回も背景は昭和初期。
    いわゆる戦後の貧しくとも活力に溢れていた時代。
    特殊なところといえば、語り手である和歌子の
    病弱で美しい姉が、人や物の記憶を読み取る事が出来るという
    不思議な能力を持っていること。
    しかし、その力を使う事は激しく体に負担をかけることになる。
    優しくて大好きな姉の為、マネージャー的に姉を支える妹?
    楽しくて悲しくてやるせない色々な思い出をまとめた回想録。

  • ある特殊能力を持った主人公の姉が様々な事件に遭遇し、解決していきます。
    昭和のノスタルジックな風景と優しい語り口がとても心地良いです。
    事件は重いものばかりですが、どこかに愛を感じさせる素敵なエピソードばかりです。特に【いつか夕陽の中で】の、母親が河原で茜たちを巴投げしながら世の中の善悪を説くシーンにジーンと来ました。
    ベストは【流星のまたたき】。切ないエピソードに意外性が加味されているので一番好きです。

  • ノスタルジーには希望だけでなく悲劇前の哀しげな追憶も含むことがあって、最近の昭和ものにはその暗い側がないがしろにされてるよなぁ。

    って思ってたんだと、改めて思い出さされた本でした。
    主人公と幸薄そうな美人の姉、厳しくとも優しい毅然とした母の家族に、娼婦あがりの茜さんという女性たちが、まだまだ戦争の傷跡が残る昭和の日本で生きていく姿は読んでいて心に沁みる、ミステリー要素や姉の能力がまた絶妙に効いた小道具で飽きさせない

    父親の謎、予想される悲劇(なんだろうなぁ)と続編にも期待できる。

    ただ、やっぱり、それでも楽しい話が好きなんだよなぁ俺は…

  • 『人や物の記憶を読み取る能力』を持つ姉さま。
    昭和30年代の、そんな姉さまとの日々を妹の和歌子の回想でつづる。
    読みやすいし引き付けられる文章っていうのかな…どんどん続きが読みたくなる物語だった。

    その時代ならではの事件が起きたり、日常の様子が綴られてていてとても読みごたえがあった。
    終戦直後、みんなが必死に生きていた時代。その雰囲気を味わえて良かった。
    続編も絶対読む!

  • 胸がぎゅうっと掴まれる切ない感じ。でも温かい。こう言うの好きです。

  • 【昔読んだ本】
    古き良き昭和を舞台に、少し不思議で暖かいお話。
    お姉さんがもう居ないことが最初から語られているので、なんだか切ない。
    ホワイト朱川さんの中でも特に好きな本。

  • 幼い姉妹の周りで起きる不思議で、ちょっと怖い毎日。

    人や物が見た出来事の記憶を「見る」ことが出来る力を持った姉。優しく、しとやかで、体も心も傷つきやすい。

    そんな姉を思いやる元気な妹。

    姉が持って生まれたその不思議な力は、当然のごとく警察の事件解決に一役買うことになる。
    幼い姉妹の心の葛藤と、犯人や被害者への思いがとても繊細に描かれている。

    記憶をのぞき見ることで、知らなくてもいいような、人の心の内側が見えてしまうということがどういうことなのか。

    非常におもしろいストーリーでした。

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著者プロフィール

朱川湊人(しゅかわ みなと)
1963年、大阪府生まれの作家。『都市伝説セピア』が直木賞候補。05年『花まんま』で直木賞受賞。ノスタルジックホラーというジャンルを開拓した。小説業のかたわら『ウルトラマンメビウス』の脚本も手がけるなど活動は多岐にわたる。著書に『サクラ秘密基地』『月蝕楽園』『冥の水底』『キミの名前』など多数。
2018年9月、『アンドロメダの猫』を刊行。

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