月魚 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店
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レビュー : 894
  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043736027

作品紹介・あらすじ

古書店『無窮堂』の若き当主、真志喜とその友人で同じ業界に身を置く瀬名垣。二人は幼い頃から、密かな罪の意識をずっと共有してきた-。瀬名垣の父親は「せどり屋」とよばれる古書界の嫌われ者だったが、その才能を見抜いた真志喜の祖父に目をかけられたことで、幼い二人は兄弟のように育ったのだ。しかし、ある夏の午後起きた事件によって、二人の関係は大きく変っていき…。透明な硝子の文体に包まれた濃密な感情。月光の中で一瞬魅せる、魚の跳躍のようなきらめきを映し出した物語。

感想・レビュー・書評

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  • 代々古書店 古窮堂を営む真志喜と、せどりの息子と言われながらも確かな目を持つ瀬名垣。

    本を愛し本に愛される二人の青年は、罪や傷を共有することでより強く結びつく。共に被害者でありながら共犯者でもある、密な関係。

    漱石の世界のように流れる言葉、萩尾望都の世界のような官能、さらにもう亡くなってしまったけれど北森鴻の古美術 冬狐堂シリーズを彷彿とさせるような。

    古いものはその歴史の分だけ、手に負えないなぁ。

  • 古書店、無窮堂の若き三代目である真志喜は、美しく中性的な容姿で、どこか浮世離れしていて人を寄せつけない雰囲気を持つ。そして同じく古書店を継いだ瀬名垣は、人好きする性格だ。
    対照的ながら幼馴染である二人は、幼い頃に起こったとある事件から、深く入り込めないのに離れられないという因果を引きずったまま、25歳になった。
    本を愛する二人の、古書店としての日々。そしてお互いへの想い。

    これは三浦しをんさんが真面目に取り組んだ淡いボーイズラブ、ということになるのだろうか。直截的な表現はないものの、きっとそうなのだろう、と匂わせる部分はそこかしこにあって、そういうものに嫌悪感を持つ人はもしかしたら駄目かもしれない。
    でも何か低温というか、透明感が漂っているというか。
    まさにタイトルの感じ。魚が泳ぐ夜の水面に、月がゆらゆらと写っているような、そういう雰囲気の小説だと思った。

    そして、古書店の仕事を垣間見ることが出来たのはとても興味深かった。古めかしい昔ながらの古書店って私の地元にも何軒かあるけれど、たくさん人が入っている様子はないし、こういうお店の人はどうやって稼いでいるのかという疑問が解けた。
    貴重な古書を見極める目を持つには勉強も必要だけど、持って生まれた才もかなり左右するということ。
    本を間に挟んだ人と人とのつながりであったり、本を愛する人の想いであったり。そういうものを見極めるのは、勉強よりも持ち前の才なのだと思う。

    そしてこの物語の核になっているのは、人は罪の意識を背負ったままで誰かをまっすぐに愛することが出来るのか、ということなのではないかと私は解釈した。
    この物語の二人もお互い惹かれ合ってはいるのに、昔の事件からくるお互いへの罪悪感に縛られていて、だからこそ惹かれ合うのかもしれないし、そうではないのかもしれないし…という複雑なところに身を置いている。
    その危うさがこの物語に透明感を与えているのかもしれない。

    二本目に二人の高校時代をとある国語教師の目線で描いた短編と、最後に書き下ろしの超短編という、充実した内容。
    真志喜の人を寄せつけないのに人を惹きつける感じが良かった。遠くから見つめていたい、という気持ちがとてもよく解る。

  • 2001年(平成13年)。
    古書に魅せられた者達の情念と業。
    内に秘められた官能の世界。

    青白い炎の方が熱い、と言っていたのは誰だったろう…。

    「罪」は、逆から読むと「蜜」なのだ。

  •  古書店『無窮堂』は,雑木林の奥,深い闇のなかにひっそりと佇んでいる。
     店主の本田真志喜(ほんだましき)は,この古書店の三代目。
     二十五歳の若さであるが,生まれたときから祖父に古書のイロハを叩き込まれた生粋の古書店主である。
     瀬名垣太一(せながきたいち)は真志喜と幼馴染のやはり古書店主である。真志喜とは違い卸専門で小売はしない。
     昔からの因縁,それぞれの父親との関係,瀬名垣の古本屋としての才覚,内輪のしきたりに囚われすぎる古本業界。様々なものが,背名垣と真志喜をがんじがらめにする。

     古書というある意味閉ざされた業界と,才能はあっても若いというだけで見下される二人。
     あるとき,故人の遺した蔵書を買い取る依頼を受けた瀬名垣,真志喜と共に軽トラックで出向くが……。

     文章そのものが美しいし,耽美だし,古書を通した世界観が現実のものではないような,ある種閉じ込められた世界のように感じた。
     古書を扱いながら,そこには人の営みがあり,それは綺麗なものだけではなくて,欲に溺れた醜さもあり……。

     オイラの文章では全く月魚の小説の美しさは出てこないが,うん。すごいよ。素晴らしいよ三浦しをんさん。

     ただ,好き嫌いは分かれるような気がする。同性愛の匂いも感じさせるし。そこが売りでもあるけれど。

  • とにかく綺麗で、というか綺麗って単語が陳腐なくらい、美麗で艶やかな文章でさらりと描かれたとても気持ちのよい一冊。

    思わず鳥肌がたつくらい、何もかもがいい。

    瀬名垣と真志喜の間に強くたちはばかっている過去の記憶と罪の重さ、その一方でずっとそばにいたいと思う気持ちの強さがひしひし伝わってくる。
    ひととひとの距離、これをこんなに上手に気持ちよく描けるひともいるんだなあ。
    それがこの物語を作っているのであり、もどかしさすら感じさせる。だけれど、そのもどかしさと同時に、登場人物の心の奥に込められた深い気持ちに触れてほんわかする。

    人は罪を負ったままでは人を愛してはいけないのだろうか。


    この「月魚」は、決して情熱的な話ではない。
    さらりとした、話。
    なのにこの作者の手にかかると、その淡白さがむしろ奥が深くてどっぷりとした世界観を作り上げる。

    三浦しをんというこの筆者に出逢えて本当によかった。

  • こいつらできてる(確信)

    ガチだった。からだの関係仄めかしまくりだった。開始20ページであまりのホモっぷりに逆にくじけそうになったけど、BL小説だと思って読み終えた。


    こらあかん萌えますわ…お互いがお互いに罪の意識持ってるっていうのがなんともいえない。らぶらぶなのになりきれてない。なにこれすっげーホモ。

    とりあえず「熱いくらいでしたよ」について瀬名垣よ詳しく頼む…お願い…詳しく…そういう意味にとっていいの…? ねえそうなの瀬名垣…答えろ瀬名垣…てめえ瀬名垣…名前で呼ぶときってなんだ瀬名垣…おい……


    25っていうわたしの萌えポイントを的確についてくる年齢に古書店、さらに着流しという怒涛の萌えな?真志喜かわいいよ真志喜

    はーえらいこっちゃ…思考がとっちらかってますねいつものことです

    ただなんかちょっと物足りなかったような気がしないでもない。続編、続編を…真志喜のデレをもっとくれ…わたし思ってたより真志喜好きだ……はーもえた。ホモかきたい。おわる。





    @市立図書館

  • 古書店『無窮堂』の若き当主、真志喜とその友人で同じ業界に身を置く瀬名垣。二人は幼い頃から、密かな罪の意識をずっと共有してきた―。瀬名垣の父親は「せどり屋」とよばれる古書界の嫌われ者だったが、その才能を見抜いた真志喜の祖父に目をかけられたことで、幼い二人は兄弟のように育ったのだ。しかし、ある夏の午後起きた事件によって、二人の関係は大きく変っていき…。透明な硝子の文体に包まれた濃密な感情。月光の中で一瞬魅せる、魚の跳躍のようなきらめきを映し出した物語。
    「BOOK」データベース より

    「BOOK」データベースの本紹介、最後の一文うまい.
    本に対する情熱はどちらも引けをとらない.過去に確執があったらしいが、その辺はちょっとよく分からない.まぁ、え、そんなこと?と人が思うことも当人にとっては一大事、ということはよくあることだ、と思えば、一大事なのだ.
    二人のさらりとしているかと思えば濃密な関係性が読んでいて心がざわざわする.

  • 果たしてこれを、BLといいきって
    ホモと言っても良いのだろうか。
    奇しくも古書店を舞台にしたものが注目される中、月魚に出会えたのは偶然とも必然とも思える。


    しかして感想をかけと言われればこの感動や安堵感はなんとも言葉にし難い。
    冷え冷えとした冬の中にぽっかり浮かぶ、透明なびいだまを覗き込んでいるときのような不思議な感覚。
    心がすっと通るような冬の冷たさと心地の良い息苦しさ。
    続編には、眩しくてくらむような夏の話も。

    息をするようにそばにいる友人がいる人ならば、真志喜や瀬名垣のなんとも言い難い距離感に多少なりとも身に覚えがあるのではないか。

    瀬名垣のような感情を抱かずとも、そういう友に身に覚えのある私はやはり、萌えと感動の間で困っている。

  • 初期の作品なのかな。瑞々しい感じ。青臭さのようなものを感じる。
    脳内イメージは雲田はるこさんの絵柄。真志喜と瀬名垣はそのまま菊五郎と助六のよう。

  • 幾度も出てくる言葉「罪」。
    きしむような罪悪感と胸苦しさ。
    けれどその反面、密かに味わう甘い満足感。
    「罪」と対極にある「蜜」の味は一度舐めてしまうと止めることはできない。
    「罪」と「蜜」で結ばれた二人の男・瀬名垣と真志喜。
    共に古本業界に身を置き本を愛する二人の、プラトニックでありながら冴え冴えとした優美な官能の世界観が静かに読み手を惑わす。

    しをんさんのエッセイを読んでからこの作品を読むと、メインの二人の関係はもはやBLにしか思えない。
    二人の何気ないやりとり…瀬名垣が真志喜の髪の毛を優しく触ったり、瀬名垣の言動に対し真志喜の首筋が桜色に染まったり、真志喜の指先を瀬名垣が握ったり、と読んでいてドキドキしてしまい赤面してしまうではないか、しをんさん!
    あくまでもプラトニックな関係なのが余計にそそる…。
    BL物は今回が初読み。下手な男女の恋愛物より照れてしまう。
    私の高校生時代、夢にも思わなかったけれどひょっとしたらBL関係の男子達がいたのかもね。

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著者プロフィール

三浦 しをん(みうら しをん)。
1976年、東京生まれの小説家。出版社の就職活動中、早川書房入社試験の作文を読んだ担当面接者の編集者・村上達朗が執筆の才を見出し、それが執筆活動のきっかけになった。小説家の専業になるまで、外資系出版社の事務、町田駅前の古書店高原書店でアルバイトを経験。
2006年『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞受賞。2012年『舟を編む』が本屋大賞に選ばれ、翌年映画化された。2015年『あの家に暮らす四人の女』が織田作之助賞受賞。また、『風が強く吹いている』が第一回ブクログ大賞の文庫部門大賞を、2018年『ののはな通信』が第8回新井賞を受賞している。
Cobalt短編小説賞、太宰治賞、手塚治虫文化賞、R-18文学賞の選考委員を務める。最新刊に、『愛なき世界』。

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