パイロットフィッシュ (角川文庫)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043740017

感想・レビュー・書評

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  • なんとなくタイトルとジャケットに惹かれて手にした初読みの作家さんでしたが、全体が村上春樹作品に似ている感じで、それをライトにした印象というか雰囲気でした。ライトだから読んでいてもしんどくない。そして読んだあとの感覚も程よくいい。
    なんか、とてもよかった。

  • 素晴らしい。このとうめいな水のような読後感を表す言葉は、それ以外に思い浮かばなかった。
    この小説に出逢えたことで今までの出逢いや別れのことが少し納得できたように、きっとこれからも繰り返すであろう出逢いや別れの時々に、きっとこの小説が僕を、深い水の底から抱き上げてくれるだろうと思えた。
    この小説はそのための、「パイロットフィッシュ」そのもの。
    今日というこの日に、この小説に出逢えてよかった。

    今までに出逢ったすべての人が、どうか優しい気持ちで、そして幸せであってほしいと願わずにいられない。そういう気持ちにさせられる一冊だった。

  • 最近読んだ中で一番のヒット。ストーリーは、主人公がエロ雑誌の編集者という時点でアダルトな部分も多いが、表現や話の進み方や、登場人物の発する言葉など、とても自分の好みだった。他の作品も読みたい。

  • 主人公山崎の生きてきた人生を通して、優しさや温かさ、切なさ、孤独、寂しさなど、様々な感情が湧き上がりました。水槽や魚たちの描写が、繊細で静かで哀愁がありつつも美しい

    冒頭の「人は、一度巡り合った人と二度と別れることはできない」の意味が、読んだあとに理解することができたように感じます。最終的にはポジティブな意味合いとして表されていたのが良かったです。
    山崎や由紀子を始めとした登場人物たちの幸せをただただ祈りたくなりました。

  • よく磨きあげられたコップに注がれた冷えた水のように
    まるで水が無いかのごとく完璧に透明な水槽のように
    シベリアの森の奥深くにひっそりとたたずむバイカル湖のように
    透明感のある綺麗で切ないかつての恋人同士の記憶の物語。
    私はこういう会話が面白くて文章が綺麗な静かなお話しが好きです。なので渡辺さんの自論であるおいしい水を出す飲食店のように、またこの方の本を読みたくなると思います。
    そういえば大韓航空機撃墜事件なんてありましたね。僕(山崎)と由希子が二人で過ごした青春時代ってあの事件の頃だったのですね。

  • 昔好きだった1冊。
    主人公を引っ張る由希子がやっぱり素敵。

    人は、一度巡りあった人とは別れることはできない
    過去の出会いが繋がり、今の自分が形成されていく…

    傘の自由化は成功しましたか?

  • 最初の1ページで引き込まれた。
    心がすとんと静かになった。
    意味のない出逢いはきっとない。
    今までの出逢った人、
    これから出逢う人に私は創造され続けていく。

  • 高校生の頃に初めて読んだときは、綺麗な文章だなと思った。傘の自由化や犬は人の十倍喜びや悲しみを感じるというフレーズは、5年たった今でも覚えていた。馴染みすぎていて自分が考えたもののようになっていた。心の湖に小石を投げ入れ、底に積もったものがふんわりと浮き上がるような、本作にリンクした感覚が味わえたのは読み返したからこそ。
    改めて読んでみると、優しい気持ちと悲しい気持ちが混ざり合い、水中にいるようなゆっくりとした感覚になる。
    本作は恋愛小説に分類されるだろうが、恋愛小説嫌いの私でもこの作品は大切な一冊になった。

  • 人は一度巡り合った人と、二度と別れることはできない。人は記憶の集合体だから、否が応にも記憶とともに生きている。
    忘れることはあっても、消滅することはない。心の湖の中に潜っているだけで、ひょんなことで浮かび上がってくる。だけど、その手に掬い上げることはできない。
    思えばこの本も、かつて大好きだった人が大好きだと言っていた本だったんだ。ふと思い出して、この本を手に取った。つまり、そうゆうことなんだろう。
    彼もこの本も、はがれることなく私の心に残っているシール。

    人は結局は一人で、誰かとひとつになることはできない。
    埋められない溝、風穴を埋めるためにセックスをする。愛とは、摩擦熱。

    沢山の素敵な言葉をくれる本でした。
    これもまた、私の記憶の集合に加わったんだ。

  • 恋愛小説という評価には若干疑問なのだけど。
    道の迷い方、遠回りの仕方の指南書?
    どれだけ深い底にいても、光は見えるのかもしれない。

    西荻窪を歩きたくなった。

著者プロフィール

1957年、札幌市生まれ。大学卒業後、日本将棋連盟に入り、「将棋世界」編集長などを務める。2000年、『聖の青春』で新潮学芸賞、翌年、『将棋の子』で講談社ノンフィクション賞を受賞。さらには、初めての小説作品となる『パイロットフィッシュ』で吉川英治文学新人賞を受賞。

「2019年 『いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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