アジアンタムブルー (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043740024

感想・レビュー・書評

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  • 途中、先輩のエピソードのところでありきたりな展開にうんざりして読むのを中断していたけど、もったいないので読み続けた。最後は一気に読み進められた。

    大崎さんの小説を読んでいると、生活のそこここで感じる小さな輝きを繊細に文字にして集めたような、小さいけど気の利いた贈り物のような趣を感じる。

    諦めずに読んでよかった。
    「生きることの意味」が穏やかな筆致ながらも結構突き詰めて綴られているので、人生を投げ出したくなっている人が読むとかなりしんどいのでは。
    この物語の主人公には、挫折しそうな出来事が何度も起こっているのだけど、その時々の心情が丁寧に描かれているので、感情移入してしまって辛くなる。
    でも諦めずに読み続けてよかった。

  • 恋愛要素が強かった。
    少しやり過ぎ。

    永遠と無限
    永遠は果てしなく遠い未来、
    無限は無制限に広がる宇宙でないどこか、
    無限には明るいイメージを持った。

  • 愛する人が死を前にした時、いったい何ができるのだろう。
    末期癌に冒された恋人と向かったニースでの日々。
    喪失の悲しさと優しさの限りない力を描き出す、慟哭の恋愛小説。

  • 大筋の設定を見ると、よくある話。だが、場面設定や情景の描写力が、同テーマの他作品と格段の差をつけている。電車の中で読んで、もう一度読み直して、それでも涙が出てきた。

  • 葉子が死んだ。葉のひとつひとつがちりちりに丸まり、しおれ始めているアジアンタムのように、僕は憂鬱だった。だけど僕の周りには……心優しい人たちがいた。僕は幸せだった……僕は、幸せだ。

    片山恭一の『世界の中心で、愛をさけぶ』や石田衣良の『美丘』が好きな人にはオススメな作品。文章も精細で、あからさまなお涙頂戴ではなく、こういう作品にしては好感が持てた。私のジャンルではないが。

  • パイロットフィッシュの続編。ただの切ない話ではない。

    無力感と孤独感に包まれたこの作品に、びっくりするほど入り込めた。今の僕が、読んだことに意味がありそうだ。

    この大崎善生という人の文体と、光と影の描き方と、距離感が僕にはとにかく気持ちいいんだと思った。


    あまり再読はしない方なんだけど、精神的にちょっとダメになってたんで、もう一回読んでみた。

    「現実を受け入れること」の難しさと、それができる人の強さ。優しさというのは、いろんなものと向き合える心の余裕だと思った。やっぱり名作。殿堂入り。

  • パイロットフィッシュのが好きかな。
    評価は3.5をほんとはつけたい。

    憂鬱の中からしか、掴めないものがある。
    憂鬱の中から立ち上がったアジアンタムだけが、生き残っていく。
    そればっかりが心に残っていて、
    実体験としてアジアンタムブルー的なものから
    立ち上がれた私としては肯定したいお話だった。

    お涙頂戴なお話じゃないのは分かってるけど、
    棺に入れるものを探すとことか、最期とか、ちょこちょこ泣いた。
    でも死ぬときに愛する人があそこまでしてくれて
    一緒にいてくれるのは何よりもの餞だと思う。
    葉子は本当に幸せで、誇りを山崎にもらったんだ。

    パイロット~よりも周りの人が優しくて救われた。
    高木とか、ユーコとか。
    エンプティースターすぐ読みたいよこのまま・・・!

  • 大崎善生 著。

    映画化されるらしいですね。


    雨をモチーフにした記述が私は好きなんだけど

    こういう描写がありました。

    ------------------ キリトリ ---------------------

    雨で全身がびしょ濡れになっていた。

    それもどうでもよかった。何もかもがあきれるくらいに

    どうでもよかった。人間はたいした考えもなく万引きをし

    文鳥を踏みつぶし、ペインテイィングナイフで手首を切り付け

    アスファルトに髪の毛の芝生を植え込み、そしていつかは

    白い布に包まれてスープのように裏ごしされてこの世から

    消えて行くのだ。


    中略。


    悲しかったし、惨めだった。

    唾液と涙で顔は濡れていた。雨が降っていてよかったなと

    僕は思った。空を見上げると小粒の雨が顔に降り注いで来る。

    星も月も何も見えない黒ビールのような漆黒の空だった。


    ------------------ キリトリ ---------------------


    雨にうたれるシーンっていうのは好きです。

    気持ちよいし、ある意味のいさぎよさが感じられていい。



    主人公の山崎はエロ本の編集者。

    カメラマンにある女性を起用するのだが、彼女の写真が芸術的

    にすぎると反論を買う。売上げは良かったのだけど、その時

    上司にこう指摘される。


    「いいか、山崎君。僕らのやっている雑誌は単なるエロ雑誌だ。

    文化誌でも芸術誌でもないんだ。粘膜と皮膚のギリギリを

    写し出して勃起させて売る。それで゙マスターベーションをして

    捨ててもらう、それだけが役割なんだ。だけど今度の君の

    企画のようなものが続けば読者は本を捨てられなくなる。

    捨てられないエロ本はきっといつかは滅びていく。」
                             (本文より抜粋)



    いいですね! 明快ですね。むしろ名言ですね。


      「捨てられないエロ本は滅びる」

      「勃たないエロ本になど価値はない」


    分かりやすい。そのとーりっ。


    大量のインクを無駄使いし、眺められそして

    捨てられていくだけの大量の出版物。

    単純で明快。知性など必要とされていない世界。

      ”シンプルに、わかりやすく。”

    だからこそ難しいのかもしれないけどね。

  • adiantum blue

    パイロットフィッシュのときも思ったけど、なんてタイトルをつけるんだろう。
    きっと、その語彙を知っている人は、少しストーリーを覚悟できる。
    でも知らないわたしは、それすらも本の中で発見する。

    他の人の本では、見たことないものが出てくるから、大崎さんの小説は好きだ。
    読むのに時間がかかるけど、絶対最後まで読んでしまう。

    結末を電車の中で読んだのは失敗だった。
    泣けなかった分、余韻が強く残ってる。

    帰ってからエルトン・ジョンを探して聞いた。
    それから、初めてボルシチを作った。

  • 読んでいるとき、
    すごく心がふらふらした。
    最期に2人で撮った写真を想像すると
    綺麗すぎて哀しくなる。

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著者プロフィール

1957年、札幌市生まれ。大学卒業後、日本将棋連盟に入り、「将棋世界」編集長などを務める。2000年、『聖の青春』で新潮学芸賞、翌年、『将棋の子』で講談社ノンフィクション賞を受賞。さらには、初めての小説作品となる『パイロットフィッシュ』で吉川英治文学新人賞を受賞。

「2019年 『いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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