孤独か、それに等しいもの (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043740031

感想・レビュー・書評

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  • 5篇の短編集

    「八月の傾斜」
    「孤独か、それに等しいもの」
    心に留まりました

    八月~ではピアスのエピソードが好きです

    大切なものを失くしてしまうよ
    という大久保君の言葉が胸に染みました
    耳たぶには大切な神経が通っているかららしいです
    迷信かもしれないけれどこの考え方いいなぁと思います
    主人公は最後にはピアス穴を開けてしまうけれど


    孤独か~は双子のおはなし
    最後の
    茜を一緒にもらってくれないかな?
    という言葉にじーんとしました
    双子って普通の兄弟や姉妹より結びつきが深いらしいですね


    「ソウルケージ」にはすごく共感する部分がありました
    自分の感情や観念を放り込んでおくもの
    人間誰しも我慢が必要で
    自分だけが我慢してるわけじゃないんだと頭では分かっているけれど
    どうしても自分中心にしか考えられない部分もあって
    そんなときにはソウルケージに自分の思いを放り込んでしまえばいい

    私は美緒ほど苦しんでいるわけじゃないと思うけれど
    生きていれば誰しもがソウルケージが必要なのかもしれない


    5篇すべてが何かしら死が関係していて
    誰かの死は自分から何かを奪っていくものとして認識していたけれど
    自分に何かを与えてくれるものでもあるかもしれないと思うようになりました

  • 『優しい子』に続いて読んだ大崎作品。どの話も、死が絡み、まとわりついていて、悲しくて、つらくなった。だけど、大崎さんの他の本も読んでみたくなったのはなぜ。

  • すごく絶望的なココロの一片を、すごく透明に抽出した短編集。
    どうしようもない、逃げ場のない、自力で越えて行くしかないヤマを、
    無理矢理に越えさせるわけでもなく、かといってアイロニックに書くでもなく、
    非常にすっきりと、明るく、凍みるほど鋭利にまとめてある。
    その刹那を「分かる!」と共鳴できてしまうことは、
    果たして幸せなのか不幸なのか。

    表題作よりも、「八月の傾斜」と「シンパシー」が印象大。
    開けたピアスの穴はモルヒネのようなものだったのだろう。

    卑近な例を挙げて申し訳ないが、鬼束ちひろの世界観と似ている。

  • 「八月の傾斜」
    「だらだらとこの坂道を下っていこう」
    「孤独か、それに等しいもの」
    「シンパシー」
    「ソウルケージ」
    の5つが収録された短編集。

    順番が先にあるほど面白かった。
    つまり、「八月の傾斜」が一番良かった。
    「4」という評価は、ほぼこの作品のものだ。

    ただ、その前に「だらだらとこの坂道を下っていこう」の感想を。
    タイトルがほぼすべてを語っている作品だったが、他の4つの作品と比べてとても柔らかい雰囲気を持っていてよかった。
    「僕が感じている違和感は(中略)周りの風景自体が変わりはじめていることに原因がある」という言葉は、人間関係に深く悩んでいないと出ない言葉だと思った。
    こういうときは、周りに振り回されずに自分たちのペースを保つことが重要なのだろう。

    続いて、「八月の傾斜」。
    ピアスの穴をあけると「大切な何かをなくしてしまう」というのは、私には感覚的にではあるがよくわかることだった。
    私の友人たちがピアスをあけると、なんとなく違和感を感じたものだ。
    「親にもらった体を…」とかそういうこともあるが、それだけでなくピアスをあけることでその人の何かが変わってしまうような気がしていた。
    こういう話を20代そこそこの同じ世代の人に話すと、煙たがられる。
    私が堅いだけなんだろうかと思っていたところに、良き理解者と共感できる人を得られた気分だ。
    実際に、登場人物が私と全く同じことを感じているのかははっきりとわからないが、読み進めると私と同じものを大切にしていることはわかった。

    もう一つ、気になった言葉があるが、多少ネタバレになるかもしれないので以下ご注意を。

    「二度と取り戻すことのできない記憶の堆積物に、私は勝手に大久保君という名前をつけて呼んでいるだけなのかもしれない」というものだ。
    いい思い出、悪い思い出が、一緒にいた人の印象や記憶に結びつくということはよくある。
    大切な人を失うとその人だけでなく、思い出までもごっそりなくなるような気さえするし、嫌な人がいるとその人と関わっていた時間すべてが嫌な思い出になったりする。

    「私」にとって大久保君はそれだけ大切だったということだが、「私」はそれを忘れようとする。
    大切だから、忘れようとし、でもその方法は大切だった人が言っていたもの。
    その複雑さというか、どこかまだ大切だった人に囚われている感じがとても人間らしい。

  • とても暖かい話の短編集。
    どんなに深い傷も、いろいろな人に優しさに触れながら、
    癒えて、そして成長していくものですね。

    素敵な話ばかりでした。

    一つ一つの話はどれも、感慨深く、
    出来れば、短編でなく長篇で読みたかった。

  • 「大久保くんが恋しいわけではない。
    大久保くんと過ごした自分自身の姿が恋しいのだ」

    そうだなぁと思う。

  • ある意味で、最も大崎さんらしい作品かも知れません。
    いずれも透明感が有って、綺麗です。そしてキーワードとも言うべき「純粋さ」に溢れた作品です。短編ゆえに、それらがさらに鮮明に打ち出されている気がします。
    大崎ワールド全開。でも一方で、それだけなの?という気もしてしまいました。もう少し幅が欲しいかな。それは贅沢な望みなのでしょうかね。
    愚痴っぽくなりましたが、良い作品だと思います。特に大崎さんを読んだことの無い人には入門書としては最適かと。

  • 駄作です。

  • 恋人の死、双子の妹との分裂、報われない青春、囚われ続ける人たちの決別と新しい一歩を映し出す、優しくてセンチメンタルな短編集。

    「八月の傾斜」
    この中だとこれが一番好き。
    ピアスの穴を開けることによって、大切なものを無くしてしまう。
    そういう迷信じみたものを私も信じています。
    自分がピアスの穴を開けたときもそういう決定的さがあった。
    もう二度と手にすることのできない大久保君との時間。
    それをようやく葬ることができた祐子と、彼女をきっと丸ごと抱きしめてあげられるだろう早津のこれからの幸せを願いたい。

    「だらだらとこの坂道を下っていこう」
    30代も半ばを超えて、自分の人生の山頂にはすでに登りつめてしまったと感じる主人公。
    それはいくらか悲しいことかもしれないけれど、大切な人と山頂からの坂道をだらだらと下っていくのは、なんだかとても素敵じゃないかと思えた。
    マルセイユの風に訊いてくれ。

    「孤独か、それに等しいもの」
    双子の姉妹の話。かつては一心同体、自分自身そのものであったような妹との亀裂。そして死。
    藍は妹の茜を亡くしたことで、自分のどこかもごっそりと抜け落ちてしまう感覚と、生まれて初めて知覚した孤独に苛まれ続けている。
    ヒロシのキャラクターが絶妙だった。

    「シンパシー」
    読書サークルの合宿で出会った死にかけの子犬と、ある一晩の夢のような出来事。
    すべてを報われる、報われないで分けてしまう考え方は私もしてしまうかも。
    この短編だけは明確な再生の兆しがなかった。
    あの合宿で、僕は、彼女は、報われたのか。それとも報われなかったのか。
    その答えをみつけるためというのも、生きることの一つの目的かもしれない。

    「ソウルゲージ」
    幼いころに母親が愛人と心中してしまい、ただひとり取り残された少女の記憶と現在が交錯するように描かれる話。
    自分だけのソウルゲージに何もかもほうり込み、傷だらけの熊を誰にも見せずに飼いならすというのは、どれほどの重圧なのだろう。
    彼女の魂の解放がすがすがしかった。この本に収録される話のすべてを救ってくれるような読後感。
    北海道旭川のダイヤモンドダスト、私も見てみたい。

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著者プロフィール

1957年、札幌市生まれ。大学卒業後、日本将棋連盟に入り、「将棋世界」編集長などを務める。2000年、『聖の青春』で新潮学芸賞、翌年、『将棋の子』で講談社ノンフィクション賞を受賞。さらには、初めての小説作品となる『パイロットフィッシュ』で吉川英治文学新人賞を受賞。

「2019年 『いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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