うつほ物語 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫 84 ビギナーズ・クラシックス)

制作 : 室城 秀之 
  • 角川学芸出版
3.32
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043742035

作品紹介・あらすじ

異国の不思議な体験や琴の伝授にかかわる奇瑞などの浪漫的要素と、源氏・藤原氏両家の皇位継承をめぐる対立を絡めながら語られる。スケールが大きく全体像が見えにくかった物語を、初めてわかりやすく説く。

感想・レビュー・書評

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  • うつほ物語

    源氏物語の先駆けになったとも言える初の長編小説。四代に渡る秘琴の伝授を中心とした宮廷の物語。

    秘琴の伝授した俊蔭、尚待、仲忠、いぬ宮と宮廷での皇位継承問題が一見乖離したストーリーになるかと思いきや、どちらものストーリーもそれぞれの内容を深めるために必須でこれまでの長編物語にできているこの作品は源氏物語にもない素晴らしさを持っていると思った。
    確かに、作者が注で言っているように矛盾する点が多くあって疑問に思わざる終えない点はたくさんあるが、無理やりに辻褄を合わせようとするのではなくて、それでこそ最初の長編物語として受け入れているこの作者の姿勢もこれから自分で古典を研究していく上で参考になった。全部現代の尺度で測るのではなくて、現代から見れば欠陥の部分も欠陥として手ではなく、それも一つの魅力として受け止めることでもっと好きになれるような気がした。
    自分の特に印象的な場面としては立坊問題のときに父正頼は自分の娘の御子が春宮になれないということで出家まで考えていたシーンである。
    外戚となることで実権を握れるということは日本史で学んでいたが現代の感覚とはやはり離れていて、実感がしづらかったが、出家を考えるほどにやはり大事であることを感じれた。そのように考えると、やはり娘からしたら御子を生まなくてはいけないというプレッシャーや春宮にしなくてはといけないプレッシャーに日々苦しんでいたのだと思う。
    他の作品ではどちらかというと恋に思い悩む
    女性の姿が多く描かれていたがそれに加えて、一家の繁栄へのプレッシャーがかかっていたと思うと本当にいたたまれない生活をしていたのだと思う。源氏物語で桐壺が帝の寵愛を一身に受けていることに対して、他の女御や更衣が意地悪をした気持ちも今になって、少しわかるような気がした。

  • ボリューミーで、巻同士の前後関係に問題があるとかで、あまり一般に読まれない古典作品と聞いている。
    実際、私も学生時代、文学史の試験のために、作品名くらいは見たなあ、くらいの関わりしか持ってこなかった。
    一度、現代語訳で読んでみようと思ったのが昨年。
    でも、源氏のような読書環境は、このマイナーな作品には望むべくもない。
    昨年、ようやく津島佑子のジュニア向けのリライトを読んだばかり。

    ビギナーズクラシックスのシリーズは、ハイライトの現代語訳→原文→解説という構造になっている。
    津島版で読んだものは、あて宮への求婚譚が中心にまとめられていた。
    春宮に嫁いで、寵愛を一心に集めながらも、仲忠への思いが残っていて、「不機嫌なお妃」になってしまう―という結末だったような気がするが、この本ではそんな気配は全くない。
    この本で「○○宮」という呼称が、内親王を母とする子どもに許されたものだったとか、践祚と即位の違いとか、六歳まで乳を飲む幼児の記述は必ずしもヘンなことではなかったとかいう解説も、役に立つ。

    原文をわずかずつ読むことができて、よかった。
    尚侍、仲忠、いぬ宮の三人の合奏の場面のシーンの、なんと綺羅綺羅しいこと。

    楼の巡りは、まして、さまざまに、めづらしう香ばしき香、満ちたり。三所ながら、大将おはする渡殿にて弾き給ふなり。下を見下ろし給へば、月の光に、前栽の露、玉を敷きたるやうなり。響き澄み、音高きことすぐれたる琴なれば、尚侍のおとど、忍びて、音の限りも、え掻き鳴らし給はず。色々の雲、月の巡りに立ち舞ひて、琴の音高く鳴る時は、月、星、雲も騒がしくて、静かに鳴る折は、のどかなり。(「楼の上」)

    大分古文を読み慣れて「あからしき」、「こくばく」「けけしき」、「景跡(けうさく)」、「桃楚(ももすはえ)」などなど、知らない言葉がたくさん出てきた。
    これもまた楽しい。

  • 源氏物語より前の長編物語。
    遣唐使清原俊蔭が波斯国(ペルシア)へ漂着した天人・仙人から秘琴の技を学んでから日本に帰る。その技と秘琴が娘に受け継がれて話が展開していく。

  • ファーストインプレッションは、「古典はめんどうなので読みたくない」でした。「嫌い」とまではいかないにせよ、自分から手に取ることはまったくないです。
    そしてそのような本に触れる事こそが、この本袋会の趣旨であるわけです。

    しかしいきなり読み始めるところまではまだ気持ちがいかなかったので、とりあえず全体像を知ろうと思いあらすじや登場人物を調べました。
    するとこの話は、「琴の奏法」が鍵となってそれを主人公の祖父⇛主人公の母⇛主人公⇛主人公の娘へ伝授していくという、非常に壮大な話であるらしいということがわかりました。
    ここでようやく、おやこれはきっと面白くなるなという思いが芽生えたのでした。

    全体像が見えると、そこから読了までは早かったです。この文庫は原文のまとまりと現代語訳のまとまりが交互に並べられ、非常に読み進めやすく作られています。
    1時間半程度で読み終えました。

    さて読んでみて。
    私は自分自身のことをいろいろと考えさせられました。いま自分の手元になんらかの「バトン」があるのかないのか。あるとするならばそれはどのようなバトンなのか、そしてどこへつなげればいいのか。

    学生(とりわけ教員をめざす)を育てるという仕事をしている関係上、僕が教わったことをもう一度僕なりに解釈して学生たちに伝えていく、という意味でのバトンはいま必死に握っている最中かなと思います。

    ではその他は?「家」とか「家族」という側面で考えたとき、僕はそちらのバトンを握ることに対していまは積極的ではないのです。歳を重ねていくうち、ほんとうにそれでいいのかという思いも芽生えるかもしれません、そしてその時はもう遅いのかもしれません。

    そんななか、本作品の登場人物のひとりである嵯峨院が、クライマックス(まだ6歳という幼さである主人公の娘が、琴の奏法を受け継いで奏でる場面)でこのように言うのです。

    「老いは、厭うまじかりけり。」と。

    嵯峨院は主人公の祖父(琴の奏法の出発点)の知己であり、その曾孫が立派に奏法を受け継ぎ、晩年にその演奏をも耳にすることが叶って万感の思いを抱いたのでした。
    当初の伏線が終盤でぐぐっと回収されるおきまりのパターンが、大好きです(笑

    歳をかさねることは決していやなことなどではない、連綿と続く時間を大切になぞることで、得られるものもあるのだと、嵯峨院は教えてくれたような気がします。
    バトンのさきに何があるのかまだ自分は見えていないですが、その何かをつかむために、自分もまた走り続けなくてはならない。あるいは走り続けたいと、思ったのです。

    そのような歳の重ね方を、ぜひともしていきたいですね。
    自分がいつどの時点でどのような家族をもつことになるのかはまだまだわからないですが、少しポジティブになれた気がしています。

    (いじゅ)


    【推薦人より】

    日本で初めての長編物語、の「日本で初めて」を決め手に選びました。日本人なら知っててもいいだろ、と。
    千数百年の時を経ても、子孫繁栄をねがったり、結婚でもめたり御家騒動だったり出世競争だったり、人間て変わらないとこホント変わらないなぁって面白いから好きです。

    (ブクロ)

  • 読了。

  • 最初は結構神秘的というかSFっぽいというか超人的で魅力的な登場人物のおかげで面白く感じたが、後半はドロドロしてるというかなんというか人間くさすぎて私はイマイチ

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