- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043747023
作品紹介・あらすじ
俺は気づいてしまった。俺が大学を中退したのも、無職なのも、今話題のひきこもりなのも、すべて悪の組織NHKの仕業なのだということを!…だからといって事態が変わるわけでもなく、ずるずるとひきこもる俺の前に現れた清楚な美少女、岬ちゃん。「あなたは私のプロジェクトに大抜擢されました」って、なにそれ?エロスとバイオレンスとドラッグに汚染された俺たちの未来を救うのは愛か勇気か、それとも友情か?驚愕のノンストップひきこもりアクション小説ここに誕生。
感想・レビュー・書評
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わたしはなぜ社会で上手くやっていけないのだろう?という疑問を
ヘンな陰謀論で説明しようとする青年
「タクシードライバー」のようなカッコいいもんじゃないが
いろいろあって少女の命を救う
しかしその流れで彼自身は、自己責任論の自縄自縛に陥ってしまう
「NHKにようこそ!」では引きこもりが外に出られない理由として
「敵の不在」が挙げられている
自分はNHK(日本ひきこもり協会)の陰謀で苦しんでいるはずなのに
NHKの実態がどこにも見当たらないのだ
だから、「NHKはみんなの心にある!」という理屈を用いて
ひきこもりの原因を各自の自己責任に帰する
しかし心の中にしかないなら、それは単なる思い込みだ
なぜそう思い込むに至ったか?
問題の本質は人それぞれの心の外だろう
主人公が引きこもった直接の理由はわからない
宿命論を自己責任論にすり替えたのち
連帯責任の集団に組み込んでいくというなら
それは恐怖による支配となる
主人公が狂気を深めるプロセスに見るべきとこもあるが
結末のマイナスがデカすぎる詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
私のバイブル
オススメしたいが、したくない一冊。 -
私自身、大学時代は引きこもっていた。主人公の心情はリアルに感じ取れる。引き込まれる。
この作品を読んで、現実世界の引きこもりは、「現実世界に岬ちゃんはいない」と嘆くかもしれない。しかしそもそも、主人公の社会復帰は、岬ちゃんの力によるものではない。それは、主人公自身の努力によるものだ。
むしろ、物語において最後に救われるのは、岬ちゃんである。この物語が絶望的だとすれば、現実に存在する岬ちゃんは、主人公のような人物を見つけられないであろうこと。なぜなら彼は引きこもりだからだ。 -
私たちは強大な敵を求めている。
どうしようもない位に強大で凶悪な組織の被害者でありたい。
抗いようのない陰謀に巻き込まれていたい。
そうだ、仕方なかったんだ。
どうしようもなかったんだ。
そう願う奴や
子供から大人になるときに集団の中で感じる孤独に
人間はしょせん一人であるという現実に
押しつぶされそうな
奴ら
が出てくる話。
今話題の(結構旬は過ぎた気がするが…)ひきこもりの話。
全国200万の引き籠りのうち何人かは主人公の様な理由で引き籠ってるんじゃないかと思う。
この作者の作品は正直嫌いじゃない。
ネガティブハッピーチェーンソーエッジの時もだけど、主人公が死にたすぎる気がする。
それが味なんだろうと言えばそうなんだろうけど。
そこらへんも含めて、嫌いじゃない。
ただ、この本を2冊持っているのはそれとは関係なくて間違って買っただけです。 -
ヤダこれ。何でこんなに胸が痛むんだろう。むちゃくちゃな話です。笑えるところもあります。でも何故か泣けるんです。胸がチクチクと痛むんです。最後に少しだけ希望が見えた事、これは読者にとっても大きな希望だったと思います。
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青春小説というと、いったいどういうイメージが浮かぶだろう。汗と涙の末の勝利。ライバルとの熱い戦いと、仲間の中で起こる喧嘩、そして深まる友情。最後は夕陽に向かって河川敷を颯爽と駆け抜ける姿よろしく、どこまでも広がる若人の未来を暗示するようなモノローグ……
FUCK!そもそもそんな青春97%の人間は送っちゃいないのである。アホで、堕落してるのはわかっちゃいるが、居心地はたまらなく良く、どうしょうもない日常。うだうだと堂々巡りの間に、本気だしてないまま終了な人生。だが、君たちがそんなにダメなのは君のせいじゃぁない。そう、それらの全てはNHKの陰謀なのだ!
てな感じで、どうしょうもない引きこもりの主人公の被害妄想から始まるこのストーリー。出てくる奴らどいつもこいつも自意識過剰なダメ人間ばかりで、まったく救いようがない。それでも、たとえ後ろ向きな自己否定を伴っていても、なんとかやらにゃいかんと必死に奮闘し力尽きていく様は、ギャグタッチで描かれていながらも非常に重いテーマ性を持つ。冒頭あげた青春小説のテンプレートは現実世界の青春を理想方向への引き延ばした姿だが、これも別方向への青春解釈とも言えよう。
ラストの余韻も、前章までの盛り上がりはどこへいったのか、淡々としていて寂しい。けれども、この作品はこれでよいのだ。名作。 -
聖地巡礼として生田へ行った思い出
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結局のところオタクってみんな中原岬ちゃんに出会いたいだけだから。空から翼の生えた女の子が降りてきてほしいだけだから。
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人生のある時期にはめちゃくちゃ刺さるけど、いつしかそれが刺さった時間のことすら忘れてしまうような、通り過ぎる作品があると思っていて、それはたとえば、滝本竜彦や西尾維新だったりする。
10数年ぶりに読んだ、NHKにようこそ。
痛みも、どうしようもなさも、いたたまれなさも、なんとも言えないあの読後感も、やっぱり昔ほど迫っては来なかった。
でも、作家自身が、これを読むと書いていたときの自分を思い出すと記していたように、読んでいたときの自分を思い出す。そんな本はきっと、世の中にそう何冊もない。
通り過ぎて忘れるけれど、またそのうち何年かしたら、読んで思い出す。ちょっと歪な青春時代のアルバムのような本。
あとがきまでは本編だと思います。
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『イリヤの空』や森見登美彦よりおもしろい
『鬱の本』を読んだら、これに共感した、救はれたといふ人がをり、また作者の滝本氏もすごい文章を書いてゐたので、読んでみた。
いやすごく上手なモノローグ文体がつづいて読みやすいですよ。展開もご都合主義だけど、気にならないし。主人公はお先真っ暗と思うてるんやけど、文体が陽気。
隣の部屋のアニソンがおジャ魔女どれみだったり、主人公がナディア世代だったり、何割かは滝本の実体験だらう。だからこそ、ひきこもりを自虐的におもしろ可笑しく書けるのだらう。
おなじモノローグ系の『イリヤの空、UFOの夏』は饒舌が長すぎて挫折した。森見登美彦の『四畳半神話大系』も原作は淡泊で、アニメの方がおもしろい。
しかし『NHKにようこそ!』は短くて読みやすく(原作はアニメより短い)、見てみたらアニメも演出がうまくかなりおもしろかった。