フェイク (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
3.17
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本棚登録 : 2034
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043765027

作品紹介・あらすじ

岩崎陽一は、銀座の高給クラブ「クイーン」の新米ボーイ。昼夜逆転の長時間労働で月給わずか15万円。生活はとにかくきつい。そのうえ素人探偵とは誰にもいえない。ライバル店から移籍してきた摩耶ママは同年代で年収1億といわれる。破格の条件で彼女の運転手を務めることになったのはラッキーだったが、妙な仕事まで依頼されて…。情けない青春に終止符を打つ、起死回生の一発は炸裂するのか。抱腹絶倒の傑作コン・ゲーム。

感想・レビュー・書評

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  • コンゲームの小説という訳ではない。といって銀座のドロドロ愛憎劇を描いた作品でもない。この手の話はスカッと爽快感というか、してやったり感とでも言うか、その種の痛快な終わり方をするものだが、その点もショボい。
    全体的に中途半端。
    銀座の夜の店のシステムが多少分かる程度の本だと思って読むのがオススメ。

  • 【感想】
    「プラチナタウン」「再生巨流」など、経済小説に定評のある楡周平の他ジャンル小説。
    書いてある通り、ややコメディものの小説だった。

    読み終わって粗筋を読み直したところ・・・・
    素人探偵??そんな要素あったか??笑

    はじめは長澤まさみ主演のドラマ「コンフィデンスマン」のような痛快コメディかと思いきや、銀座のママによるパトロンへの報復という中々俗っぽいストーリーで残念。
    主人公の岩崎陽一のサクセスストーリーなのかと思いきや、「一番大切なのは、金をどうやって稼いだかだ。」と、随分とマトモな事を言っちゃうシマツ。
    ピンチになると前立腺が痛くなるところくらいしか面白くなかったわ。
    これまでの楡周平作品と比べると、ちょっぴり・・・いや、かなり期待外れな作品だったかなー。

    北新地でバーテンダーやっていた頃を少し思い出して、あの頃もっと色々できたなぁと思い出に浸れた一作ではありました。



    【あらすじ】
    岩崎陽一は、銀座の高給クラブ「クイーン」の新米ボーイ。
    昼夜逆転の長時間労働で月給わずか15万円。生活はとにかくきつい。
    そのうえ素人探偵とは誰にもいえない。ライバル店から移籍してきた摩耶ママは同年代で年収1億といわれる。
    破格の条件で彼女の運転手を務めることになったのはラッキーだったが、妙な仕事まで依頼されて…。

    情けない青春に終止符を打つ、起死回生の一発は炸裂するのか。抱腹絶倒の傑作コン・ゲーム。


    【引用】
    1.この世の中が不条理で、不公平極まりないものだと言ってしまうのは簡単なことだ。
    そもそも世の中が不公平に出来ていなければ、人間なんて生きる目標を失ってしまうものなのかもしれない。
    誰しもが公平に生きられる社会と言えば聞こえはいいが、労働に見合った見返りが得られない社会は、技術の進歩も生産力も低下するだろう。

    2.「チャンスっていうか、人生の転機なんてものは、常に目の前をうろうろしているものだと思うのね。でも大方の人は、それに気がつかないか、そうでなければ食いつくだけの度胸がなくて見過ごしているだけ」

    3.これはただごとじゃない。前立腺がじわりと痛み始めた。

    4.山野が大金を失い、パトロンとしてさくらに注ぎ込む財力を失う。そうなれば、さくらも銀座を離れ、元のように家業を手伝い、やがては誰かのもとに嫁ぎ、幸せな結婚生活を送ることだってできるかもしれない。
    でも、その相手は僕じゃない。少なくとも、山野と愛人関係にあった。その事実を僕は忘れることはできない。
    さくらを元の道に戻してやる。勝手な言い草かもしれないが、それが彼女への最後の愛情の証だと僕は思った。

    5.「あのさ、なんか俺、空しくなってきちまってさ」
    五千万は確かに大金だ。夢のような大金だ。だけど、そんな金を手にしたところで、今の僕には何をどう使っていいのかわからない。
    金があるには越したことはないけれど、汗水垂らして稼いだものでもなければ、自分の能力で手にしたものでもない。
    居酒屋のバイトの女の子が、時給を幾ら貰っているのかは分からない。だけど、あの女の子が手にするお金は、紛れもなく自分で稼ぎ出した金だ。
    一番大切なのは、金をどうやって稼いだか、だ。


    【メモ】
    p63
    一つだけ言えるのは、世の中には、金をしこたま持っている人間、生活をしていくのにやっとな人間、そしていつも金に困っている人間の三種類しかいないということだ。
    同じ人間に生まれて、一体この差はどこからくるものなのだろう?
    この世の中が不条理で、不公平極まりないものだと言ってしまうのは簡単なことだ。そもそも世の中が不公平に出来ていなければ、人間なんて生きる目標を失ってしまうものなのかもしれない。
    誰しもが公平に生きられる社会と言えば聞こえはいいが、労働に見合った見返りが得られない社会は、技術の進歩も生産力も低下する。


    p67
    「いつかチャンスを掴んで、酒を運ぶ方じゃなくて、運ばれる方に回る・・・」
    「つまり、こんな店で豪遊できるだけの財を掴む。ただおたおたとそんな人になりたいってわけ?私がこんなこと言うのも何だけど、その程度のチャンスなら、どこに転がっていても不思議はないわよ」
    「本当にそう思うんスか?」
    「本気よ」摩耶は急に真顔になると続けた。「チャンスっていうか、人生の転機なんてものは、常に目の前をうろうろしているものだと思うのね。でも大方の人は、それに気がつかないか、そうでなければ食いつくだけの度胸がなくて見過ごしているだけ」


    p147
    人生の転機なんてものはいつも万人の前をうろうろしている。でも大方の人はそれに気がつかないだけ・・・
    いつか摩耶が話してくれた言葉が脳裏をよぎった。これは僕に巡ってきた人生最初ビッグチャンスなのかもしれない。
    「それで、僕に何をやれって言うんです?」
    「真壁さんのところで仕入れたワインと、ウチの店にあるワインをすり替えてほしいの」

    「すり替えたワインは、真壁さんがしかるべき価格で引き取ってくれる。それを価格破壊が起きないように限られたルート、つまり懇意にしているお客さんに安い価格で流す。そうなれば、全ては丸く収まるってわけよ。あなたに支払うお金は、その差額分ていうことよ」


    p300
    郵便配達や宅配便にしては早すぎる。だとしたら、一体だれなのか?こんな朝早くに訪ねてくる人間に思い当たる節はない。
    不吉な予感が脳裏をよぎった。それを裏付けるように、呼び鈴が乱打された。
    これはただごとじゃない。前立腺がじわりと痛み始めた。


    p344
    山野が大金を失い、パトロンとしてさくらに注ぎ込む財力を失う。そうなれば、さくらも銀座を離れ、元のように家業を手伝い、やがては誰かのもとに嫁ぎ、幸せな結婚生活を送ることだってできるかもしれない。
    でも、その相手は僕じゃない。少なくとも、山野と愛人関係にあった。その事実を僕は忘れることはできない。

    さくらを元の道に戻してやる。勝手な言い草かもしれないが、それが彼女への最後の愛情の証だと僕は思った。


    p415
    「あのさ、なんか俺、空しくなってきちまってさ」
    「こんなことで手に入れた金を元手にギャンブルをやったところで、またあの興奮が味わえるんだろうか?いや、そうじゃないよな、きっと。泡銭の使い方なんて決まってる。所詮は当たるべくして当てて得た金。元銭にしたところで、俺の懐を痛めたわけでもないんだもの」
    つまり、博打うちにとってギャンブルをする目的は、金ではなく勝負の結果、つまり自分の運と読みが当たるか否か、そのスリルにある。


    p417
    五千万は確かに大金だ。夢のような大金だ。だけど、そんな金を手にしたところで、今の僕には何をどう使っていいのかわからない。
    金があるには越したことはないけれど、汗水垂らして稼いだものでもなければ、自分の能力で手にしたものでもない。

    居酒屋のバイトの女の子が、時給を幾ら貰っているのかは分からない。だけど、あの女の子が手にするお金は、紛れもなく自分で稼ぎ出した金だ。

    一番大切なのは、金をどうやって稼いだかだ。

  • ストーリーで読ませる本、面白いけど企業小説の方が好きかも
    キャラクターは浅め

  • 読後感がとても爽やか。持ってるやつから金を巻き上げる、やってることはエグいのに痛快。主人公陽一が真面目で純情であることが効いている。競輪で借金まみれになった親友と、実家の印刷工場の経営不振に悩む恋人(?)、若年性アルツハイマーを患っている父の介護のためにどうしても大金が必要な歩合ママと一緒に企てたワインのすり替え。しかし思わぬ落とし穴に足をすくわれたママは起死回生の企業恐喝に乗り出す。

  • 本作はコンゲーム小説という分野にあたらるらしいです。
    その定義は、暴力的な手段を用いないで、知能を使って大金をせしめる詐欺師達の物語。頭脳戦を楽しめる小説とのことです。

    しかし、正直、それほど頭脳戦がひしひしと伝わってくる物語ではありませんでした。
    頭脳対頭脳で戦っているようなイメージではありません。
    本作では、だますというところでは、大きく3つ。

    (1)ワインすり替え
    (2)競輪を舞台にした裏技
    (3)株価操作

    ワインのすり替えや株価操作については、巷でも言われているようなことなので、それほど大きな驚きはありませんでしたが、競輪を舞台にしたオッズ操作はしびれました。マイナーなギャンブルゆえに、なるほど、そういうやり方もあるのかと驚かされました。
    さすが、楡さんだなぁと思わせる内容でした。

    しかし、本当の意味でのコンゲームというところでは、主人公を取り巻く女性人ではないかと思います。
    彼女たちの生き方そのものが彼女たちの人生でしのぎを削っているように思えます。
    それに比べて男のほうは、やっぱりいまいち(笑)

    また、本作を読むことで、銀座のクラブの仕組みも理解することができます。まぁ、自分には程遠い世界なので、理解したところでなにもできませんが...夜の’世界をちょこっと見るにはちょうどよいかなと。

    ということで楡さんの小説らしく、さまざまなビジネスの裏事情が事細かにリアルに書かれており、大変ためになる物語でした。
    世の中の勉強になります。

    とはいうものの主人公の性病に関する記述は主人公のどうしようもないところを描画するためだとは思いますが、冗長だったのでは?と思うところです(笑)

    ということで、これもお勧め!

  • コン・ゲーム小説のおもしろさよ…!!
    頭がそこまで回らないからたまにおいてけぼりになるんだけど
    騙し騙されの一進一退が本当におもしろかった。

    舞台・キャラ設定・心理戦、
    どれをとっても好みだったし
    ゲームのハラハラ感もすごくよかった。

    久しぶりに出会ったスカッとした読後感のある本。

  • 登場人物も多くないのに加えて、展開が早いためスラスラ読めた。最後までドキドキする内容でした。

  • キャバクラや競輪を舞台に三流大学を出たばかりの主人公とその友人がお金に翻弄されながらもその本当の価値に気付くという話。月給15万から果ては億単位の金まで、物語の中で激しく浮き沈み金銭感覚も変わっていく。キャバクラの仕組みは興味深く、また競輪を使った復讐のやり方も常道ではなく面白い。エピローグできちんと気になる登場人物のその後を描いているのも好感。

  • 今、個人的に最もアツい作家の本を読んでみました。
    (再生巨流とかラストワンマイルの人です。)

    冴えない銀座の高級クラブの新米ボーイと
    年収1億のママが繰り広げる詐欺小説。

    スリリングな話なので、ページがどんどん進み、
    あっという間に読めてしまう。

    銀座の高級クラブなんて行ったことはないけれど、
    こんなシステムになってんだ~って感じ。
    個人的にはそこが一番ツボ。
    何の役に立つかはわかりませんが。。

    ただ、これまで自分が読んできた
    再生巨流とかラストワンマイルとかと比べると、
    質はやや落ちるかなぁ。。
    詐欺の手口もこれホントに成功するか~!?ってのもあったし。

    僕は同じタイトルの「Fake 五十嵐貴久」の方が
    ぶっ飛んでいて面白かったかなぁ。。

    とは言え「個人的最もアツい作家№1」の地位が
    揺らぐほどではありません。
    楽しく読めるエンターテイメント小説としてなかなかの出来です。

  • 銀座の高級クラブを舞台にしたコン・ゲーム。
    ページ数も結構あり、加えて前半がクラブの話や主人公の恋愛模様な感じの話でちょっと読むのが辛かったですが、途中から面白さを感じられ、読み切れました。

    登場人物たちは女性たちが強かで、所業を褒められずとも美しいなと思う。
    男性陣、ホントどうしようもない……いや、人間味溢れるキャラクターたちでした。


    高級クラブのしきたりやタブー。公営ギャンブルの事。株の売買の考え方と鉄則。
    今後関わりを持つかどうかも、持てるほどの才などないが、勉強にはなりました。

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著者プロフィール

1957年生まれ。米国系企業に勤務中の96年、30万部を超えるベストセラーになった『Cの福音』で衝撃のデビューを飾る。翌年から作家業に専念、日本の地方創生の在り方を描き、政財界に多大な影響を及ぼした『プラチナタウン』をはじめ、経済小説、法廷ミステリーなど、綿密な取材に基づく作品で読者を魅了し続ける。著書に『介護退職』『国士』『和僑』『食王』(以上、祥伝社刊)他多数。

「2023年 『日本ゲートウェイ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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